マイクロマシン技術の例
マイクロエレクトロニクスの分野でよくレーザーが用いられる方法の一つに、パターン形成された基板やマスク修復基板から薄膜を除去するアプリケーションがある。石英基板からクロムを除去する工程は、マスク修復で基本的なアプリケーションである。通常は集束イオンビーム(FIB:focused ion beams)または集束電子ビーム(focused electron beam)が用いられている。しかし最近では、フェムト秒パルスレーザーがマスク修復装置で使用されている。FIBマスク修復装置は、これまで空間電荷効果(space-charge effect)によるパターンのひずみ問題があった。しかし、フェムト秒パルスレーザーを採用したことによりFIB固有の分解能、及び処理速度に対する問題を解決することができた。図5にナノ秒レーザーとフェムト秒レーザーを使って、それぞれクロム線を切った時の比較結果を示した。ナノ秒レーザーでは、クロムの溶解と「再付着」を伴っているために切断部終端に溶球を生じ、欠陥品となっている。このプロセスでは、位相でエラーが起こらないようにするため、石英基板にダメージを与えてもいけない。
また別の使用例として、ポリマー基板上の金属膜にμmオーダーの寸法で、非常に微細なパターン形成させるアプリケーションがある。その一つの方法として、マルチステップのプロセスで行なう化学エッチングがある。基板上の金属膜に直接レーザーでパターンを書いていくことは容易であるが、通常ポリマー基板は金属膜よりも融点が低いため、この方法ではたびたび問題が起こる。例えばCWレーザーを使ったテストで、基板に大きな損傷を与えずに5μmの銅薄膜を除去することは事実上できない。しかし、フェムト秒パルスレーザーならば、薄膜上にある線を8μm以下の幅で切断することができる。一般的に、ファイバレーザーの200kHz以上の高周波数によって、直接パターンを書き込む速度をリニアに上げられる。
フェムト秒レーザーのアブレーションには、その他にも効果的な使用法がある。図6に示したように、平坦化された表面にフェムト秒レーザーを照射すると、周期的なナノ構造をした表面を形成できる。深さや周期、方向、パターンといった表面構造の特徴は、ビームの偏光方向やエネルギー、露光に依存するため、ある程度制御ことができる。滑らかな表面構造にすると、表面間の摩擦(例えば潤滑油の保持によるもの)を低減できることが分かっているため、シリンダの側壁やハードディスクドライブの磁気ヘッド部分などの機械部品へ応用することが期待されている。将来のナノ構造への応用例として以下のようなものが挙げられる。
●ベアリングやハードディスクの磁気ヘッド部分の摩擦低減
●化学触媒の表面層の拡大
●表面ぬれ性の改善
最後に、図7に技術的に重要な材質を加工した例を示した。ZnO表面上に周期的な格子状のパターンの書き込みを行った結果である。ディスプレイ産業や太陽電池では、ZnOなどの透明な酸化物が、インジウム-スズ酸化物(ITO:Indium-tin-oxide)の代替材料として検討されている。周期1.5μmの表面の波形を見れば、精密に加工制御されているのが分かる。
その他にも、サファイアウェーハのMEMSの調整や切断というアプリケーションに利用されている。MEMSセンサーの機械式発振器は、選択した場所で微小量の材料を除去することで正確に調整できる。フェムト秒で動作するレーザーマイクロマシンで期待されていることの一つは、HAZを最小限に抑えて、1パルスあたり除去する物質を減らすことだ。これが、アプリケーションの中には短所となる場合もあるが、微細な加工を必要とする場合には有益である。高周波数のファイバレーザーを用いれば全体的なプロセス速度を上げられるだろう。
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参考文献
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