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2006年4月号
65nm以降のリソグラフィに対応可能な2層レジスト
川名 大助
佐藤 和史
東京応化工業
www.tok.co.jp
Sanlin Hu
J.K. Lee
Eric S. Moyer
米Dow Corning社
www.dowcorning.com
 Si含有率の高い(23wt%)レジストにより65nmノードで求められる高いエッチング耐性と低いラインエッジラフネス(LER:Line Edge Roughness)を実現している。また、液浸リソグラフィにも適用できることが示された。
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 液浸リソグラフィへの理解が深まる中、65nm以降に向けてArFリソグラフィの導入が模索されている。微細化が継続していく限り、レジスト膜は高解像度でプロセスウインドウが十分広くなければならない。そのため、パターン転写におけるエッチングの選択性が重要な課題となっている。
 エッチング耐性の要求を満たすため、多層レジストプロセス(MLR)や2層レジストプロセス(BLR)など複数のプロセスが提案されている。MLRプロセスで最も望ましい点は、結像に単層のレジストを適用できることである。下層にある無機の極薄膜はパターン転写時にハードマスクとして働く。このハードマスクにはSiが含有しており、スピンコートのポリマーまたはCVD膜である。通常、ハードマスク層は有機膜である。MLRの方法での欠点は3つの層が必要で、高解像とパターン転写の工程数が増加し複雑になることである。
 MLR以外で有力な方法はBLRである。さまざまなBLRが開発されており、これまでにアクリレート1)2)や環状オレフィン無水マレイン3)4)、ビニルエーテル無水マレイン5)6)、ポリ(シルセスキオキサン)7)〜10)のレジストなどが報告されている。これらの研究で開発されたすべての化学材料には利点だけでなく制限もある。2つの重要な特性は解像度とエッチング耐性である。一般的に、ポリマー中のSi濃度を上げていけばエッチング耐性を向上させることができる11)。ベース溶解剤や保護基など、ポリマーの官能性を調整することにより解像度をあげることができる。
図1 新レジストに用いられるシルセスキオキサンベースの樹脂(1)と本研究に使用した2種類のポリマー(2と3)の化学構造
 別の重要なポリマーの特性は、化学増幅作用に影響するガラス転移温度である。これらの要件を満たすため、高濃度のSiを含有したポリマーが開発された。高濃度のSiを含有したポリマーは、よく知られている単層レジストと同様な解像特性を持つだけでなく、50nmに近づきつつある膜厚に対しても微細な解像が可能である。これはポリマー構造を調整することで、解像度とエッチング耐性を持たせることができる。
 Si含有ポリマーの場合、ArF露光中にSi含有成分の脱ガスが大きな懸念点になっており、多くの研究が行われている8),12)〜15)。Siのペンダント基は露光中によって分解するため、Siを含むガスを放出して露光装置の光学系の表面に付着する可能性がある4)。しかし、ポリ(シルセスキオキサン)ベースのフォトレジストはポリマー主鎖にSiを導入し、複数のO原子と結合させることで脱ガスが発生しにくくなっている8)
図2 110nmのライン/スペース(左図)と265nmピッチの70nmライン(右図)
 東京応化工業のリソグラフィの専門家と米Dow Corning社のSi化学の専門家が密接に協力し、高エッチング耐圧で高ガラス転移温度(Tg〜135℃)のBLRを開発した。これは50nmの薄い結像層を持ち、エッチング中にパターンを厚い下層に転写することができる。シルセスキオキサン(SSQ)ベースの構造を最適化することで、ポリマーの主鎖に23wt%以上のSiを効率よく含有させている。他のポリSSQベースのポリマーと同様に、高濃度にSiをポリマー主鎖に配置することが可能であるため、後に示すように脱ガスを検出不能なレベルまで低下させている。
 SSQベースの樹脂の構造と成分は決まっている(図1)。高濃度Si含有樹脂が開発され、良好なリソグラフィを示すように0.0から0.5までの範囲でn,m,xとyの値が最適化されている。例えば、露光時に溶解速度が最大となるようにするだけでなく、Siが高濃度になるように単一のベース溶解剤が選ばれている。
図3 ポリマー主鎖にSiを含む新しいレジストだけが、ArF露光中脱ガスが検出レベル以下であった

