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2005年6月号
Emerging Technologies
分子メモリーが低コストメモリーの選択肢となるか?
Peter Singer
* * * *

 1980年代から分子エレクトロニクスへの関心が集まり、次第に研究が多く行われるようになってきた。現在ではナノテクノロジの一部として確立している。タンパク質のような有機物質には、現在トランジスタが動作しているのと同じようにスイッチとして動かせる可能性を秘めている。タンパク質によるメモリーの分野が発達し理論化されてきている。そして、Siでのメモリーを時代遅れなものにしようとしている。

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 もちろんまだ実用化には至っていない。米ZettaCore社の創設者でディレクタでもあるRandy Levine氏の話によれば、タンパク質をベースにしたスイッチは寿命が短く、そして「非常に遅い」ことが大きな問題だという。「これまでに全く動作しないこともあった。少なくとも妥当なものとは言えない」とLevine氏は付け加えた。
 しかし分子エレクトロニクスにはまだまだ可能性がある。ZettaCoreは、新しい方法で特にメモリー向けの分子エレクトロニクスを商品化しようとしている。電荷を蓄積する方法は、現在使われているものとよく似ており、従来のCMOS製造と互換性を持つ。異なるところは電荷の蓄積がバルクレベルではなく、分子レベルで行われることだ。「メモリーを形成する上で、1個のトランジスタがスイッチとキャパシタを兼ね備えているため、既存のメモリーセルと構造的に同じであると考えて差し支えない。キャパシタが、複合酸化膜中に電荷を蓄積しているのではなく、分子に電荷を蓄積していることが異なっているところである」。
 ZettaCoreは2300万米ドルの融資を受け、平面状の電荷蓄積セル持ったメガビットのメモリーアレイ()の形成に成功した。Levine氏によれば、同一面積で従来のメモリーセルの10倍の電荷蓄積が可能になったと言う。「実際にこのメガビットのメモリーアレイを動作させることができた。現在は機能を検証するだけでなく製造のしやすさについても考慮に入れて全ての製造工程について検討しているところだ」とLevine氏は述べている。2005年後半にはパートナーと製品の設計を開始できると見込んでいる。
 ZettaCoreの技術は、データを蓄積するように特別に設計した分子構造にある。ナノ構造のマルチポルフィリンと呼ばれる分子は、電荷を蓄積したり移動させたりするクロロフィルなどの分子とよく似ている。ZettaCoreによると、長時間に渡って情報を保持できるような設計が可能であるという。さらに、この分子の動作は安定しており再生可能で、完全に元に戻せる。「分子間に電圧を印加すると、分子が酸化あるいは電子を放出する。これがメモリーセルになっている」とLevine氏は説明する。
図 ZettaCoreのメモリーアレイには電荷蓄積を行うのにクロロフィルに似た分子を使っている。従来のCMOSプロセスが使える。ZettaCoreは、最先端のリソグラフィ技術ノードでの適用やメモリー製造コストを大幅に削減できると説明している。(出典:米ZettaCore社)

 この方法の利点の一つに、拡張性が高いことであるとLevine氏は言う。従来の半導体バルク材料では信号パターンのシフトや大量の電荷損失など好ましくない影響が発生するため、セルを使うことがいっそう難しくなる。しかし、ZettaCoreの分子メモリーは、設計寸法が最小の場合でも特性を変えることなく動作させることができる。そして各分子は、さらに長い時間複数のビット情報を蓄積するように設計することが可能になっている。「電荷蓄積密度は現在使用されている物質の10倍から1000倍高くすることができる。つまり、実際に使用するメモリーセルを20nm以下に縮小することが可能になる。平面状のセルを使用しても、必要な電荷蓄積量を得るためにトレンチキャパシタやスタックキャパシタを形成する必要もない」とLevine氏は説明する。
 もう一つの利点は、標準的なCMOSプロセスが使えることにある。「すぐに装置を入れ替える必要はない。多くの工程で、通常のエレクトロニクス製造と同じように作業を続けることができる」とLevine氏は言う。
 従来の製造技術工程とZettaCore技術の違いの一つは、Siウェーハのあらかじめ決められた場所に、分子が化学的な力で自己組織化しているということだ。自己組織化プロセス中には、各メモリー素子の中に数千から百万の分子が存在している。


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