2005年1月号
銅CMP技術
解決に向かうディッシング問題
Peter Singer
 銅(Cu)MP工程では、平坦性だけではなく、研磨レート、欠陥、パーティクル、そしてコストとさまざまな要素が重要だが、特にCu CMP中のディッシングが潜在的に深刻な問題のようだ。ディッシングはパッドで研磨している間に凹部ができてしまう現象である。極度に平坦性が悪くなり、リソグラフィ工程で焦点深度の問題を引き起こす。半導体業界は、電解機械研磨や砥粒レス研磨などの新技術に期待を寄せている。
* * * *
 Cu CMPの第一段階はバルクCuの除去で、通常は下地Ta/TaN拡散バリア層が現れると研磨を止める(図1)。TaはCuとはかなり異なる研磨特性を持つ。Cuとバリア層で高選択比を得るためには、拡散バリア層に達した時点でスラリーを替え、場合によってはパッドも別のものに切り替えるのが望ましい。これは、ウェーハ面内でCu膜厚が均一でない場合には特に有効だ。厚い部分のCuを研磨している間に、Cu膜が薄い部分のバリア層が長時間露出してしまうからだ。この、拡散バリア層が最初に露出してから残ったCuが全て研磨されるまでの時間を、オーバー研磨時間という。
 バリア層が除去されると、下地の絶縁膜が露出する。しかし多くの半導体メーカーでは、そこで止めずに絶縁膜をさらに150nmほど除去する。これによって前工程のCMPで改善しきれなかった絶縁膜の平坦性を整え、また、デュアルダマシン工程で使われる絶縁膜のエッチング、レジストのアッシング、PVDクリーンの過程で発生しがちな絶縁膜の「ファセット」を取り除くこともできる。ファセットとは絶縁膜の角が削り落とされてしまう現象だが、ひどい場合にはCu配線同士が近づきすぎてしまい、クロス・キャパシタンス・カップリング(容量結合)や、最悪の場合ショートの原因となる。CMPの最終ステップでは、ウェーハのバフ研磨、クリーン、パッシベーションを行ない、コロージョンを防ぐ。
CMPプロセスの良し悪しは、最終的な表面の平坦性だけではなくCuのロス量やウェーハ面内の配線厚の均一性(これらは共に、配線抵抗に直接影響をきたす)、研磨レート(スループットに影響)、不良の数(引っかき傷など)、パーティクル、残渣、酸化膜のロス量、コロージョン、もちろんプロセス全体にかかるコストなどで判断される。こうしたことは全て非常に重要だ。例えばCu残渣は配線をショートさせ、デバイスを破壊してしまうこともある。しかし、特に潜在的に深刻な問題なのはディッシングだ。というのも、ディッシングは極度に平坦性を損ない、特にリソグラフィ行程で焦点深度の問題を引き起こしてしまうだめだ。

パターン依存とダミーパターンの活用
Cu CMP(またさらには、Cuデポジションやアニールなど)において特に厄介なのは、電子回路の設計上、非常に密集した領域と、ボンドパッドのように大きなオープンエリアを持つ領域が必然的にできてしまうことだ。実際、図2に示すように、細い孤立配線と太い孤立配線、また、細い密配線と太い密配線とが混在するケースはごく一般的にみられる。「パターン依存性とは、パターン密度が高い領域と低い領域で研磨特性に差が出てしまうこと」と、米Applied Materials社(AMAT)CMP部の戦略マーケティングマネジャーのDavid Tarumoto氏は述べる。「これが、ディッシングやエロージョンと呼ばれる現象を引き起こしている」と言う。
Advertisement
 ディッシングは、機械作用によるものでCuの大きなオープンエリアで発生する。Cuは絶縁膜と比べると比較的軟らかい材質であるため、オープンエリアではパッドのたわみと研磨材のえぐり出し効果により、他より簡単にCuが除去されてしまう。平坦性を損なうようなパターン依存性のもうひとつの問題は、エロージョンだ。局所的な領域で、絶縁膜が削られてしまうのだ。理想的な性能は、100μmの領域に対してディッシングが20nm未満、90%密領域においてエロージョンが10nm未満とされるが、これは実際に製品で得られている値からほど遠い。
