Semiconductor International 日本版(以下SIJ):富士フイルムは、米Arch Chemicals社の電子材料部門を買収し、また、富士フイルムアーチを100%子会社化、そして富士フイルム エレクトロニクスマテリアルズ(FFEM)に生まれ変わった。
滝本雅章:これにはいくつかの大きな流れが影響している。富士フイルムアーチは1983年に設立され、合弁企業として20年以上活動してきた。フォトレジストを中心とした半導体材料のR&Dは世界各国で行われているが、量産となると異なり、アジアメーカーが多い。富士フイルムアーチは日本およびアジア地域を担当し、Archが欧米市場を担当していた。そしてアジア市場が拡大していく。今後も半導体材料全般でアジア市場にかかる期待が大きい。そんな中、事業基盤を整備した方が両社のためにいいと考えた。半導体材料の開発は技術の上流から、半導体メーカーとともに進めないと半導体メーカーに迷惑をかけてしまうことになる。一方で、富士フイルム本体にも大きな方向転換があった。同社は昨年中期経営計画VISION75を策定し、その中で同社は蓄積した化学技術をもって電子材料事業に注力していく意向を示した。同グループの中で、半導体材料事業の推進が可能なのが当社だった。
SIJ:Archの電子材料事業は必ずしもうまくいっていなかった。
滝本: Archは2000年に事業の見直しを行い新しい投資を控えていた。投資が重複し効率が悪い部分もあった。フォトレジストは両社が行っていたが、日本の方が開発力が高かった。一方でArchは、ポリマー除去剤のような処理剤、CVD用ガス、CMPスラリーなどの製品で展開していた。
SIJ:米国側と日本側は協調していなかった?
滝本:1990年代全般に共同開発で効率の悪かった時期がある。i線リソグラフィ世代の後半、KrFリソグラフィの導入開始時期だ。このころ当社は市場で出遅れている。その後富士フイルムアーチは90年代の後半、開発を重視することになる。
SIJ:タイミングは良かった?
滝本:市況は低迷したが、それに伴いKrFリソグラフィが延命された。KrFの延命により当社にもビジネスチャンスが生まれた。当社のKrFレジストでは、0.2μmプロセス以下で認められ、ハイエンド市場でキャッチアップできた。
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SIJ:ArFレジストでは先行している。
滝本:われわれの調査では確実にArF市場シェア30%以上は獲得している。ArFでは断然トップだ。ArFレジストで重要なのは、欠陥とコンシスタンシー、安定性だ。欠陥原因を究明していくと原材料のポリマーの性能をいかに安定させるかにたどり着く。ポリマーをいかに安定して提供し、欠陥の出にくいものをつくるかが重要だ。特にArFレジスト市場は、ここ3年は年率30%以上で拡大している。30%以上の成長に応えながら性能を維持したレジストを製造することは大変難しいことだ。
SIJ:ハイエンドのレジスト製造では静岡に新棟を完成させた。
滝本:既に工場を建て、本格量産が始まるのを待っている。一方でArFなどのハイエンドのレジスト製造は、現状静岡工場1カ所だが、米半導体メーカーから米国製造拠点での製造の要望もある。買収したArchの工場が米ロードアイランド州にあり、先端の製造設備を導入すればArFレジストの製造もできる。これを生かさない手はない。今後は米国拠点にも評価機器を揃え、日米2極の生産体制を構築したいと考えている。
SIJ:レジスト市場は世代ごとの競争が激しく、また開発負担が大きい。ビジネスモデルの構築は難しい。
滝本:難しい。強いて言えば材料の標準化により、各半導体メーカーで同じものを使ってくれれば非常にありがたい。ArF市場では先行しているが、各社に提供しているのは全部カスタム製品だ。サポートが重要になるため手間がかかる。すると次世代の開発で出遅れてしまう。ある程度の標準化が可能ならば半導体メーカーの希望に合ったものを安定して提供できる。製品自体が非常に微妙なバランスを保っているため、少しでもバランスが崩れてはいけない。個々メーカーに合わせたカスタム製品ばかりに対応していくのは難しい。このままでは、レジストメーカーは消耗戦になってしまう。
SIJ:しかし、個々のプロセスに最適化されたレジストは半導体メーカーのプロセスの差別化にもつながるのではないか?
滝本:半導体メーカーから非常に強いカスタム製品への要求があるのは確かだ。しかし、業界全体の進歩から見ればカスタム化だけがいいのかは微妙なところだ。そこにジレンマがある。
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