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2005年4月号
液浸露光中のレジストの膨張を発見
関口 淳
リソテックジャパン株式会社
www.ltj.co.jp
 65nmノードのリソグラフィ技術としてはF2リソグラフィ、ArF(193nm)液浸の適用が考えられている。その中で、現在実用化されているArFリソグラフィの延長であるArF液浸技術が注目を浴びている。液浸リソグラフィ技術は従来のドライ露光と異なり、液中でレジストの露光が行われる。このため、露光中のレジストからのアウトガスや露光により発生した酸の溶け出しが問題となる1)術は従来のドライ露光と異なり、液中でレジストの露光が行われる。また、レジストが水を吸い込んで感度の変化などが起きる。特にレジストからのアウトガスはレンズ表面の汚染に繋がる。我々は液浸露光評価用の装置を開発し、液浸露光中のレジストからの溶出成分の分析を行うとともに、QCM法によりIn-situにて液浸露光中のレジストの質量変化を測定し、液浸露光中のレジストの挙動について検討したので報告する。
* * * *
はじめに
 光露光技術は、半導体の創生期から現在に至るまで、半導体製造工程のなかでも最も重要な技術であり、その位置付けは現在も変わらない。1970年代後半には光による加工限界が1μmと言われていたが、今やArF露光技術により100nm以下のパターニングが光により可能となっている。さらにArFの延命技術として液浸露光法の検討が盛んに行われるようになった1-3)。ArF液浸露光技術では65nm以下のパターニングが可能と言われている。しかし、液浸露光技術では従来のドライ露光技術と異なりレンズとレジストの間に液浸液が存在する4)。このため、液浸露光ゆえの課題も見えてきた。2004年8月の液浸露光シンポジウムにおいて液浸露光の課題が示された5-6)
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(1)液浸液の精密な物性
(2)光学系の開口数(NA)とフィールドサイズ、レンズ-ウェーハ間の距離
(3)液体中の泡のコントロールと発生のメカニズム
(4)液体とレジストの汚染
(5)レジストからのアウトガス
(6)液体中の泡の影響
(7)熱と液体導入の影響
(8)偏光の効果

などである。現在、各研究機関において課題への取り組みが進められている。我々はこれら課題のうち液浸レジストの感度、レジストからの溶出物(Resist Materials Leaching)、そして露光中のレジストへの液浸液の浸透性を評価できる液浸露光対応反応解析システムを開発した。本システムを用いた液浸リソグラフィ用レジスト材料の評価技術および評価結果について報告する。

液浸露光の歴史

 液浸の歴史は古く、1870年代後半にErnst Abbeがその原理を見出した。Abbeは、物体の軸点からレンズに入射する光線の最大傾斜は、イメージング媒質の屈折率に等しい要因だけ増加する可能性があることを初めて発見した7)。当時、顕微鏡の対物レンズに使用されていたカナダバルサム封入コンパウンド中のおける光線の傾きの増加を観察することによって、このことに初めて気がついた。この効果を採用して、Abbeは顕微鏡対物レンズとカバーグラスの間の空気層をいずれか片側のガラスの屈折率に近い物質の屈折率を持ったオイルで満たした。この屈折率の一致は、境界面での反射の影響を防止する効果があった。油浸レンズの最も重要な用途は、医学研究の分野での高倍率観察である。1980年代になると独Carl Zeiss社によって油浸対物レンズが実用化された8)。ガラスと同じ屈折率を持つオイルを用いた油浸顕微鏡の登場である。このシステムの登場によりわずか0.2μmを観察できる開口数1.4の顕微鏡が実現した。日本での液浸露光の歴史を調べると89年に大阪大学の川田らと米MITのH.I.Smithらの研究グループが、油浸顕微鏡を用いた油浸露光で453nmの波長(Xeランプ光源)を用いて160nmのパターンを解像した報告がある9)。この時のNAは1.4、縮小率は43倍であった。これがおそらく日本での初めての試みであろう。その後、レーザー光をハーフミラーで2光束に分け、2枚の反射ミラーを用いて2つの光束を干渉させる、いわゆる2光束干渉露光法を用いて180nmのパターニングに成功している10)

図1 液浸露光システムの写真
図2 露光システムの構成
図3 液浸露光ステージ

 最近では2002年に台湾TSMC社のLin氏により液浸露光の有用性が提唱され1)、ここ数年で液浸露光の研究には急速に進展した。

液浸露光対応反応解析システム


 液浸露光対応反応解析システムは液浸露光を行う液浸露光装置、現像速度の評価を行う現像アナライザー11)、露光中のレジストから液浸液に溶け出す物質を分析するためのGC-MS、露光中のレジスト膜の質量変化を調べるQCM質量分析装置12-13)から構成される。液浸露光装置の外観および、模式図を図1図2に示す。本システムはArFエキシマレーザーを搭載し、レーザーからの193nmの光をビームエキスパンダで広げ、ホモジナイザー光学系を通して均一化して基板を露光する。
 光路の途中にはビームスプリッタを配置し、露光光の一部をエネルギーメーターに導き、露光エネルギーをin-situにてモニターできる。露光ステージにはローカルフィル方式で局所液浸環境を作る機能が搭載されている(図3)。脱気された純水をマイクロシリンジを用いて基板上に供給し、ステージが動いてレンズの下に移動、レンズが降下して局所液浸環境を作り出す。レンズと基板の距離は0.1mmの精度で制御可能である。液浸露光を行い、液浸液は再びマイクロシリンジで回収される。