 CMPにおけるパターン依存性を低減する方法の1つは、単純にダミーパターンを加えてパターンの配置を変えることだ。この方法は、技術的にスマートな解決法にみえないかもしれないが、CMPプロセスの不均一性を劇的に改善できるだけでなく、それ以上の可能性も秘めている。「CMPによるばらつきを低減するダミーパターンのアルゴリズムを、多くの企業がいまだ最適化できていない。先端の半導体メーカーでさえ、単にパターン密度に基づいただけのダミーパターンを用いる傾向にある」と米Praesagus社の社長Taber Smith氏は指摘する。同社は、特性評価用ウェーハおよび、「製造しやすい設計法(DFM:Design for Manufacturing)」に基づいた設計者支援ソフトウェアを提供している。設計者はこのソフトを使って、CMPやめっき工程におけるパターン依存性のようなプロセス特性差が、設計にどのような影響を与えるかを理解することができる。

研磨圧の実情
 ディッシングは主に機械的な力、つまりパッドのたわみと砥粒によるえぐり出し効果によって生じる。従ってディッシング低減方法として真っ先に思いつくのは、こうした機械的な力を減らすことだ。それについて二つの解決策が提案されている。一つは、CMP研磨圧の低減、もう一つはスラリーに含まれる砥粒をなくすことで、これは一般的には砥粒レス研磨(AFP:Abrasive-Free Polishing)と呼ばれている。
 この点に関しては多くの開発が行われている。しかし低研磨圧はLow-k絶縁膜が特異なため必要とされていることを、まず理解しなければならない。Low-k膜の機械的強度が従来の絶縁膜ほど高くないことや、一般的に絶縁膜の比誘電率(k値)を下げるほど機械的強度と密着性が落ちる傾向にある。Cu CMPにみられるLow-k絶縁膜に起因する問題には、膜剥がれやチッピング、小片化、クラッキングなどが含まれている。
 「どのような配線構造でも、CuをUltra Low-k層間絶縁膜に組み込んだ構造では、Ultra Low-k絶縁膜の強度は従来の絶縁膜に比べて最大90%減、Cuと比べると95〜98%減になる」。米ACM Research社の社長兼CEO David Wang氏は言う。同社はCu CMPとCu成膜装置を製品化しており、「Ultra Low-k絶縁膜が全体の構造を非常にもろくしている」と述べる。
 配線構造の階層が増えていくにしたがい、例えば米Intel社の65nm工程ではCu/Low-k配線構造は8層となり、このような問題は増大していく。シンガポールのマイクロエレクトロニクス研究所によると、ほとんどの場合、Cuの研磨の際に膜剥がれは発生しないが、ただ高研磨圧によりバリア層と絶縁膜の界面にストレスが蓄積されているという。そしてその後のバリア層研磨の際に、非常に低い研磨圧であっても簡単に膜剥がれが起き得るというのだ。1)
 もちろんこれは非常に心配な問題ではあるが、圧力に敏感なUltraLow-k絶縁膜が導入されるのはまだまだ先の話だろう。「90nmでLow-k実現に向け大騒ぎをした揚げ句、ほとんどのデバイスメーカーは65nm世代でも同じLow-k絶縁膜を使い続けるという決断を下した。45nmでは多孔質Low-k絶縁膜を使おうとするところ所も出てくるかと思っていたが、半導体業界の先導者たちは45nmでも同じく比誘電率3.0レベルのLow-k膜を使うと言っている」と米Novellus Systems社のインテグレーションおよび最先端技術開発CTO Wilbert van den Hoek氏は述べている。「これら比誘電率3.0レベルのLow-k絶縁膜は機械強度特性を上げるためのかなりの研究開発が行なわれてきたため、今はだいぶ性能は改善している。そのため、ほんの少しの性能向上のためにLow-k材を新しく切り替えることにどこも乗り気ではない」。Van den Hoek氏は、続くパッケージング工程で、CMPの時よりも大きな力が掛かることと指摘する。「機械的にもろいLow-k絶縁膜がCMPを克服しても、パッケージの段階で駄目になってしまっては意味がない」。
 では、さらに低圧研磨を目指すのだろうか?もちろんだ。しかし、これはLow-k絶縁膜のためではない。低圧研磨は、パッドの歪みを抑えるためであり、それはディッシングを抑えることにつながる。ディッシングとエロージョンを最小限に抑えることが、65nmや45nmへと向かうための推進力となるとの指摘もある。また、研磨圧の許容範囲はどのくらいなのだろうか?「最終的には、1psi(6894.76Pa(N/m2))を目指している」とCMP用スラリーとパッドを供給する米Rohm and Haas社のRich Baker氏は語る。「一方で材料は頑丈でなければならない。圧力レベルは今が妥当」と述べる。Van den Hoek氏は加えて、「研磨圧の観点からすると1.5〜2.5psiで大丈夫。現行の3.0 Low-k膜は、十分耐えられる」。現在使われているCMPプロセスでは、研磨圧は1〜5psiの範囲である。最新の装置では研磨圧を0.5psi未満に下げることも可能となっている。

