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2005年3月号
多変量解析を用いたリアルタイムFDC
John A. Smith, K.C. Lin, Matt Richter, Uzi LevAmi
米MKS Instruments社
www.mksinst.com
 e-diagnosticやAPC/AECを行う上なぜ高速通信やマルチユーザー接続対応、データの共有が必要不可欠となっているかを議論する。
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 AEC/APC(Advanced Equipment and Process Control)が半導体工場で広く使われているが大きな問題に直面している。プロセス情報やウェーハ情報に関するセンサーデータや装置データが、同期をとらないまま大量に収集されている。そのため、APCプロトコルのデータ通信には向いていない。半導体工場では、これらのデータのバンド幅やポーリング速度が非常に大きく変わるため、データストリームの同期化が極端に難しくなる。APCが効率良く使われるためには、装置データや計測データはロットあるいは各ウェーハで同期をとらなければならない。

図1 Blue Box のデータインターフェイスと多重装置。関連する通信プロトコルと機能を示している。

 最近では装置の統合化1)- 4)が進み、工場内の異なるデータストリームでも同期がとれるようになったが、データソースを一つにまとめただけでは不十分で、APCを効率よく導入することはできない。特に最先端プロセスでは複雑になっているため、現在の単変量の統計プロセス管理(USPC Univariate Statistical Process Control)のようにパラメータ(変量)間で重要な相関関係を結びつけようとしても、APCに必要な制御パラメータを多く見落としてしまう。5)6)そのためリアルタイム異常検知/分類(FDC: fault detection and classification)と組み合わせたオフラインの多変量解析(MVA: multivariate analysis)のような強力なプロトコルをUSPCと合わせる必要がある。
 SPCのリミットやアラームを変えなくても、比較的に少ないセンサーデータや装置のサンプリングデータからMVAやFDCを行えば有益な情報が得られる。ネットワークに接続されインターネットも利用できるような環境であれば、MVAのアルゴリズムが同期のとれた装置データやプロセスデータ、ウェーハ状態センサーデータを入手することができる。このようなシステムを構築すれば、APCの成功に必要不可欠となっている高速でリアルタイムにデータ送信をすることができる。

システム構成

 複数の装置を統合しているTOOLWebは、オフラインのMVAやオンライン接続しているFDC装置に同期したデータを送信する。このシステムの主な構成要素はデータゲートウェイとモニター(SenseLink)、データ収集と装置インターフェイス(Blue Box モジュール)、データベースとAPCホスト(TOOLwebサーバー)からなっている。

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 TOOLweb に接続したセンサーからデータを取得するだけではなくシステムが異なるメーカーの多くのセンサーのデータや製造元の異なる多種センサーからもデータにアクセスできる。TOOLwebに対応していないセンサーデータはSenseLink モジュールを経由し、アナログやデジタル、DeviceNetなどの標準インターフェイスを使うか、あるいは標準プロトコルに準拠していない場合には特殊なプロトコルに変換してからシステムに取り込まれる。このようなシステムでは、e-diagnosticやAPC/AECで必要不可欠とされている高速通信やマルチユーザー接続対応、データの共有を行うこともできる。
 Blue Boxデータインターフェイスと多重装置(図1)では、センサーデータや装置レシピ情報をデータストリームや装置および計測器の通信仕様(SECS : Semiconductor Equipment Communications Standards) に合わせることが可能になる。そして、組み合わせたデータストリームを工場のホストコンピュータやAPC、FDC装置に転送する。任意に選んだ外部センサーやSenseLinkモジュールは、Ethernet やXML形式のプロトコルでBlue Box を経由して装置に接続される。装置やセンサーデータを選ぶことができ、複数のデータ収集プランを同時に実行することが可能である。関係あるデータはホストコンピュータに出力データと合わせて送信される。

MVAモデルの生成

 MVAは長期間のデータから、スコア(主成分得点)と残差を算出する。オフラインのMVAではリアルタイムで異常検知を行う計算エンジンで使うモデルを生成する。この手法は共線性のデータや欠落したデータに対して効果を発揮する。他のシステムでは通常、共線性データや欠落データの取り扱いを行うことも、プロセスの揺らぎやデータに潜在する傾向をつかむこともできない。

図2 t1/t2スコア分布統計解析ではデータクラスタや異常値が存在していることが分かる(a); ホテリングT2統計解析では、しきい値を超えている異常なウェーハがあることが分かる(b);DModXでは異常なプロセスがあることが分かる(c)

 MVAは柔軟性のあるモデル構造でインターフェイスも単純であるため、きわめて短時間でモデルを生成することができる。「正常に処理されたウェーハ」のデータからMVAアルゴリズムは、主成分分析(PCA : principal component analysis)または部分最小二乗法(PLS : partial least square)によってモデルを生成する。PCAのモデルは独立変量のスコア分散を基に生成しており、データをまとめて次元を縮退している。7)8)PLSはPCAを拡張したもので、薄膜の特性や歩留まりといった目的変数を取り入れてモデルを生成する。9)10)PLSは自動的にモデルを生成し、「ローカルセンタリング」を使えば信頼性のあるR2R(Run to Run)の設定値を決められる。

