2005年2月号
MEMS製造に向けた
Si深堀りエッチング技術
Janet Hopkins
英Surface Technology Systems社 Newport, UK
www.stsystems.com
 深堀り反応性イオンエッチング(DRIE:Deep Reactive Ion Etching)は、従来からインクジェットヘッドの製造に用いられているビーズブラストやウェットエッチングに替わる手法だ。DRIEには、高密度に孔を加工でき歩留まりも高いという利点がある。こうした利点は、プラズマエッチングの本質的な特性に起因するところが大きい。
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 インクジェット式プリンタヘッド用のMEMSは、MEMS市場の中で最も大きく、市場規模も相当なものになっている。1) これまでのインクジェットヘッドの製造は、すでに確立されている低コストの製造方法で行われてきた。具体的には、ビーズブラストやウェットエッチングが、Si基板のインクジェットヘッドに孔を開けるために用いられてきた。しかし、プリンタ市場においても競争が激しくなるにつれて、MEMSインクジェットヘッドのメーカーは、製造コストを減らしながら製品の性能を上げるという、相反する要求に取り組む必要に迫られている。インクジェットヘッドの場合、印刷の解像度が商品性能を判断する主要な指標の一つになっている。
 インクジェットヘッドを用いて印刷する際、インクの小滴をより小さく小滴の間隔をより狭くすると、くっきりした印刷品質が得られる。この反面、1ヘッド動作当たりの印刷領域が小さくなり印刷時間は長くなってしまう。印刷品質と速度の両方を最適化するためには、プリンタヘッドの小滴をより小さくして、その数を増やさなければならない。つまり、インクジェットヘッドの単位面積あたりの孔密度を上げなければならない。これを実現させるためには、ブラスト処理やウェットエッチングから深堀反応性イオンエッチングに加工方法を変更するしかない。

インクジェットヘッドのMEMS用エッチング

 現在、サンドブラスト処理やウェットエッチングが、インクジェットヘッドに孔を開けるためによく用いられている。これらは、低価格で高スループットであるため、とても魅力的な加工方法と言える。しかしながら、これらの加工方法には限界があり、精度よく加工しながらこれ以上孔密度を上げていくことができない。ウェットエッチングは等方エッチングのため精度に欠け、一方で、サンドブラスト処理はホコリを発生させ、寸法(CD:Critical Dimension)の制御性もよくない。汚染や機械的なダメージが製品歩留まり低下の原因となる。
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 半導体製造で見られるようにプラズマドライエッチングはインクジェットヘッドに精度よく孔を開ける事ができ、サンドブラスト処理よりクリーンなプロセスである。しかし、ドライエッチングは、エッチレートが低いことが主な問題となっていた。インクジェットヘッド製造の場合、半導体製造と比べるとより深刻な問題である。インクジェットヘッド製造でドライエッチングが競合していくには、エッチングプロセスのエッチレートやスループットは従来の方法と同等でなければならない。

DRIE


 インクジェットヘッドで使われるSiのDRIEは、パッシベーション(C4F8プラズマ)とエッチング(SF6プラズマ)のステップを短く交互に繰り返す、いわゆるボッシュプロセス2)で行われている。エッチステップとパッシベーションステップのプロセスパラメータを最適化することで、エッチ形状やCD、エッチレートを制御できる。エッチレートを最大にするには、Siに到達するFラジカル量を極限まで増やさなければならない。基板へ到達するイオンの数を抑制しながら、通常は、SF6プラズマプロセスを用いて、コイルパワーやガス流量、圧力を増加させるとFラジカルの密度を増やすことができる(図1)。
 コイルパワーの増加とともにFイオン密度が上がっていく様子を図2に示す。高エッチレートという観点ではイオン密度を上げることが好ましいが、過度のイオンは側壁保護膜も除去してしまう。そのため、CD制御に影響を及ぼし不安定になる。加えて強いイオンスパッタは、FラジカルがSi表面に吸着すればエッチングが自動的に進むため、SiのDRIEプロセスには必要ではない。底面からパッシベーション層を垂直方向に除去するには、ウェーハ上で若干のイオンスパッタが必要である。しかし一定のレベルを超えてしまうと、側壁の破損やマスクのエッチレート増大など引き起こしてしまう。
 特にインクジェットヘッドのエッチングでプラズマプロセスを十分に活用するには、ウェーハ表面に到達するFラジカルなどの活性種やイオンが、プラズマエッチング装置を介して制御しなければならない。例えば、高密度プラズマを形成できるDPS(Decoupled Plasma Source)は、基板から離れたところで高濃度のFラジカルを生成することができる。Fラジカルはイオンに比べると寿命が長いため、ウェーハ上に到達するイオンの数を少なくできる。プロセスレシピでイオンフィルタという追加パラメータを使用すれば、ウェーハに到達するイオンの数をさらに制御できる。また、パラメータランピングという方法でプロセスパラメータを経時的に変化させる技術を用いれば、形状やエッチレートをさらに調整することができる。3)
 ガス流量やバイアスパワーを含むいくつかのパラメータをエッチングプロセス中に変化させた例を図3に示した。エッチレートが変化するとオーバーエッチング時間も変わってくる。つまりプロセス開始時の勾配はプロセス終点近くに比べて小さい。これは、プロセスパラメータを積極的に変化させると、エッチレートが上げられることを示している。
 プラズマ中で起こっていることを詳しく理解すれば、形状制御や選択比など他の特性を損なわずに高いエッチレートを得ることができる。エッチングステップとパッシベーションステップで、それぞれ圧力設定ができることも有利である。これによりプロセスの柔軟性が増し、エッチレート改善にも役立つ。
 図4に、幅80μmのトレンチを深さ200μm以上エッチングした形状を示した。このときのエッチレートは、22μm/分以上、ウェーハ面内の均一性は±2.3%以下であった。エッチング後のインクジェットヘッドの溝の荒れや形状は、溝を伝わるインクの流れに影響を与える。このアプリケーションでエッチングプロセスを最適化する時には、このことも念頭に置かねばならない。しかし、図4に示したエッチング形状では、高品質インクジェット構造で将来必要とされるような高い要求もすでに満たしている。これは、DRIEプラズマエッチングプロセスを制御することにより、高密度で精密に溝を形成できるようになった証明である。
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Janet Hopkinsは英ダーハム大学で材料物理化学を学び学士号を取得、続いてプラズマ化学の博士号を取得した。博士課程終了後、SiエッチンググループのプロセスエンジニアとしてSurface Technology Systems に就職した。その後、シニアプロセスエンジニア、ASE開発チームのリーダーとなる。これまでにダーハム大学やSTSでいくつかの論文を書いている。
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参考文献
1. 2002-2005 Market Analysis, World MEMS Materials & Equipments Market, Yole Développement, Lyon, France.
2. F.Laermer, A.Schlip, patent No. DE4241045(US-5501893), 1994.
3. Bhardwaj, et al., patent No. US-6051503, 2000.

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