無償購読申込・変更
Email Newsletter登録
記事検索

検索方法の詳細



2005年9月号
グローバル競争勝ち組の法則
Semiconductor International日本版
編集ディレクター
津田建二
* * * *
 7月号の「人や業者を見下す態度こそが敵」という記事に対して、読者からの意見(Engineer’s Voice参照)をいただいた。また、NECエレクトロニクスのOBという方からは、その半導体メーカーは現在、設備の稼働が確認され検収されたあとの支払いを遅らせていることはありません、というご指摘をいただいた。
 Engineer’s Voiceは下のコラムを読んでいただくとして、半導体メーカーのOBの方の意見に対しては、検収後の支払い遅延を問題にしているのではなく、装置納入後に1円も支払わないことを問題にしている。海外の半導体メーカーは装置の納入後に代金の80%を納め、検収後に残りの20%を納めているところが多い。この時点で、米国だけではなく欧州、台湾、韓国の半導体メーカーと同じ土俵に立っていないことを指摘してきたのである。検収後の支払いを、もし遅らせているのなら問題はさらに深刻だ。海外の企業と同じ土俵で競争しなければ、甘えの気持ちが働いて負けてしまう危険性が高い。
Advertisement

 
グローバルな競争における勝ち組には決まった法則がある。国や軍からの補助金などの資金を当てにしないという法則だ。企業が生き残るための危機感を常に持ち、それを自らの意識改革で乗り越える。わずか1年半で2兆円もの借金を返した日産自動車、1兆円もの利益を稼ぐトヨタ自動車や韓国Samsung Electronics社、危機感を煽り自ら鼓舞し続けパラノイアだけが生き残るという名言を吐いた米Intel社。いずれの企業も何かの補助金を当てにした戦略はとっていない。
 企業が手持ち資金を使い、世界企業と競争するためにはコストダウンが不可欠。Engineer’s Voiceで寄稿をいただいた同志社大学の湯之上隆氏は、日本の半導体メーカーがものを安く作るための技術を軽視し開発すべき技術の的を外してしまったことが負け組になってしまった原因だと分析する。時代がメインフレームコンピュータからダウンサイジングのPCへと流れ、高いDRAMではなく安いDRAMを作らなければならなかったのにもかかわらず、高いDRAMを作り続けた結果だという。
 同氏が日本の半導体企業トップにヒアリングすると、ウチは技術力があるが営業やマーケティングが弱い、とよく言われた。しかし、本当に技術力はあるのかという視点で半導体産業をチェックすると、高価な技術をひたすら開発してきたことを技術力があると称し、コストダウンするための技術を軽視してきたことが、世の中の流れから外れてしまったのではないかと結論付けている。
 実際、Samsungは1990年から安いチップの製造に全力を傾ける(「Samsungが成功した理由」、 http://www.sijapan.com/breaking/0506/10bu_Samsung05610.html )。アルファ線によるソフトエラー問題には、パソコンをリセットすれば復帰するため、何の対策も施さなかった。ひたすら、小さなチップ、製造工程の短いチップを目指した。当然、設計レイアウト上で回路を詰め込むための工夫もあった。しかし、日本の企業はメディアも含めて、Samsungが安いチップを生産できる理由を人件費が安いからだと決めつけた。これはウソである。
 半導体産業は人件費に左右されない、むしろ人件費の高い日本に適した産業である(「中国で生産すると高くつく?!」、 http://www.sijapan.com/content/0506vol2/edit/edit_0506.html )。1990年頃、筆者は台湾や韓国、シンガポールなどの先進アジアにおける大学卒業者の初任給を各地でヒアリングしたが、いずれも日本と比べて大きな差はない。そのころでさえ、日本が18〜19万円に対して14〜15万円程度だった。しかも、半導体産業における人件費比率は無視できるほど低い。だから、人件費が安いという理由はあり得ないのである。
 むしろ今、日本の半導体メーカーに求められるのは、つぶれるかもしれないという危機感を持つことである。生き残るためにどうすべきかを考えることである。考えなければ何年後かには必ずつぶれてしまう。SWOT(Strength, Weakness, Opportunities, Threats)分析によって自分の企業を見つめてみるもよし。ちなみに、Samsungは新しい戦略を立てるときには必ずSWOT分析を行っている。安いチップ開発の時も、中国進出の時にもSWOT分析を使った。
 冷静に自社を分析すれば、どのような戦略をとるべきか自ずからわかってくる。せっかく日本に適した半導体産業にいるのだからこれを生かし発展させない手はない。
ご意見を
聞かせてください
Semiconductor International日本版編集部では日本の読者の皆様からのご意見や反論をお待ちしております。下記メールアドレスまでご連絡ください。採用分には薄謝を差し上げます。
editor-si@reedbusiness.jp
■敗北を認め、挑戦者として強者に学び、
装置メーカーと対等な立場になることが重要

 私は1987年から2002年まで、16年間、日立製作所にて半導体プロセス開発に関わった。今は、同志社大学で半導体産業論に関する社会科学の研究を行っている。7月号の「人や業者を見下す態度こそが敵」を読み、正にその通りと思った。かつての自分を振り返ってみても、半導体メーカーは、装置メーカーをスレイブしていたように思う(多分、今もそうだろう)。少なくとも対等なビジネスパートナーではなかった。
 日本の大手半導体メーカーは、装置メーカーを見下すだけでなく、シェアや利益率で圧倒的な差をつけられている韓国や台湾の半導体メーカーに対しても、「今も昔も技術力では負けていない」という根拠のない自信(過信?)を持っているように思う。私は、これまでの調査研究から、日本の半導体メーカーは安く作る技術力に関しては韓国、台湾などに相当後れを取っていると判断している。しかし、このようなことは、日本の半導体メーカーは殆ど認めない。どの半導体メーカーも「コストが問題だ」と言っているにもかかわらずだ。このような研究結果を、以下のサイトにあるデイスカッションペーパーにまとめた。
http://unit.aist.go.jp/techinfo/cisrep/p05.html
のNo.12あるいは 25。
 日本の半導体メーカーが装置メーカーを見下したり、韓国や台湾に「技術力では負けていない」と主張する背景には、1980年代にDRAMで世界を席巻した成功体験があると思われる。世界一になった栄光が、このような傲慢さにつながっているのではないだろうか。
 日本の半導体メーカーがもう一度復活するためには、米国、韓国、台湾などに負けたことをきちんと認識すること、しかも安く作る技術力で負けたことを認識すること、そして挑戦者として強者に学ぶこと、装置メーカーとはビジネスパートナーとしての信頼関係を築くこと、などが重要ではないかと思う。
(湯之上 隆、同志社大学 COEフェロー、44歳) 

HOME | SI(日本版)について | 無償配付申込・変更 | サイトマップ | お問い合わせ | 広告掲載について | 関連サイト