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2005年10月号
多段ワイヤボンドにおける
ワイヤループ形成
Stephan Tang, Gary Gillotti
米Kulicke & Soffa社
www.kns.com
 ワイヤボンドパッケージ内のI/O密度を高める必要性が、結果的に多段ワイヤボンドパッケージ技術の出現をもたらした。この新しいパッケージを採用するためには、ワイヤボンドのルーピング、ワイヤ、キャピラリー、プローブや封止など各技術の向上が必要となる。
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 現在生産されている多段ワイヤボンドには、3層のボンドパッドレイアウトが採用されており(図1)、4層ダイの登場も目前とされる。半導体メーカーはワイヤボンディングの視点から見て、このまま狭パッドピッチ化を図るよりも、多段の配置の方が現実的だと考え始めている。なぜなら60μmピッチのボンドパッド3層で事実上20μmピッチを達成できるからだ。一方でボンドパッド数を増加するために必要なSi面積の拡大は、ワイヤボンディング工程における耐性とトレードオフの関係にあるためやむを得ない。また、多段ワイヤボンドの長所として、キャピラリやワイヤについては従来の材料が使用できるという点が挙げられる。超高密度のキャピラリやワイヤは脆弱であるためは量産に適していない。
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 多段ワイヤボンドパッケージの登場は、ワイヤループ形成で新たな課題をつくりだすことにもなった1)。単一デバイスでワイヤを複数層にして使うことは難しい。なぜならパッケージ高全体を制限する一方で、ワイヤのショートを避けるため、ループ形に十分な隙間を持たせなくてはならないからだ。このため、ワイヤの下層はできるだけ低く、上層はより高いループ高にして、ループが接触しないよう平らな部分をより長く保たなければならない。

多段ワイヤボンドの配置

 多段ワイヤボンドパッケージの中には、3段のワイヤボンドと5段のリードが取り付けられた基板で構成されたものがある。通常、基板から最初の3層は電源とグランドリングであり、残り2層はI/O割り当てである。これらの多段の配置では、ワイヤ数が増加するため、ワイヤ間に十分な隙間をもたせることが難しく、ワイヤボンディング装置のプロセスプログラム設定を複雑にしている。図2に多段デバイスの基板の3層を示す。
 電源とグランドワイヤ上のワイヤの短絡を避ける1つの方法は、ループ高を交互に配置にすることだ。しかし、ワイヤ間の隙間を最大化するために、2ndボンドを位置調整してループ高を同じに保つことも可能かもしれない。最初から複数層のワイヤを同じループ高に保つことは、パッケージ全体の高さを最小化するために不可欠だ。一方、交互に配置にすることは2ndボンドでダイが位置変動しても短絡が避けられるため効果的だ。高度なワイヤボンディング装置のアプリケーションソフトも、各パッケージ間のワイヤ隙間を維持するため、参照システムとワイヤ間依存性を利用してダイ変動の影響を最小化するのに役立つだろう。
図1 3層ボンドパッド配置の例
 ダイ位置の再現性に関する懸念と共に、ワイヤボンダー間の装置間差やボンディング材料のばらつきを考えると、ワイヤループ間の隙間を広く取る必要がある。典型的な水平方向の隙間は1線径(〜1mil)程しかないが、縦方向の隙間は3mil程にまで広げられるかもしれない。おそらくループ高は低ワイヤ層で3〜6mil、中間ワイヤ層で9〜12mil、高ワイヤ層で15〜18milになる可能性がある。最大許容ループ高を超えたワイヤは、モールド後に露出するワイヤが原因で欠陥を引き起こす。また、ワイヤ隙間に影響を与える問題として、基板層どうしの近接も挙げられる。外側の層に取り付けられたワイヤループは、ワイヤと基板間のショートを避けるため、内側の層と1あるいは2線径分は離さなければならない。
 その他、多段ワイヤボンドの配置では、同一リードに取り付けられたワイヤや短ワイヤも問題となる。ワイヤが同一リードに取り付けられていると、最上層のワイヤが2ndボンドに近付くとき最下層ワイヤと干渉する可能性があるので、ワイヤの隙間が問題となる。可能であれば2ndボンドを同一リード上に交互に配置しておくと効果的だ。また、短ワイヤのボンディングにおいて、成形プロセス中にワイヤの繰り出しが一定でないと、得られたループによって更に増幅されてしまう。極端な場合、余分なワイヤの繰り出しによって、次の段とのワイヤ間がなくなってしまうような高すぎるループを作り出す。反対に、ループが密接しすぎてダイの端との間隔がなくなったり、破壊されてしまう可能性もある。短ワイヤにおけるこのループ高さのばらつきは、放射状に配置するボンドプログラムでワイヤ長やボンディング方向を変更すると悪化してしまう。
図2 積層デバイスの2ndボンド3層