新しい技術の登場
 もちろん、低研磨圧(および砥粒レスCMP)を導入した際に、妥当な除去レートを維持することは容易ではない。除去レートは、スループットとCOO(cost of ownership)に直接響く。電解機械研磨(ECMP:Electrochemical Mechanical Planarization)と呼ばれる、新しいアプローチの利点はここにある。ECMPはAMATから同社の300mm Reflexion LPプラットフォームに搭載され、すでに製品化されている(P.21写真参照)。この新技術は電荷を利用してCuの除去を行なう。Cu電解めっきの逆転の発想といったところだ。この電荷はウェーハ面内3つの異なる領域に加えられ、構造の違いからくるウェーハ中央とエッジの膜厚差など段差も抑えている。この技術の新しいところは、従来どおりのCMPパッドによるアプローチと電荷による除去を併用して、平坦化を行なうところにある。このCMPと電解研磨の組み合わせによるアプローチは、0.5psi以下とはるかに低い研磨圧を実現する。図3に、パッドがスラリーの代わりの電解溶液と組み合わせどのように用いられたかを示す。Cu錯体のパッシベーション層が、平坦でない部分のCuを保護してディッシングを最小限に抑えている。 これとは別に、もっと従来の延長線上の技術として、例えばパッドを高速回転させたり、スラリーの成分を活性になるように変えるなど、研磨圧を低下させた分を補う方法がある。ニコンは低研磨圧対応の300mm装置「NPS3301」を発表している。同装置は、ウェーハの直径より小さく高速研磨が可能なパッドを採用している。「プレストンの法則によれば、研磨圧がゼロに近づくと除去レートもゼロになるはずだが、実験データでは、0.05psiにおいてCu除去レート毎分200nm以上が得られることを示した。これは、スラリー流速の高い条件下ではスラリーとCu表面の化学反応が主体になってCuが除去されていることを意味する」とニコンは、昨年のCMP-MICで発表した。2)パッド表面を平坦に保つことは可能で、それはパッドの寿命を通して維持できる。パッドの回転速度、ウェーハ回転速度、振動位置、振動速度など可変のパラメータを変えて、除去形状や残膜形状を調節することができる。さらに、パッド中央の穴から直接ウェーハ上にスラリーを供給し、効率的な方法でスラリー流量を抑えることも可能になった。ニコンによれば、このシステムでは0.05psiの超低研磨圧も実現可能だという。
 ACM Researchが提案するのは、ストレスフリー研磨と呼ばれる技術。同技術は電解研磨を採用し、メタル部分を陽極(正電荷)にすることでメタル表面からメタルイオンを取り除く電解方式を採用した。研磨レートは電流密度に比例し、電流密度を上げるほど研磨レートも上がる。この方式では、Cuのような導電性の部分だけが除去される。電解研磨プロセスの際には絶縁膜は一切除去されないので、絶縁膜のロスやエロージョンが起こらない。しかし、Cuが等方的に除去されるため、プロセス開始時にウェーハが平坦でなければならないという制限もある。そのため、最初に従来どおりのCMPステップが必要となる。 当面Cu CMPに要求されるのは、ディッシングやエロージョンのような平坦化の問題を最小限に抑えつつ、コストの低減を図ることと、Van den Hoek氏は確信している。Novellusの最新300mm CMP装置「Xceda」は、独自デザインのパッドおよびパッド通過型のスラリー制御で構成され、均一なスラリー流量をウェーハ表面に供給できる。これによりスラリーの使用量を抑えることが可能で、均一性を改善し、ディッシングやエロージョンを低減することができる。パッドは他の装置に比べて70%も小型で、ウェーハ1枚あたりのパッドのコストを50%低減した。スラリーの使用量も40%削減している。
 荏原製作所は、生産性にも着目する。「FREX300」では、バルクCu除去、Cu残膜除去/ソフトランディング、およびバリア層除去の3段階の全てを1個のプラテン上で行なわれる。装置自体は2個のプラテン(および、より小型のバフ研磨プラテンが隣接して2個)を搭載しており、並列モードで2個のプラテンを連動させることができる。

