液晶ディスプレイ(LCD)の需要が著しく増加し、これまでによりも高い精細性やコントラスト、色再現性、応答速度が要求されている。同時にガラス基板の大型化に伴い、LCDの成膜工程のプロセス管理の重要性が高まってきている。タカノは従来機より広範囲に検査・計測できる走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)の「AS-7B-AUTO/W」を開発し(図1 )、2005年4月に開催される「第15回 フラットパネル ディスプレイ研究開発・製造技術展(ファインテックジャパン)」で発表する。
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このAS-7B-AUTO/Wは、SPMの一つである原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)で、従来のスキャナ駆動機構の設計を大幅に見直し、最大で450μmまで一度に計測できるようにしたもの。アレイ形成工程やカラーフィルタ形成工程をはじめ、あらゆるLCDの成膜プロセスを感度良く管理することができる。
高まる非破壊検査の重要性
LCD製造で非破壊のインライン検査が以前にも増して重要になってきている。現在のインライン検査の主流になっているのは光学的な検査である。光学的検査では、正確な形状を把握することはできない。例えば、TFTのゲート部の底の形状や側壁の情報を正確に得ることができない。段差計も形状を正確に把握することは難しい。また、段差計に使われている探針の半径は約2μmもあるため、5μm以下の微細のパターンを計測できないというのがその理由だ。このため、現状では試料を切断しSEMで断面観察を行っている。
しかし、AFMならばカンチレバーの先端が10nmと段差計の探針よりもはるかに小さいため、形状や膜厚だけでなく表面の粗さまで正確に計測できる。アレイ工程で欠陥や不具合を見逃すと最終点灯検査まで流れてしまい修復することができないため、AFMで精度よく形状計測を行って、アレイ工程のプロセス状態を把握することが重要になってきている。
また、段差計の応力は0.1〜1mgに対し、AFMの応力は0.001mgと2〜3桁小さいためダメージを与えることなく計測できる。そのため、AS-7B-AUTO/Wは段差計では計測できないカラーフィルタのような柔らかい膜も計測できる。カラーフィルタとスペーサーの形状計測の結果を図2 に示す。解析ソフトで、測定画像上の任意の断面で2点間の距離や高さ、テーパー角、段差、表面の粗さなどの測定結果を解析できる。
新しいスキャナヘッド構造とその威力
図1 AS-7B-AUTO/Wの外観
同社の従来機「AS-7B」シリーズに搭載されていたスキャナヘッドにはピエゾスキャナが採用されていた。ピエゾスキャナの上部を固定し、X軸とY軸にそれぞれ2枚の電極に電圧をかけることにより、スキャナの下部に取り付けたカンチレバーを走査させるという構造をとっていた(図3左 )。この構造では最大150μmまで走査させることができる。これは他のAFMと比較しても走査範囲が1.5〜2倍広いが、基板の大型化に伴いLCDの画素が大きくなってきているため検査範囲が足りなくなった。
従来構造で走査範囲を広げるためには、さらにストロークの長いスキャナヘッドが必要になるが、走査範囲が200μm以上になると画像の歪みが大きくなるためソフトウェア上で補正しきれなり正確な情報が得られない。また、ストロークを長くすると振動に対する影響も受けやすくなるため、SN比が小さくなり、結果的にAFMの高感度という特長が損なわれてしまう。
広い走査範囲と歪みの少ない画像を両立させるために、スキャナヘッドの構造を変更する必要が出てきた。そこで、AS-7B-AUTO/Wにセンサ内蔵型の平面ピエゾステージをスキャナヘッドに搭載し、XY軸の走査ユニットとZ軸の走査ユニットを分割させた構造に変更した(図3右 )。また、従来機と同様にガラス基板を置くワークステージを固定し、スキャナヘッドを測定点に移動させる方式を採用した。このため、AS-7B-AUTO/Wでは最大1500x1850mm液晶基板に対応できることになった。ワークステージ側を可動させて測定点に移動する方式もあるが、その方式ではワークステージの重量や大きさに制限があり、ガラス基板1枚置いて検査することができない。
スキャナヘッド構造を変更することにより走査範囲が最大で450μmまで可能になり、携帯電話やモバイル機器向けなどの小型のLCDならば、非破壊で1組のカラーフィルタを1度で検査することが可能になった。また、ピエゾ素子のもつヒステリシス特性もなくすことができるため、走査速度や走査方向回転による画像の歪みも改善された。
検出システムとAFMの測定モード
図2:カラーフィルタ(RGB)とスペーサーの形状計測の結果
レーザー光は、センサ内蔵型の平面ピエゾステージとスキャナの内部を通り、AFMのカンチレバーで反射しフォトダイオードに入る。その後フォトダイオードで検出した情報が、フィードバック回路を通ってスキャナのZ方向の変位量を決定する。そして、スキャナのZ方向の変位量を静電容量センサで検知して画像に変換する。
また、AFMには主にコンタクトAFMモード(DCモード)とACモードAFMの2つの測定法がある。コンタクトAFMモードでは一定の小さな探針加重で探針先端を試料に接触させ表面をトレースする。これに対しACモードAFMでは、探針およびカンチレバーが垂直方向に振動しながら試料表面に沿って走査する。コンタクトAFMモードでは、走査している間に探針先端に横方向に向かう力が加わり続けるため、カンチレバーは、探針加重を小さくするためできるだけバネ定数を小さくした柔らかいものが使われる。
一方、ACモードAFMでは振動の1周期ごとに力がリセットされるため、カンチレバーもコンタクトAFMモードと異なる特性が求められる。ACモードAFM測定用のカンチレバーは、コンタクトAFMモードと比べて硬く、共振周波数が高くQ値が高いものが使われる。試料表面より離れたところで探針をカンチレバーの共振周波数で振動させ、徐々に探針を試料表面に近づけて行くと試料表面近くで急激に振動が小さくなり、高い感度でカンチレバーの振動変位状態の変化をとらえることができる。
図3 従来のスキャナヘッド(左)と新しいスキャナヘッド(右)
主な装置アプリケーション
FPDの高機能化や高画質化が進む中、FPD製造の検査工程がますます重要になってくる。一般的に検査工程では、検査領域と感度(分解能)、スループットのトレードオフが問題となっている。このAS-7B-AUTO/Wの場合、高感度(XY方向で7nm、Z方向で0.20nm)で1度に最大450μmの領域を検査できるが、インラインで全数検査するほどのスループットはない。したがって当面の運用方法は、量産ラインではオフラインの抜き取り検査で、高精度段差計または非破壊非光学の3Dレビュー装置としての活用になる。あるいは、光学機器の数値校正原器としての使用も可能だ。また、試作ラインでは、高感度の特長を生かしLCDの成膜プロセスの問題点を早期に発見し、プロセス開発を支援するような装置として活用できるだろう。