2006年 4月号
Siに応力を加えると信頼性を犠牲にしなければならないのか?
Laura Peters
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応力エンジニアリングで電子自由度を上げ大幅に性能を向上させることができたが、信頼性の面では悪くなる可能性がある。特に、負バイアス温度不安定性(NBTI:Negative Bias Temperature Instability)の悪化は所望する性能向上とバランスを採らなければならない。NBTIはp型MOSFETデバイスのしきい値電圧の変化を引き起こす重要な信頼性問題である。
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最近、韓国Samsung Electronics社のHwa Sung Rhee氏らが米Applied Materials(AMAT)社のYihwan Kim氏らと共同で、機械的な歪みがゲート酸化膜の物性や高性能のp型MOSFETの信頼性に与える影響を研究したものがある。その結果、圧縮応力のかかったSiN膜はp型FETチャネル中の電子移動度を大幅に改善させるが、H2 が過剰に含まれている場合NBTIを悪化させることを発見した。これはゲート長とアクティブデバイスの幅が影響している。研究者らはNBTIの悪化を緩和するために、エレベーテッド・ソース/ドレイン(S/D)構造を持つリセス型のSiGe S/Dが有効であることを発見した。
SamsungとAMATの共同研究では、汎用型p型チャンネルMOSFET上にコンタクトエッチのストップ層(CESL:Contact Etch Stop Layer)としてSiN膜が、500℃以下でSiH4 とNH3 ガスのPECVDで堆積された。ゲートSiON膜の厚さは2nm未満であり、従来型のCMOSプロセスを使って形成された。CESLの機械的応力はプラズマのパワーと混合ガスの割合で調整することができる。CESLの堆積前に、Bをin-situドープしたSiGeを(Ge濃度20%)40〜80nm幅で選択的に成長させることでSiGe S/Dを形成させた。この構造をCESL付きのものと、Si S/Dで比較を行った。一定の負バイアス(-2.0から-2.6 V)を100-140℃でゲート電極に印加してNBTI応力がかけられた。
この研究では、2GPa以上の高い圧縮応力がかけられたCESLをSiGe S/D構造と組み合わせた場合、固有応力は1GPa程度であった。しかし、NBTIの悪化は観察されなかった。研究者らはSiGe S/Dとエレベーテッド・ソース/ドレイン構造が側面および垂直方向の応力を緩和し、長いパスを形成することでH2 の拡散を防いでいることを発見した。この時、性能の向上もほとんど見られなかった。さらに、NiSiはチャネル部分に引っ張り応力をもたらした。このため、エレベーテッド・ソース/ドレインが圧縮応力チャネル上のNiSiの劣化を緩和することができる。このエレベーテッド構造により、CESLとゲート酸化膜間の拡散パスを長くすることが可能となった。
これとは別に台湾の国立交通大学のSteve Chung氏、長庚大学およびUMC社は、複合基板技術や歪みSiデバイスにおけるデバイスの悪化メカニズムについて調査した。研究者らは、歪みSiデバイスの場合ホットキャリア(HC)や負バイアス温度の悪化の原因は、電子移動度の向上に伴う水平方向の電界が支配的であることを突き止めた。しかし、もっと重要な発見は、信頼性の悪化が(110)面のp型FET/(100)面のn型FETデバイスで、電気移動度の向上にほとんど依存せず、結合強度に強く依存していることであった。
NBTIの悪化を緩和するために、
エレベーテッド・ソース/ドレイン(S/D)構造を持つ
リセス型のSiGe S/Dが有効である
複合基板技術は(100)
基板中で電子移動度、(110)基板中で正孔移動度が高いという特長がある。エンジニアらは90nmノードの歪みSi/SiGeと(100)面と(110)面がある複合基板上にCMOSデバイスを作製した。歪みSiデバイスにはバルクSi上に厚さ1.6nmのSiON膜があり、チャネル長はそれぞれ異なる。複合基板上のCMOSデバイスには厚さ1.4nmのSiON膜がある。基準のデバイスは(100)基板上に作製した。
研究者らはドレイン電流と電子移動度を計測した。ゲート電圧を変化させてドレイン端子から計測された再結合電流をゲートダイオード電流として見なし、2つのピークが観察された。1つはFNまたはNBTIの応力によるもので、もう1つはドレイン接合部分のHCが発生させた界面トラップ密度によるものであった。
この結果から、水平方向の電界は歪みSiデバイスに対して大きな影響を及ぼすが、垂直方向電界は(110)基板上にあるデバイスに対して大きな影響を及ぼすことが判明した。水平方向電界が強くなると、歪みSiデバイスでは信頼性低下の問題を引き起こす可能性がある。(110)上のデバイスでHCとNBTIの効果を比較すると、垂直方向の電界の方が水平方向の電界よりも影響が大きかった。研究者らは、この原因はSi-Hの結合の弱さに起因していると考えている。