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2006年4月号
ファインテックが開催
基調講演の今年のテーマは、
FPD産業を勝ち抜くためのビジネスモデル
 今年で第16回を迎えるフラットパネルディスプレイ研究開発・製造技術展、通称「ファインテック・ジャパン」が東京ビックサイトで4月19日(水)〜21日(金)の3日間にわたり開催される。同展示会は、液晶・プラズマ・有機ELなどのFPDの研究開発・製造に関するあらゆる機器・技術を一堂に集めた世界最大の専門技術展となっている。昨年の来場者数は5万2804名に上った。第2回 国際フラットパネル ディスプレイ展「Display 2006」も同時開催され、今年からはFPD 部品・材料 EXPOを新設した。出展社数は650社を予定、来場者数は6万名が期待されている。
 基調講演の今年のテーマは、「FPD産業を勝ち抜くためのビジネスモデル」。セミナー企画委員であるTEK コンサルティング 代表 川西 剛氏は「技術展示会でビジネスモデルをテーマにしたものは今までないのではない」と述べる。今年は特に、FPD産業では大手各社が技術革新を邁進しながら巨大投資を行い生き残りの方策を練らねばならない時期にきているといえよう。シャープ 常務取締役 液晶事業統轄 片山幹雄氏は、「液晶世界NO.1に向けて飛躍するシャープ液晶事業の取組み 〜新規市場の開拓と応用商品の創出に向けて〜」と題し、同社の常に市場を開拓し、リードし続けるシャープの液晶事業戦略を紹介する。松下電器産業 役員 パナソニックAVCネットワークス社 上席副社長 森田 研氏は「PDPの新たな可能性に挑戦 〜松下電器のPDP事業戦略」を、ソニー 代表執行役副社長 テレビ事業本部長 井原 勝美氏は「ソニーの新世代液晶テレビBRAVIAの戦略」、野村證券 経営役 金融経済研究所長 海津 政信氏は「拡大するFPD産業と課題 〜自動車産業との比較等を踏まえて〜」と題し講演を行う。海津氏の講演では、FPD産業の収益性に疑問を投げ、FPD産業のどこにビジネスモデル上の課題があるのか、自動車産業との比較等を踏まえて分析・議論する計画だ。
* * * *

東北大学 大学院
工学研究科 副研究科長
教授 工学博士 内田 龍男氏

Semiconductor International日本版(SIJ):今年もファインテック・ジャパンが開催され、多くの来場者が見込まれている。
内田龍男:ファインテックには、FPD部品材料関係の方々がFPD産業の全体像を見にやってくる。情報交換の場として重要になっている。FPD産業は、技術が持続的に発展していくことが大事で、特に「画像」というキーワードはまだまだこれからの発展がすさまじく広がる余地がある。
SIJ:その根拠は?
内田:人間に対して「機械」などのシステムがどんどん知能的になり、両方の間の情報交換が重要になっている。問題は、人間にどのような形で情報を与えるかだ。人間は五感のうち情報量の85%は目からきていると言われている。人間に情報を与えるには目が圧倒的に有利だ。現在、エレクトロニクス技術が発達し、目に対応できるようになりつつある。その代表的な技術がディスプレイだ。画像に対応するため、メモリー容量、通信容量は増大し、同時に圧縮解凍には半導体技術も必要だ。本当のエレクトロニクスの発展はこれから始まる。
SIJ: FPD市場を見ると大型FPD TVに大きな注目が集まっている。一方で価格が急速に下がり、価格競争に突入している。
内田:消費者中心の、価格重視の形では持続的な発展は望めない。新しい技術や材料が開発できるような仕組みを構築する必要がある。
SIJ:市場は大型TVに過剰に期待している?
内田:FPDの用途の中で、大型TVだけが突出してフォーカスされ過ぎている。大型TVという1つの製品の大量消費だけにFPDへの興味が集中してしまうことを懸念する。大型TVはある意味突出して進んだ特殊な分野だ。別の見方では、TVは、画像を使用した機器の1つの極端な例であり、ディスプレイにはもっと別の展開も出来ることを多くの人に分かって欲しい。現在、最終目標がFPDそのものになってしまっている。本当の目標は、人間にやさしく使いやすい、人間の弱点を補うものでなければならない。ディスプレイはその1つにすぎない。TVだけの突出した発展も結構だが、行きすぎると安くすることだけが最重要課題となる。単に生産コストの低下だけが目的ではいけない。FPDは、次の時代の人間のインターフェース、新しい入り口と考えなければならない。次の一歩を考える時期にきている。
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SIJ:大型TVがCRTからFPDに置き換わると市場の成長は鈍化する。
内田: CRTからFPDへの置きかえは現在の各社の量産体制を考えるとすぐに済んでしまうことかもしれない。次の目標を設定する時期だ。道は険しいが、できない道を作っていくことが人類にとってプラスだ。今、新しい産業が芽生えようとしている。FPDは先細りするという人もいるが、私は全然違うと思う。
SIJ:FPD市場は価格競争が厳しさを増している。
内田:アジア市場は価格競争に陥っている。競争原理だけが強く表れすぎることが心配だ。健全に持続して発展できる市場の仕組みが欲しい。アプリケーションが大型TVだけでは、先行者利益が得られる期間が短い。
SIJ:「SED」(Surface-conduction Electron-emitter Display)など、新しいFPDの登場が期待されている。
内田:FPDのそれぞれの技術には特徴がある。「これでもできる」技術では生き残れない。「これでなければできない」分野があれば、確実に発展する。a-Si TFT液晶ディスプレイ(LCD)、低温Poly-Si TFT LCD、それぞれが得意な分野を持っている。その他にも新しい技術が登場しているが、遅れて参入してきた新しい技術の芽を摘んではいけない。有機EL(OLED)は、潜在能力はあるがLCDと戦える力がない。ある程度時間をかけ、育てられる環境が必要だ。SEDも然り、じっくり育てる余裕がないと、この産業は育たない。

