Xアーキテクチャの背後にあるコンセプトは新しいものではない。つまり二点間を結ぶ直線が最短距離になることは古くから知られている。Xイニシアチブの開発に加わっている米Cadence Design Systems社マーケティングディレクターKetan Joshi氏は「直交型のマンハッタン構造を用いる場合、チップの2つの角にある点aから点bに到達するには縦方向のメタル層に沿って進み、それから横方向に進まなければならない。もしその代わりに対角線上を進むことができれば、それはずっと短い経路になる」(図1)。これがXアーキテクチャの背景にある考えだ。XアーキテクチャのXとは配線が45度で交わることから由来している。
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| 図1 Xアーキテクチャの概念は、メタル4層およびそれよりも上層で対角線状(45度)のインターコネクトを用いることによりメタル1から3層とIP互換性を維持したまま20%少ない配線長と30%少ないビアを実現できるというものである。これによりチップがより効率的になるばかりでなく、既存のインフラストラクチャを保持することができる。(出典:米Cadence Design Systems社) |
対角線状の経路にすると配線長を最大20%、ビアを最大30%少なくすることができる。このコンセプトでは下層のメタル層(メタル1〜3層まで)はマンハッタン構成を維持しており、既存のものと何も変わらないが、メタル4層および5層では配線をそれぞれ45度および135度回転させ、8方向に配線させることができる。
配線とビアを削減する
配線の削減は大きな利点を伴う。180nmおよび130nmノードで始まるほとんどのチップは配線により支配されていると言える。配線の性能は配線の長さと数、および密度によって決まる。もし配線の20%を減らせるならば、性能は向上しチップは小さくなり、しかも経路に割ける資源が増えるため実際の性能は強化される。混雑したマンハッタンデザインをXアーキテクチャはいくらか緩和することができる。
ビアの削減はダブルカットビアないし類似のものをバイパスすることではない。ウエルカットビアを持つことは可能だが、メタル層の間のジャンプの数は減らされた。半導体メーカーによっては、ビアが歩留まりを低下させると考えられている。特に微細化が進むとなおさらだ。配線間のジャンプを少なくすることは、メタル配線の抵抗を軽減するのに役立つだけではなく、歩留まり向上にも役立つ。
マンハッタン構成では面積に従ってチップ性能は増大する(図2)。しかしながら、もしXアーキテクチャが導入されれば、結果として同じ面積でもチップの性能はより高くなり、あるいは同じ性能をより小さな面積で発揮できることになる。Xアーキテクチャは性能と面積の関係で技術ノードを半世代進めたのと同じ効果があるとされる。すなわち150nmプロセスでXアーキテクチャを適用すると、130nmプロセスと同等の性能を発揮することになる。
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図2 Xアーキテクチャを用いたデザインは、伝統的な直交型のマンハッタン構成に比べ、より小さく、より速く、そして歩留まりのより高いデバイスを実現する。
(出典:米Cadence Design Systems社) |
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Xの製造
2001年にXイニシアチブはロードマップを策定し、IPベンダーとチップ製造メーカーとの協業を促進するコンソーシアムを形成した。そこでは2002年までには、マスクからウェーハプロセスにいたるまでのサプライチェーンで製造が可能かどうか確認し、2003年までに少なくともテストチップを作成するとあった。そして2004年には最初の量産チップの生産が計画され、2005年にはこのアーキテクチャを用いた製品が供給されるとなっている。類まれな協力的な雰囲気の中でメンバー企業によるオープンな協業により、Xイニシアチブは着実にこの計画を遂行し、そして2004年には東芝による量産チップに結実した。
現在、Xイニシアチブは42のメンバー企業から構成されている。1)これはIPおよび設計から、フォトマスクおよびウェーハの製造、検査にいたるまでの大手企業が参加している。また、ファウンドリーの主要なメーカーがほとんど参加している。このサプライチェーンが全体でXイニシアチブを支えている。2002年までには半導体産業の80%以上がメンバーに加わった。
この時点から180/130nmで量産可能かどうかの検証が始まった。すべての装置メーカーを巻き込み、マスクとウェーハ製造に関してのデータが準備された。マスクの描画については、ラスタおよびベクタ方式の電子ビーム(EB)描画装置メーカーがこの問題に取り組み、また検査装置と測定装置のプロバイダ、マスクメーカーやリソグラフィ関連メーカーも参加した。