異常検知および分類(FDC)の方法

 FDCサーバーはこれらのモデルを取り込み、オンライン異常検知に使う計算エンジンが現在のモデルを基に統計値をリアルタイムで算出する。データの概要は図2aに示したようなt1/t2分布プロットで得られる。このプロットでは、ウェーハやプロセス特性の「異常」を示すような異常値やデータクラスタを見ることができる。このプロットは完全に統計値にそのものであるため、発見されたクラスタや異常値に対する解釈を与えるものではないが、さらに詳しく調査を行う必要のある部分を特定できる。
 統計解析の一つのホテリングT2(図2b)は、生成したモデルやアラーム設定値に対して処理したウェーハが相対的にどうなっているかを見るものである。アラーム設定値の外にあるウェーハは異常を意味しており、そのウェーハのパラメータの中に「正常に処理されたウェーハ」で生成したモデルに適合しなかったパラメータがあることを意味している。

図3 事例1の異常値に対する寄与率プロット。これによりプロセスがばらつく原因となった変量を見つけることができた。

 モデル平面への距離を示すDModX(図2c)では、どのウェーハがモデル平面からかけ離れ、しきい値を越えているかを見つけることができる。この指標を使えばこれまで見つけることができなかったプロセスの異常が一目で分かるようになる。寄与率プロットは、異常の根本原因となっているプロセスパラメータや変量名をつきとめることができる。異常の根本原因が特定できれば、さらに詳しい解析と異常の分類を行うことが可能になる。
 TOOLwebサーバーは複数のBlue Box から同時にデータを採取し、リアルタイムMVAで異常検知を行なう。また、工場全体の状態の監視や長期間にわたるデータ収集(標準で92日)、遠隔からの例外処理通知にも使える。異常検知の他にフィンガープリントやチャンバマッチング、プロセスの最適化といったアプリケーションもある。

異常検知および分類(FDC)の事例

事例1 大容量データ中に隠された問題

 ある事例のt1/t2スコア分布プロットおよびホテリングT2プロット、DModXプロットを図2に示す。ここではエッチング深さが揃っていないという問題とウェーハの品質が低いという問題があるエッチングプロセスを例に挙げる(この二つは本質的に異なる問題である)。まず、オフラインのMVAでプロセスや装置の大量なデータを解析し、プロセスのばらついた根本原因を抽出した。データを解析から得られたt1/t2スコア分布プロット(図2a)を見ると、異常値あるいは通常の装置の制御範囲から大きく外れて処理されたウェーハの存在だけでなく、2種類のプロセス状態あるいは「データのクラスタ」があることが分かる。この不均一性の問題となっているデータを詳しく分析してみたところ、プロセスチャンバの温度に起因していることが分かり 、直ちに問題が解決された。ホテリングT2とDModXからは品質に問題のあるウェーハの特定を行なうことができる(図2bおよび図2c)。ある変数(プロセスパラメータ)の設定値を変更してウェーハ品質の問題を解決できた。異常値の寄与率プロット(図3)を見ると、プロセスのばらつきの原因となっていた変量はAr流量であったことが判明した。

事例2 外部センサーの重要性

 ロットの最初の2〜3枚のウェーハが、ある製造ラインで成膜の状態がよくないため不合格になっていたことが判明した。この成膜工程の前ステップは洗浄工程であった。プロセスチャンバに外付けでRGAセンサーを取り付けた。RGAセンサーはTOOLWebを経由してAPCのコントロールネットワークに接続した。Blue Box はRGA信号を外部変量ID(EVID: external-variable ID)として収集し、このデータをプロセス装置の単変量(SVID: single-variable ID)と同期させた。

図4 RGAで得られた各ウェーハのプロセスチャンバ中のAr濃度のデータ(a)と各ウェーハのプロセスチャンバ中の水分濃度のデータ(b)

 RGAで得られた各ウェーハとプロセスチャンバ中のAr濃度のデータを図4aに示す。成膜装置の気相中のAr濃度が、定期的にばらついていることがはっきりと分かる。レシピを含めプロセス装置のデータとの相関を調べたところ、Ar濃度のばらつきとロットの最初の2〜3枚のウェーハとの間に強い関連性あることが分かった。さらにEVIDで解析を進めたところ、図4bに示したようなデータが得られた。ここでも、プロセスチャンバ内の水分濃度がばらついていることがRGAのデータからはっきりと分かる。さらに、図4aに示したAr濃度の揺らぎと図4bに示したプロセスチャンバ内の水分濃度の揺らぎが直接関係していることも判明した。Arはプロセスチャンバで使用しているガスの中で比較的に濃度が高かったため、Arがウェーハ裏面に回りこんでいたことが分かった。ロットの最初の数枚のウェーハに関して、このような現象があるということは、明らかにウェーハと静電チェック間の密着が十分でなかったことを意味している。ウェーハからの脱ガスでプロセスチャンバ中に空気や水分を混入し成膜の品質を下げていた根本原因となっていた。
 その後、RGAによる解析で、ウェーハの水分が抜けるようになり脱ガスが止まったことが分かった。このデータにより、問題は早期に解決されて製造ラインはすぐにスペック内に戻った。