エッチング耐性

 最適化された樹脂にはSiが約23wt%含まれており、開発されたレジストにはSiが約21.5wt%含まれている。Si含有比は、現状報告されているSSQ-主鎖を使ったBLR8)〜10)よりも高い。ICPチャンバを使ってO2/N2(60/40)の混合ガスでエッチングを行うと、エッチング速度は徐々に飽和する傾向にある。Siを15wt%以上含む樹脂は、フェノールベースの下層膜にパターンを転写するのに十分なエッチング耐性を持っている。Siが21.5wt%含有しているレジストは、初期のエッチング速度が11nm/min(最初の60秒)であるのに比べ、下層のエッチング速度は127nm/min(最初の60秒)である。
 実際の下層のエッチングでは、ベタウェーハでエッチングを行うよりもエッチング時間が長くなる。下層の膜厚が300nmの場合、標準のエッチング条件でエッチングするのに144秒かかる。下層のエッチング速度はエッチング時間には無関係で、ほとんど一定であることが分かっている。一方、Si含有レジストのエッチング速度は、エッチング時間に強く依存する。例えば、最初の1分間で平均エッチング速度が11nm/minと測定されても、2分後には7nm/minとなり、3分後には5.5nm/minとなる。これらの結果から、必要なエッチングの選択比は〜20:1と求められる。結像層が50nmの膜厚であっても、210nmの下層へのパターン転写にエッチング耐性は十分である。
 図2はこのレジストの優れたエッチング耐性とパターン転写特性を示す。パターンサイズが110nmと70nmで、厚みが90nmのレジストを225nmの下層へパターン転写しても11nmしか削られない。転写されたパターンの寸法誤差は、結像層パターンの5nm以内に入っている。
図4 100nm厚のSiベースの上層レジストと210nm厚の下層レジストを使用した80nmのL/Sパターン(0.78NAのダイポール照明)
図5 焦点深度(DOF)の測定結果、線幅のばらつきは5nm以下(3σ=4.6nm)

脱ガスの問題

 脱ガスはほとんど避けることはできない。それは、ArFリソグラフィのプロセスでは6.4eV(193nm)とフォトンエネルギーが非常に大きいため、長波長の光では起こることがない有機光化学反応を活性化させてしまうためである。単層レジストの場合、低レベルの有機物はN2で消去されてしまうため、このような問題は発生しないかもしれない。しかし、製造ラインに2層レジストを適用する場合には、この脱ガスが大きな問題の1つになる。露光時に発生するSi系の分子により光学系が汚染されてしまうためである。しかし、最近の研究8)〜10),14)で、Siを含有しているポリマー構造(あるいはSi原子の位置)はUV照射時の脱ガスに敏感だが、SSQベースの樹脂でSiがポリマー主鎖に配置されている場合は脱ガスはほとんど検出限界以下になることが判明してきている。開発されたSSQベースの樹脂は、Siがペンダント基に配置されているものと比べほとんど脱ガスしないということが、この研究で確認されている。
 脱ガスの実験は図1に示したレジストとSSQベースのレジスト(1)を使用して行った。ポリマー(2)とポリマー(3)はそれぞれシロキサンまたはシラン(Si)をペンダント基に持つアクリレートポリマーの主鎖から成る。一方、ポリマー(1) は主鎖にSiを含むSSQべースの樹脂である。ポリマーは、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMA)溶媒中で光酸発生剤(PAG)や抑制剤、他の添加剤が混合されている。この脱ガスの実験では、Siウェーハ全面に塗布した後、85〜110℃の温度で90分間のベーキングが行われた。
 UV照射に対する化学安定性を調査するため、3種類のポリマーを塗布したサンプルで脱ガスの成分を調べた。主に観測されたのは有機物や保護基の誘導体(イソブタンやシクロヘクサンの誘導体)、AG(ベンゼン、スルホニウム塩など)、抑制剤(アミンなど)であった。
図6 デュアルビーム干渉露光装置(計算上のNAは1.07)を用いた45nmのL/Sパターン
 しかし、この3種類のポリマーで異なる点はSiの検出レベルであった(図3)。ポリマー(2)とポリマー(3)に関して、それぞれ1cm2当たり 1.33×1012個、2.12×1011個と大量なSi種が検出された。ポリマー(1)では、この実験で使用したガスクロマトグラフィ質量分析器(GCMS)では全くSi種が検出されなかった。主に検出された種は、ポリマー(2)ではヘキサメチルジシロキサン((CH3)3SiOSi(CH3)3)で、ポリマー(3)ではフルオロトリメチルシラン((CH3)3SiF)であった。これらの観測と分子構造とは一致しており、他の文献ともよく合っている。

リソグラフィ性能

 我々のArF BLRは良好なエッチング特性を示しており、Siを20wt%以上含有させた樹脂を持つレジストを100nm厚みに最適化した。このプラットフォームはトレンチパターンで評価を行っている。図4に80nmのライン&スペース(L/S)パターンを示している。100nm厚の上層レジストと250nm厚の下層レジスト、NA0.78のダイポール照明を使用している。焦点深度はArF単層レジストと同等で、線幅ラフネス(LWR:Linewidth Roughness)が5nm以下(3σ=4.6nm、図5)を実現している。
 また液浸リソグラフィへのBLR適用の可能性を調査した。250nm厚の下層レジストに60nm厚(85℃ベーク)の上層レジストを使った、同様の樹脂を使用している。塗布した後、レジスト膜はArFの二光束干渉液浸露光装置(ニコン「 LEIES 193-1」)で露光を行った(図6)。
 液浸のパターン転写性能を確認するために、55nmのL/Sパターンをエッチングした。図7に現像後とエッチング後の結果を示している。
図7 55nm L/Sの1層目のパターニング(上図)とその後のエッチング(下図)