米DuPont Photomasks社(2005年4月に米Toppan Photomasks社に社名変更)の子会社である米BindKey社のマーケティングおよびビジネスディベロップメントバイスプレジデントJim Jordan氏は、この活動を振り返りすべてが期待された通りにスムーズに進んだと述べている。「開始当初からDuPont Photomasksはマスクの描画について角度が問題になると言明していた。新しいベクタ方式のEB描画装置と同様に、最先端のレーザー式描画装置は、マンハッタン構成と比較しマスクの形成に問題がないことを実証した。」。
蘭ASML社とニコンによって行われた最初のリソグラフィの試験では、先端露光装置を用いた場合でも、忠実度および転写適性はマンハッタン構成の場合と同等であることが確認されたとJordan氏は語る。「技術的な障壁の高かったCu配線の導入と比べれば、Xアーキテクチャは容易だ。基本的には単にマスクを45度回転している。製造装置に特別変わったことをしているわけではない」。
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Siを用いての最初の結果は2003年に得られた。マスクからウェーハにいたるまでのサプライチェーンは問題ではないことが分かった。次のステップは、デザインルールを前進させ、それをテストチップに適用し、生産ラインで実証することであった。米Cadence社は伊仏合弁のSTMicroelectronics社および米Applied Materials社(AMAT)と共同で作業し、Xアーキテクチャのデザインルールがマンハッタン構成のそれと同等であることを実証した。デザインルールが確立されたあとに、Cadenceは東芝との共同作業で90nmの実際に作動するSiチップを作り、このアーキテクチャの有効性を実際のデザインにおいて確認した。2004年には東芝はXを用いてデジタルTV用チップの製造を行った。2004年半ばには、このチップで80%近い歩留まりを得られる確証を得て、2005年半ばまでに量産する予定で進んでいる。
東芝はどちらが最高の性能を与えるかを判定するため、二つのプロジェクトを並行して進めた。一方はマンハッタン構成と同じ設計であり、もう一方はXアーキテクチャを用いた。設計工程に入り数ヶ月過ぎた頃、マンハッタン構成では予定のチップ性能が得られず問題にぶつかった。その一方でXアーキテクチャは必要な性能を達成したばかりでなくそれを上回った。設定された目標は162MHzだったが、Xアーキテクチャは180MHzで作動し、しかもロジック領域を10%小さくすることができた。そこで東芝はマンハッタン構成の採用を取りやめ、Xアーキテクチャを量産に一歩進めた。メタル4層と5層をXにシフトするだけで、東芝のチップは11%速く、10%小さくすることができた。これは予測されていた理論と一致した。
東芝の経験はまた、設計からSiを用いた生産にいたる完全なフローが既に完成していることを証明した。場所と経路の抽出という設計の観点からだけではなく、設計の実行後に続くすべての具体的な工程と、製造上の観点からマスクデータの準備、OPC、ウェーハなどについてもである。すべての工程はマンハッタン構成の場合と同等であると結論付け、異なった方法で行わなければならない位置と経路の抽出を除き、Xアーキテクチャの製造には標準のツールを使用した。
Xアーキテクチャでの製造が始まった2004年には、関心が歩留まりに移った。米PDF Solution社とCadenceはXアーキテクチャのチップの歩留まりへの影響を共同で研究した。彼らは同じデザインのマンハッタン構成とXアーキテクチャを用いた。この研究ではXアーキテクチャはチップを10%小さくすることができるので、同じウェーハ面積で12〜13%多くのチップを生産できることが分かった。またXアーキテクチャによる面積縮小により配線の混雑が解消し、ビアの数も少なくなったため、歩留まりが改善された。この結果としてウェーハあたり15〜23%多く良品チップを得ることが可能になった。
台湾TSMC社とUMC社もXアーキテクチャの製造では顔を連ねている。UMCは180、150、130nmプロセスの生産についてXアーキテクチャを検討している。TSMCは130nmデザインルールでの検証をすでに終え、一部顧客とXアーキテクチャの導入に向け進行中であるという。
今日まで歩留まり改善について、マスク製造とウェーハの製造部門に委ねられ、Xアーキテクチャが登場するまで設計部門が重要な貢献をすることはなかった。歩留まりを上げるための設計技術、いわゆるDFY(DFY:Design For Yield)は、製造と密着して作業を行わなければならない。
拡張できるか?
