2004年12月号
90nmノード用
PSMにおける位相誤差
William Chou、Shih-Ming Yen、
台湾United Microelectronics(UMC)社、台湾新竹市
http://www.umc.com
Dimitris Lymberopoulos, Lias Liopoulos, Kyoung-Shik Jun, Howard Li, Michael Armacost,
米Applied Materials社, Santa Clara, Calif.,
http://www.photomasks.com
 組込・減衰型の位相シフトマスク(EAPSM:Embedded attenuated phase-shift mask)は、現在、130nm以下のプロセスで重要な工程に使われている。EAPSMを使用すると、関連する位相と吸収材の透過率がプロセス・ウインドウに影響を及ぼす。この記事では、位相誤差が焦点/露光ウインドウに与える影響を数値化し、193nmEAPSMの仕様要求を検討する。
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 組込・減衰型の位相シフトマスク(EAPSM: embedded attenuated phase-shift mask)、いわゆるハーフトーン型位相シフトマスクは、既存のリソグラフィのバイナリーマスクに比べて、より大きなプロセスウインドウを持つ。現在、90nmノードのロジックや110nmノードのDRAMでは、重要な工程のパターン形成にArFエキシマレーザー(193nm)対応のEAPSM技術を使用しているメーカーが多い1)、2)。EAPSMでは、光の位相と吸収材の透過率を制御することで有効なプロセスウインドウを得ることができる。Giang Dao氏とGang Liu氏は、エッチング・プロセス開発中に、KrFエキシマレーザー(248nm)対応のEAPSMの位相が、プロセスウインドウに与える影響について調べた3)。90nmノードは比較的新しい技術なので、193nm EAPSMの位相と透過率がプロセスの許容度に与える影響について理解を深め、デバイス製造では、EAPSMの位相と透過率の実際的な制御方法を確立する必要がある。
 EAPSMの位相と透過率は吸収材となるMoSiの厚さ(Tm)、石英のオーバーエッチングの深さ(Tq)、露光波長(λ)、および、吸収材の吸収計数(α)で決まる。その関係を図1に示す。ここで、nqとnmは、それぞれ石英とMoSiの屈折率である。代表的なEAPSMの製造工程では、石英のオーバーエッチングの深さはMoSiのエッチング工程中に変わる可能性がある。また、吸収材MoSiの厚さは、初期工程や引き続いて行われるマスクの再薄膜形成や洗浄工程で侵食性のあるウェット洗浄で薄くなる危険性がある。
 露光波長はKrF(248nm)からArF(193nm)へと短くなったため、同じ位相誤差許容量だと、厚さの変化許容量はより小さくなる。これは、重要な問題なので193nm EAPSMの位相と透過率がプロセス・ウインドウへ与える影響と、その制御方法を調べなければならない。位相と透過率を精密に制御することにより、EAPSM製造で生じる損失を減らすことができる。
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 これを確認するために、まず、マスク重ね合わせ描画プロセスで余計な石英エッチングとMoSiの除去工程を組み合わせることによって、複数の位相を持つ193nm EAPSMを作製した。図2は、この複数位相EAPSMの設計図で、Crパターン側が上を向いている。マスクパターンは、複数の位相を持つ多数のセルで構成されている。各セルは、4つの異なる領域A、B、C、Dを持つ。各セルは2×2cmで、マスク上に5列6行になるように配列してある。4領域(A、B、C、D)には、リソグラフィ工程を調査するために同様のパターンが形成されている。Crレベルの描画プロセスは各領域で同一だが、それに続くMoSiエッチングおよび最終のクロム除去および洗浄プロセスは、それぞれの領域で異なる処理を行って、異なる位相と透過性の組み合わせを実現した。
 マスク上に標準的な90nmノードの設計ルールでリソグラフィ・テストパターンを描画するために、日本電子の50keVの可変成形電子ビーム(EB)マスク描画装置「JBX9000-MZ」を使用した。EB用のフォトレジストには、ポジ型の化学増幅型レジスト富士フイルムアーチの「FEP171」をしようした。作製したレジストパターンはスイスUnaxis社のドライエッチング装置「GEN-V」を使用してCr膜上に転写した。MoSiエッチング工程の前に、米KLA-Tencor社の電子顕微鏡「KLA-8100 SEM」を使用しCrパターンのCD値を計測した。その結果、マスクへの600nm設計のコンタクトのCD均一性は、マスクプレート上の50ヵ所のサンプル点で12nmだった。孤立パターンと密パターン(iso-to-dense)のCD値の差は8nm以下となった。
 位相と透過率の複数の組み合わせのサンプルをフォトマスク上に生成するために、3段階の重ね合わせ描画プロセスを使用し、追加した石英エッチングとMoSi除去プロセスを組み合わせることで、各セルに4つの異なる領域(A、B、C、D)を生成した。それぞれの重ね合わせ描画プロセス中に、レジスト「IP3600」を再塗布した。その後、米Applied Materials社のi線パターン描画装置「Alta 3700」で4領域の組み合わせの上にレジストの設計ブロックを露光した。
 各重ね合わせ描画プロセス後にフォトレジストを露光してから、フォトレジストで覆われていない開放領域にプロセスを追加した。図2に、各領域の処理プロセスを詳しく示す。最終的な位相と透過率の値は、レーザーテックの193nm位相測定器「MPM193」により測定した。計測された位相差は、現在の仕様の7倍以上の23度であった。また、透過率のばらつきは2%であり、これは、現在の仕様である5%の4倍となった。
 300mmウェーハのリソグラフィ・プロセスウインドウを確認するために、蘭ASML社のArF露光装置「AT1100」を使用した。まず、有機系BARC(反射防止膜)材料を塗布し基板の反射を削減した。次に東京応化工業のArFレジスト「TOK-CB01B」で400nm未満を塗布した。露光装置の光学系は、開口数(NA)が0.65(σ=0.6)である。位相と透過率の組み合わせの各領域で最適な露光焦点とプロセスウインドウを決定するために、焦点設定と露光線量をさまざまに組み合わせて実験し、形成したレジストパターンを日立ハイテクノロジーズのCD-SEM「S9300」で測定した。

