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2006年4月号
FPD用Poly-Si形成技術
David Knowles,
Bernd Burfeindt,
Brandon Turk,
独TCZ社
www.teamcymerzeiss.com
 多様で広範囲にわたる家庭用電化製品の分野において、最も急速に成長している部門がフラットパネルディスプレイ(FPD)業界であり、その中でも群を抜いて液晶ディスプレイ(LCD)が市場シェアを占有している。米Display Search社によると、LCDは2006年に700億ドルを生み出し、次の数年間で年14%増の速さで成長を続けると予測されている。LCDが携帯電話、携帯ゲーム機器、ノートPC、デスクトップPCのディスプレイ、大型で薄型のテレビなど、多種多様な電化製品の中で使用されている(図1)。
 LCDは標準的なロジックやメモリーよりもシンプルな構成となっており、トランジスタの構造によるが一般的にディスプレイでは4〜9レイヤーのマスク工程を経て製造される。製造工程でのマスク工程数が少ないボトムゲート構造のほうが一般的だが、上下どちらのゲート構成も製造で使用される。1)

今後のディスプレイの課題

 ディスプレイ業界は好況だが、この成長を続けるにあたって、メーカーはいくつかの大きな課題に直面している。小型ディスプレイにおいては画素密度が増加する傾向にある。次世代携帯電話や携帯ゲーム機器のディスプレイの解像度を上げ、画素の透明部分により多くのバックライトを通すことで、ディスプレイの明度を増加できるようトランジスタのサイズを縮小する必要がある。薄型軽量化される携帯電話の傾向に対応するため、ディスプレイの厚みと重さはさらに低減される必要がある。
 ディスプレイ業界において優先すべき要因とは、最終的にディスプレイのコスト削減を継続することだ。例として、19〜21型ディスプレイの平均小売価格は過去8年間で1年当たり15%ずつ低下している。2)この平均小売価格の減少は、主要パーツのコスト低減や製造ラインの歩留まり増加、プロセス改善をもたらす新技術導入により促されている。

n型MOS vs. p型MOS、そしてCMOS

 現在、2つの手法がAM(アクティブマトリクス)LCD生産に用いられている。一般的なものは、PECVDで蒸着した膜上に直接トランジスタを形成するアモルファスSi(a-Si)プロセスである。Si材料の電子移動性が乏しいため(0.2〜0.7cm2/Vs)、TFTはn型MOS構造に限定される。しかしこのプロセスは工程数が少なく、マスク4枚のみで生産できるというメリットもある。
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 もう1つの一般的な手法はアモルファス膜をアニールし多結晶Si(Poly-Si)にするプロセスである。Poly-Si膜の電子移動性は高い(100〜400cm2/Vs)ため、ディスプレイの要求に応じてn型MOS、p型MOS、CMOS構造の適用が可能であり、高速で小型のトランジスタを設計できる。Poly-Siプロセスにはa-Siプロセスにはないイオン注入や活性化プロセスが含まれる。高性能なディスプレイを製造できるが、低コスト化は難しい。

システムオンガラス

 全体のコストダウンと同時にディスプレイのサイズと厚さを改善するために、パネルの端に直接駆動電子を組み立てる方法がある。全てのディスプレイは、画素のタイミングと明度を制御するために、アナログとデジタル両方の部品(ゲートドライバ、タイミングコントローラー、デジタル/アナログ変換機など)を取り付ける必要がある。これまで、外部回路は多数の配線でディスプレイの端に接合されていた。
 究極の目標は、全ての駆動素子がパネルに直接搭載されるシステムオンガラス(SoG)である。これはすでにいくつかのグループによって発表されており3)、小型ディスプレイにかなりの部分を占めるドライバICに関連するコストを削減できるという点で魅力的だ。SoGでは外部駆動チップの設計を更新したりデバッグしたりする必要がなくなるため、デザインの柔軟性を高め新製品の導入を早めることができる。

