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2006年9月号
追悼:佐藤正治氏
日本版 編集顧問
津田建二
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 アプライド・マテリアルズ・ジャパンの代表取締役社長を努めておられた佐藤正治氏が先日亡くなられた。最初の訃報に接した日の2ヵ月ほど前、思いがけず佐藤さんから電話をいただき、私の記事を見たので話がしたいとのことで、つい最近移転したばかりの芝浦のオフィスに伺った。日本の半導体業界について一緒に話をさせていただき、議論させていただくことができた。
 同氏は、現在の日本の半導体産業立て直しを常に考えておられて、半導体産業は成長→投資→リターンという一連のビジネスサイクルにおける本当の問題を直視してこなかった、とおっしゃられた。やや抽象的な表現だが、同氏の鋭い洞察力は本質を突いていると思う。
 このサイクルから言えることは、投資しないと成長しないということだ。必要なときに必要な金額を投資すること。それもリターンを考えた投資をしなければならない。となると、むやみに多数の製造装置を買う必要はない。プロセス工程数は長すぎないかをチェックする、開発要員数は適正か、などコストを意識したプロセス開発を行い、きっちり投資分を回収することを念頭に投資しなければならない。この一連のビジネスサイクルを常に意識していれば国際競争力が低下することはないはずだ。
 7月末にSemiconductor Inernational日本版が主催したセミナー「45nm以降の壁を乗り越えるFEOLソリューション」のために来日した米国の半導体コンソシアムSEMATECHのバイスプレジデントAlex Oscilowski氏は、「低コスト化技術の研究開発が今求められている」と言った。この技術は、日本の半導体メーカーが実は世界一遅れているのではないか。高価な高品質な製品を作ることは得意だが、このことは卑近な言葉で言えば工業品ではなく芸術品を作る発想と同じことになる。かつてDRAMの大きな市場はどこにあるのかをつかんでいなかった。それまで続いてきたメインフレーム市場に向けて製品を出し続けていた。メインフレームという芸術品が大きな市場だった時代は終わった。安価なパソコンという工業品が求められる時代だからこそ、その時代の要求に応える努力をするべきだった。
 しかし、日本の半導体大手はDRAM生産をやめた現在でもなお、高品質技術にしがみつき、発想の転換をまだ図っていない。日立製作所と三菱電機の合弁会社ルネサステクノロジや、NECからスピンオフしたNECエレクトロニクスなどは長い間、電力会社や通信キャリヤを相手にしたビジネスをやってきた。半ば公の機関であるこれらの企業向け製品は品質が最優先される。いまだに官公庁ビジネス体質が抜けきっていないのだ。これでは、低コスト技術を開発しようというマインドにはならない。一刻も早く脱却しなければコスト競争力で勝てない。
 佐藤さんがおっしゃりたかったことは、ビジネスの基本に立ち返り、半導体企業が成長するために必要なことが何であるかを経営者がきちんと意識し、従業員に伝えなさい、ということではないだろうか。ご冥福をお祈りします。
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