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2006年2月号
共同ファブは「ウワモノ行政」とはどう違う?
日本版 編集ディレクター
津田建二
* * * *
 昨年暮れの押し迫った中、日立製作所と東芝、ルネサステクノロジの3社が共同の半導体ファウンドリ事業を検討する、というニュースが流れた。またしても、共同ファブの構想の再浮上だ。これまで、このプロジェクトを進めてきた経産省の姿が今回のニュースリリースでは出てこない。なぜか。多くの業界人によれば、表に見えないところで手綱を引いているのが経産省だという。では、なぜ表に出ないのか。
 まずその前にファウンドリ事業を日本でやらなければならない理由は何か考えてみよう。Siウェーハに回路を焼き付けるファウンドリ事業は、台湾のTSMC社やUMC社がこれまでずっと、世界をリードしてきた。米IBM Microelectronics社やシンガポールのChartered Semiconductor Manufacturing社なども実績がある。ここ数年、マレーシアの1st Silicon(http://www.sijapan.com/content/0510vol2/mover/mover_0510.html)社や、中国のSMICなども自国でファウンドリ事業を展開している。
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 しかし、それぞれのファウンドリメーカーの戦略はいずれも一つではない。TSMCはさまざまな顧客に対応する事業戦略を持ち、UMCやIBMはストラテジック・アカウントと呼ぶ特定の大口顧客を相手にする。Charteredは、米Hewlett-Packard社や米AT&T社、IBMなどとの共同ラインを持ち顧客を確保している。1st Siliconはフラッシュマイコンや高耐圧デバイスなど最先端の微細化を必要としないアプリケーションを狙ったビジネスを展開している。
 1980年代中頃に台湾TSMCの創始者であるMorris Chang氏は、米国にファブレス企業が雨後の竹の子のように生まれてきたことに目をつけた。まさにスタートアップ・フィーバーと言われた時期だ。同氏はファブレスが設計だけをやるなら製造だけのファウンドリ事業を自分はやろう、と考えた。まさに需要があるからそれに応える供給体制を作ろう、という市場経済ビジネスの基本中の基本を実践した。
 国内でも、Charteredと同様、富士通も自らのラインを有効活用するため、米国のLattice Semiconductor社と手を結び、ラインに投資してもらうというファウンドリ事業を進めている。これらの例は、いずれも需要と供給の関係、あるいは顧客と供給者との関係を明確にしたビジネスモデルである。
 しかし、今回の共同ファブ構想はこれらのビジネスモデルとは全く違う。これまでお役所が得意としてきたウワモノ行政そのものではないか。役所が器を作り、中身は民間でやってちょうだい、という従来の行政スタイルとはどう違うのか。顧客がいないのに器を作るのである。顧客を見つけるためのマーケティングや、営業力をどうやって生み出すのか。
 例えば、多くのファウンドリメーカーが設計部門や設計ツールを揃えているのは、マーケティング力強化のためだ。設計も手がけるのではない。顧客が作りたい論理仕様や回路を同じ設計ツールやIPでSiに焼き付けられますよ、とファウンドリメーカーは顧客や潜在顧客に訴えている。VerilogやVHDLで設計図を入力してもSi上で動作するという保証は何もない。
 TSMCやUMCにチップ製造を依頼すればすむのにもかかわらず、日本にファウンドリが必要というのならば、どのようにして競合のファウンドリ企業と差別化を図り、売り上げを上げていくのか。この戦略作りが実は最も重要である。しかし、肝心のこの絵はまだ見えていない。
 経産省が補助金を出してそれに飛びつく半導体メーカーがいるという構図が存在する限り、半導体メーカーの競争力の強化にはほど遠い。一方で、補助金を出して法人を作ることが役人の天下り先を確保するためだ、という見方もある。だとすると、経産省が表に出ずにこのファウンドリ構想に熱心な理由がみえてくる。経産省がこのプロジェクトを進め、しかも天下り先作りと言われないようにするためには、このファウンドリ企業には役所から一人も入れない覚悟が必要だろう。