有機ELディスプレイの登場

 ディスプレイメーカーは、ディスプレイマーケットの重要なセグメントになると予想される有機ELディスプレイ(OLED)技術の出現にも供えておく必要がある。単純な構造のOLEDは、小型スクリーンや自動車用計器、デジタルカメラなどすでに特化したアプリケーションで展開されている。いくつかのディスプレイメーカーは大型スクリーンOLEDをテレビ市場向けに生産することを公表している。
 OLEDがベースとなるディスプレイでは、有機ポリマーがバックライト光源の光弁としての役割を果たすのではなく、それ自体が発光することによってスクリーンの明度を上げている。OLEDの発光材料はLCDのように電圧駆動ではなく電流駆動であるため、TFTへの要求が異なる。OLEDの駆動トランジスタは高電流密度(20mA/cm2)を高い負荷サイクルで供給できなければならない。今日までa-Siを使ったOLEDトランジスタでは高電力密度によってしきい値電圧の大幅なドリフトが見られた。これによってデバイスの寿命が制限され、この根本的なダメージメカニズムを克服できるかどうかという懸念が生まれる。4)
 高度にインテグレートされ視覚的に美しいディスプレイを生産するために、OLEDは最終的にSoG技術とインテグレートされるだろう。高性能の画素、補正電子、駆動電子を作り出すためにディスプレイメーカーはディスプレイ全体にPoly-Siを使うようになるという説もある。また、メーカーは材料を混ぜ合わせてa-Siから画素を作り出し、Poly-Siからドライブ電子を作るという提案もある。どちらの手法においてもPoly-Siは次世代のディスプレイにおいて重要な役割を果たすと言えそうだ。
図1 AMLCD / AMOLED市場価格の予想
(提供:米DisplaySearch社)

Poly-Si形成の課題

 Poly-SiCMOSトランジスタの利点を挙げたが、ではなぜディスプレイメーカーはa-Si TFTから移行するのに時間がかかっているのだろうか?答えの1つにこれまでPoly-Siの歩留まりが低かったことがある。CMOSトランジスタの製造には追加のプロセスステップが必要だ。例えば、移動性が高いとリーク電流も高くなるため、Poly-Siトランジスタは通常ソース/ドレインのドーピングを行い、イオン注入やドーパント活性化などの追加ステップが必要となる。Poly-Si CMOSプロセスはマスク数も多い(p型MOSが5枚、n型MOSが4枚であるのに対してCMOSは9枚ものマスクプロセスが必要となる)。Poly-Si普及への最大の難関は、結晶化、リソグラフィおよびイオン注入などの重要な工程のプロセス制御を向上することである。
 ドライバICを搭載し、SoGを完成させるためには、トランジスタバンド幅を増加していかなければならない。現在のデバイス速度は10〜40MHzで、2010年には100MHzにまで上がると予想されている。5)これらのレベルに達するには、設計ルールは現在の3〜4μmから1μm以下へと縮小され、Poly-Si材料の移動度も今日の100cm2/Vsレベルから400cm2/Vsへと増加しなければならず、また、Poly-Si結晶化の新しい手法も必要となってくる。

Poly-Si結晶化

 SoGとOLEDに対応するため、製造装置メーカーはSi結晶化プロセスへと新たに焦点を向けている。結晶化プロセスの目標は、優れたゲート絶縁膜界面を形成できるように、高い電子移動度、正孔移動度を持ち、材料特性が均一で、表面ラフネスの小さい材料を生み出すことである。
 結晶化は主に2つのカテゴリーへと分かれる6)(以下の議論では高価な高温抵抗ガラスを用いることなくアニール温度を最小化する低温Poly-Siに焦点を当てる)。歴史的には固相結晶化(SPC:Solid Phase Crystallization)が量産に導入された最初の技術だったが、現在はあまり広く適用されていない。
図2 ELAとTDXのミクロ構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真。ディフェクトエッチングによって粒子境界が見える
a)ELA; b)ステップサイズの大きなTDX; c)ステップサイズの小さなTDX
 もう1つの一般的な結晶化の手法としてレーザーアニールと呼ばれるものがある。この手法ではパルスレーザーを局部的に使ってa-Si膜を溶かし、その後a-Si膜を多結晶の状態になるまで冷却する。SPCとは対照的にレーザーアニールはガラス温度を数度以上上昇させずに高いスループットを達成する。レーザーアニールの最も一般的な形式としてエキシマレーザーアニール(ELA)がある。通常a-Si膜表面付近で強く吸収される308nmのエキシマレーザーが使用されている。ELAではa-Si層の上部のみを熔解する局部熔解を行うため、小さな多結晶粒を形成することができる。これにより移動度を50〜100cm2/Vsまで上がることができる(図2a)。
 ELAは現在Poly-Siの量産に適用されているが、プロセスに関連した制限がいくつかあり、この技術の普及を妨げている。主要な障害は、局部熔解においてSiの粒子サイズがガス放電レーザー使用時に不可避であるエネルギー変動に対して極端に敏感なことである。プロセスのスループットを下げることにはなるが、ユニットエリアごとに多数の放射を行うことでこの問題に対処している。この問題に加えて、この技術は高移動性が必要とされる材料品質の不十分なミクロ構造での適用に限られている。

