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2005年11月号
市場の真のニーズを把握し切れているか

姚 鋼(主幹記者)

* * * *
 2005年上半期の中国電子産業は30%の急速な成長を維持したものの、華為、華潤、上華など、常に利益を計上してきた企業が軒並み赤字に転落した。「多国籍企業に対して、中国本土企業の誇る優位性はどのようなものか」との質問には、次のような回答が返ってくるのが常である。「中国本土企業は中国市場の需要をよく理解しており、多国籍企業に比べ消費者の需要変化を正確に把握することができる」と。だが、中国本土の携帯電話機メーカーが自己の市場で大敗を喫しているのだから、中国企業が自負している優位性は事実と食い違っているのではないか。
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 IC設計業は2005年上半期の中国半導体産業で最も急速に成長した業種であり、売上げの伸びは57.4%増に達している。しかし、最終製品市場のシェアが大幅に減少したため、中国の地場企業をターゲットとしていたIC企業も巻き添えを食らった。多数の設計企業は上半期の売上目標を達成できなかったと見られ、2003年に流行した設計サービスモデルも疲弊を呈してきている。
 最も痛々しい携帯電話機市場を例に取ろう。かつて、中国の携帯電話機大手が苦境に陥っていたにもかかわらず、フィンランドNokia社や米Motorola社などは中国各地の市場を次々と獲得していった。このような状況に至ったのはなぜだろうか。第一に、家電の製造技術が極めて成熟していたのと反対に、当時の携帯電話機の製造技術はまだ発展途上の段階にあった。革新技術に欠ける中、中国企業は技術とブランドの蓄積を怠ってきたため、応用面における革新能力を実質的に引き上げることができなかった。こうした状況が数年続いた結果、組立ラインは固定資産として残った反面、技術、ブランド、経験、流通経路などの無形資産が大きく縮小してしまった。
 第二に、中国企業の製品の特徴に対する重視が極めて遅れていた。多国籍企業は消費者のニーズを十分に理解していた上、品質管理においても豊富な経験があり、OEM製品に自社のロゴマークを貼るにしても需要に基づいてこれを行っていた。一方、ブランドを提供する中国企業はOEM製品を一方的に受け入れるだけで、成功するか否かは運任せであった。厦新のA6機種もOEM製品でありながら一世を風靡した中国ブランド製品となったのだが、その後この成功を継続できなかったのはなぜであろうか。海外ブランドの携帯電話機は、ロゴを見なくともどの会社の製品であるかだいたい見当がつく。だが、中国ブランドの製品はどれもよく似ており、特徴に欠けていた。
 第三に、中国の携帯電話機メーカーは、多国籍企業と真っ向から競争に臨んだことがなかった。あるいは、多国籍企業と同レベルの市場で競争したことがないと言った方いいかもしれない。中国メーカーの市場拡大は国内の中小都市での市場獲得に頼っていたが、多国籍企業は常に主要大都市の市場をターゲットとし、これらの市場が飽和するや、次に低価格製品を掲げて中国企業の既得市場に参入した。中小都市の消費者に多くの選択肢が与えられる中で、実質的な向上が図られない中国メーカーに勝利の道があるはずない。
 実際、中国メーカーのこうした状況は当初から存在していた。ただそれが、多国籍企業との競争に立たされる前には明らかにならなかっただけである。中国の携帯電話機メーカーにも、中興通訊(ZTE)、レノボ(旧レジェンド)など、数は少ないが急速な成長を遂げている企業がある。しかし、これらの中国携帯電話機メーカーは、いずれも技術の追求に真摯な企業である。レノボが携帯電話機市場に参入したのは3年余り前だが、生産ラインの構築に主力を注ぎ込むのではなく、上海と廈門に数十人規模の研究開発チームを2つ設置し、互いに競争させることに注力した。生産ラインを建設するより、技術能力面を重複させて繰り返し強化することの方がはるかに強力である。
 携帯電話機メーカーに起こった事は、実は国内チップ設計会社にも見られる。製品の同質化競争は縮小しないばかりか、拡大の趨勢にある。8月26日、中芯国際(SMIC)が北京工場で開催した「IC設計会社とファウンドリ業者の協力による中国IC産業発展推進」のフォーラムには、中星微や大唐、北京ハイアール、六合万通、方舟、華大、京東方などの中国の著名設計企業の経営陣が出席し、討論に参加した。司会者の「将来の有望市場はどこにあるか」との質問に、7社の設計会社のトップは口をそろえて「通信と消費者向けエレクトロニクス製品」と答えた。
 SMICの総裁である張汝京氏はこの意見に賛同を示すと共に、設計会社に対して「電源、自動車、LED、インバータモータ向けチップなどが大手IDMに独占されている分野でも、中国の設計業者は発揮できる力をもっている。SMICは既に海外の顧客向けに関連チップ製品を開発、製造している。もし、国内企業でこれらの分野に参入する意向があるなら、SMICは全力でバックアップする」と述べた。
 さらに言えば、どの製品も顧客を中心として設計されるべきである。中国の設計会社に不足しているものは、設計技術の能力ではなく、トータルなソリューションを提供する能力である。中国における総合的最終製品メーカーの技術能力の大幅な向上が待たれる今日、チップ製品を取り巻くソリューションの開発協力体制の形成が極めて重要なカギとなっている。例えば、方舟の製品は技術的にARMプロセッサに引けを取らないのだが、ARMプロセッサのように第三の周辺ソリューションを開発する協力体制が確立されていない。このため、ARM製品がますます波に乗っていくのに対し、方舟の製品にお声がかかることはほとんどない。
 中国科学院計算所所長であり工程院院士の李国杰氏は、2005年IC Chinaサミットの席上、中国科学院計算所が、中国政府の「国家937工程」助成資金によるプロジェクトを獲得したことを明らかにした。李国杰氏は、「このプロジェクトは、本来IC設計会社が担当するのが相応しいのだろうが、幸運にも、最終的に中国科学院計算所が獲得した」と述べた。ファブレス企業が獲得すべきものを逃したことは残念だと言わざるを得ないが、チップ設計のみの業務が全体に占める割合は小さい反面、着手したらその周辺業務分野は限りなく広がる。政府の関連部門としては、中国科学院の持つ全体的な統合開発能力を重視したのであろう。
 舞台には主役が必要だが、脇役もまた重要である。観客は主役の風采を鑑賞すると同時に、脇役の精彩も楽しむものである。これが消費者の真のニーズであると言えよう。中国のファブレス企業や携帯電話機メーカーが主役を務めることのみを目指し、周辺サービス能力の構築を怠り続けるようであれば、中国製のチップは存続を求め続ける命運から逃れることはできず、中国製の携帯電話機産業も立ち直ることはできまい。

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