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2005年5月号
空気圧差を制御しパーティクル不良を削減
Timothy E. Beatty, Phillip Flatch III, Ramon S. Santiesteban
米Agere Systems社
www.agere.com
 クリーンルームの空気圧変動が引き起こすバッチ式イオン注入装置におけるパーティクル挙動への影響を調べた。解析の1つのアプローチとしては、パーティクルの増加が実際の注入プロセス中か、あるいはウェーハ搬送中かをまず決定し、分割統治法を用いることだ。行われたテストでは、クリーンルームのベイからミニエンバイロメントへの空気流の問題が明らかになった。これらの改善および予防活動の結果、パーティクル不良率は20%改善された。
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 バッチ式イオン注入装置のパーティクル挙動を評価するには、多くの測定方法が用いられている。今回は、添加不純物種を変えたときのシート抵抗を測定に使用した1枚の基準ウェーハで、パーティクルの増加量をモニターした。パーティクルの測定は、米KLA-Tencor社の検査装置「SPI」を使用し週3回の頻度で行われた。同時に、Arが注入された17枚ウェーハを日交替で同様にモニターした。Arを用いた理由は、クロスコンタミネーション低減と低コスト化にある。この2通りの測定法により、測定日間、不純物種間、スロット間の変動を含む、複数の変動要因が把握可能になる。これらの測定データから、標準プロセスに含まれるほとんど全て(仮に全てでないにしても)について詳細な解析を行うことができる。
 バッチ式イオン注入装置内で突発的なパーティクル不良が発生する根本原因を解明することは難しいと言われている。特定する方法の一つに実際のプロセス中にパーティクルが増加しているのか、あるいは搬送中にパーティクルが増えているのかを切り分ける調査が行われることがある。このトラブルシューティングでは、ビームを使用しない等のパーティクルのベースラインを確立することが必要だ。1)そして、この次に行うべきことは、パーティクル発生源が特定されるまで、ロボットやアライナ、エレベータなどのウェーハ搬送系の切り分けを行うことだ。加えて、パーティクルのウェーハマップをハンドラのウェーハ接触点と比較する。再現性を持った不良ではしばしば、ウェーハマップに何らかの根本原因によるパターンあるいは「シグネチャ(特徴)」が見られることがある。

図1 KLA-Tencorの検査装置「SP1」を用いたウェーハ68枚の結果を合成したパーティクル増加マップ(左)は、ウェーハエッジの特徴のあるパターンを示している。右のグラフは、左側に示された同一データに対するスロット番号ごとの不良数。
図2 ミニエンバイロメントからロードロックに搬送された専用カセットに収納されたウェーハ位置。
図3 ミニエンバイロメントとベイ間の負の空気差圧は、この布の動きから明らかなように、ロードポッドを通して空気の逆流を生じさせている。

エッジパターン不良

 低エネルギーの200mmウェーハ対応バッチ式注入装置で観測された、一つの特徴を図1に示した。この特徴を強調するため図1は同じ特徴のあるエッジパターンをもつ個々の不良のマップを合成させたものだ。
 合成したマップには全68枚分のウェーハデータの中には、1回分のバッチ処理した17枚分のウェーハのデータも含まれている。このエッジパターンの特徴は、図1の棒グラフから推測されるように、全てのウェーハで観測されていない。エッジパターンは通常ウェーハ・スロット#4から見られ始め、最大のパーティクルカウント数をもつウェーハ・スロット#17まで、徐々に増加している。パーティクル挙動を調べるために1枚のウェーハ(例えばスロット#1)だけで検査しているラインでは、この種の問題があることに気付かないだろう。この特徴のあるパターンはトラブルシューティングにとって非常に重要である。なぜならそれは、切り分けテストを数多く行っても再現出来ないからだ。加えて、このパターンはビームを使用しないテストでは観測されたが、搬送系のどの接触点とも関係していなかった。代わりのアプローチとして、白いビニールテープをエッジパターンと同じ形で、ベアシリコンのダミーウェーハに貼り付けた。次にこのウェーハを手動でロードし、ウェーハが注入装置を通過する時の各搬送点で、デジタル写真の撮影を行った。ミニエンバイロメントからロードロックに搬送された専用カセット中にウェーハの位置を図2に示している。専用カセットの前部と後部にあるウェーハ用溝が、作っている影とウェーハに貼った白いテープの位置すなわちパーティクルが多く発生している場所が一致していた。それはあたかもパーティクルの発生源がカセットの溝の裏面であるかを示していた。影の解釈は2つの考えに行き着いた。空気中のパーティクルがミニエンバイロメント内での待ち時間中に堆積したか、あるいは分子汚染がロードロック用ポンプのダウンサイクル中に増加したか、のどちらかである。
 その後に行われた脱イオン水のミストを使ったテストでは、クリーンルームのベイからミニエンバイロメントへの空気流の問題が明らかになった。図3に示したクリーンルーム用ワイプの動きを見れば分かるように、ミニエンバイロメントとベイの間に負の空気圧差があったため、カセットのロードポッドを通って空気が逆流していた。その前に行われた分離テストでは、エッジパターンを再現できなかった。なぜならテストウェーハは、標準パーティクルテストウェーハが長時間、低エネルギー、高ドーズの注入が行われた後にロードされる場合のように、ミニエンバイロメント中で2時間も待たされることはなかったからである。

