無償購読申込・変更
Email Newsletter登録
記事検索

検索方法の詳細



2006年4月号
バーチャル 対 バーティカル
DFMはどのようにしてファンドリを変えて行くのか?
Geoffrey James
Electronic Business
www.ebjapan.com
 専業ファウンドリが、半導体業界で最も成功したイノベーションの1つであることは疑いの余地もない。20年前にこれら専業ファウンドリは存在していなかった。台湾TSMC社と台湾UMC社、シンガポールChartered Semiconductor社、中国SMIC社の、2004年の合計収益は140億ドルを上回った。この成功は業界全体に波及し、ファブレス企業や、顧客がチップの設計を行ってファウンドリへ渡す(COT:Customer-Owned Tooling)という設計改革を生み出した。米国市場調査会社のGartner Dataquest社で首席アナリストを務めるJames Hines氏は、「ファウンドリは比較的に安価で優れたプロセス技術を提供するという、非常にすばらしいビジネスを行ってきた」と述べている。
* * * *
 明らかに成功を納めながら、ファウンドリの基本的なビジネスモデルが変わろうとしている。最先端の製造プロセス開発および構築にかかるコストは、大手ファウンドリしか投資できないくらいまで膨れ上がってきている。同時に、最先端工場で半導体チップを開発するとコストがかかってしまうため、設計企業は従来の設計と製造の壁を取り払うDFM(Design-for-Manufacturing)ツールを強く要求している。DFMはファウンドリにとって最も重要な知的所有権である、独自の製造技術を公開するよう強制している。それだけではない。特別な製造プロセスと最初から分かっている設計でもCOTが経済的であるという理由で、設計者達はファウンドリを転々とする機会を失ってきている。工場コストの高騰、IP盗用の可能性の増加、そしてCOTの経済的な効果への疑問視。このような状況の中、ファウンドリはDFMにどのように対応していけるのだろうか?
Advertisement

Fabにかかる費用

 この新しい世界を見ていくに当たって、コストの問題から見ていこう。1つ確実に言えることは、気弱な人に新しい工場への投資はできないということだ。それは、投資額は気が遠くなるような莫大な金額になるためである。例えば、2005年中ばに台湾通信社は、TSMCが新工場に75億ドルを投資すると発表した。TSMCはこれを強く否定している。TSMCのブランドマネージメント部門ディレクタを務めるChuck Byers氏は、「どこからそのような話が出たのか分からない」と語る。もちろん、噂は否定されるまで真実ではない。公表値はこれよりも少し小さいが驚きに値する。Byers氏によれば、計画中の最先端工場は「たったの」 35億ドルであるという。
 もっときちんと35億ドルという金額を見てみよう。2004年度のファウンドリの第3位のCharteredと第4位のSMICの売上高を合わせたとしても20億ドルにもならない。第2位のUMCでさえも売上高が40億ドルをちょっと上回る程度であった。現実的に考えると、TSMCにとっても年間売上高が約80億ドルのうち35億ドルを「はした金」とは言えない。
 米国の調査会社 Semico Research社のアナリストJoanne Itow氏は、「設備コストはファウンドリが直面している主要な課題になっており、絶えず顧客に最先端技術を提供していくが考えなければならない」と述べている。実際に、設備コストがファウンドリには少し高価なものになってきている。Gartnerによれば、急激に売上高が伸びているにもかかわらず、ファウンドリ4社の中で2005年の設備投資を増加させたのはTSMCだけだ(表1)。これとは対照的に、GartnerのBob Johnson氏によれば、UMCとSMICはそれぞれ61%と46%にまで設備投資を削減している。Charteredの設備投資額は、2004年と2005年で上位20社に入らないほど少ない。
表1 4大ファウンドリの概要(2004)(出典:米Hoovers社)
収入
収益
成長率
純利益
TSMC
8128
2917
36.2
36%
UMC
4082
1006
45.1
25%
Chartered
932
6.6
68.9
1%
SMIC
975
89.7
166.5
9%
 「ファウンドリが最新プロセスを顧客に提供し続けていくためには、継続して投資を行っていかなければならない」とItow氏は言う。しかし、新しい設備にかかるコストがとりわけ心配事になるであろう。一旦新しく工場を建設したら、高い稼働率を維持して多くの半導体チップを製造しなければならない。Byers氏によると、35億ドルの工場は300mmウェーハで1カ月3万5000枚の生産能力がある。これは半導体業界全体で建設中の工場の約2倍の生産能力に相当する。このくらいの規模にもなれば、多くの設計をファウンドリに流した方がいいかもしれない。
 もちろん、非常に多くのコストが工場にかかるが、半導体チップを設計するのにもコストがかかる。米VLSI Research社のバイスプレジデントを務めるRisto Puhakka氏は、「90nmまたは65nmの半導体チップを製造するのに、2000〜3000万ドルかかる」と述べる。SMICで設計サービスサポートディレクタを務めるMeyrick Chan氏は、「130nmの場合300万ドルだったのに比べれば大幅に増加している」と述べている。
 なぜ、設計にそんなにお金がかかるのであろうか?この答えはDFMに関係してくる。平均寸法の縮小化に伴い、設計者は複雑なデザインルールに従わなければならなくなり、必ずしも問題が設計に起因するものなのか製造に起因するものか明確にならない。古き良き時代では、単に設計者は回路が意味を成しているかどうかを心配していた。その後、設計を“壁の向こうに”投げても、許容できる歩留まりを期待することができた。しかし、今日ではそうはいかない。設計者は、デザインチェーンが長くデザインツールをより複雑に、そしてデザインプロジェクトが高価なものになっても、DFMで特殊な製造プロセスの特質を明らかにしなければならない。