液浸リソグラフィ用レジスト材料の評価

1 液浸対応レジストの現像特性の評価

 液浸露光は10mm角のオープンフレームである。露光エネルギーを変えてステップ露光を行い、現像アナライザー7)を用いて各露光エネルギーにおける現像速度を測定する事で、液浸露光のレジストの感度やコントラストの評価が可能となる。また,得られた現像速度をリソグラフィシミュレータ14)にインポートする事で液浸リソグラフィのシミュレーションも可能である。

2 レジストからのアウトガスの評価

 回収された液浸液をGC-MSで分析することで液浸露光中のレジストからの液浸液への成分の溶出やレジストからのアウトガスが評価できる。回収した液浸液を有機成分の抽出装置に入れ、350℃の加熱を行い、蒸発した有機成分をトラップ管(TENAX-TA)に捕集する。さらに捕集されたトラップ管をパージアンドトラップ15)装置を用いてGC-MSで分析することで、液浸液の成分分析が可能である(図4)。

4.3 液浸露光中のレジスト膜の質量分析

 液浸露光中のレジストの質量分析はQuart Crystal Microbalance(QCM)法16)により行う。QCM質量分析ユニットはQCM測定センサー、データ収集用PC、周波数カウンター、電圧計から構成されている。データ収集用のPCと周波数カウンター、インピーダンス測定用の電圧計はGPIBインターフェイスで接続される。
図4 パージアンドトラップ装置とGC-MS
 
(1)

QCM測定センサーにレジストを塗布したQCM基板をセットし、液浸液を供給する。その後、レンズの下に移動し、シャッターを開いて露光を行うと同時に、照射エネルギーと共振周波数の関係を測定する。
本ユニットではより微細な質量変化に対応できるようにQCM基板として共振周波数9MHz用のものを用いた。
 水晶振動子の電極面に物質が付着するとその質量に応じて共振周波数が変化する。従ってレジストを塗布した基板に液浸環境で露光光を当てた際に、光化学反応によりレジストからアウトガスが生じて膜質量が減少すると共振周波数は増加する。逆に液浸液を含んで膨潤が起これば共振周波数は減少する。共振周波数変化と質量変化の関係はSauerbeyの式で示される17)
 ここでΔFは周波数の変化量、F0はセンサーの周波数、Aは電極面積、μは水晶のせん断応力(2.947x1010kg ms)、ρは水晶の比重、Δmは質量変化量である。

5. 実験

 図5に示すアクリル樹脂をプラットホームとし、保護基にアダマンチル基を用いたレジスト(以降MAdMAレジストと記載)とシクロオレフィン無水マレイン酸をプラットホームとしたレジスト(以降COMAレジストと記載)を用いてDry露光と液浸露光でのレジスト特性を比較した。また液浸露光ではカバー膜の効果についても併せて検討した。

 5.1 液浸対応レジストの感度の比較

 図6にMAdMAレジストとCOMAレジストのDry露光、液浸露光(With cover film, Without cover film)の現像速度曲線の比較を示す。MAdMAレジストではDry露光と液浸露光での感度の差は認められなかった。一方COMAレジストではDry露光と比べてカバー膜なしの液浸露光では高露光量域での現像速度が著しく低下した。カバー膜ありでは逆に低露光量域での現像速度が低下した。COMAレジストの場合、液浸露光では露光により発生した酸が液浸液中に移動して感度が低下したと考えられる。一方、カバー膜を付けることでレジスト材料と液浸液のコンタクトをプロテクトすることが出来、感度の低下が認められなかったと考えられる。
 得られた現像速度データをリソグラフィーシミュレータSOLID-C10)に入力して液浸露光のシミュレーションを行った。シミュレーションの条件を示す。

図5 MAdMAレジストとCOMAレジストの構造図
表1 実験条件 Table 1 The condition of the experiment.

Resist

MAdMA COMA Cove Material

Thickness(nm)

200 200 36

Pre-Bake

120℃/60s 120℃/60s 90℃/60s

PEB

120℃/60s 120℃/60s ------

n

1.50 1.50 1.37

露光コンディション
波長:193nm
NA = 0.75, σ=0.89/0.59
ライン&スペース: バイナリマスク90nm L/S
ドライと液浸(S-偏光)露光
シミュレーションコンディション
シミュレータ: SOLID-CTM v.2.6.5 [SIGMA-C]
シミュレーションタイプ: Development Rate Mode "R[E,z]"
MAdMAレジストでは、液浸露光を行うことで著しいDOFの改善効果が確認できる。またカバー膜を用いることで形状もより矩形となり、DOFで0.4μmから1.10μmと改善されることが予測できる。一方、COMAレジストではカバー膜がない場合、液浸露光を行うことで逆にDOFが悪化することが予測される。これに対してカバー膜を用いることで、酸の溶出が抑えられ、DOFで0.15μmから0.55μmと向上することが予測された。液浸露光においてカバー膜の採用は必須な技術である。