砥粒レス研磨
 従来のCu CMPスラリーは通常、分散させた砥粒と過酸化水素、ヒドロキシルアミン、もしくはヨウ素酸カリウムなどの酸化剤および防腐剤で構成され、これに分散剤、キレート剤、促進剤、着色剤、減摩材、殺菌剤などを含む添加剤が加わる。歴史的にみると、フュームドシリカあるいはコロイダルシリカは絶縁膜用の研磨材として、またアルミナはWなどのメタルを研磨するために用いられてきた。しかしCu用としては、これら2つのタイプの砥粒やセリアが用いられている。また、もうひとつ重要な要素は、スラリーのpH値が挙げられる。メタルは通常、CuとTa間で最適な選択比が得られるようpH2〜4に調整した酸性溶液を使って研磨されている。 ディッシングを最小限に抑え、不良を低減しようと模索する中で、砥粒レス研磨が注目を集めている。砥粒レス研磨の優位性は、Cu対バリア層の高選択比、ディッシングおよびエロージョンの低減、オーバー研磨時間のプロセスウィンドウの拡大、不良の低減、CMPポストクリーンの容易化、廃液処理の簡便化、スラリー取り扱いの簡易化などである。加えて、砥粒レスのスラリーは、現行のCMP装置での使用が可能となっている。3) 通常のCMPもAFP Cuも共に、Cu表面は、BTA(ベンゾトリアゾール)のような防腐剤を使用して保護している。「通常の手順では、砥粒によって防腐剤の膜を突き破り、Cuを酸化してCu1+を表面に形成し、それを動力学の原理でCu2+錯体として溶液中に放出する」とBaker氏は説明する。「砥粒レスのプロセスでは、腐食防止剤の膜を破るために何か別のものを利用しなければならない」。その「何か」になり得るのが、高分子量のポリマーだ。最近では、有機ポリマーを使用することで不良が低減し、また、有機ポリマー粒子との相互作用が弱いため、バリア層や絶縁膜上のCu除去レートで極めて高い選択比を得ることができると発表されている。4)また、もう一つの利点は、CMPプロセスでスループットを落とすことなく低圧で研磨できるということだ。一方、砥粒レス研磨の残渣については未解決のままである。「私たちがこれまで見てきたところ、砥粒レス研磨では安定して残渣を除去することが非常に困難」とAMAT CMP部ジェネラルマネジャーLiang Chen氏と指摘する。「ディッシングやエロージョンの問題は解決するが、残渣がデバイスの歩留まりに影響を与えるかもしれない」と述べた。
* * * *
ACM Research www.acmrc.com
Applied Materials www.appliedmaterials.com
荏原製作所 www.ebaratech.com
ニコン www.nikon.co.jp
Novellus Systems www.novellus.com
Praesagus www.praesagus.com
Rohm and Haas Electronic Materials CMP Technologies www.rohmhaas.com
* * * *
参考文献
1. S.Balakumar, et al., “Copper-CMP Process Development for Cu/Low-k Materials Using New Abrasive Free Slurries,” 2004 CMP-MIC Conf.
2. S.Hoshino, Y.Uda and E.Yamamoto, “Characteristics of Copper CMP Process on Ultra-Low Pressure,” 2004 CMP-MIP Conf.
3. J.Zhao, J.Keleher, Y.Li and W.Wojtczak, “Micelles and Vesicles in Abrasive-Free Copper CMP Solutions,” 2004 CMP-MIC Conf.
4. K.Cheemalapati, et al., “Novel Pure Organic Particles for Copper CMP at Low Down Force,” 2004 CMP-MIC Conf.

HOME | SI(日本版)について | 無償配付申込・変更 | サイトマップ | お問い合わせ | 広告掲載について | 関連サイト