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2005年5月号
Emerging Technologies
分子コンピュータの時代の幕開け
Peter Singer
* * * *

 米Hewlett-Packard(HP)社の研究者らは現在のトランジスタに替わる技術を発明した。Journal of Applied Physicsに掲載された論文によれば、HP研究所の中にあるQuantum Science Research(QSR)グループの研究者3名が、“クロスバー・ラッチ”構造を提唱し、その試作を行った。トランジスタを一切使わずにコンピュータ処理に必要な信号の保存や反転を行うことができるため、この技術を使えば、今日あるコンピュータの数千倍に相当するパワーを得ることが可能になるという。

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 「我々は分子スケールでコンピュータを再発明しているところだ」と同社QSRグループのディレクタでシニアフェローのStan Williams氏と語る。「比較的に安く簡単なナノサイズのデバイスを使ってコンピュータを作るには、クロスバー・ラッチ構造が重要な要素になっている」。
 試作したコンピュータの構造は、信号線となる配線が一つで、二つの制御線が交差しており、その交差しているところに電気的に切り替えができる分子スケールの接点がある。制御線に電圧を加えて、極性が反対になっているスイッチを使うと、ラッチは「NOT」の動作をする。「NOT」は、「AND」や「OR」と同様に電子回路上で基本的な論理の一つである。また、理想的な電圧値にロジックレベルを保存することもできる。そして、コンピュータ処理を行うために単純なゲートをたくさんつなげることができる。
 標準的な半導体回路では、「NOT」の動作と信号の保存を行うために、三つの端子が必要になる。しかも、このようなトランジスタは、一般的には数ナノレベルまでに微細化させることはできないと考えられている。
 「まだまだトランジスタは使われ続けるが、いつかはこのような技術に置き変わるのかもしれない。トランジスタが真空管に、真空管が電磁気リレーに取って代わったように」と同社QSRグループのシニアコンピュータ設計者のPhil Kuekes氏は語っている。


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