5.2 液浸液の分析

 図8にMAdMAレジストとCOMAレジストの液浸露光中のレジストからの溶出(Leaching)成分の分析結果をしめす。定量スタンダードとしてはテトラデカン(C14)を100ng添加し、その時のクロマトグラムの面積を基準とした。MAdMAレジストではカバー膜なしで54ng/cm2、カバー膜ありで51ng/cm2であった。

図6 現像ディスクリミネーションの比較
図7 シミュレーション結果
図8 液浸液の分析結果の比較

 COMAレジストではカバー膜なしで144ng/cm2、カバー膜ありで110ng/cm2のVOCがそれぞれ検出された。その主な成分はMAdMAレジストでAceton、Cyclonexane、Pentene、Tolueneなどであった。COMAレジストでAceton、Acetic acid、Cyclonexane、Pentene、Tolueneなどであった。COMAレジストにおいてカバー膜の効果が認められた。

5.3 液浸露光中のレジストの質量変化

 図9にMAdMAレジストとCOMAレジストのDry露光、液浸露光での露光中のレジスト膜の質量変化量をQCM法で測定した結果を示す。横軸に露光の時間、縦軸には単位面積あたりの質量変化量を示す。また、液浸露光ではカバー膜なしの条件において未露光での質量変化量も示した。 照度は0.3mW/cm2とした。COMAレジストは未露光において液浸液にソーキングするだけでわずかであるが膜質量は増加した。これは水中に保持されることでレジスト膜が水を吸い込み膨潤したことを示している。一方、カバー膜無しの液浸露光では両レジストとも露光時間100秒程度(照射エネルギー約30mJ/cm2)で100ng/cm2程度の膨潤がみられた。液浸露光では露光を行うことでレジストは液浸液を含んで膨潤する事が分かる。カバー膜付の液浸露光ではカバー膜なしと比べて膨潤の程度は抑えられている。このことからカバー膜には水をプロテクトする働きがあることが分かった。

図9 質量シフトとSoaking時間の関係

液浸露光中レジストの膨潤を発見

 以上の実験結果をまとめると、
(1)RDAデータから、MAdMAレジストでは液浸露光での感度の変化は認めら無かった。しかし、COMAレジストでは感度の変化が見られた。カバー膜を用いることで感度の変化は抑えられた。
(2) GC-MSによる液浸液の露光中のレジストからの溶出物はMAdMAレジストではカバー膜なしで54ng/cm2、カバー膜ありで51ng/cm2、COMAレジストではカバー膜なしで144ng/cm2、カバー膜ありで110ng/cm2のVOCがそれぞれ検出された。その主な成分はMAdMAレジストでAceton、Cyclonexane、Pentene、Tolueneなどであった。COMAレジストでAceton、Acetic acid、Cyclonexane、Pentene、Tolueneなどであった。
(3)QCMによる質量変化の観察結果から、レジスト膜は液浸露光中に液浸液をレジスト中に取り込んで膨潤する事がわかった。また、カバー膜を用いる事で膨潤の度合いは低減し、カバー膜は水の浸透をプロテクトする働きがあることが分かった。本システムを用いることで液浸露光に最適なプロセス条件を迅速に検討することが出来る。

謝辞

 レジスト材料をご提供頂きました東京応化工業技術主任の吉田氏に感謝いたします。

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参考文献
1. B. J. Lin, Proc. SPIE 4688, 11 (2002)
2.S. Owa and H. Nagasaka, Proc. SPIE 5040, 724 (2003)
3. J. Burnett and S. Kaplan, Proc. SPIE 5040, 1742 (2003)
4.M. Kameyama, ED Journal Seminar, May 27 (2004)
5.SEMATECH 2nd Immersion Workshop, July 11, (2003)
6.M. Sato, ED Journal Seminar, May 27 (2004)
7.E. Abbe, 1878
8. Carl zeiss, 1880
9.H. Kawata, J.M. Carter, A. Yen and H.I. Smith, MEE vol.9, 31 (1989)
10.H. Kawata, I. Matsumura, H. Yoshida and K. Murata, Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 31 4174 (1992)
11.A. Sekiguchi, C. A. Mack, Y. Minami and T. Matsuzawa, Proc. SPIE 2725, 49 (1996)
12.M. Shirai, T. Shinozuka, M. Tsunooka, and T. Itani, Proc. SPIE 5376 (2004)
13.A. Sekiguchi, Y. Kono and Y. Sensu, Journ. Photopolymer 16, 463 (2004)
14.Solid-C Reference Manual, Sigma-C GmbH (2003)
15. N. Oguri, SEMI Technology Symposium Sec. 2, 41 (2003)
16. M. Yang, and M. Thompson, American Chem. Soc., 9, 802(1993)
17. J. Rickert, A. Brecht, and W. Gopel, Anal. Chem. 69, 7, 1441(1997)

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