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2006年9月号
高度レーザー処理による
次世代OLEDおよびLCDの製造
Ludolf Herbs
独Coherent Lambda Physik社
www.coherent.com
 低温ポリシリコン(LTPS)アニーリング技術は、フラットパネルディスプレイ(FPD)製造時に、電子移動度の高いポリシリコン層を形成するために広く使用されている。LTPSアニーリング技術は、ELAプロセスから始まり、SLSなどが導入され、今後有機ELディスプレイ(OLED)の製造への適用が期待されている。これらのプロセスでは、レーザー光源の性能がFPDそのものの性能をも左右するが、同時にレーザー技術の進展により低コスト化や高性能化が実現する。
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序論

 フラットパネルディスプレイ(FPD)は、技術自体の急速な進歩とユーザから大きな期待を背景に、民生機器業界で最も成長が著しい技術の1つ 1)である。電話、PDAなどのコンパクト製品の(映像処理)高速化と共に、高解像度、高輝度ディスプレイへの要求はますます高まっている。多くの高性能FPD製品では、より汎用的なアモルファスシリコン(a-Si)ではなく、多結晶シリコン(ポリシリコンまたはp-Si)が使用されている。これらの高性能製品としては、最新のアクティブマトリクス式有機ELディスプレイ(AM OLED) やシステムオンパネル(SOP)がある。3)低温ポリシリコン(LTPS)アニーリングは、FPD製造時にクリティカルなポリシリコン層を生成するための実証済みで広く使用されている手法である。本論文ではまず、現在LTPSに使用される2つの確立されたレーザー手法ELAおよびSLSを紹介し、このどちらの手法にも有用なレーザー技術における最新の成果を検証する。また、レーザー技術およびLTPSの絶え間ない進歩により、ポリシリコンがさらに広範囲なデバイスに利用可能となる点について論じる。

技術的概要

 アモルファスシリコンには限界があるため、高性能FPDの中には、アニーリング(結晶化)工程でアモルファスシリコンをポリシリコンに変換するという手法をとるものがある。p-Siの電子移動度は通常a-Siの100倍以上も大きい。
図1 ラインビームELAプロセス: a-Si膜の表面がレーザービームにより溶融し、底に残った固体シリコンが種結晶となる。したがって結晶化は縦方向に生じる
 電子移動度が大きいと、口径比の高い小型のTFTが実現可能となるため、輝度の高いLCDが得られ、全体的な電気効率は高くなる。TFTが小型になればより解像度の高いディスプレイが実現できる。またドライバなどの回路を直接ディスプレイに実装することが可能となるため、全体的にシンプルなシステム構成となり、総コストも低下する。最新のFPD技術では、システムオンパネル(SoP/SoG)ディスプレイの実現にLTPSは必須である。またLTPSは、AM OLEDにおいても理想的なサポートマトリクスとして高い性能と信頼性をバランスよく実現する。

ラインビームELAプロセス

 最初に量産用に使用されたLTPSプロセスは、エキシマレーザーアニーリング、つまりELAと呼ばれるもので、1997年に導入された。308nmエキシマレーザーからの矩形のビームを光学的に均質化し、変形して、断面が線状で、断面全体を通してエネルギーの均一性が高いビームを生成する。この線状の断面をシリコンで覆われた基板に当てて、移動ステージを用いて基板をビームに対してスキャンする。ラインビームの最終的な均質性は2.5%(2s)で、基板のスキャン時に各箇所に対して同一のフルーエンスで10〜20回放射することができる。
 シリコンは308nmの放射光を効率よく吸収し、図1に示すように各パルス毎にほぼ完全に溶融する。微細レベルでは、このようにほぼ完全に溶融することにより、溶融シリコンと溶融していないシリコンの間の境界から始まって縦方向へ結晶が成長し、効率的に結晶が形成される。
図2 ラインビームにより結晶化したp-SiのSeccoエッチング後のSEM画像
左:高解像度(提供:日本製鋼所) 右:低解像度(提供:Lambda Physik社)
 最新のELAシステムでは、最先端の円筒状の光学系により、465mm×0.4mmの線面積が実現可能である。適当な数のパルスを重ねれば、繰り返し速度300Hzのレーザーパルスを用いて、この面積で28cm2/sの結晶化速度を達成することができる。得られる均質なポリシリコン薄膜(図2参照)は、粒子サイズ約0.3×0.3μm2で、100 - 150 cm2/VsのNチャネル電子移動度を達成する。4)
 ELAはガラス基板で利用される一方、低温プロセスであるためにプラスチックや金属ホイルなど温度に敏感な基板にも利用できることが実証されており 5)、柔軟性の高いディスプレイに 最適である。