結晶化のメリット

 レーザー結晶化技術での最近の開発では、急速な結晶成長がそれぞれの液体ゾーンの端から始まり真ん中へと進んで行くように、Si膜が狭い境界領域(5μm)に完璧に熔解される、側面成長と呼ばれる現象に焦点を当てている。凝固率が局部熔解をベースとしたELAプロセスよりも大きいため、シングルレーザーパルスを用いると大きな粒子が形成される。一般的にシングルパルスによるPoly-Si粒子は2〜3μm長く(熔解幅は半分)、0.5μm広い。
 膜の熔解プロファイル制御が維持されている限り、様々な技術(例えばビームパターニング・フォーカシング、Si膜パターニング、下層パターニングなど)が側面成長を促す。実際、側面成長を制御する最も単純な方法は、短軸にオペラハット型で狭い空間プロファイル(5μm)のある長くて薄いエキシマレーザービームを作り出すことである。ビームの長軸には基本的に制限は無いので、ガラス基盤全体にビームを当てることが可能である。放射後、ビームの長軸に対して垂直な境界のある長軸の長さに応じた大きな粒子が形成される。結晶化の力学によって、側面成長が及ぶ限り、垂直に突出した粒子とそれに付随する粒子境界が生み出される(図3a)。
 米Cymer社と独Carl Zeiss社による合弁TCZ(Team Cymer Zeiss)社によって開発された側面成長技術「TDX(Thin-beam Directional Xtallization)」では、基板全体に行き渡る長いビーム(730mm)を用いる。a-Siを塗布した基板はパネルを一定の速度で動かし、重なり合ったストライプを熔解するためレーザーを発射して処理される。放射によって形成された粒子は前のパルスで形成された大きな粒子によって取り除かれる。この結果、パネル全体に大きな結晶ができ、移動性の高いPoly-Siを均一にすることができる。
図3 シリコン膜表面の平坦さを表す原子間力顕微鏡(AFM)データ
a) 熔解部中心にある大きな突出を表す写真
b) 小さなステップサイズでスキャンした時のTDX表面
 この手法を使って形成できるPoly-Si材料は2つある。1つ目はレーザーパルス間のステップサイズを側面成長の長さよりも大きく、5μmビームの幅より小さく設定することである。これによって一定の垂直突出配置とステップサイズに応じて分かれた粒子境界をもつ粒子の大きい多結晶材料が生じる(図2b)。この手法には高スループットであるというメリットがあり、定期的に並んだ粒子境界が移動性を150から200cm2/Vsに制限する。さらに、Poly-Siの表面に一定間隔(4μm)で連なった鋭い突出を形成する(図3a)。4μmのステップサイズで6kHzのレーザーを使用すると、装置のスループットは一時間あたり第4世代サイズパネル36枚となる(表1)。
 もう1つの方法として側面成長距離よりも小さいステップサイズ(1.5〜2μm)を選択することもできる。この場合、前のパルスで形成された垂直突出と粒子境界は再熔解され、新しい物質が前のパルスによる単結晶Si粒子を拡大する。このプロセスを繰り返すことで、非常に長い粒子(数十μm)を持つ材料が形成され、スキャン方向に垂直な粒子境界による問題を回避することができる(図2c)。この結果として、スキャン方向の電子移動度が非常に高くなる(350cm/Vs)。この手法のもう1つのメリットは垂直特出除去によって表面を平坦にすることができる問いう点だ(図3b)。これによってゲート酸化膜の界面の性能が上がり、高バンド幅アプリケーション向けに酸化膜の厚さを薄くすることができる。この手法のスループットは先述したTDXプロセスほど高くは無いが、現在のELAスループットよりもはるかに高い(表1)。
表1 第4世代ガラス基板(730mm x 920mm)のELAとTDXプロセスのスループット比較。最低時間とは最適化された状況下で一枚のパネルを処理するのに必要な時間。スループットにはプロセスパラメータや装置の利用可能性に関連する可変も含む
ELA
TDX
ステップサイズ(大)
TDX
ステップサイズ(小)
基板をカバーするためのパス数
2
1
1
最短プロセス時間(秒/パネル)
290
80
120
スループット(パネル1000枚/月)
3-6
25-29
14-19

