2004年11月号
無電解めっきによるCoWP、Cu配線の
信頼性とデバイス性能を向上
Bill Lee, 
米Blue29社, Sunnyvale, Calif.,
http://www.blue29.com
 65nm以降、45nmプロセスへの導入に向けて、無電解めっきによるコバルト・タングステン・リン(CoWP)を利用したCuバリア/キャップ膜の開発が進められている。アルカリ金属を含まない薬品、高スループットの量産対応の堆積装置、対応する測定技術はすでに使えるレベルに達した。CoWPを使えばCu配線の信頼性の課題を解決でき、また性能も向上できる。
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 Cuダマシン・プロセスが確立され、半導体デバイスの性能は高まった。低抵抗値と高信頼性が期待できるCu配線は、Al配線に取って替わった。しかも拡散の活性化エネルギーが高いため、さらなる高い信頼性も期待されている。しかし、微細化が進むにつれ電流密度が増加し、Cu配線はエレクトロマイグレーション(EM)とストレス・マイグレーション(SM)による信頼性上の課題(図1)に、苦しむこととなった1〜4)。また、層間絶縁膜材料も、65 nm以降では変更される予定だ。

エレクトロマイグレーションと
ストレス・マイグレーション

 Cuダマシン・プロセスでは、Cu配線は側面と底面はバリアメタル膜でカバーされ、上面には絶縁体によるエッチストップ膜が形成されている。Cu-エッチストップ膜界面は、Cu-バリアメタル膜界面よりも粘着性が悪い。そのため、Cuはほとんど上面で拡散する。高い電流密度では、Cuの原子は電子の流れに沿って動き、欠損部が反対方向に蓄積されるとボイド欠陥となる。この結果、デバイス不良を引き起こす(図2)。

 絶縁膜の堆積前に施す表面処理を使って、Cu-絶縁膜間の粘着性を改善する試みがいろいろと提案されている。粘着性の改善にはある程度の効果が出ている。しかし、表面処理だけでは電流密度は106A/cm2程度に制限されてしまうため、長期的に見た場合、抜本的な変更が必要となろう。この結果、65 nm以降のプロセスでは駆動電流を下げざるをえなくなり、配線幅やビアの径も大きくなってしまうため、デバイスは大きくなり高価になり、そして動作速度が遅くなってしまう。

 Cu配線は各層とも線幅が違う。特に広い配線と上下でつながるビアには、プロセス中の熱ストレスでボイド欠陥が発生しやすい5)。Cuグレインの成長により発生する欠損部は、Cuグレインの境界面と弱い界面に沿って動き、より狭いビアのストレスの少ない場所に蓄積する(図3)。ビアにつながる狭い配線でさえ、線幅が同じ程度に増えるとストレスによりボイド欠陥が発生することがある6)。

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CoWPによるキャップ膜
 これらの信頼性に関わる問題を、Cu膜にコバルト・タングステン・リン(CoWP)のキャップ膜を選択性の無電解成膜プロセスでCMP(Chemical Mechanical Planarization)後に形成することによって解決した7〜12)。無電解CoWPプロセスは、Cu膜上に自己整合的に形成され、しかも均一でコンフォーマル(下地の形状に沿って忠実に成長する様子を表す)な薄膜を形成できる(図4)。

 プロセス条件により、この膜はアモルファス状または擬似エピタキシャルとなる。下地のCuグレイン構造によって左右される。薄膜は標準的にはW 2%とP 8%を含んだ90%のCoのナノ結晶体となっている13)。WとPは、Coグレインの境界に埋め込まれる。CoがCuとの界面の大半を形成し、メタル-メタルの粘着エネルギー40 J/m2以上の接合ができあがる。ちなみにメタル-絶縁膜の粘着エネルギーは10〜20 J/m2と小さい。

 実験ではTa/TaNキャップ層やCVD (Chemical Vapor Deposition)によるWメタルキャップ膜も、EM寿命を改善できることが分かった。しかし、無電解CoWPはCu表面にのみ選択的に形成できるため、Ta/TaNで必要となるパターニング工程(Cuをくぼませるウェット・エッチ、Ta/TaNのPVD(Physical Vapor Deposition)、層間絶縁膜表面からTa/TaNを除去する2回目のCMP工程)を省くことができる。また、Wに比べても、無電解プロセスによるCuの選択性は有利となる。

 CoWPキャップ膜により、従来のエッチストッパ絶縁膜だけの構造に比べてEM寿命は1桁から2桁増と大幅に改善した7〜11)(表1)。ストレス・マイグレーションにも著しい改善が見られる7)。

