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2005年3月号

富士フイルム エレクトロニクスマテリアルズ
代表取締役社長
滝本 雅章氏

[プロフィール]たきもと まさあき 氏
1941年、東京都生まれ。1964年に東京大学工学部電子工学科を卒業し、同年富士写真フイルム株式会社に入社した。1997年6月より現職。
ArFレジスト市場では断然トップ
 富士フイルムが、電子材料への注力を深めている。2004年12月、富士フイルム エレクトロニクスマテリアルズ(FFEM)が誕生した。親会社となる富士フイルムは、米Arch Chemicals社との合弁会社富士フイルムアーチを100%子会社化するとともに、Archの電子材料部門を買収した。
 FFEMは、フォトレジストを主力にポリマー除去液やCMP(Chemical Mechanical Planarization)スラリーなど電子材料のラインナップを拡充している。FFEM社長、滝本雅章氏に同社戦略を聞いた。
Semiconductor International 日本版(以下SIJ):富士フイルムは、米Arch Chemicals社の電子材料部門を買収し、また、富士フイルムアーチを100%子会社化、そして富士フイルム エレクトロニクスマテリアルズ(FFEM)に生まれ変わった。
滝本雅章:これにはいくつかの大きな流れが影響している。富士フイルムアーチは1983年に設立され、合弁企業として20年以上活動してきた。フォトレジストを中心とした半導体材料のR&Dは世界各国で行われているが、量産となると異なり、アジアメーカーが多い。富士フイルムアーチは日本およびアジア地域を担当し、Archが欧米市場を担当していた。そしてアジア市場が拡大していく。今後も半導体材料全般でアジア市場にかかる期待が大きい。そんな中、事業基盤を整備した方が両社のためにいいと考えた。半導体材料の開発は技術の上流から、半導体メーカーとともに進めないと半導体メーカーに迷惑をかけてしまうことになる。一方で、富士フイルム本体にも大きな方向転換があった。同社は昨年中期経営計画VISION75を策定し、その中で同社は蓄積した化学技術をもって電子材料事業に注力していく意向を示した。同グループの中で、半導体材料事業の推進が可能なのが当社だった。

SIJ:Archの電子材料事業は必ずしもうまくいっていなかった。
滝本: Archは2000年に事業の見直しを行い新しい投資を控えていた。投資が重複し効率が悪い部分もあった。フォトレジストは両社が行っていたが、日本の方が開発力が高かった。一方でArchは、ポリマー除去剤のような処理剤、CVD用ガス、CMPスラリーなどの製品で展開していた。
SIJ:米国側と日本側は協調していなかった?
滝本:1990年代全般に共同開発で効率の悪かった時期がある。i線リソグラフィ世代の後半、KrFリソグラフィの導入開始時期だ。このころ当社は市場で出遅れている。その後富士フイルムアーチは90年代の後半、開発を重視することになる。
SIJ:タイミングは良かった?
滝本:市況は低迷したが、それに伴いKrFリソグラフィが延命された。KrFの延命により当社にもビジネスチャンスが生まれた。当社のKrFレジストでは、0.2μmプロセス以下で認められ、ハイエンド市場でキャッチアップできた。