TEK コンサルティング
代表 川西 剛氏

SIJ:2005年のシャープや松下電器産業、ソニーなどのFPD戦略を見るとビジネスモデルに大きな違いが見える。
川西剛:弱者連合にならないために、アウトソースに頼ることが必要なメーカーもある。半導体やFPD産業では、サプライチェーンの問題は根深い。IP流出などを恐れ、メーカー単位や国単位で技術を囲う方が良いという場合もあるが、必ずしもそうではない。FPDはこれだけ安くなったから普及した。日本メーカーから聞こえる多くの声は「低価格化が進むと損をする。損する前に技術流出を防ぎ、囲わなければいけない」というものだ。米Intel社のMPUほど独占できればこの意見も正しいといえるが、通常はそうもいかない。
SIJ:NAND型フラッシュメモリーに関する東芝と韓国Samsung Electronics社のライセンス問題でも同様だった。
川西: NAND型フラッシュメモリーでは、東芝がSamsungに技術を供与して良かったかどうかの議論が未だにある。しかし、技術を提供しなければ今のNAND型フラッシュメモリーの爆発的な普及はなかった。囲い込んだ方がいいのか、オープンにした方がいいのかは、論議の分かれるところ。しかし、市場への投入初期の段階や大手メーカー間の技術保護であれば正しい場合もあるが、そうでない場合は大きく間違える可能性が高い。
SIJ:ソニーの戦略とシャープの戦略で、成功するのは?
川西:ソニーのようにサプライチェーンを外部に求めるのも立派なビジネスモデルであり、シャープのように囲い込むのも立派なビジネスモデルだ。どちらが勝つかはその時の場合であろう。シャープは亀山工場モデルを前面にだすなど、FPD自体の信頼性を強調している。現時点ではシャープに分があるように見える。
SIJ:FPD製造プロセスは差別化の要因になるか?
川西:半導体と比べると、イノベーションはあまりない。FPDは最終的には画質で決まる。SEDにも大きなチャンスがある。
SIJ:FPD製造インフラでは日本の材料メーカーが強い。
川西:FPDのサプライチェーンを考えると、部材メーカーが大きな利益をだしている。次に製造設備メーカー、パネルメーカーは利益を出すために苦闘しており、TVメーカーに至ってはひどい状況だ。TVの売上で利益をだすビジネスモデルの構築は難しい。FPD産業で利益を出しているのは、材料メーカーだ。材料メーカーは規模と基本技術がなければならない。半導体産業でも同様のことが起きている。そして、日本メーカーは材料と設備に強い。
SIJ:これからの大型TV市場は?
川西:大型TVの需要に対しては、楽観視している。なぜならワールドカップサッカーなどのビックイベントが目白押しだからだ。また、大型TVはマルチメディアの中核になる。さらに、デジタル放送の普及がある。そして2011年にはアナログ放送がなくなる。この影響は大きい。ブラウン管の需要は現在2億個程度あると言われ、それがFPDに置き換られていく。
SIJ:このFPD市場を牽引する技術、そしてメーカーはどこになるのか?
川西:現在のFPD技術として、LCDやプラズマディスプレイ(PDP)、リアプロジェクション、SED、OLEDが挙げられる。LCDは40型までの主流。これは一般的な居間に置く場合、明コントラストが重要で、特に日本の居間では窓を遮らない40型までがメインボリュームとなるだろう。PDPはホームシアターなどの特殊な用途向け。SEDは2010年以降に普及していくと見ている。
SIJ:OLEDは難しい?
川西:私は、45年以上前の東芝入社当時から、OLED関連技術に携わっていた。OLEDは材料に非常に高く依存した技術であり、課題は多いと考えている。
SIJ:FPD市場で勝つのは?
川西:では、だれが勝つのか?これは何とも言えない。ここ数年はシャープ、松下電器、低温Poly-Si技術の東芝、この3社が市場で勝つと見ている。
SIJ:今、注目している事は?
川西:フルハイビジョン映像でテレビを見ること。LCD TVも高性能で、しかも安価になった。FPD産業はこの20年を経て、やっとインフラが完成したと実感している。
(聞き手:高橋 潤)
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