2004年11月号
CMPを使用した
先端MEMSの製造法
Lebrecht von Trotha, Georg Morsh
独Peter Wolters Surface Technology社
本誌注)2004年6月に米Novellus Systemsが独Peter Woltersを買収することで合意。
Gerfried Zwicker
独Fraunhofer Institute for Silicon Technology ISIT
 Digital Mirror Device (DMD)など先端的なMEMSデバイスを作製する上でCMPが欠かせなくなってきた。DMDは、SRAMメモリーセルの上にAlのミラーをMEMSで製作する。堆積させたCuをCMPで平らにする工程にCMPを使う。CMPの性能要求を検証し、半導体デバイス製造の場合と比較している。
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 過去15年間以上に渡って研究所で開発されてきたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)とその製造技術が製造現場に移り始めている。すでに量産されているMEMS製品には、自動車用の加速度センサー、ジャイロスコープ、圧力センサーなど。通信分野では、光ファイバ・ネットワーク用の光スイッチや、RF(Radio Frequency)スイッチの可変コンデンサ、携帯電話用のフィルタやアンテナがある。さらにオフィスでは、インクジェット・プリンタの印字ヘッドや、ハードディスク装置の読出し/書込みヘッドなど、膨大な数のMEMSが使われている。MEMS製品の市場は2004年で前年比20%近く成長するとみられ、これは半導体デバイス市場の年成長率予測を上回っている。

 MEMSの製造では、表面マイクロマシニングの決め手となるCMP(Chemical Mechanical Planarization)がさまざまな目的で使われている。CMPにより、光デバイスでは鏡のように平らな表面を実現する。また、CMPは、それまでの製造工程で出来た凹凸の平坦化、リソグラフィ工程やウェーハ・ボンディング工程では表面粗度を低減する。

MEMS製造に求められるCMP
 半導体の先端デバイスの微細加工寸法は100nm以下になってきているが、MEMSの場合は、通常1〜100μm、時にはミリメーター単位のこともある。MEMSの一層あたりの膜厚は数μmであり、数原子層分の厚さに向かっている半導体デバイスとは対照的だ。
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 MEMS用のCMP装置を最適化するために、MEMSと半導体の製造パラメータで代表的な要求値を比較した(表1)。表を見ればMEMS用のCMP装置は、先端LSI用に開発されたCMP装置とは全く異なる要求を満たさなければならないことが分かる。先端LSIよりも起伏に富んだ形状を持ちながら、より大きな構造で膜厚も大幅に厚いことから、研磨によって除去しなければならない厚さは数10μmに及ぶ。半導体用CMP装置の研磨速度は通常0.5μm/分以下であることから、ウェーハ10枚/時程度のスループットを得るにはCMP装置の大幅な高速化が必要となる。半導体用CMPプロセスのスループットと比べて1/2から1/5にすぎない。

 Prestonの法則によれば、研磨プロセスの除去速度(Removal Rates)は研磨パッドとウェーハの相対速度vと、パッドに基板を押し付ける圧力pに比例し、

     RR=kppv

となる。ここで、Preston係数kpはスラリーとパッドの特性を表す。

 除去速度はターンテーブルを高速回転すれば速くなるが、遠心力によりスラリーが飛散してしまう。パッドにウェーハを押し付ける圧力にも限界がある。圧力を上げるためには、鋳鉄製フレームの非常に頑丈な研磨機が必要となり、また、事前の成膜プロセスがうまく制御されていることが前提となる。
 除去速度を上げる方法としては、その他にスラリーの温度を上げる、スラリーに研磨促進用の添加剤を加えるといった化学的手法と、より大きく硬い砥粒や、よりシャープな砥粒、特注のパッドを使用するといった機械的な手法がある。ここ数年では、MEMS用のスラリーがスラリーメーカーから入手可能になってきている。

 半導体では、CMPによるディッシングやエロージョンが大きな問題になるが、MEMSの世界ではあまり大きな問題ではない。しかし、MEMSは半導体よりもかなり大きいので、平面度の必要条件を満たすのは難しい。特に、光MEMSやマイクロミラー・デバイスを製造する場合には、より大きな領域で表面の平坦度を入射光波長λの1/10未満にする必要がある。CMP後の表面粗度Raへの要求はそれほど重要ではないが、ウェーハ・ボンディング用の表面の場合は0.5nm未満でなければならない。

