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2005年5月号

エーエスエムエル・ジャパン株式会社
代表取締役社長
長谷 真司氏

[プロフィール]ながたに しんじ氏
1947年大阪府生まれ。大阪大学大学院工学研究科にて通信工学を専攻、システム工学修士号取得。1973年4月に住友商事株式会社に入社、以来、半導体及び半導体製造装置、情報・通信機器等の産業用電子機器を中心として国内・輸出入、製造、技術サービスを含め、営業・マネジメント業務に及ぶ責任者として、部長・海外事務所長を歴任。1994年から同関連会社の経営責任者として社長を務めた。2002年6月に、エーエスエムエル・ジャパン株式会社の代表取締役社長に就任。
ASMLを選ばない理由はたくさんある
その理由の一つ一つを突き崩していく
 蘭ASML社は設立から20年を経過した。露光装置市場で成長を続け、300mmウェーハ対応プラットフォーム「TWINSCAN」発表後には市場で躍進した。2004年には金額ベースで露光装置市場シェアトップを奪取したと見られている。また、このTWINSCANが液浸技術の導入に際しても優位性を発揮している模様だ。しかし、技術力で市場を牽引しながらも、日本市場でのプレゼンスはまだ低い。エーエスエムエル・ジャパン代表取締役社長 長谷真司氏に同社戦略を聞いた。
Semiconductor International 日本版(以下SIJ):ASMLは後発ながら成長を続けている。
長谷真司:ASMLは1984年の設立以来急峻に成長している。設立当時は、露光装置市場で多くのメーカーがしのぎを削っていた。それが現在では3社のみとなっている。装置開発には大きな資金が必要となっているのも確かだ。業界内では2社しか生き残れないのではないかという声もある。

SIJ:ASMLの近況は?
長谷:2004年に市場シェアを伸ばし、トップの座を獲得した。日本を除くほとんどの大手半導体メーカーに納入している。2004年度は2000年のピーク時に近い売上を計上した。2001年から2002年、2003年と製造装置メーカーには厳しい時期にあった。今年は、キャッシュフローも含め財務体質の強化に力を入れていく。
SIJ:製品ではArF露光装置の比率が高まっている。
長谷:ArF露光装置の導入も進んでいるが、量産対応の高スループットのKrF露光装置の採用も進んでいる。2000年に開発した当社の300mmウェーハ対応プラットフォーム「TWINSCAN」はフットプリントが大きかったため、小型化した新しい「XT」プラットフォームを製品化した。このプラットフォームに急速に移行している。TWINSCAN は現在までに200台近い出荷実績を持っている。
SIJ:液浸露光装置の開発を積極化している。
長谷:2004年末にアジア市場、米国市場および欧州市場に液浸露光装置を出荷した。研究機関だけではなく、台湾TSMC社を含めて半導体メーカーに3台出荷し、受注残が8台ある。液浸技術では2003年の実験から約1年で実際のデバイスを液浸露光で製造するところまでたどり着いた。当社の露光装置で、米Albany Nanotechにおいて実デバイスの製造が検証されている。当社は常に量産を意識して装置を開発している。
SIJ:液浸技術の開発では露光装置メーカー各社がしのぎを削る。
長谷:ASMLは露光装置メーカーとして、微細化に貢献していく。液浸技術のリーダーとして今後も最先端を走っていく意気込みだ。しかし、液浸の量産はまだ先の話。ArF露光装置では開口数(NA)0.93の「XT:1400」の出荷を始める予定だ。
SIJ:液浸技術による量産は可能か?

