無償購読申込・変更
Email Newsletter登録
記事検索

検索方法の詳細



2006年5月号
半導体産業に成熟の兆しは見えない
日本版 編集顧問
津田建二
* * * *
 2006年3月27日、本誌主催のセミナー「45nm以降で立ちはだかる洗浄技術の壁」の中で、ソニーの服部毅氏が示したITRSの予想のズレ()は、きわめて興味深い事実を示している。にあるように、多層配線用の層間絶縁膜にLow-k材料を使う時代が次第に遠ざかっているのである。1997年の予測では、2003年には比誘電率k値が2.0を割り、2008年には1.5を下回り2009年以降飽和してしまう、ということを示していた。これが2005年版では2018年に初めてk値2.0を割り、それ以降は飽和するという予測に変わった。
Advertisement
 k=2.0を割ると予想される年がわずか8年間で15年も先延ばしになっている。ITRSの予測は間違っていると言っているわけではない。次々に開発される新しい技術が登場するために難しいLow-k技術を採用する必要性が年ごとに薄れ、先送りにされてきている。しかし、半導体技術に本当に限界が現れてくれば、Low-k材料を使わざるを得なくなる。裏返せば、まだLow-k材料を使わなくても現状の延長技術で対応できるということだ。
 このことは、半導体技術にまだ限界が見えていないということにつながる。半導体技術にいつかは限界がくるといわれて久しい。そのことがいつなのか、という議論は30年も前からあった。
 最初の議論は、光リソグラフィ技術の限界だ。4〜5μm時代に紫外線による露光技術は限界がくるため、今のうちに電子ビームやX線によるリソグラフィ技術を開発しようという動きがあった。1970年代後半に設立された超LSI技術研究組合プロジェクトがそれだ。光の波長の0.4μm以下よりも短いパターンを加工できなくなるという、限界論が幅を利かせた。
 この共同組合は、2〜3μm時代に向けてマスクアライナ装置を半導体メーカーが選択するのに寄与した。多くの半導体メーカーは組合からの資金を得て、ステッパやアライナなどを購入、比較検討し、結局アライナを選択した。ステッパはさらに先の時代に延ばされた。電子ビームやX線リソグラフィはいまだに主力にならないままだ。
図 ITRSのLow-k膜に対する予測の大きなズレ
(出典:ソニー服部毅氏)
 1980年代初めには米IBM社が1μmプロセスを発表、サブミクロン技術への道筋を開いた。この頃のISSCC(International Solid-State Circuits Conference)や、IEDM (International Electron Devices Meeting)などでは半導体技術の限界論が盛んに議論された。0.1μmくらいまでは製造できるだろうが、電子ビームリソグラフィが使われているかもしれない。そうなると経済的にLSIを作れる寸法は0.2μmくらいが限界だろう、という意見が中心だった。
 現在の先端プロセスは65nmであり、露光する紫外光の波長193nmよりも短い。光の限界を突破したわけだ。もちろん、ブロードなスペクトルの紫外線から、g線、i線、レーザー光という狭帯域のコヒーレント光に変わってきたことは事実だが、現在でも紫外線を使っていることには変わりない。
 だから、半導体技術の限界は一体何か、結局わからない。半導体産業は好不況サイクルの影響を受けるという性質があるものの、ならしてみればいつまでも右肩上がりの成長を遂げている。いまだに飽和、あるいは限界が見えてこない。
 なぜか。半導体技術は、製造プロセスだけで発展してきたわけではないからだ。設計アーキテクチャや知的なアルゴリズムの助けを得て発達してきた。
 例えば、デジタルカメラの写真1枚を、1024×768画素のカラー写真で構成すると、RGB分を掛け合わせて、1024×768×3=236万画素が必要となる。つまり、1画素=1ビットとすると2.36Mビットのメモリーが要る。1枚で2.36Mビットなら、100枚だと236Mビットも必要になる。
 半導体メモリーがいくらあっても間に合わなくなる。JPEG圧縮技術を使えば、メモリー容量は画面にもよるが、かなり減る。JPEGはもともとDCT(離散的コサイン変換)を施して、絵に映る人物やモノの輪郭を抽出するアルゴリズムを利用した技術である。
 こういった圧縮技術の利用と半導体技術の進歩が相まって、適切なサイズのメモリーで画像や映像、音などを再生できるようになった。音声ストリームの圧縮技術も同様に発展したため、音楽をフラッシュメモリーに収められるようになった。半導体技術の進歩といろいろなアルゴリズムの進歩に助けられて、iPodやMP3プレーヤー、携帯テレビ電話などの新しい商品が出来てきている。
 このことは、半導体の微細化技術がたとえ頭打ちになっても、新しいアルゴリズムや設計アーキテクチャなどを半導体チップに組み込むことで、どこまでも発展できることを示している。半導体の微細化技術は当分限界が見えてこないことを加味すると、半導体産業には全く成熟点が見えない、と言い切って良いだろう。
ご意見を
聞かせてください
Semiconductor International日本版編集部では日本の読者の皆様からのご意見や反論をお待ちしております。下記メールアドレスまでご連絡ください。採用分には薄謝を差し上げます。
editor-si@reedbusiness.jp
     
Global Viewpoint
津田建二ブログ「Global Viewpoint」においても読者の方々のご意見をお待ちしております。
http://www.reedjp-form.com/blog/

HOME | SI(日本版)について | 無償配付申込・変更 | サイトマップ | お問い合わせ | 広告掲載について | 関連サイト