小さなファウンドリは成熟したプロセスノードを活用している
特別な機能を搭載して、大手ファウンドリでは行わない新しいアーキテクチャやアナログ集積レベルを実現させている

−− Boris Petrov氏, 米Petrov Group社

DFMの脅威

 DFMによりデザインが高価になるため、ファウンドリは高価な工場をフル稼働し続ける場合、できるだけサービスを簡素にしなければならない。しかし、DFMが設計と製造間の従来の壁を破ることによって、ファウンドリはこれまでと異なる方法で行動しなければならなくなる。Hines氏は、「DFMには、ファウンドリや第三者のIPサプライヤー、チップを設計する顧客との間で多くの共同作業や開発作業が必要になる。従来のCOTでチップを製造する時期は通り過ぎている」と述べている。
 DFMはすでに2つの機能を持っているIDM(Integrated Device Manufacturers)には有利であるため、これはファウンドリにとって悪いニュースかもしれない。米Synopsys社でストラテジックディベロップメント担当のバイスプレジデントを務めるRich Goldman氏は、「IBMのような企業は全てを社内に持っているため、設計者はテストチップを試すことができる。そして、製造プロセスに関する経験を積み、その知識を設計フローに活かすことができる」と述べている。Hines氏もこの意見に賛成だ。「状況を見るとIDMのアプローチの方が有利だ」と述べている。
 ASICベンダーに行くのか、特注チップにCOTを使うのかという決断には、いつもコストとリスクのバランスがつきまとう。従来のASICでは歩留まりリスクが小さいが、チップ単価が高かった。それは、IDMはすべてのチップに対して必要以上のコストをかけて歩留まりを確保していたためだ。一方、ファウンドリはが価格競争をしていたため、従来のCOTは自作であるため歩留まりリスクが大きいが、チップ単価は安かった。ここで重要なことは、COTが最も安価なファウンドリを見つけられるかというファブレス企業の能力に直接依存しているということである。
 DFMにより価値観が変わってきている。もう、ファブレス企業は設計を“壁の向こう”に投げることはできなくなったため、プロジェクトの開始時からファウンドリを決定しておかなければならない。一旦決めると、DFMにより途中で軌道修正することが困難もしくは不可能になるかもしれない。設計企業とファウンドリの関係が順調である場合、それは問題にならないかもしれない。しかし、両者の関係が良好ではなく期待した歩留まりが得られないような場合には、設計者はすべてを白紙状態に戻さなければならなくなる。
 設計フローにDFMを導入したことにより、すでにエレクトロニクス企業のチップを調達する方法を変ってきている。興味深いことにGartnerよれば、DFMの重要性が高まってきた時期は、ASIC設計が落ち込み10年間という長い間横ばいになっていた時期と一致するという。米IBM社半導体技術プラットフォーム担当のバイスプレジデントを務めるSteven Longoria氏は、「DFMに投資することによって、カスタムチップを必要としている企業にとってASICが魅力的なものになっている」と述べている。