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長谷: ASMLは量産に対応する装置を常に考えている。液浸技術自体は昔からある技術であり、当社は開発を始めたのも後発だ。しかし、オランダに設置された実際の液浸露光装置で2003年10月からデモを開始し、50社以上がウェーハ1万枚以上の露光を行っている。当社はNA0.93〜0.85の世代の露光装置から液浸の開発を行っている。2003年当時には、だれも液浸が本当にできるかどうか分からなかった。当社は当時F2の開発も同時に行っていた。一方でユーザーに検証する場を提供する必要もあった。液浸の最大のメリットは解像力だが、直近のメリットは焦点深度が倍になることだった。液浸はまだまだ先の話だが、新しい技術、プロセスが出てきた時には検証して各ユーザーにあったプロセスを作り上げる必要がある。そういう未知の世界に入っていくために当社は装置を供給し協力していく。液浸技術が解像度で大きなメリットを出すのはNA1.0以上からだが、他社の計画に従えば今年の末まで装置を納入できないことになる。待っていればいいのかという議論が残る。NA1.0以上のプロセスは2006年から2007年以降の話だが、装置が突然出てきてもすぐに量産に使えるわけではない。
FPD露光装置市場への参入も検討
2005年上期には決定する
SIJ:貴社の装置なら待つ必要がない。
長谷:XT:1400はドライのArF露光装置だが、現場で液浸露光装置に変換することが可能だ。2006年にはすでに第4世代目となるNA1.0以上の液浸露光装置の提供も開始する。
SIJ:技術面で先行することが重要か?
長谷:引き続き技術面でリーダーシップをとる考えだ。また、FPD製造装置への参入も検討しており、2005年上期中には決定する。FPD装置市場は限られているので、当社独自の開発は難しい。大手FPDメーカーと密接な関係を構築する必要がある。
SIJ:露光装置メーカーとしての課題は?
長谷:露光装置はリードタイムが長いので投資計画が立てにくい。リードタイムの短縮が悩ましい懸案事項だが、推進していく。リートタイムとコストはトレードオフにあるが、利口に管理していきたい。2005年はASML全社で明確に日本市場にフォーカスしていく意向だ。

SIJ:日本市場での採用状況は?
長谷:日本では1993年に日立ハイテクノロジーズと代理店契約を結んだ。約12年日本市場で活動している。日本市場ではセイコーエプソン、富士フイルム エレクトロニクスマテリアルズに納入しており、2004年末に松下電器産業から受注し、現在、5社7工場に導入している。日本市場で高い市場シェアを確立することが命題だ。ASMLに対する認識をもっと深めてもらいたい。
SIJ:日本市場での今後の取り組みは?
長谷:2004年度で日本市場が全社売上に占める割合は2%。これを飛躍的に増大する必要がある。日本市場は、競合としてニコン、キヤノンという強力な2社を相手にする宿命を負っている。日本では後発ということは、十二分に理解している。技術面、サービス面、装置生産性でユーザーがASMLを使うことで利益を享受しなければならない。
SIJ:国内での活動状況は?
長谷:東京エレクトロン(TEL)のクリーンルームにNA0.85の露光装置「XT:1200」を設置している。TELとASMLは、リソグラフィ工程の効率の向上という目標で共同プロジェクトを推進しており、欧州、米国、日本の各拠点でそれぞれが装置を持ち寄る開発体制を構築した。
SIJ:日本市場でのこれからの戦略は?
長谷:ASMLを日本の顧客が買わない理由はたくさんある。例えばマスクは重ね合わせのマークが異なるなどマスクに互換性がなく、それが障壁を高いものにしている。ASMLを断る理由はたくさんあるのだ。その一つ一つを突き崩していくことが重要だ。
SIJ:日本では不利なのか?
長谷:競合が大手日本メーカーだからASMLは日本で売れない、という短絡的な考え方はしていない。今まではサポート体制が残念ながら納得いくレベルに至っていなかった。しかし、全社の戦略として今後は日本市場にフォーカスしていくことが決まっている。現在、国内にはサポートセンターが8拠点あるが、2007年までに全国で新しく7カ所の拠点を開設する計画だ。そして個々のユーザーに実証していくしかない。
(聞き手:高橋 潤)


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