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2005年7月号
Inspection, Measurement and Test
STEMが原子1個単位を映し出す
Alexander E. Braun
* * * *
 これまで正確で再現性のある原子レベルのデータを取得することが電子顕微鏡分野での究極の目標だった。2000年に米国エネルギー省が、米ブルックヘブン国立研究所や米アルゴンヌ国立研究所、米オークリッジ国立研究所、米イリノイ大学の5団体からなる電子顕微鏡の開発チームを作った。このチームは、TEMを使って原子レベル画像を光学収差なしに観察することを目的に結成された。
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 光学収差があると原子1個レベルの観察が困難になる。光学収差の補正を行って原子の非局在化をなくし、原子構造を鮮明に映し出すことが望まれていた。球面収差(CS)または色収差(CC)を補正するためには、TEMの電子銃にCSまたはCC補正器を導入しなければならない。アルゴンヌ国立研究所は、CSとCC補正技術を駆使してCCとCS収差の両方を除去できる「Ultra-Corrector」の実現に取り組んでいた。
 しかし、電子銃を分解しCS補正レンズを入れたとき、ほとんどのTEMでアライメントと安定性の確保するのが難しいという問題があった。2004年に米国エネルギー省が、このプロジェクトを生産に移行しようと考え始めた時、米FEI社は1Å以下の分解能をもったTEM装置を発表した。収差補正を考慮して最初から設計されていたため、非常に安定している。米国エネルギー省は0.5Åの分解能を見込んでその技術を採用した。
 米国エネルギー省の発表から5ヵ月後、FEIはTitan 80-300 (S)TEMを導入した。この装置は加速電圧が80〜300keVと広範囲に渡って変えられるため、様々なサンプルの観察を行える。例えば3次元トモグラフィを行う場合、ステージが70度に傾けられた時サンプル深さが大きくなるため、加速電圧が300keV必要になる。この加速電圧はLow-k材料の観察にも使われる。Siを観察する場合の最適な加速電圧は180〜200keVで、カーボン系を観察する場合の加速電圧は89keV未満である。この(S)TEM装置は、加速電圧の全範囲に渡って使用できるようにアライメントが保持されるように設計されており、高分解能の分光器としてモノクロメータを使用している。
 収差補正のアップグレードを行わない場合、TEMの理論的な限界分解能を示すインフォメーションリミットは0.7Å未満、STEMの分解能が1.0Åとなっている。CSプローブ補正器は小型プローブによく使われるようになり、高速解析を伴う実験が行えるようになった。画像補正器により非局在化効果を除去できるため、1nmのゲート酸化膜でも(微細化が進んでゲート酸化膜がさらに薄くなっても)、形状をはっきりと映し出すことができ、どこから始まりどこで終わっているか原子レベルの観察を行うことも可能である。ゲートや配線の性能は、これらの界面の材質や形態により決まるため非常に重要である。90nmノードでは、ゲート酸化膜層はわずか原子5個程度しかなく、界面全体の材料解析と1Å以下の解像度が必要になっている。現在では原子単位の解像度が求められている。
図 結晶Si(写真上)と多結晶Si(写真下)の間にある2nm厚のアモルファスSi酸化膜層からなるMOSFETトランジスタゲートの断面写真。各原子配列とダンベルがはっきりと映し出されている。この画像は正確な位置データとゲート酸化膜界面の粗さを示している。界面付近のSi結晶構造が、局所的にどのくらい影響を受けているかも分かる

 半導体の分野では、これまでTEMは主に研究解析ツールであった。最近では微細化が進むにつれ、デバイスメーカーはSEMで観察できる以上のことを行わなければならなくなった。ところが機能が複雑なため、現場のオペレーターはSEMからTEMへ簡単に移行できない。しかし、世界最先端の研究所間の協力により、これら一連の工程を半導体業界のニーズに適用することができるようになり、TEMを測定アプリケーション用に自動化することが可能になった。
 この装置は、化学的/電気的な構造解析を行えるほどのスペクトル分解能を有しているため、界面を形成する各原子配列の画像化やバンドギャップエネルギーや原子レベルでの絶縁情報といった電気的な情報を取り出すことができる。そのため、ナノレベルの微粒子やナノチューブなどの新材料やアプリケーション、さらに先端ディスプレイやプラスチックエレクトロニクス向けの有機材料やポリマー材料の開発にまで使われている。

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