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2005年6月号
中国で生産すると高くつく!?
日本版 編集ディレクター
津田建二
* * * *
 米国の姉妹サイトであるElectronic News が提供している中国に関する英文情報サービスChina Electronics Report4月号によると、中国政府は汎用ではない電子製品を輸出する企業に課す付加価値税を上げるという。半導体やある種の受動部品、通信機器、携帯電話機、LCDの付加価値税をこれまでの13%から17%に上げる方向だ。
 改めて、中国で生産する意味を考えてみよう。最先端の半導体チップの製品原価に占める人件費比率は5〜6%程度といわれている。日本で生産すると100円かかる製品の場合、人件費は5〜6円だ。仮に5円として残りの経費が95円になる。これを人件費が1/10しかない国で作るとするなら、人件費は0.5円なので95.5円の製品ができる。

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 つまり、半導体チップは日本で作ると100円、人件費1/10の国で作っても95.5円しか下がらない。大して違いはない。輸出製品に税金が17%もかかるため、95.5円の製品を外国に向けて輸出すると95.5×1.17=111.7円になる。中国の人件費が日本の1/10だとすると、日本で作ると100円の製品が中国で作るなら111円になる。つまり、中国で作る方が高いのである。
 逆に言えば、半導体製造は人件費の高い日本に向いた産業だといえる。では、中国へ進出する場合にはどのような産業が向いているのだろうか。産業構造にかかわらず、人件費比率だけで考えてみるのも悪くはない。人件費をx円として、中国での人件費が1/10、付加価値税が17%かかるとする。日本で100円かかる製品を中国で作って輸入するとき、1.17×(100−0.9x)=100から、x=16となる。すなわち、人件費比率が16%以下の製品を中国で作り中国から輸入するときの価格が100円と日本と同じになるのは人件費比率が16%の製品の場合だ。輸送経費も考えると、この人件費比率16%以下の製品を中国で作るなら日本よりも高くつくというわけだ。
 だからどのような産業でも、あるいはどのような製品でも中国で作る方が安いというわけではない。
 人件費比率だけではない。あるエレクトロニクス企業は10年以上前、インドネシアと中国とどちらの国で生産しようかと検討した結果、人件費がより安い中国を選択した。しかし、共産主義のマインドが強い中国では、1人1台の自転車を支給しろ、1人1軒の社宅を提供しろと言われ、現地の文化に従った。その結果、福利厚生費と人件費を足した経費はインドネシアよりも高くついた、という。
 折しも、中国での反日デモはいったんは収まったものの、不気味な様相を呈している。中国のデモ隊は歴史問題に対する理解が足りないと日本を非難しているが、中国人と話をしてみると彼らは日本の歴史教育の実態を知らない。日本の歴史教育で最大の問題は、現代史を教えていないことだ。縄文・弥生から授業をはじめており、明治以降の歴史を教育現場が時間切れを理由にすっ飛ばしていることが問題である。この話を彼らにするとまず驚く。多くの日本の若者は中国を敵視していないし、軽蔑もしていない。むしろ巨大市場へのあこがれを持っている。中国を知らないだけだ。
 この日本が中国を正しく理解していないことは大きな問題だ。中国でビジネスを行った結果、彼らにだまされた、といって嘆く企業がいまだに多い。中国の国営企業出身の人たちは日本や外国の企業をだましているつもりはない。共産主義マインドから抜けていないだけである。中国ビジネスで忘れてならない点は、中国はいまだに官僚的発想の共産主義だということ。

 とはいえ、社会主義市場経済の中国で成功を収めている企業は少なくない。半導体産業ではSMICやGrace Semiconductorなどの台湾系資本のファウンドリ企業が有名だ。半導体に限らず、エレクトロニクス、情報通信機器メーカーなどもよく見ると、経営層には米国や日本など資本主義国家でビジネス経験を積んだ人たちが多い。これらの人たちに共通することは、市場経済をしっかり学んだ上で中国の文化や商習慣を理解している人たちだ。つまり、官僚的発想を持っていない。
 中国で成功するカギは、このような人たちをいかに仲間に入れるかにある。
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