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SIJ:ArFレジストでは先行している。
滝本:われわれの調査では確実にArF市場シェア30%以上は獲得している。ArFでは断然トップだ。ArFレジストで重要なのは、欠陥とコンシスタンシー、安定性だ。欠陥原因を究明していくと原材料のポリマーの性能をいかに安定させるかにたどり着く。ポリマーをいかに安定して提供し、欠陥の出にくいものをつくるかが重要だ。特にArFレジスト市場は、ここ3年は年率30%以上で拡大している。30%以上の成長に応えながら性能を維持したレジストを製造することは大変難しいことだ。
SIJ:ハイエンドのレジスト製造では静岡に新棟を完成させた。
滝本:既に工場を建て、本格量産が始まるのを待っている。一方でArFなどのハイエンドのレジスト製造は、現状静岡工場1カ所だが、米半導体メーカーから米国製造拠点での製造の要望もある。買収したArchの工場が米ロードアイランド州にあり、先端の製造設備を導入すればArFレジストの製造もできる。これを生かさない手はない。今後は米国拠点にも評価機器を揃え、日米2極の生産体制を構築したいと考えている。
SIJ:レジスト市場は世代ごとの競争が激しく、また開発負担が大きい。ビジネスモデルの構築は難しい。
滝本:難しい。強いて言えば材料の標準化により、各半導体メーカーで同じものを使ってくれれば非常にありがたい。ArF市場では先行しているが、各社に提供しているのは全部カスタム製品だ。サポートが重要になるため手間がかかる。すると次世代の開発で出遅れてしまう。ある程度の標準化が可能ならば半導体メーカーの希望に合ったものを安定して提供できる。製品自体が非常に微妙なバランスを保っているため、少しでもバランスが崩れてはいけない。個々メーカーに合わせたカスタム製品ばかりに対応していくのは難しい。このままでは、レジストメーカーは消耗戦になってしまう。
SIJ:しかし、個々のプロセスに最適化されたレジストは半導体メーカーのプロセスの差別化にもつながるのではないか?
滝本:半導体メーカーから非常に強いカスタム製品への要求があるのは確かだ。しかし、業界全体の進歩から見ればカスタム化だけがいいのかは微妙なところだ。そこにジレンマがある。
液浸リソグラフィでトップコートは必要ない
SIJ:今後はコンソーシアムなどでの共同開発が重要になる?
滝本:半導体メーカーも気付いており、足並みは揃ってきている。しかし、コンソーシアムのプロセスをそのまま使うわけではない。また、ある一つの技術ノードでもホールやラインなど対象とするプロセスによって異なったレジストが必要だ。レジストには癖がある。個々の見極めが大切だ。
SIJ:
今後電子材料の開発体制は変わるのか。
滝本:富士フイルムの半導体材料研究所であらゆる材料を研究する。まだ始まったばかりだが、写真の現像技術にも応用できる技術がある。例えばインスタント写真の現像機器にはあらゆるマジックが入っている。それらの技術を富士フイルムはたくさん保有している。これは例えば洗浄技術やCMPスラリー技術に適用できる。
SIJ:新生FFEM躍進の時は近い?
滝本:今年一年で仕掛けをつくり、来年から具体化する。2007年になれば本当の変化が目に見えてくる。今年一年は準備時期として見てもらいたい。

SIJ:次世代リソグラフィ技術(NGL)が混迷しています。
滝本:NGLは錯綜している。ArFドライの次はArF液浸で確定だ。当社はトップコートのいらないプロセスを構築できるレジストを提案する。その先のF2にチャンスはない。EUVリソグラフィ用レジストは技術的にはKrFとEB用の延長線上にある。
SIJ:ArF液浸でレジストにトップコートはいらない?
滝本:トップコートなしでできる。液浸用の液体の開発も進めている。レジストから液体に、また、液体からレジストに異物が混入しないようにしなければならない。両方合わせて検証しなければならない。
SIJ:今、注目しているのは?
滝本:今まではレジストが主力だ。しかし、先端レジストは重要だが事業としては大きくない。看板として必要なのは明らかだが、実はまだKrFの時代だ。メインボリュームを増やすために何をしなければないけないか、それが事業として重要だ。レジスト市場の上限は見えてきているため、レジストだけに開発投資を継続できるかは難しい判断だ。ほかのことでキャッシュフローを生み出さなければならないと考えている。技術としては看板であるArFを推進するが、しかし、ビジネス面ではCMPスラリーでありポリマー除去剤への期待が大きい。1998年以降に富士フイルムアーチの技術開発体制を整えた、そのころから進めてきたことが、ここにきてやっと実を結び始めた。(聞き手:高橋 潤)


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