顧客とのパートナーシップ

 Byers氏によると、ファウンドリは顧客と親密な関係を築くことによってDFMの課題を克服しようとしている。TSMCの場合、設計者がTSMCの製造プロセスに関する詳細な情報を得ることができる新しいホームページの例を挙げて、「ビジネス、オペレーションおよび技術レベルにおいて、さまざまな共同作業が行われている」と Byers氏は説明する。UMCでコーポレートマーケティングのバイスプレジデントを務めるLee Chung氏によると、設計企業だけでなくサプライチェーン全体にわたって緊密に共同作業を行っているという。
 しかし、それは簡単なことではない。ファウンドリは顧客が必要とするすべてを提供すると主張するが、DFMでは秘密にしておきたい情報を共有しなければならないことがある。「ファウンドリの競争力は競合よりも優れたプロセスを提供できるかどうかにかかっている」とSynopsysのGoldman氏は説明する。「しかし過剰なプロセス情報も必要ないだろう」。これは、2003年にTSMCがSMICを製造プロセスの特許侵害と企業秘密の不正利用で訴訟を起こしたことに見られるように、ファウンドリにとって重要な問題である。
 SMICのケースはDFMとは関係がないが、Byers氏は、DFMの結果、IP盗用の懸念が残ると認めている。Byers氏によると、TSMCは競争力を優位に保つために2本の柱からなる戦略を推進しているという。最初の戦略として、TSMCは独自の設計ライブラリを作成した。そこには、効果的に製造プロセスに作用すると事前に認定された設計情報が収められている。この設計ライブラリはTSMCの工場に合わせられているため、設計者は背後にあるプロセスを意識する必要はなく、ブラックボックスとして機能する。
 2番目のTSMCの戦略は、IP侵害者を法廷に引っ張り出すということである。「我々は厳重なIP保護デバイスを所有しており、法律的な観点からIPを極めて真剣に取り扱っている」とByers氏は述べている。実際、TSMCはSMICの訴訟裁判で真剣さを示した。その結果、SMICは損害賠償として1億7500万ドルを支払うことになった。さらに、重要なことに、TSMCは特許権があまり保護されない台湾や中国ではなく、特許権に厳しい米国でも訴訟を起こしたことがある。競合他社を訴えることと、機密情報の漏洩の罪でTSMCの主要顧客を訴えることは全く別の物である。もし、TSMCの主要顧客が外部に秘密を本当に漏らしたとしたら、TSMCは本当に思いきった行動に出られるのだろうか?とと疑問に思うところである。

IBMのような企業は全てを社内に持っているため、設計者はテストチップを試すことができる
そして、製造プロセスに関する経験を積み、その知識を設計フローに活かすことができる

−− Rich Goldman氏, 米Synopsys社

業界でのパートナーシップ

 Goldman氏によると、TSMCが積極的にIPを保護していく考えに対して、他のファウンドリはEDAツールベンダーと密接に共同作業を行ってDFMの負担が小さくなるようにツールを開発するという、異なるアプローチをとっている。Goldman氏は、少なくとも1つの回路が正常に動作するように冗長回路を挿入できるツールを例に挙げた。「EDAベンダーとプロセス情報を共有することで、ファウンドリは世界中の国と情報の共有化を防いでいる」。米Cadence Design Systems社の企業提携部門でシニアバイスプレジデントを務めるJan Willis氏によると、EDAベンダーは第三者のIPブロックがプロセス特有のものにならないように開発しているという。Willis氏は、「トランジスタレベルから高レベルデザインチェーンまでの設計における問題を抽出するという、従来の方法でできるだけ解決しようとしている」と述べている。
 しかし、EDAベンダーが設計者をどれだけDFMから守れるかには限界がある。Goldman氏の冗長回路がいい例と言えよう。「多すぎてもいけない。でなければ、チップサイズが大きくなってしまう」とGoldman氏は認めている。DFMで効率のよいチップを作製し、許容できる歩留まりを達成するためには、個々の製造プロセス特性を利用するDEAツールが必要である。UMCのChung氏は、「デジタルやアナログ、低消費電力などの技術に、早い段階から主要EDAツールベンダーと提携を行い、設計フローやツールの開発や検証を行ってきた」と述べている。「我々は製品チップからデータを収集し、そのデータをリソグラフィや他のプロセス工程のDFMモデルに適用させている。これにより、設計者はテープアウト前に問題を特定することができ、この方法をDFMツールにフィードバックすることで、テープアウト後のOPC(Optical Proximity Correction)のプロセスデータを修正することができる」。
 別な言い方をすれば、ファウンドリとEDAベンダーはDFM後のCOTをできるだけDFM前のCOTのようにすることができるが、チップ設計者は、特にファウンドリを選択し設計が始まってしまったら、身動きがとれなくなるだろう。このリスクを軽減する最善の方法は、設計者とDFMを求めるファウンドリとの間に密接な関係を築くことであるといえる。しかし、例えこのような提携が順調に行われたとしても、常に鳥インフルエンザの流行のような自然災害によって工場が閉鎖されるかもしれないという可能性がある。
 特定の製造プロセスの設計において、十分な生産能力を確保する唯一の方法は同じプロセスの工場を複数持つことである。DFMでは、35億ドルの工場を1つ建設しただけでは十分ではない。現在では、ファウンドリは顧客に同じプロセスで製造する工場を少なくても2〜3箇所(もしくはそれ以上)提供しなければならない。これはファウンドリにとって大きな変化を意味している。