「Low-kメタル」
 デバイスの信頼性改善にCoWPキャップを使うことは、多くの半導体メーカーにとって必須になるだろう。また、同時にCu配線周囲の絶縁膜の実効比誘電率(keff)を下げデバイス性能を向上させる方法としても注目されている。ビア・エッチング用のエッチストップ膜としても使用できれば、上層のメタルキャップ膜はCuの拡散バリアとしても働くため絶縁膜のエッチストップ膜が不要となる。RC遅延は5〜15%軽減できると想定される8〜11)。この結果、実効比誘電率は2.5から2.1となり、これは一世代分の絶縁膜のlow-k化と同等となる。

CoWPに求められる性能
 CoWPの厚さは、標準10〜15nmの範囲で面内ばらつき5%以下(1σ)、ウェーハ間ばらつき5%以下(1σ)に抑えたい。このような薄い膜では、数原子層分のばらつきに相当する。 EM改善は相対的に厚さとは無関係だが、SM改善は厚さに比例する。CoWPはCuに対して等方性的に成長するため、厚さは配線間の間隔で制限される。そのため、バリアメタルの厚さ以上に成長させると横方向にも成長が進むため、線間が狭くなり、線間のリーク電流が増加してしまう。

 プロセスの選択性は線間のリーク電流でチェックできる。新しいプロセスは従来の絶縁膜によるキャッププロセスと同等の仕様を満たさなければならないのが当然だろう。このため製造メーカーや技術、プロセス世代に深く関係する。

 終端から終端までの配線抵抗の変化は5%以下でなくてはならない。これは線とビアの抵抗分、さらに寸法上の変化とCoWPキャップの抵抗分が含まれている。線に対しては、CoWPの追加で電流は分散され、ビアの一極集中を避けることができる。選択性は重要であるが、CoWPの成膜プロセス内で解決し、また、Cu膜厚に影響を与えてはならない。配線抵抗が増えるかもしれないからだ。ビアの抵抗値は、CoWPが残されているか、ビア・エッチング中に除去されたかにより異なる。従来の弱いTaN/Cu界面を、強いCoWP/Cu界面に置き換えるという優位性がある一方、電流パスにさらに高い抵抗率の材料(つまり非常に薄いから)を使うという不利な面もあった。この課題を改善するために、キャップ材料には、抵抗率50 μΩ-cm以下が求められる。

 微細化は、1世代で線幅が0.7倍あるいは面積の約半分のペースで進んでいる。電流値はほぼ一定のため、電流密度(j)は2倍になり、信頼性上の影響が出てくる。Blackの法則に従うと、EM時間 (MTTF) は、jnに逆比例する。(nは1と2の間の故障モード(ボイドの形成か成長)に依存しない値)これは、寿命が世代ごとに1/4に縮むので、通常「4倍」が最低の要求寿命となり、一般的には「10倍」が要求されている。SMの寿命改善要求はICメーカーごとに違う。

 keff低減による性能改善を重視する場合、CoWPには拡散バリアの機能も要求される。この時の基準は千差万別だが、標準的なチェック手法としてはCu成分検査のオージェ分析や、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)、表面SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)などの表面分析技術を用いて、Cu膜上にCoWPを成膜、アニールしてテストする。そのほかの方法としてまず、MIM(Metal-Insulator-Metal)構造を作り、最下層のメタルにキャップを被せるようにする。この試料をアニールした後にC-V特性を調べる方法である。

プロセス上の必要事項
 無電解CoWP成膜の選択性を維持するには、Cuと層間絶縁膜の表面を極めてクリーンにする必要がある。たとえば、CMP工程後のパシベーション材料として、BTA(防錆剤用ベンゾトリアゾール)のような膜はCu表面から完全に除去されていなければならない。また、その他のあらゆる不要な異物は、内部に混入したCu原子も含めて層間絶縁膜表面から取り除かなければならない。Cu膜活性化やプロセスのインテグレーションのために、さらに表面処理を施すこともある。そのため、低コストで容易に取り扱えるようにして、2〜5種の化学薬品を供給できる装置も必要となってくるだろう。また、薬液の中には沸点近くの高温で最高の性能を発揮するものもある。そのため、表面処理プロセスは90℃以上で1秒以内となる。スループットも改善され、高品質で均質な薄膜の形成も可能となる。このような高温で高速なプロセスでは、揮発性の化学成分の蒸発損失を防ぐためにハードウェアの対応が不可欠となってくる。ただし、溶液の構成やプロセスの性能は変わってしまうだろう。

