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2006年5月号
SiPを支える
ウェーハ薄化技術
小林 義和
ディスコ
www.disco.co.jp
 近年、携帯電話などのデジタル・モバイル機器に使用されるSiP(System in Package)の普及に伴い、100μm以下のチップ厚みの製品が実用化されている。また被加工物であるSiウェーハの直径は300mmに移行してきており、ウェーハの大口径化と薄化要求とが相まってウェーハ薄化の難易度はますます上がっている。そのため、薄ウェーハおよびチップの組み立て工程での歩留まりを向上させる技術が重要となっている。ここでは今後の更なるパッケージの高集積化・薄化を見据えたウェーハ薄化技術、ストレスリリーフ技術など、次世代デジタル・モバイル機器向け半導体デバイスの薄化ソリューションを紹介する。
* * * *
写真1 薄ウェーハ(200mm,50um厚)
図1 エッジチッピングの発生メカニズム
ウェーハ薄化の課題

 従来のバックグラインド工程で求められていたことは、
[1]指定の厚みに精度良く仕上げる(例:機械精度として、ウェーハ面内の厚さバラツキ:2μm以下、ウェーハ毎の厚さバラツキ:±3μm以下)
[2]指定の面粗度に仕上げる(例:#2000仕上げ時:Rmax 0.13μm)
という2点であった。しかし現在は1つのパッケージの中に複数のチップを積層したいというニーズから、
[3]より薄く仕上げる
[4]薄ウェーハ搬送歩留まりを向上させる
というニーズが加えられてきている。
 ウェーハを薄くすることによって、ウェーハ破損が生じるリスクは高くなるが、その原因は主に、
A.ウェーハ自体の強度の低下
B.ウェーハの反り、たわみ 
C.研削加工ダメージ
D.エッジチッピング
と考えられており、以下にその詳細を記述していく。
 AとBについては、写真1のようにウェーハを薄くすることで、ウェーハ自体の機械的強度が低下し、非常に破損しやすい状態になることが分かる。またウェーハが厚ければ、表面の回路形成時のストレスなどによるウェーハの圧縮、もしくは引っ張り応力に耐えられるが、ウェーハが薄くなるとその応力に耐えられず、大きなウェーハ反りを生じさせる場合がある。このような場合、特に問題になるのが装置内および装置間のハンドリングで、ウェーハの破損が発生しやすい。
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 Cの研削加工ダメージは、Siを破砕モード(brittle mode)で加工するために発生する。一般的にSiウェーハのバックグラインド工程は、粗研削加工と仕上げ研削加工の二工程に分けられている。粗研削加工では主に装置の処理能力を上げるため、数十μmの大きさのダイヤモンド砥粒を用いた砥石で効率よく薄化する。その後、仕上げ研削加工で数μm程度の砥粒の砥石を用いて指定の仕上げ厚みに揃えながら、粗研削加工で入った深いダメージ層を取り除く。従来の200μm厚仕上げ以上の加工では、仕上げ研削加工で生じるダメージもウェーハ破損などの要因にはならなかったが、近年のウェーハの薄化の進展により、1μm以下のごく浅いダメージでさえも、ウェーハの破損につながる要因となってきている。
写真2 DGP8760+DFM2700インラインシステム
 Dのエッジチッピングについては、元々ウェーハのエッジ部の断面形状がR形状になっていることが大きな要因となっている。ウェーハを薄くするとこのR形状をしたエッジ部がシャープな形状になり、機械的強度が非常に弱くなる。例えば研削加工中に、加工点の冷却とパーティクルの除去を目的とした研削水が、このエッジ部に当たると、ウェーハのばたつきなどによりチッピングが発生する(図1)。このエッジチッピングが起因となりウェーハエッジ部で破損が生じやすくしてしまう。
図2 粗研削用砥石
図3 仕上げ研削用砥石
図4 超微細砥粒砥石

バックグラインディング技術

 バックグラインド工程でウェーハの薄化に対応するためには、研削装置仕様・研削砥石・研削アプリケーションの三つの要素の最適化が重要となる。装置仕様として具体的には、研削水の加工点への供給方法を従来の研削砥石から供給する方法ではなく、ノズルを使用して加工点へピンポイントで供給する仕様を採用することなどが挙げられる。また特に搬送系においては、粗研削加工が終了したウェーハを仕上げ研削加工室に移載する際、深いダメージが入ったウェーハを破損させないようにするため吸着テーブルから外さず、ターンテーブルの回転によって仕上げ研削加工室に運ぶ方式が採用されている。他にも薄化後のウェーハの搬送のために大口径バキュームパッドの採用、加工後の吸着テーブルからの受け渡しタイミングの最適化などを行う必要がある。また、装置内での搬送以外にも次工程へ安全に搬送することも考慮しなければならず、人の手を極力介在させないインラインシステム(写真2)なども有効な解決手段となっている。装置間搬送用カセットに、ウェーハが挿入されるスロット間隔を広げたダブルスロットカセットの採用も進んでいる。このような装置仕様の改善以外にもウェーハの強度低下や反りに対しては、デバイス回路面保護テープのサポート性の向上や、WSS(Wafer Support System)と呼ぶ硬質支持体にウェーハを貼り合わせる手法などもある。
 粗研削用砥石においては、デバイス形成工程である前工程で、ウェーハの裏面側に回り込んだ酸化膜や窒化膜ごとSiを研削することが重要になっている。研削除去量の大部分を担い、装置の処理能力に影響するため高速研削加工性を維持し、さらには低ダメージ化をも考慮する必要がある。例えば、従来のセラミック系ボンドから樹脂系のボンドに変更することで低ダメージ化を図り、エッジチッピングが抑制できる砥石が採用されている(図2)。
図5 エッッジトリミング効果
 仕上げ研削用砥石においては、粗研削で入ったダメージを出来るだけ多く除去するため最大可能除去量を増やし、かつ最終的にウェーハに残留するダメージを極力減らすため低負荷研削を実現することが重要である。具体的にはダイヤモンド砥粒の突き出し量を最適化し、ボンド材料とウェーハの接触抵抗を減らすことが可能な砥石が採用されている(図3)。また、さらに微細なダイヤモンド砥粒を用いた超微細砥粒砥石の採用も進んでおり、研削加工仕上げのさらなる低ダメージ化が図られている(図4)。
 研削アプリケーションに関しては粗研削、仕上げ研削ともに砥石軸の送り込み速度を最終仕上げ厚み付近で低速化することで低負荷研削を実現している。またエッジチッピングの低減対策としては、砥石軸の回転速度を低速化しつつウェーハ吸着テーブル側を高速化するなどのアプリケーションが有効である。 また、エッジチッピング低減対策の別のソリューションとしてエッジトリミング(図5)という手法がある。これは研削加工前にあらかじめウェーハエッジ部に溝入れを行っておくことで、ウェーハの薄化後にエッジがシャープな形状にならないようにするプロセスであり、大幅にエッジチッピングの低減が可能になる。
図6 ストレスリリーフ
図7 DBGプロセス