90nmまたは65nmの
半導体チップを製造するのに、
2000〜3000万ドルかかる

−− Risto Puhakka氏, 米VLSI Research社

変わりゆくファウンドリ

 35億ドルもかかる工場をいくつも持てるだけの資金があるファウンドリはTSMCだけである。UMCの売上高は、TSMCの売上高の約半分に相当するためできないことはないかもしれないが、他のファウンドリには絶対無理な話である。では、他のファウンドリはどのようにDFMに対応していくのであろうか?
表2 4大ファウンドリの設備投資額
(出典:米Gartner Dataquest社)
2004
2005
増減比
TSMC
3843.0
5900.0
54%
UMC
2670.3
1034.0
-61%
SMIC
1838.8
1000.0
-46%
Chartered
700
750
7%
 CharteredやSMICのような中堅ファウンドリは、IDMを含めた他の半導体メーカーと業務提携を締結し、同じプロセス技術で製造する工場を建設する必要がある。例えば、CharteredはIBM、韓国Samsung Electronics社および独Infineon Technologies社と共同作業を行い、4社で使用できる新しいチップの製造プロセスを開発している。この提携では、災害や予期せぬ需要が発生した場合、CharteredはIBMもしくはSamsungの生産能力を購入することができることになっている(Infineonは社内のプロセスに限定)。「我々は設計製造という点で、顧客をサポートするために3社と協業している」と、Charteredでワールドワイドマーケティング兼プラットフォーム提携部門のバイスプレジデントを務めるKevin Meyer氏は述べている。
 IBMのLongoria氏によると、提携により設計企業はカスタムチップの設計リスクを管理することができる。Longoria氏はASIC設計にエレクトロニクス企業がIBMを訪れ、最終的に量産をCharteredで行うということを考えている。この結果、低コストで製造することできる。また、COTの問題に直面しているファブレスが、IBMに助けを求めにやってきてASICへ変換するという逆のシナリオも想定している。「ASICとファウンドリ市場を統合させれば、設計と製造の業務を最適な企業に提供することが可能になる」とLongoria氏は述べている。
 しかし、規模の小さなファウンドリはIBMやSamsungなどの巨大企業と簡単に提携できるわけがなく、まして複数の新しい工場に投資できるわけがないのだ。米国の戦略コンサルティング会社であるPetrov Group社でマネージングパートナーを務めるBoris Petrov氏によると、DFMにより小規模のファウンドリは必然的に最先端製造プロセスが必要ではないニッチ市場へ追い込まれている。「電力管理やワイヤレス、アナログなどの出現を反映して、新興企業の中にはアナログ、RFおよび高電圧市場に向かっている企業もある」と、TVチューナーや高電圧/電力管理、MEMS/無線通信用RFデバイス集積を専門に扱う独立ファウンドリのイスラエルJazz Semiconductor社を例に挙げて説明している。さらに「小さなファウンドリは成熟したプロセスノードを活用している。特別な機能を搭載して、大手ファウンドリでは行わない新しいアーキテクチャやアナログ集積レベルを実現させている」と述べた。
 このようなニッチ市場に特化することが重要である。それは、回路やチップを効率よく製造することは、最新のプロセス技術が必要な大容量デジタルアプリケーションほど小型化に依存していないためだ。このようにTSMCと張り合うようも、小規模のファウンドリは古いプロセス技術を使用して、比較的に安定性と低価格を活かしたインフラ及びビジネスモデルを確立している。「小規模のファウンドリは、顧客がチップを市場により迅速に出せるようにするため、マルチプロジェクトウェーハやマルチレチクルマスクを使用して、試作チップの開発能力を上げている」とPetrov氏は述べている。
 つまり、DFMは半導体ファウンドリ全体の構造を変えていく。IDMとの競争でトップに立つのは、TSMCとおそらくUMCになるであろう。CharteredとSMICはIDMとの業務提携を余儀なくされ、次第に専業ファンドリからCOT及びASIC設計の両方を提供していくようになるだろう。小規模ファウンドリは取り残されニッチ市場に特化していき、SoC機能が最先端プロセスで複雑なチップに搭載されるようになると、やがてゆっくりと衰退していく。
 もちろん、露光波長以下のリソグラフィ技術に革新が起きれば、DFMが不要になりCOTが支配していた古き良き時代に戻り、全てが変わるという可能性もある。それがなければ、明日の専業ファウンドリ市場は、現在のファウンドリ市場の状況と何ら変わることはない。

HOME | SI(日本版)について | 無償配付申込・変更 | サイトマップ | お問い合わせ | 広告掲載について | 関連サイト