 CMPプロセスではCMP後の洗浄も重要なステップだ。スラリーの残留物は、一度乾燥してしまうと除去できない。最も良い方法は、研磨後すぐにウェーハの洗浄を行えるようにすることである。そうでなければ、洗浄、乾燥までの間、ウェーハをウエットに保っておかなければならない。半導体デバイス製造では、パーティクルの大きさと密度が直接歩留まりに影響するが、MEMSの製造では、加工寸法が大きいためあまり大きな影響はない。ただし、ウェーハ・ボンディング工程に限っては、半導体デバイスと同等の表面のクリーン度を必要とする。また、MEMSでは金属残留物による汚染も考慮しなくてよい。CMOSプロセスでは致命的なAu、Ag、Ni、Feなどの金属は、MEMSの機能材料として使用されている。

 半導体デバイスの量産には直径300mmもの大型ウェーハが使用されるが、MEMSでは100〜200mmのウェーハで十分だ。用途によっては、MEMS用のウェーハはSiとは限らず、他の半導体材料や、金属、ガラス、セラミック基板を使う場合もある。

 半導体デバイス製造では、CMPプロセスは酸化Siや単結晶Si、ポリシリコンの他、WやCuなどの金属やTi、Taとそれらの窒化物などの材料を対象に開発されている。これに対して、MEMSでは、これらの材料に加えてNi、Ni-Fe合金、Auなどの金属、ピエゾ材料、セラミック、ポリマーなどさらに多くの材料を対象にしなければならない。

デジタル・ミラー・デバイスに見る応用例
 通常よりも厚い膜厚を研磨しなければならない例として、デジタル・ミラー・デバイス(DMD)製造時のCu犠牲層がある。DMDは、MEMSによる光デバイスで、小さなミラーのアレイが静電気力によって一つ一つ独立して傾く。これらのデバイスはデジタルビデオ・プロジェクタや、通信分野での光ファイバスイッチに使われている。

 図1(a)は、DMDの一部分の断面図である。80×80μmの貴金属製マイクロミラーは、高さ約10μmのNi製の支柱上にあるねじれヒンジで支持されている。Ni製のくさび形電極の静電気力により、ミラーは左右に15°まで傾く。同図では、電極下部の回路の詳細は省略した。CMPによるウェーハ処理は、すべて、独Peter Wolters Surface Technologies社のCMP装置「PM200 Gemini」で行われた。

 Ni構造を作りこんだ後、最大15μmのCu犠牲層が電解めっきにより形成された(図1(b))。ミラー表面を平坦化するため、CuのCMPプロセスで凸部で15μm、凹部分で5μmを除去した。このプロセスはNiに対する高い選択性を示したが、Ni製の支柱の密度が低かったためにCMPにより侵食されてしまった。そこで、この侵食を考慮し、CMPプロセス開始前のNi支柱を12μmとし、CMPプロセス中のNiの研磨ロスを2μmまで許容するように設計した。CuダマシンCMP用に開発されたCu CMPスラリーと、最適化されたプロセスを使用し、約10分間の研磨を行った。ミラー領域が比較的大きいにもかかわらず、CMP後、凹部凸部の差は90nmを実現している。

 図2(a)は、DMDの一部を示している。図2(b)は、図2(a)を拡大したもので、支柱、ねじれヒンジ付きのミラー、くさび形電極などのミラー要素の詳細がはっきり分かる。

 表面MEMS慣性センサーの製造では、ポリシリコンCMPプロセスが開発されている。アクティブ・センサーは、10μm厚のポリシリコン製のインターデジタル構造(2枚の櫛の歯を交互に組み合わせたような形)となっている。厚膜は、成長速度の速いエピタキシャル成長装置を用いて成膜されているが、ポリシリコンの表面は比較的粗いため、リソグラフィ・プロセスに支障をきたす恐れがあった。加工精度の優れた構造を作りこむためには平坦な表面が必要だった。これにポリシリコンCMPプロセスで対応した。この時は次のリソグラフィ工程で使用される位置決めマークを削らないように研磨することが重要だった。

 この技術を使ってすでに2種類の製品が製造されている。図3(a)は、角速度センサーのポリシリコン可動櫛構造、図3(b)は、加速度センサーのインターデジタル構造の拡大図となっている。
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Lebrecht von Trothaは、Peter WoltersのCMP装置販売責任者。独Braunschweig工科大学卒業後、レーザー技術分野の仕事に13年間従事している。
Georg Morshは、Peter WoltersのCMPプロセス開発責任者。独Aachen工科大学で5年間半導体技術の研究に従事し、物理学の博士号を取得した。
Gerfried Zwickerは、Fraunhofer ISIT社のCMPプロセスの開発責任者。検証ツールや消耗部材の評価を含むCMPプロセスの新技術開発に従事している。半導体技術のさまざまな分野で20年の経験を持つ。Berlin技術大学の物理学科卒業後、独BerlinのFrits-Haber研究所で博士号を取得した。

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