下層ワイヤのループ形成

 下層ワイヤのループ高さを最小化するにはいくつかの方法があるが、それらの形状の間にはトレードオフの関係がある。従来のループ形はネック損傷を受けやすいので超低ループ高のアプリケーションにはあまり適していない。
 成形プロセスを改良して逆動作を起こさないようにすれば、いくらかの緩和になるだろう2)。あるいは、後に続くルーピング動作の下側開始点をつくるために、1stボンド上にワイヤを圧着するよう高度な逆動作による改良もできる。この方法では超低ループ高が可能となるが、追加的な成形動作でワイヤボンディング装置の生産性が低下する。また、1stボンド近くで引っ張り強さが犠牲になるものの、ネック損傷の懸念は取り除かれる。圧着の逆動作は引っ張り強さを増すためにあまり積極的には行われておらず、超低ループ高を実現していないのが現状だ。その他の形状として、逆ボンディングループやSSB(Standoff Stitch Bond)ループがある。
 SSBループは最も時間のかかるプロセスなので量産に使用される可能性は極めて低い。また、ダイ表面上へのループバックはダイエッジや上層ワイヤとの隙間問題を生じさせる。ダイエッジ隙間問題を解決するため、高度なバンピング技術を用いればボンドパッド上のバンプへのループを上げることが可能になる。
 SSBループは下層ワイヤにとっても理想的ではない。なぜならその形は2ndボンドで高いループを含む傾向があるからだ。この余分な高さにより、ワイヤショートを避けるための上層ワイヤの隙間の確保が難しくなる。一方、この形状を使用するメリットは、ボンドパッドより上の上層ワイヤがより広い隙間をもつということだろう。
図3 鋭いキンク(曲がり)をもつ進化型ループ形

上層ワイヤのループ形成

 下に配置されるワイヤと十分な隙間ができるように、上層ワイヤはボールボンドから更に離して高いループ高を維持できるワイヤループが必要になる。プロセス時間が最短であることから従来のループ形が好ましい。
 しかし、1stボンドから更に離したループ高の隙間をつくるため、より進化したループ形が必要なときもある。図34に示した進化型ループ形は、高いループ高を保つため平らな部分を長くし、2ndボンドへ鋭くワイヤを持っていくためにキンク(曲がり)を大きくしている。極端なループ高隙間をつくりだすと、プロセス時間を増加させ、揺れ、安定性の低下、再現性といった性能問題につながる。
 上層ワイヤは1stボンド位置でのループ高隙間もつくらなければならない。このボンディングされたボール上にある余分な高さによってワイヤが傾く可能性があるが、3つの逆動作を使うことで軽減することができる。
図4 緩やかなキンク(曲がり)をもつ進化型ループ形

モールディングにおけるワイヤ流れ

 モールディングプロセスにおいて、多段ワイヤボンドの限られた隙間が極めて重要となる。モールド樹脂の流れによりワイヤが短絡する恐れがある。モールド樹脂による短絡を防ぐ1つの方法は、ループ形成プロセス中にワイヤを横方向にキンクさせる(曲げる)ことだ。モールド樹脂の流れる方向に横方向のキンクをすれば、ワイヤのモールド樹脂流れに対する耐性が強まる。
 他のモールド樹脂対策としては、エポキシ樹脂の封止材料「NoSweep」がある。ワイヤボンディング直後にNoSweepを塗布しキュアすると、ワイヤが封止され所定の位置に固定される。図5にNoSweepの単一リングを使ってワイヤを固定している積層デバイスを示す。さらに、NoSweepはショートしたワイヤを分離することができ、球状のフィラーの大きさはワイヤ隙間より格段に小さい。シリカのフィラーがワイヤループ間の狭い隙間に入り込み、それによってワイヤどうしを分離させることができる。
図5 NoSweepでワイヤを固定した積層デバイス

