産業技術総合研究所(産総研)と富山大学は、走査型電子顕微鏡(SEM)内で作動するナノ機械加工システムを開発し、ナノスケール切削の進行過程を動画で撮影することに成功した。
開発した加工システムは、原子間力顕微鏡(AFM)の機構を利用している。独自開発の加工用カンチレバーを工具として用い、カンチレバー先端の切れ刃に加える接触荷重を変えることで、1〜100nmの範囲で切り込み深さを制御しつつ、単結晶Siに対するナノスケール切削を行う。切れ刃は、異方性エッチングによりピラミッド形状のSiモールドを作製し、そこにCVDダイヤモンド膜を成形することで先鋭化した。これにより、幾何学的に整った刃先形状と先端半径が約30nmの切れ刃で、良好な切削性能を実現できた。
産総研と富山大学は、切れ刃の先端部をSEMで拡大し、ナノスケール切削のようすを動画で記録した。その際、SEMの光学系と干渉を避けつつ目的の観察姿勢を確保できるようにするため、すべて独自設計としている。またSEMによる観察は真空中で行う必要があるため、ナノ加工機の駆動機構には、非共振型超音波モーターを用い、機械的な駆動機構の軸数を減らした。
この研究成果について、産総研では「加工過程の直接観察により、極めて密度の濃い情報を得られることから、ナノ機械加工における材料除去メカニズムの解明や、最適加工条件の探索の強力なツールとなる」としている。「SEM内で作動するナノ機械加工システムの開発は、ナノインプリントなどに用いられるナノ金型の修正加工などに応用可能で、ナノファブリケーション技術の実用化開発を迅速化すると期待される」(産総研)。