ストレスリリーフ技術

 前述したように、通常のダイヤモンド砥粒による研削加工では破砕モードの加工メカニズムであるため、ダメージ層をゼロにすることは難しい。仕上げ研削加工後でも最大1um程度と微少であるがダメージ層がウェーハに残る。ウェーハが薄くなると、この加工ダメージによって後工程プロセス中や最終製品に実装された後の様々な応力によって破損につながる恐れがある。そのため近年では、ウェットエッチング、ドライエッチング、CMP(Chemical Mechanical Polishing)、ドライポリッシングなどバックグラインディングでの研削加工ダメージの除去を目的としたストレスリリーフプロセスが導入されている。ただし、ウェットエッチングやCMPといった方法では混酸液や研磨スラリーなどの薬液を使用するため、コスト面・環境面で課題が残るなど、手法によってメリット/デメリットがある。ウェーハチップに求められる抗折強度、プロセスに求められるコストなどを考慮してストレスリリーフプロセスは選択される必要がある。各ストレスリリーフ手法の比較を図6に示す。
図8 裏面チッピング比較

DBG(Dicing Before Grinding)
プロセス


 DBGとは、裏面研削加工を行う前に溝入れダイシングをパターン面側から行い、その後裏面研削を行い、加工がその溝に到達した際チップに分割させるプロセスで、従来のバックグラインディングしてからフルカットダイシングするというプロセスの順序を逆にしたものである(図7)。DBGプロセスは、大口径ウェーハにおいても薄化した時点でチップに分割されるため、薄ウェーハそのものを単体で扱わなくて済み、ウェーハ自体の反りやたわみなどの影響を受けず、またシャープエッジの影響もエッジ部のみに留めることができるため高歩留まりでの生産することができる。さらにフルカットダイシングで発生する裏面チッピングを大幅に低減できるため(図8)、チップの曲げ強度を向上させることが可能なプロセスである。
図9 DBG + Dry Etching
 またDBGプロセス後にドライエッチングによるストレスリリーフを用いることで、ウェーハ裏面の研削によるダメージ除去だけでなく、チップ側面のダイシングにより生じたダメージの除去も行うことが可能であり、さらなるチップ曲げ強度の向上が期待できる。これらのプロセスを経ることで、機械的ダメージの無い理想的なチップに近づけることができる(図9)。
 最近ではこのDBGプロセスと、SiPの積層に不可欠なボンディング材料であるDAF(Die Attach Film)を融合させるレーザ加工技術が開発されている。従来、DBGプロセスによってチップ分割されたウェーハの裏面にDAFを貼り付けると、再度DAFだけを切断する必要があり、従来のブレードダイシングではチップの整列性、ブレードの刃幅、生産性などにおいて有効ではなかった。そこで曲線加工が可能なレーザソーを用いてDAFだけを切断するというアプリケーションが提案されている(図10)。さまざまなタイプのDAFが切断可能であり、ブレードダイシングで発生しやすい、DAFやダイシングテープのバリが抑えられ、数100mm/秒という高速加工が可能となる。このようなアプリケーション開発によって、薄チップ製造に適したDBGプロセスが、チップ厚み50umt以下の次世代SiP製造プロセスに提案されている。
図10 DBG +DAFレーザカット

まとめ

 近年は組立プロセスでパッケージとしての付加価値を生み出す製品が増えてきており、チップの薄化もその付加価値を生み出す手段の一つとなっている。いかに低コストで付加価値のある薄化を実現するかというところが重要である。しかも、ウェーハの薄化が進むにつれバックグラインド工程だけではなく、DAFプロセスやフルカットダイシングプロセス、ピックアッププロセスなども考慮していく必要がある。次工程を考えたプロセス提案をすることで、より低コストで付加価値のある薄チップ製造が実現できる。ウェーハチップ薄化技術のさらなる進展のために、今後ますます周辺工程を含めたトータルソリューションが提案されていくだろう。
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小林 義和は、98年にディスコに入社。営業技術部マーケティング課に配属後、主にグラインダ装置の企画・マーケティングを従事。その他、DBGプロセスやDFM2700など周辺プロセスなども担当している。

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