 ホンダ技研工業の創始者、本田宗一郎氏は自分の町工場を大きくし会社法人としてやっていく決意を固めるため、それまで一緒に家内工業を大きくしてきた優秀な自分の実弟を泣きながらクビにした。家族経営、同族経営では会社で働く従業員のモチベーション低下につながり、社会にオープンな企業形態としては適しないと判断したからだ。これほどまでに高潔な人格者だからこそ、社員がついて行き、世界のホンダに成長できたのだと思う。新しいファウンドリ企業には、たとえ優秀な役人でも一人たりとも入れない、という覚悟があるかどうか、みんなで見守っていきたい。
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■「やろう」という強い意志が必要

 2005年11月号Editorial「半導体メーカーの凋落とエンジニア退職との関係」(http://www.sijapan.com/content/0511vol2/edit/edit_0511.html)を読ませていただきました。以下、私の思いを述べます。
 新聞によりますと韓国Samsung Electronics社は2005年11月3日、中長期経営ビジョンを発表しました。それによると、デジタルロジックLSIなどを次世代の重点事業と位置付け、2010年に世界シェア首位の製品を現在の8品目から20品目以上に、売上高を2004年比2倍の11兆5000億円に引き上げる目標を示しました。必要な投資、すなわち金も使うとのことで、目標は実現しそうです。
 DRAM とフラッシュメモリーは世界制覇を果たしたので、次はデジタルロジックLSIなどでも「やってやろう」と言うのがSamsungのポジションです。
 英語で 「Where there is a will, thereis a way」という言葉があります。このような強い意志が日本の半導体産業にあれば大丈夫なのですが。その気になってR&Dに日本半導体は邁進すべきでしょう。
 このような気概がない我が国半導体メーカーが凋落するのは明らかです。1986 年に我が国半導体メーカーは世界の頂点に立ち、あの米Intel社が日本に負けて、DRAM ビジネスを撤退しました。その時必要だったのは高らかな勝利宣言でした。「日の丸半導体は DRAM で世界を制覇しました。次は日本の基礎研究が勝利し、その発明に到ったフラッシュメモリーでやります」とは言いませんでした。
 その代わり内心は、「もう大丈夫だ」と誤解し手を抜いてしまいました。この状態では秋の夕陽と同じでツルベ落しにならざるを得ません。強い意志が日本半導体にあったなら大丈夫だったのですが。凋落は、1986 年に始まっていたと言えそうです。
 その間「日本に出来たのだからうちでも出来る」と思ったSamsungの頑張りは世界中が知ることとなりました。投資も重ねました。
 一方、Intelはマイクロプロセッサ独占街道に賭けて成功しました。そして日本の学会発表をコピーしてフラッシュメモリーを実用化し量産に走りました。その間、日本は見ていただけでした。日本では経営陣の誰もがフラッシュの前途を見抜けませんでした。そして、日本のフラッシュの発明者は裁判を起こしています。
 一方、エレクトロニクス国家擁立を目指した台湾は日本に協力を求めましたが、日本は冷たい態度をとりました。台湾だって必死だから米国で活躍中の同胞に力を求めTSMC構想を着想しスタートを切りました。ファウンドリと称する新しいビジネスモデルを日本では冷笑していました。曰く、「台湾で、うまく行くはずがない」と。
 ところが予測に反して、TSMC構想は成功しました。この時、日本企業の一つが手を差し延べて、資本金49%プラス技術支援を実施していたら、今の日本半導体はこれほど凋落しませんでした。
 さて、エンジニァ退職の問題は本質的な問題ですが、やりがいが全ての基本であると思います。やりがいがあれば人は去るどころか集まって来ます。日本全盛時に世界の学会で活躍した人材も集って来て育って大成した訳であります。すなわち80年代の全盛には因果関係があった訳です。
 「Where there is a will, there is a way」と宣言してR&Dに注力すればトップクラスのエンジニア等の人材は集って来て健全な成果競争が起きます。このような状態を経営陣は作らなければなりません。Samsungは世界的な人材をアメリカからヘッドハントしました。日産自動車もヘッドハントして成功しました。ソニーも続いています。日本半導体メーカーにその気はあるのでしょうか?真剣に「やってやろう」思って欲しいです。
(大和田 敦之、エイデム 代表取締役)

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