図5 事例3の統計プロット。t1/t2スコア分布で得られたクラスタ

事例3 チャンバマッチングの早期発見

 ある工場で、同じ構成になっているはずの2つのプロセスチャンバから明らかに異なった品質のウェーハが生産された。この違いはプロセスのスペックから外れていないが、品質を管理する上でこのような違いが見られるのは好ましいことではない。
 2つのチャンバDとチャンバEから取得されたデータのt1/t2スコア分布プロットを図5aに示す。2つのチャンバDとEの違いがデータクラスタとしてはっきりと現れている。2つのクラスタとして現れたチャンバDとEで、制御系のパラメータ(変量)がプロセス中にどの程度安定していたかを図5bに示す。さらに解析を行って(図5c)、2つのチャンバ間の違いの原因となっているVIDを即座に特定することができた。一旦、そのVIDが判明すれば、APCフィードフォワード/フィードバックでこれらのチャンバの特性を合わせることが可能になる。

結論

 現在の製造現場でAPC/AECを適用するために、センサー単体やセンサーの接続性、データ通信を改善し、e-diagnosticやAPC、AECで必要不可欠となっている高速通信やマルチユーザー接続対応、データの共有を可能にした。オープンアーキテクチャで自由度の高い設計を採用しているため、内部のネットワーク基盤を何も変更する必要はなかった。システムがウェーハデータに高速でアクセスし、大量のデータを簡単なMVAプロットに変換することで、装置のフィンガープリントや最適化、チャンバマッチングも行うことができる。オンラインの多変量FDCとオフラインMVAを使えば、USPCが発生する誤報アラームを除去することができる。

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John A. Smithは、現在米MKS Instrument 社技術部バイスプレジデント兼 計測・制御システムプロダクトグループのマネジャー。以前はマテリアルデリバリープロダクトおよびAPCのバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャを務め、英国法人のマネージングディレクタも兼務していた。英マンチェスター大学で電気工学を専攻し博士号を取得。
K.C. Linは、同社T3グローバルMVAマネジャー。TOOLwebのオンライン/ オフラインアプリケーションのMVAトレーニング担当。米ジョーンズ・ホプキンス大学で物理化学を専攻し博士号を取得。
Matt Richterは、同社北米TOOLweb技術チームマネジャー。半導体工場のプロセス管理を改善するため、センサーの統合やデータ収集、リアルタイム異常検知、多変量解析に特化したアプリケーションのサポートチーム責任者。米スタンフォード大学で博士号取得。
Uzi LevAmiは、同社TOOLwebプロダクトマネジャー。APC製品の技術およびマーケティング部門責任者。インターネットを使った制御技術を開発していた米Equipnet社の創立者。2002年MKSが買収した。イスラエルのワイツマン大学でコンピュータサイエンスを専攻し修士号を取得。
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参考文献
1. J.A. Smith, et al., “From Sensor Data to Process Control: A Networked Framework,” Semiconductor Manufacturing, July 2004, p. 113.
2. T. Robinson, K.C. Lin and J. Blessing, “Photoresist Detection in 300 mm PVD Degas Chambers,” European Semiconductor, September 2003, p. 22.
3. D. Coumou, “Advanced RF Metrology for Plasma Process Control,” Semiconductor International, October 2003, p. 61.
4. M. Spartz, “Exhaust Gas Analysis Helps to Reduce Cost,” Semiconductor International, December 2003, p. 52.
5. G.D. Halvorson and Y.M. Chou, “SPC: When Every Equipment Use Changes the Expected Result,” Future Fab Intl., 1998, 1, p. 161.
6. E. Martin and J. Morris, “Looking for a Needlein a Haystack: Fault-Finding in Process Engineering,” Ingenia, Quarterly Magazine of The Royal Academy of Engineering, May 2001, p. 33.
7. S. Wold, Chemometrics and Intelligent Laboratory Systems, 1987, 2, p. 37.
8. T. Joliffe,“Principal Component Analysis,” Principle Components Analysis, Springer, Berlin (1986).
9. A. von Keudell, A. Annen and V. Dose, “Multivariate Analysis of Noise-Corrupted PECVD Data,” Thin Solid Films, 1997, Vol. 307, p. 65.
10. S. Wold, M. Sj嘖tr嗄 and L. Eriksson, “PLS Regression: A Basic Tool of Chemotronics,” Chemometrics and Intelligent Laboratory Systems, 2001, Vol. 58, p. 109.

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