最適な露光/焦点 vs. 位相差
 図3は、複数の位相を持つEAPSMで露光した直径120nmの孤立コンタクトホールのウェーハレベルの形成結果を示している。種々の露光焦点と位相をカバーする走査型電子顕微鏡(SEM)の測定結果を示しており、その中で、各位相誤差における最適な露光焦点と露光焦点ウインドウを青枠で示した。最適な露光焦点は位相誤差に関連してシフトすることが明らかである。その一方、露光焦点ウインドウは、23度の位相領域のなかでほとんど一定である。 同じ試験を密コンタクトホールにおいても行った。孤立コンタクトホールと密度コンタクトホールの両方について、最良の焦点シフトは位相1度の変化に対して0.003nm未満であると算出した。
 最適な露光焦点シフトへの位相の影響を十分に把握するために、KLA-Tencorのリソグラフィシミュレーションソフト「Prolith」でシミュレーションを行い、異なるコンタクト寸法についてのEAPSMの焦点シフトと位相誤差の関係を求めた。図4にそのシミュレーション結果を示す。ウェーハプロセスの変動を考慮して、ウェーハサイズによる30nmの補正を適用した。
 実際のウェーハ転写実験データも図中に示した。ウェーハ転写結果とコンタクト寸法120nmにおけるProlithシミュレーションは実験データと良く合致している。シミュレーション・データによれば、コンタクト寸法が小さくなるほど焦点シフトはEAPSMの位相誤差に対して敏感になる。この現象は、微小寸法の制御におけるマスク・エラー増大因子(MEEF:mask error enhancement factor)と酷似している。加工寸法が小さくなるほど、k1ファクタの低下によりMEEFは増加する。その結果、マスクエラーは、最終的なウェーハ描画プロセスウインドウに大きな影響を与える。

位相誤差の影響
 この調査において、EAPSMで(180度以上の)位相誤差があるとき、ウェーハ焦点プロセスウインドウがどのように劣化するかを測定した。独Carl Zeiss社「193-AIMS(Aerial Image Measurement System:空間像測定システム)」で、位相誤差がウェーハ焦点プロセスウインドウに与える影響を調べた。MSM-193で複数の位相を持つEAPSMの各領域(位相と透過率)における120nmのコンタクトの空間像をさまざまな焦点で計測した。
 図5に、4つの領域で空間像焦点ウインドウを比較結果を示す。AIMSのデータ分析において、マスクの各領域で焦点ウインドウを決めるときに、10%の露光余裕度を見込んだ。図5から分かるように、位相誤差が±10%以内ならば焦点ウインドウに顕著な劣化は見られない。図3のウェーハ転写の調査も同様の結果を示している。ここで、位相と透過率の4つの組み合わせのどの領域でも、露光焦点ウインドウは全体で0.25μmより大きいことに注目してほしい。