SLSプロセス

 2003年には、SOPやAM OLEDのみに適したもう1つの結晶化手法が量産に利用されるようになった。この手法は2ショットシーケンシャルラテラル・ソリディフィケーション(SLS)と呼ばれる。ここでは、粒子(結晶)がELAのように縦方向ではなく横方向に成長するようにプロセスが設計されている。横方向への粒子の成長は、粒子サイズや均一性などに優れた縦方向への成長に比べると、適用分野によっては大きな進歩ではない 。8)9)11)電子移動度は粒子サイズに比例するため、粒子サイズは大きい方が望ましい。
図3 CrystaLas TS-SLS光学系の原理: 均質なレーザービームが投影レンズを通してマスクパターンを基板に投影する。パターンはパネル上に転写される
 結晶化中に、結晶は固体シリコンから溶融領域へと成長する。つまり、各レーザーパルスは、固体と液状の物質の間に横方向の鋭いエッジを残しつつ、Si膜の厚さ全体を溶かす必要がある。実際には、長い直線のパターンからなるマスクを用いた高分解能のマスク投影光学系によりこれが実現されている(図3参照)。
 2ショットSLSでは、移動ステージを用いてパネルをスキャンする。特定のマスク設計により、基板を線形にスキャンし、2回の連続的なレーザーパルスのみで各箇所を結晶化することを可能とする。つまり、最初のマスク投影により、各線の間にアモルファスシリコンをはさんだポリシリコンの周期的な線のパターンを生成する。線幅は通常、数ミクロンである(図4)。2度目の放射は、マスクの線ピッチの半分だけずらすことにより、隣接するポリシリコンの線が正確に重なり、横方向に結晶化されたポリシリコンの連続的な層が生成される(図5参照)。

最近のレーザー技術の進歩

 LTPSがますます広範囲のFPDアプリケーションや技術分野に利用されるにつれ、これらのアプリケーション向けに最適化された高エネルギーエキシマレーザーが急速に発展し、開発されるようになった。つい最近までは、プロセスの経済性を高めるためにガス寿命とメンテナンスの必要がない期間を延長することが、レーザー開発における目的であった。その結果、この目的に関しては劇的な進歩が得られ、今ではLTPS製造レーザーは1回のガス充填で4000万個以上のパルスを周期的に生成することができるまでになった。300 Hzの繰り返し速度では、ユーザが介入することなく40時間以上の連続製造処理が可能ということになる。
図4 2ショットSLSプロセスの原理: 2回目のパルスパターン(黒色)が1回目のパルスの結晶化部分(灰色)に重なっている。マスクパターン幅(a)がマスク線幅(b)よりも小さくなければならない
 昨年、レーザー技術はレーザー性能のその他の面でも重要な発展を遂げた。Coherent社による LAMBDA SXが、プロセス歩留まりを向上させることを目的に、特に成長の著しいOLED向けに開発されたのである。このレーザーは、日本製鋼所などの主要企業とその顧客からの要求とフィードバックを基に開発されている。
 この新しいレーザーの主な特長は、エネルギーの安定性が従来のレーザーの1%(1sigma)と比較して0.5%(1sigma)と、飛躍的に改善されている点である(図6参照)。均質な結晶化を実現するにはパルス間のエネルギー安定性が不可欠であるため、この特長は重要である。エネルギー安定性が高ければ、TFT(薄膜トランジスタ)閾値電圧がより均質に分布することになる。これは、電圧駆動の画素で構成される従来のLCDにおいても好都合だが、画素が電流駆動で、各画素が並列に配置されたTFTを6個まで使用可能な AM OLEDにおいては、その効果はさらに顕著となる。単一のTFTにおけるばらつきが画素の性能に与える影響は大きい。したがって「レーザームラ」と呼ばれる縞模様のパターンをなくすためにもレーザーの安定性は不可欠である。
 この新しいレーザーのもう1つの重要な特長は、強力なコンピュータを利用する点である。特にLAMBDA SXは、処理カードとメモリカードを直接サポートする独自の高速バスを搭載する。このコンピュータにより、レーザーの診断がリアルタイムレベルで実行可能である。つまり、レーザーは個々のレーザーパルス1つ1つの性能をリアルタイムに監視し、それに応じて処理パラメータを修正することができる。
 またLAMBDA SXは、個々のパルスのアクティブな電子的安定性を利用した最初のLTPSレーザーである。PowerLokと呼ばれるこの機能によりレーザーは、パルスバーストモード時や電源投入直後にも、高度に均一なパルス列を生成することが可能である。これにより、電源投入直後のパルスが仕様通りにならないという多くのレーザー技術における共通の問題が解消される。
図5 厚さ50 nmのa-Si層における2ショットSLSプロセス。左図は1回目のショット後の結晶化状態を示し、右図は2回目のショット後の最終的な結晶化状態を示す。2回目のショットのビームの端は1回目のショットに重なっている [ref]
 もう1つの新しい機能はTimeLokと呼ばれるものである。電子的なトリガパルスとレーザーパルスの間の遅延時間のアクティブな安定化を行う。この機能により、パネルのステッピングとレーザーのパルス発振の同期を合わせる必要のある高速SLS処理に有用な「パルスオンデマンド」が実現できる。これは日本製鋼所が製造しているような、レーザーの外部トリガを利用するFPDアニーリングシステムにおいても有効である。
 またこの新しいレーザーは、停止時間を減少しサービス性を向上させるためにモジュラー構造で設計されている。レーザーユーティリティは、e-診断オプションの利用によって拡張されている。この機能により、レーザーを外部のノート型パソコンに標準のイーサーネットリンクで接続可能である。ノート型パソコンには、統計監視および解析ソフトウェアを搭載し、パルス毎の性能に関する詳細なログを記録することができる。(内部コンピュータでは最新の1万パルス分のログしか残せない)。したがってユーザは処理を続行しながらレーザーを評価することができる。さらに、ノート型パソコンはインターネットを介してCoherent社の工場と通信が可能である。このような高レベルなコンピュータ制御と通信により、高度な予測的なメンテナンスを行うことができる。部品の寿命も長くなったことから、稼動コストは従来のレーザーに比べて20%減少した。
 最後になるが、LAMBDA SXレーザーは、広く採用されているLambda STEELと同一の形状、サイズ、および機能でパッケージ化されている。