Xアーキテクチャは現実のものとなり、実際の生産において証明された。性能、面積および歩留まりのいずれも良好な結果となった。ここで問題なのはそれがどれ程の拡張性を持つかかどうかということである。果たして130〜90nmまでの話にとどまるのか、それとも65nm以降にも適用可能なのか?これについてCadenceは米Applied Materials社(AMAT)と協同で65nmのテストチップを製造した。最小幅、最小間隔の構造をAMATの標準的な製造プロセスを使って試験している。(図3)
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図3 Xアーキテクチャの拡張可能性を調査するため、2005年に米Applied Materials社は業界最初のXアーキテクチャを採用した65nm テストチップを作成した。65nmにおけるXの転写適性は素晴らしかった。キャノンのArF(193nm)露光装置「AS2」(光学系の開口数0.7、2/3環帯証明)が使用され、Xアーキテクチャのいろいろなピッチで高いパターン忠実度が得られた。既存のフローとプロセス(同じOPC、メタルフィル、マスクフローおよびリソグラフィ)を使用して、同じ構造のXアーキテクチャとマンハッタン配線のパターンが同時に作られた。特別な調整は行わなったが、チップはエルボー形状および二重曲げでも高いパターン忠実度を示した。Xアーキテクチャにおけるリーク電流や抵抗などの電気特性はマンハッタンと同等であった。(出典:米Applied Materials社) |
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AMAT Maydan Technology CenterでCTOを務めるMike Smayling氏は、Xアーキテクチャを使った90/65nmのテストチップの検証作業は終わったという。「我々はCadenceで設計された構造をAMAT、複数のIDMおよびファウンドリで生産し、製造のすべての観点から検討した。その当時(2004年)の結果はすべて良好だった。障害も見当たらず、テスト構造での電気的データはマンハッタン構造を用いた同サイズの構造のものと同等であった。CD-SEMが直交していない線を測定できないといった些細な問題もあったが、ソフトウエアの更新により我々の装置はどんな角度でも測定できるように改善した」。
Smayling氏は、この新構造の生産を始めるにあたり、すべての項目が準備できているということは、他の新技術の導入と異なると述べる。「Xアーキテクチャを実行するために必要な変更はほとんどない」と同氏は言う。「測定や検査、マスク製造について懸念していたが、それらは標準的な装置群で問題にならなかった」。
また、AMATは違ったパートナー企業ともXアーキテクチャの検証を継続している。Xアーキテクチャの構造を含む65nmテストチップを開発している。この構造は45nmのライン&スペースパターンに移行する。Xアーキテクチャは、革新的ではなく、従来の延長線上の技術で進んでいるようであり、驚くべきことは予想されない。「65nmでは、マスクの描画にレーザー描画装置『Alta 4700』を使用する」とSmayling氏は語る。「Xアーキテクチャでいいことは、それが新しい材料を導入したり、ウェーハ上の材料の使用を制限したりしないことだ」という。疑いもなくXアーキテクチャは、な標準的な技術でマンハッタン構造と同様に65nmノードへの拡張も可能である。
今年はXアーキテクチャを採用した最初の製品が出てくる年だ。設計技術者はこのアーキテクチャを検討し、それを用いた製品が市場に現れ、またメンバー企業はこのアーキテクチャを製造するのに必要なソリューションを提供する。このアーキテクチャは市場のすべての製品で適用が可能だ。最初の製品はコンシューマをターゲットにした製品となりそうである。Xアーキテクチャの特徴であるチップ面積の縮小は、消費者向け製品の分野で強い要望に応える。無線チップの分野では、面積に加えて電力削減の面でも魅力的であろう。
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