結論

 2社の共同作業により、Siを高濃度に含有した新しいSSQベースの2層レジストを開発した。リソグラフィの評価で良好な結果が示されたが、さらにエッチング耐性が高ければ従来の2層レジストより低LERと下層レジストに対する選択性を確保することができる。210nm厚の下層レジストへパターン転写するには、60nm厚の結像層で十分であることを示すことができた。45nmのL/SパターンはNA1.07(計算上)の液浸リソグラフィ条件で実現されており、55nmのエッチングパターンの形成を観測することができた。
 さらに、これらのSSQベースのレジストは、ArF露光中にSi種の脱ガスがないことが確認されている。
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川名大助は、1988年より東京応化工業(TOK)開発本部に勤務。現在は、開発本部先端材料開発一部技師補。東京理科大学を卒業。
佐藤和史は、TOK開発本部ナノプロセス開発部部長。北里大学を卒業した。
Sanlin Huは米Dow Corning社の開発技術者。米レンセラー工科大学よりPh.Dを取得。
J.K.LeeはDow Corningの電子ビジネス部門のスピンオンおよびリソグラフィーマーケットのマーケットマネージャ。米テキサス大学よりPh.Dを取得。
Eric S.MoyerはDow Corningの電子ビジネス部門のグローバル薄膜製品プラットフォームマネージャ。米バージニア工科大学と州立大学よりPh.Dを取得。
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参考文献
1. U. Schaedeli, E. Tinguely, A.J. Blakeney, P. Falcigno and R.R. Kunz,“Bilayer Resist Approach for 193-nm Lithography,”Proc. SPIE, 1996, Vol. 2724, p. 344.
2. P. Foster et al.,“Second-Generation 193-nm Bilayer Resist,”Proc. SPIE, 1999, Vol. 3678, p. 1034.
3. L.D. Boardman, C.R. Kessel and S.J. Rhyner,“Chemical Aspects of Silicon-Containing Bilayer Resists,”Proc. SPIE, 1999, Vol. 3678, p. 562.
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5. T. Morisawa et al.,“Chemically Amplified Si-Containing Resist Using Silsesquioxane for ArF Lithography (Casual) and its Application to Bilayer Resist Process,”J. Photopolymer Sci. and Tech., 1997, Vol. 10, No. 4, p. 589.
6. J. Hatakeyama, M. Nakashima, I. Kaneko, S. Nagura and T. Ishihara,“Development of Silicon Containing Resists for sub-100nm Lithography,”Proc. SPIE, 1998, Vol. 3333, p. 62.
7. R. Sooriyakumaran, D. Fenzel-Alexander, N. Fender, G.M. Wallraff and R.D. Allen, “Silicon-Containing Resists for 157 nm Applications,”Proc. SPIE, 2001, Vol. 4345, p. 319.
8. G. Barclay et al.,“Bilayer Technology for ArF and F2 Lithography: The Development of Resists to Minimize Silicon Outgassing,”Proc. SPIE, 2003, Vol. 5039, p. 453.
9. S. Yamada, S. Cho, J.H. Lee, T. Zhang and A. Zampini,“Design and Study of Silicon-Based Materials for Bilayer Application,”J. Photopolymer Sci. and Tech., 2004, Vol. 17, No. 4, p. 511.
10. J. Hatakeyama et al.,“Development of Silicon Containing Resists for sub-100nm Lithography,”J. Photopolymer Sci. and Tech., 2004, Vol. 17, No. 4, p. 519.
11. T. Hosono et al.,“High Etch-Resistant Silicon Containing Bilayer Resist ― Lithographic Performance and Outgassing Studies,”J. Photopolymer Sci. and Tech., 2005, Vol. 18, No. 3, p. 365.
12. R.R. Kunz et al.,“Experimentation and Modeling of Organic Photocontamination on Lithographic Optics,”J. Vac. Sci. and Tech. B, 2000, Vol. 18, No. 3, p. 1306.
13. R.R. Kunz et al.,“Outgassing of Organic Vapors From 193 nm Photoresists: Impact on Atmospheric Purity Near the Lens Optics,”J. Vac. Sci. Tech. B, 1999, Vol. 17, No. 6, p. 3330.
14. S. Irie et al.,“Evaluation of the Outgassing From Resists at the EUV Wavelength,”J. Photopolymer Sci. and Tech., 2001, Vol. 14, No. 4, p. 561.
15. S. Hien et al.,“Photoresist Outgassing at 157 nm Exposure,”Proc. SPIE, 2001, Vol. 4345, p. 439.

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