Semiconductor International日本版編集部(SIJ):2004年はやはり、リソグラフィでは液浸技術が注目された。
牛田一雄:2004年はArF(193nm)液浸技術の確認の年だった。ニコンでは2005年第2四半期にArF液浸対応露光装置の量産一号機を製品化する。レンズの開口数(NA)は1.0を超える。2006年の後半にはNA1.2以上の装置を発表する計画だ。現在は開発・検査用のEngineering Evaluation Tool(EET)で実験を行っている。ArF露光装置「NSR-S307E」を改造し液浸のノズルを搭載した。半導体メーカーに使用してもらい半導体メーカーで液浸技術がプロセスとして成立するかを確認し、ニコンとしても装置として機能できるか確認を行っている。これが2004年の大きなトピックだった。
SIJ:一方でArF技術の量産への導入は進んでいるのか?
牛田:ArFはロジックデバイス製造用に初めに導入された。メモリー向けには、コスト競争が熾烈なためKrFをぎりぎりまで使っていたようだが、今年に入りNAND型フラッシュメモリー用に導入が始まっており、DRAMメーカーにも導入され始めた。ArFは、2005年以降に増やしていく状況だ。特にフラッシュメモリーでは、ハーフピッチ(HP)は露光波長の解像限界を超えArFを使う方法しかなくなってきている。
SIJ:ArFプロセスの完成度は?
牛田:厳密に言うと、KrFほどには至っていない。しかし、KrFでは不可能な領域に入ってきた。特にHPはある限界を越すとコントラストがゼロとなってしまうので短波長化が必要だ。光学系は、短波長化で難易度が増す。F2(157nm)光学系では、蛍石の複屈折が懸念されていたが、ArFでは問題がないことを確認した。光学系の課題は、液浸技術の高屈折率にどれだけ対応できるかに移っている。
SIJ:ArF液浸の光学系は難しい?
牛田:高NA化が進むと光学系が巨大になるため、製造コストが莫大に増加する。高い屈折率の光、いわゆる浅い光を収束させなければならず、レンズが大きくなりやすい。NA1.2〜1.3では、当社は反射屈折構造のレンズを採用する。反射縮小光学系を作るのが一つの挑戦となる。
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SIJ:F2では反射光学系の難しさが指摘されていた。
牛田:ArF液浸の反射光学系では、露光装置メーカー各社各様の取り組みが行われているようだ。当社はF2のようなキュービック光学系は少なくとも使用しない。当社の反射光学系はF2光学系の開発で行き当たった解だった。それがArF液浸に対応できることが分かっている。しかし、F2で反射屈折にした理由と、ArF液浸でそれを採用する理由は異なる。F2の場合は、レーザーの半値幅が非常に太いため、ミラーを使用した。一方、NA1.2〜1.3のArF液浸技術で反射屈折を使う理由は、レンズが大きくならないようにするためだ。
SIJ:扱いの難しそうな蛍石は引き続き使用されるのか?
牛田:蛍石は、色収差、レーザーのパンプ幅が太い場合に使用しなければならない。しかし、各レーザー光源メーカーがデュアルチャンバ技術を開発し製品化している。この技術により非常に波長線幅を短くでき、単一硝材でも光学系を組むことができるようになった。単一硝材で技術的に容易なのが石英となる。このため、蛍石の量はコントロールできるようになり、使用量も減る傾向にある。
SIJ:光源にデュアルチャンバ技術を採用すると光学系の負荷は増加する。
牛田:レンズに対する負担は増加するが、硝材の材料面の改良でレーザー出力の上昇に対しても対応できるめどが付いた。ArFの光学系材料は、ダメージの問題も含めて解決した。一方で、偏光の制御が液浸の時代では必須となる。ニコンは、ドライNA0.92の露光装置「NSR-S308F」の世代から、照明系の偏光を制御可能にする。輪帯照明時の偏光照明制御も可能となる。当社はこの技術を重視している。これはNAが大きいほど有効度を増し、高NAの光学系ではこの技術がないと成立しない。試算では、偏光照明を導入することでNAが半世代ぐらい伸びたことに相当するという。過去はNAを上げることで解像度を向上してきたが、NA0.92のNSR-S308Fでは偏光照明機能を搭載するので、非偏光換算でNA1に近い性能を達成する。 |