 CuとCoWPの界面は最高品質に仕上げることが重要だ。いったん、Cu表面をクリーンにした後は、CoWPでキャップする前に品質を低下させてはいけない。従来のCuめっき装置では、ウェーハは薬液槽や噴霧台の間を移送され空気に曝されてしまう。また、個々の工程のプロセス時間は異なるため、待ち時間でCu表面が酸化される恐れもある。加えて、待機中にウェーハ表面を部分的に乾燥させると、CoWPの核形成や膜成長が不均一になってしまう。CoWPの無電解成膜装置は、工程間の待ち時間をできるだけ短くし、ウェーハ表面をウェットに保ち、酸化が進まない環境にしなければならない。

 無電解成膜は、溶液内の成分が互いに作用して成長する。このため、リアルタイムに監視し、必要に応じて調整を加えねばならない。紫外線分光光度計やラーマン分光計のような光学測定技術は、非接触・非破壊で複数の成分を同時に測定できるため有効だ。イオン・クロマトグラフィのような化学分析手法は、開発時には有効だ。しかし、量産中ではオフラインで使うのがベストだろう。

 一方で、CoWPを製造ラインに追加するコストは、できるだけ少なくなければならない。一般的に、消費材のコストはほとんどないため、償却と薬液コストがほとんどを占める。スループットが高ければ償却は小さくできる。また、薬液コストはウェーハ当りの使用量を減らすにつれ安くなる。材料構成も安価な合金に変更することで低減可能となる。

厚さや組成を測定する
 パターンを形成した厚さ10nmのCoWP膜を、ばらつき5%以内で十分な精度を持って調べることは難しいことではない。パターニングしない膜の測定ならば、メタルのキャップ膜は十分薄いので波長の短い分光エリプソメトリーが使える。小さなスポットサイズを用いればパターン・ウェーハの測定も可能だ。

 分光エリプソメータ法は、3元合金に対しては、膜の組成も同時に測定できる。たとえば、Pの割合はフィルムストレスに影響し、W、P、Coの割合はCu拡散バリア特性に影響することが分かる。また、電子ビーム励起X線分析技術では、厚さと組成情報の両方の測定が可能だ(図5)。閉ループ制御では、分光光度法のような光学測定技術が成膜装置の組み込み型測定器として使用できる。

まとめ
 65 nmや45 nmプロセスに対応した無電解CoWP技術の開発が、大手ICメーカーで進められている。アルカリ金属のない半導体グレードの薬品と、量産対応の成膜装置、膜の測定が使える状態になっている。CoWPにより、半導体産業はCu配線の信頼性の問題に解決のめどをつけた。そしてそれは層間絶縁膜の実効比誘電率を上げないようにして、性能の大幅な向上を実現している。
参考文献
1. P. Singer,“Copper Challenges for the 45nm Node,”Semiconductor International, May 2004, p.40.
2. L. Peters,“Low-k Dielectrics Pose New Reliability Concerns,”Semiconductor International, July 2002, p.19.
3. L. Peters,“Exploring Advanced Interconnect Reliability,”Semiconductor International, July 2002, p.63.
4. K.N. Tu., “Recent Advances on Electromigration in Very Large-Scale Integration of Interconnects,”Journal of Applied Physics, 2003, Vol.94, No.9, p.5451.
5. T.Oshima, et al.,“Suppression of Stress-Induced Voiding in Copper Interconnects,” Proc. IEDM, 2002.
6. K. Yoshida, et al.,“Stress-Induced Voiding Phenomena for Actual CMOS LSI Interconnects,” Proc. IEDM, 2002.
7. T. Ishigami, et al., “High Reliability Cu Interconnection Utilizing a Low Contamination CoWP Capping Layer,”Proc. IITC 2004.
8. P.Moon, et al.,“Process Roadmap and Challenges for Metal Barriers,”Proc. IEDM, 2003.
9. C.K. Hu, et al., “Reduced Cu Interface Diffusion by CoWP Surface Coating,” Microelectronic Engineering, 2003
10. C.K. Hu, et al., “Effects of Overlayers on Electromigration Reliability Improvements for Cu/Low k Interconnects,”Proc. IRPS, 2004
11. T. Ko, et al., “High Performance/Reliability Cu Interconnect with Selective CoWP Cap,” Symposium on VLSI Technology, 2003.
12. E.J. O’Sullivan, et al., “Electrolessly Deposited Diffusion Barriers for Microelectronics,” IBM Jour. Of R&D, 1998, Vol.42, No.5, p.607
13. A. Kohn, et al.,“Characterization of Electroless Deposited Co(W,P) Thin Films for Encapsulation of Copper Metallization,” Materials Science and Engineering, 2001, Vol.A302, p.18.
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Bill Leeは、Blue29のマーケティングディレクタ。以前は米Applied Materials社でPVD、CVD、エッチング装置事業に携わる。また、独Schlumberger社でEB測定器事業にも従事していた。米マサチューセッツ工科大学を卒業し、米Stanford大学でMBAを取得した。

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