ボンディング材料における進歩

 ループ形成プロセスの問題を緩和するため、ボンディング材料においていくつかの進歩がみられた。Auメーカーは、多段ワイヤボンドに対応するため、化学物性、熱影響部、硬度、跳ね返り高さやワイヤの弾性エネルギー効果などの研究を進めている3)。通常、低/高ループに使われるワイヤは様々なパッケージに合わせて個別に開発されてきた。しかし、多段ワイヤボンドパッケージでは3〜18milの低/高ループ双方に使用可能な1種類のワイヤが必要になる。この新しいワイヤはネック損傷を受けにくく、長および短ワイヤの要求を満たす仕様でなければならない。外側の層の長いループには、たるみや揺れがなく、長く平らな部分を保てるボンディングワイヤが不可欠である。新しいワイヤでワイヤ揺れが減少されれば、モールディング後に見られる不具合を軽減することもできる。
 キャピラリ設計者は、ループ形成プロセスにどんな特徴が大きく影響するかを特定するため、基本寸法と幾何形状の許容値における変化の影響に関する研究を進めている。この種の研究には、各キャピラリの効果を測るため、ループ高、全体的なループ形やワイヤ揺れにおける変化を明らかにすることが含まれる。また、キャピラリ設計者は、ボンディング方向に伴うループ高の違いに対してキャピラリ設計がどれくらい重要であるかも調査している。難しい多段ワイヤボンドパッケージのループ形成プロセスにおいて、異なるループ高が広く使われている。
 ウェーハプローブメーカーは、プローブの幾何形状の影響をより詳しく調べるため有限要素解析(FEA: Finite Element Analysis)を用いてきた。FEAで通常、応力や応力面積、力、幾何形状の影響を調査する。図6は正常な作業環境におけるプローブ先端にかかった力のFEAモデル用の出力データである。これらの研究によって、プローブ寿命とスクラブ長を最大化するのに不可欠な寸法の設計目標が確立されている。製品ウェーハが個々に異なるように、プローブも多くの型が存在するため、ウェーハテスト方法については様々な意見がある。従って、プローブカード設計者は、厚い酸化膜を破りたいテストエンジニアや、ガラスの切断やスクラブ深度を高度に制御したい多くのエンジニアに説明しなければならない。
図6 プローブ先端にかかった力のFEAモデル

結論

 柔軟性のあるワイヤボンディング技術により積層パッケージの成功に不可欠なプロセスソリューションが可能になる。ワイヤボンダーやキャピラリ、ボンディングワイヤ、プローブにおいて継続的なプロセスの改善が行われていることがデバイス組み立てを可能にしている。ワイヤループ形成プロセスにおける技術革新もパッケージ設計のロードマップを推進させるのに重要な役割を果たしている。難しいワイヤ形状では十分な隙間を確保するために、超低ループ高や高いループ高を安定して形成可能な技術が必要になる。これらの要求を満たすため、既存のループ形が改良されたり、新しい形状が開発されたりしている。ループ形成プロセスと共に、エポキシ樹脂の封止材料NoSweepもモールド樹脂流れによる潜在的な歩留まり損失への対策として使用されている。ワイヤボンディング技術は、引き続きエリアアレーデバイス組み立てにおいてフリップチップに対抗できる安価な選択肢であり続けるだろう。

謝辞

 積層ルーピングの知識や画像を提供して頂いたJon Brunner氏、Romeo Olida氏ならびにJeff Swiatek氏に感謝申し上げる。また、ウェーハプローブ分野でご協力いただいたRey Rincon氏とJohn McCormick氏にも感謝の意を表したい。
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Stephan Tangは、2000年7月より米Kulicke & Soffa社のアドバンストプロセスエンジニア。ボンディングプロセスとポリマー製品開発に従事。米コーネル大学で材料物性工学の理学士号取得。
E-mail: stang@kns.com
Gary Gillottiは、1980年より米Kulicke & Soffa社で様々な開発、運営に携わる。ボールボンダとプロセス開発において長年の経験を有し、現在この分野で3つの特許を持っている。米アルカディア大学でコンピューターサイエンスの理学士号取得。
E-mail: ggillotti@kns.com
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参考文献
1. J. Brunner, I. Qin, and B. Chylak, “Advanced Wire Bond Looping Technology for Emerging Packages,” IEEE/CPMT/SEMI 29th International Electronics Manufacturing Technology Symposium, 2004.
2. D. Stephan, Saraswati, F.W. Wulff and C.D. Breach, “Effects of Cryogenic Deformation on the Mechanical Properties of Gold Bonding Wire,” EMAP, December 2004.
3. Saraswati et al., “Looping Behaviour of Gold Ballbonding Wire,” 6th EPTC, December 2004.

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