図6 過去10年間のエネルギー安定性の変移。今日ではLAMBDA SX 315Cが、1回の1050 mJ/300 Hz (315ワット)のガス充填で、4000万個以上のパルス(40時間)に対し、標準で0.5% (Sigma)のエネルギー安定性を達成している
今後の動向

 いくつかの要因からLTPSの利用は順調に拡大していくことが予測される。まず1つめは、様々な製品において高速で高輝度なディスプレイが増え、アモルファスシリコンでは性能の限界に達してしまっているという点である。2つめに、パネルへの論理回路と機能回路の集積(SoP)により、多結晶バックプレーンへの要求が高まっている点である。また、最新のレーザー技術によって実現可能となった高いプロセス安定性により、AM OLEDディスプレイの量産が加速するであろうということも重要な要因の1つである。同時に、LTPSレーザーおよびツールはますます進歩し、さらなるスループットの向上とコストの低下が期待される。
 プロセス自体の改善点としては、粒子の均一性を向上することが重要となる。ELAプロセスや、特に2ショットSLSとその大きなプロセスウィンドウにおいて、レーザーの安定性による粒子の高い均一性は、大規模なデバイスやAM OLED製品におけるムラやその他の性能欠陥が生じる可能性を低下させる。実際、2ショットSLSプロセスでは、電子移動度に対して2倍の均一性が得られることが確認されている 12)

結論

 高エネルギーエキシマレーザーに基づくLTPSツールは現在、TFT-LCDの分野で広く普及している。これらのシステムは、現代および次世代のAM-LCDやAM-OLEDの製造における、最も厳しい設計および製造品質基準を満たすことが実証されている。レーザー技術のさらなる進歩により、レーザー、ビーム照射光学系、その他のツール部品の価格が低下し、LTPSはTFT-LCD製品市場のこれまで以上に広いセグメントで経済的に魅力的な選択肢となるだろう。また市場において、アモルファスシリコンでは実現できない性能が製品に対して要求されることも、LTPSアプリケーションの発展をさらに促す要因となる。
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参考文献
1. R. Young, 7th Annual Display Search US FPD Conference, pp. 1-23, 2005
2. J. Lai at al., IDMC 2005 Proceedings, pp. 41-44, 2005
3. F. Okumura, IDMC 2005 Proceedings, pp. 311-314, 2005
4. A.T. Voutsas, Applied Surface Science 208-209 (2003) 250
5. M. Hatalis at al., IMID 2005 Proceedings, pp. 692-696, 2005
6. S. Uchikoga, N. Ibaraki, Thin Solid Films 383 (2001) 19
7. L. Herbst, F. Simon, U. Rebhan, R. Osmanow, B. Fechner, Asia Display/IMID 04 Proceedings, pp. 319-321, 2004
8. J. S. Im, R. S. Sposili, M. A. Crowder, Appl.Phys.Lett. 70/25 (1997) 3434
9. J. S. Im, M. A. Crowder, R. S. Sposili, J. P. Leonard, H. J. Kim, J. H. Yoon, V. V. Gupta, H. Jin Song, H. S. Cho, Phys.Stat.Sol.(a) 166 (1998) 603
10. M. Matsumura, Phys.Stat.Sol.(a) 166 (1998) 715
11. J. S. Im, R. S. Sposili, MRS Bulletin, XXI/3 (1996)
12. S.Brotherton et al. [S.D.Brotherton, M.A.Crowder, A.B.Limanov, B.Turk and J.S.Im: Characterisation of poly-Si TFTs in

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