まとめ

 Siトランジスタが今日のLCD産業を独占しているが、ディスプレイドライバの基板への搭載とOLED導入などの最近の傾向として、Poly-Si導入へ対する関心が再び高くなっている。LCD向けに開発されてきたa-Siやn型MOS TFTでは、新しいアプリケーションに要求される低電力、高バンド幅、高電流に対応できない。このためPoly-Siプロセスの安定性や歩留まりを向上させようとする関心が生まれた。
 レーザー結晶化による性能の向上、およびプロセス安定性の改善はPoly-Siを現実的な代替案とするための鍵となる。周知であった移動度と均一性による制限が、電子移度の優れた大きな結晶を形成する側面成長プロセスの開発を助長した。今後期待がかかるTDX技術という例は、高移動性(350cm2/Vs)の材料を形成し、既存の手法よりも高いスループットを達成することができる。このような結晶化の改善が、SoGやOLEDなど次世代に必要とされる薄型トランジスタ性能を実現する鍵となるだろう。
* * * *
David Knowles, Ph.D.は、独TCZ社のマーケティングおよびアプリケーション担当バイスプレジデント。1997年に米Cymer社に入社。プロダクトマネージャ、光学系部門のディレクタを経て、エンジニアリングや製品開発部門のバイスプレジデント、R&D部門のバイスプレジデントを歴任した。Cymer入社以前は、米Naval Research & Development(NraD)の研究者、プログラムマネージャであった。米Cornell大学を卒業し、米マサチューセッツ工科大学にて博士号を取得した。
Bernd Burfeindt, Ph.D.は、2005年7月にマーケティングマネージャとしてTCZに入社した。TCZ入社以前には、1999〜2003年に米Coherent社シニアデベロップメントエンジニア、シニアアプリケーションエンジニア、テクニカルサポートエンジニアを歴任した。その後、独Carl Zeiss SMT社米国法人においてビジネスデベロップメントマネージャを努める。独Max Planck研究所でポストドクトラルフェロー、プロジェクトマネージャ。独Technical University, Berlinで博士号を取得。
Brandon Turk, Ph.D.は、2005年7月にプロセスサイエンティストとしてTCZに入社。低温Poly-Si TFTの高歩留まりで高品質の製造プロセス開発を指揮している。TCZ入社以前には、レーザー結晶化技術の研究でCymerにて勤務した。1999〜2005年に、米コロンビア大学にてTFTのレーザー結晶化技術を研究した。レーザー結晶化技術では、15以上の論文にかかわり、コロンビア大学で博士号を取得した。カリフォルニア大学ロスアンジェルス校を卒業。
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参考文献
1. J. Jang, Thin-Film Transistors, C. Kagan, P. Andry, eds., Marcel Dekker, New York, 2003.
2. FPD Equipment Report, Display Search, 2003.
3. C.W. Kim, Society of Information Display Conference Proceedings, Paper 21-4, 2004.
4. W. Benzarti, OLEDs 2004 Conference Proceedings, San Diego, CA, Intertech, Nov 2004.
5. LTPS Based Flat Panel Displays, Display Search, 2005.
6. A. T. Voutsas, Applied Surface Science 208-209 (2003) 250-262.
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