最適に設計されたミニエンバイロメントでも、
クリーンルームの空気循環装置に依存する
気圧差をなくす

 通常のミニエンバイロメントは変速ファンを搭載し、それはウェーハ搬送エリアへ層流の空気を入れる前に、多段HEPAフィルタを通して、周りのクリーンルームベイやチェースから空気を引き込む。その後フィルタリングされた空気は、注入装置底部にある通気口からチェース内へ戻る。ミニエンバイロメントとの気圧差をなくすためにはファンを調整して、所定の流速になるようにしなければならない。また、装置メーカーから指定された圧力差になるように通気口を調整しなければならない。しかし最適設計されたミニエンバイロメントでも、適切な圧力状態を作るにはクリーンルームの空気循環装置に依存する。
 空気圧差は、エリア間のパーティクルの流れを制御し、クリーンルーム内のクロスコンタミネーションを最小化するために必要だ。半導体などの電子機器工場の中で最もクリーン度の高いエリアは、作業ベイである。そこではウェーハがロード/アンロード中もしくは、ミニエンバイロメントから空気にさらされる。この2カ所のエリア間の気圧差は、最適設計されたクリーンルームでは、1.25〜5Paの範囲にある。2)
図4 5つのRAH ユニットが、上に示されたイオン注入機を通して流れる空気を供給する。リターンダクトはサービスチェースに置かれている。
表 空気差圧(Pa)
ミニエンから作業ベイ -4.5 7.5
ミニエンからサービスチェース 48 23.5
作業ベイから通路 -20.5 3.5
サービスチェースから通路 -65 -11
図5 この図は、空気圧を再調整した後の、イオン注入機に対する下降傾向を示している。

 空間的な制約を考慮していなかったため、今回使用したイオン注入装置は、もともと最適な気圧差になるように設計されていない場所に設置されていた。5個の独立した空気循環装置(RAH:Recirculation Air Handler)ユニットは、図4に示されているように、イオン注入機#1を取りまく作業ベイ、サービスチェース、メイン通路を介して空気を供給する。図に示されてはいないが、各RAHに対する循環用のダクトはサービスチェース内に置かれている。加えて、空気循環用のベントはチェースとメイン通路を分離する壁に置かれていた。この特殊な配置にも拘わらず、イオン注入装置のパーティクル挙動は長期間にわたり規定値に収まり、エッジパターンの特徴は2年間稼動後に初めて観測された。
 パーティクル問題の根本原因が特定されたため、次に相対的な気圧の測定を行った()。最初の観察と一致して、ミニエンバイロメントは作業ベイに対し負圧になっていることが分った。更に問題なのは、作業ベイが、往来の激しいメイン通路に対し、負圧になっていたことである。そのためウェーハを汚染する前に、パーティクルはロードポッドの底部を通って、通路から作業ベイへあるいはミニエンバイロメントに移動していたのだ。通路に対するベイの圧力差の改善は、リターンエアの通気を一部阻害し通路のRAHユニットの出力を減らしていたメンテナンス用品(机、工具箱、部品など)を取り除くことから行われた。ミニエンバイロメントから作業ベイへの分圧を変更するには、同時にさまざまな改善活動が必要になった。ミニエンバイロメント内の4つのファンのうち3つは欠陥があり取り替えが必要だった。さらに、このベイ用の共通の強制換気システムに接続されたULPAフィルタを通るのに必要な75ft/分の表面速度を維持するため、RAHユニット#63の出力を下げる一方、RAHユニット#64の出力を上げた。調整後の圧力を、表に示す。重要なことは、二度とエッジパターンは観測されず、またこの注入装置に対する基準ラインが減少傾向を示し、図5に示したように、ほぼ3ヶ月後にはついに許容レベルに達したことである。不良率の20%削減を実現した。

リアルタイムでの
モニタリングが必須


 装置据え付け後には、ミニエンバイロメントと周辺クリーンルーム・エリア間の陽空気圧が保たれて当然、と考えるべきではない。気圧差は、クリーンルーム配列や装置の配置を変えると変化する可能性があるため、リアルタイム・センサーで絶えずモニターしなければならない。また、ミニエンバイロメント用のファンも突然故障する可能性があるため、定期的な点検が必須だ。これらの微妙な変化が組み合わさったため、エッジパターンとベースラインの悪化に示されたような、パーティクルの挙動の問題が発生した。

謝辞

 著者達は、本プロジェクトに関するご協力に対し、Keith Anderson, Mark Coward、Matt Day、Kab Gabriel、Darryl Jefferson、Andrew Porreco、Robert Resetar、Ken M. Ripley、Ulysses Skaggs II、Thor Tellefsen、Robert Trumaineに感謝の意を表したい。

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Timothy E. Beattyは、Agere Systemsのイオン注入工程およびRTPのプロセスエンジニア。1985〜1996年までは、米AT&T Microelectronics社でプロセスアナリスト。1996〜2002年までは、米Lucent Technologies社でシニアテクニカルアソシエイトを務めた。米Tampa Technical Instituteを卒業した。
E-mail:timothy.beatty@infineon.com
Phillip Flatch IIIは、Agere Systemsのテクニカルスタッフ。この分野で20年以上の実績を持つ。以前は、米Western Electric社、米AT&T社、米Lucent Techno-logies社に勤務した。
Ramon S. Santiestebanは、Agere Systemsテクニカルスタッフのシニアメンバーで、イオン注入工程およびRTPのプロセスエンジニア。テキサス大学El Paso校で修士を取得している。
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参考文献
1. T. Beatty, et al., “Particle Reduction Strategies for High Current High Volume Manufacturing,” Proc. of the 14th International Ion Implant Tech. Conf., September 2002, p. 319.
2. Richard V. Pavlotsky, “15 Factors that Influence Clean Room Design and Construction Costs,” CleanRooms, July 2004, p. 22. 

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