位相均一性と透過率の影響
 通常EAPSMは、平均位相と関連した位相均一度(複数のサンプル点をマスク上で取った場合)を持つ。前述のように、位相誤差が180度±10%以内ならば、平均の位相はウェーハの露光焦点ウインドウに大きな影響を与えない。一方、ある程度の位相誤差により最適の露光焦点にはある程度のシフトが生じうるので、位相の均一性は、確実にウェーハ全体の焦点プロセスウインドウ(共通プロセスウインドウ)に影響する。図6に、位相均一性が共通プロセスウインドウへ与える影響について示す。
 図6は、KLA-Tencorのソフトウエア「KLA PRODATA」を使用し、前述のウェーハ転写実験の結果に基づいた各位相と透過率の組み合わせについて、焦点と露光ウインドウをプロットしたものである。120nm孤立コンタクト(30nmのプロセス変動を持つ)の焦点露光ウインドウを、特定の位相と透過率の組み合わせについて色を変えて示してある。
 最良の露光焦点は、位相が170〜193度が変化する際にシフトすることが容易に分かる。青線は、位相と透過率の4つの領域(A、B、C、D)以外の部分における重複したプロセスウインドウを示している。どのプロセスウインドウも各領域における最良の露光/焦点シフトにより減少することが明らかである。赤の矩形の領域はプロセスウインドウの重なり合った部分を示している。データを分析すると、焦点深度は以前の0.25以上から0.20まで、20%以上低下している。同様の結果が密集したコンタクトでも得られた。
 このウェーハ転写実験とAIMS調査では、吸収材の透過率が6.5%から8.5%の間で変化した場合において、顕著なプロセスウインドウの変化は観測されなかった。この結果、吸収材の透過率は2%の変動の範囲内ではプロセスウインドウに直接影響は与えないことが分かった。

90nmの設計仕様
 ウェーハレベルの転写実験とAIMS評価結果から、90nmノードの193nm EAPSMの位相および透過率の設計仕様を提案する。
●位相均一性は、フォトマスク製造工程の制御で最も重要なパラメータである。ゲートやコンタクトのような最も微細で重要な層では、MEEF効果が高く、k1ファクタが低いので、位相均一性を±3度にすることが望ましい。NA 0.65(σ=0.6)で120nmのコンタクトをウェーハに転写する実験では、位相誤差3度のときの全焦点シフトは0.01μm以内だった。193nm EAPSMを使用したビアのようなそれほど厳しくない工程の場合は、MEEFが低く、k1ファクタが高いために、焦点シフトの位相誤差に対する感度がより低く、位相均一性は±5度で十分である。
●平均位相は、全体のプロセスウインドウよりも重要性が低い。平均位相誤差が±10%以内なら(180度以上で)、焦点許容度は位相誤差によって劣化しない。さらに、露光装置の露光焦点は、大きな位相誤差に起因する最良の露光/焦点シフトを補うように設定すべきである。このことは、何回かの除去と洗浄プロセスを実施するEAPSMでは特に重要となる。
●液浸リソグラフィが導入されればリソグラフィ工程のk1ファクタが向上する。これによりk1ファクタ増大による位相誤差に起因した最良の露光/焦点シフトの総量も減少する。結果として、位相均一性を保持またはわずかに緩和する可能性があるだろう。
●EAPSMの吸収材の透過率は、ウェーハのプロセスウインドウには顕著な影響は及ぼさない。この露光試験データでは、透過率が6%から8%へと2%変化しても、ウェーハの露光ウインドウにはあまり影響がなかった。透過率の許容範囲は±1%が適当だろう。
参考文献
1. H. Iwasaki,“Fabricating 0.10-micron Line Patterns Using Attenuated Phase Shift Masks,”Proc. SPIE, 2002, Vol.4186, p.336.
2. C. Bok, S.K. Kim, H.B. Kim and K.S. Shin, “0.33-k1 ArF Lithography for 100nm DRAM,” Proc. SPIE, 2002, Vol.4691, p.810.
3. G.Dao, G. Liu, A. Snyder and J. Farnsworth, “New Approach to Phase Metrology for Manufacturing of 248nm Lithography Based Embedded Attenuated Phase-Shift Mask,” Proc. SPIE, 1996, Vol.2793, p.359.
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William Chouは、台湾UMC社のマネジャーで、台湾の国立交通大学(National Chiao Tung University)で応用化学の修士号を取得した。UMCにおいてマスクの品質保証および90nmと65nmの先端フォトマスク開発を担当している。
Shih-Ming Yenは、UMCのシニアエンジニア。1995年に台湾の国立中正大学(National Chung-Cheng Univrsity)で物理学の修士号を取得した。UMC先端マスク品質エンジニアリング部門の責任者。
Gong Chenは、米DuPont Photomasks社のアプリケーション・マネジャー。米Wisconsin-Madison大学で電気工学の博士号を取得した。130nm、90nm、65nmノードの先端フォトマスク開発および検査に従事している。
E-mail:gong.chen@photomask.com
Gregory P. Hughesは、DuPont Photomasksで65nm以降の先端フォトマスク開発を率いている。Dartmouth大学で物理学の博士号を取得した。20年に渡って先端フォトマスク開発に従事している。
編集部注:凸版印刷と米DuPont Photomasks(DPI)社は、凸版印刷がDPIの全株式を取得することで最終合意に達している。買収完了は2005年の初頭を予定。
完了後は、DuPont Photomasksは凸版印刷の完全子会社となる。新社名はToppan Photomasksで、本社は引き続きDPIの本社がある米テキサス州Round Rockに置かれ、Toppan Photomasks の会長には現凸版印刷専務取締役 エレクトロニクス事業本部長の永田明裕氏が兼務し、CEOには現DPI会長兼CEOのMarshall Turner氏が就任する予定。

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