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2006年11月号
国家プロジェクトでは競争力はつかない
日本版 編集顧問
津田建二
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 先日、米Cypress Semiconductor社の創業者兼CEOである、T.J. Rogers氏にインタビューした。日本では彼の名前をご存じの方は少なくなったかもしれないが、彼は米国エリート大学の一つ、米スタンフォード大学の博士課程を抜群の成績でもちろん首席で卒業し、十年に一人の逸材といわれた男だ。在学中にMOSトランジスタのチャネル長を当時の4〜5μmしかリソグラフィ技術では加工できなかった時代にサブミクロンのチャネル長を実現できる、VMOSトランジスタを開発、特許を取得、新入社員ながらVMOS開発の事業部長になった。
 天才と呼ばれたTJとのインタビューで米SEMATECHについてどうしても確認しておきたいことがあった。「SEMATECHには今でも反対しているのか」、について聞いておきたかった。かつて、米国の半導体企業コンソーシアムであるSEMATECHに対して、TJはその設立に猛反対していた。理由は、国がお金を出すプロジェクトでは企業間のコスト競争力がつかない、からであった。当時の米国は日本にやられっぱなしで、日本のやり方を見て国家プロジェクトを推進しようという声が強かった。
 政府のお金で製造装置を買う習慣が身に付くと自分で稼ぐという市場経済マインドが薄れてしまう。国の補助金を当てにするような企業論理では公共事業的な考えしか出てこない。「実は今の日本では、国家プロジェクトを推進すべしという声があり、それは共産主義的な考えだと思うのだが、TJはどう考えるか」、と質問すると、彼はまさにその通り、社会主義そのものだと答えた。
 しかし、今ではもうSEMATECHには反対しないと言う。なぜか。SEMATECHは90年代のはじめに政府からの出資金を政府に全額返却し、事業としてやっていくために一私企業と同じように、リストラ、組織の再構築をという、政府から一切の資金援助をもらわない方式に切り替えた。私企業になってしまえばもう反対しない。
 そのころに名称をInternationalSEMATECHと変えてからは、自分で稼ぐというビジネスモデルになった。そのためには偏狭な国家主義的な考えを捨て、韓国や日本企業にも出資してもらった。ようやく公正な競争ができる土俵についたといえる。だから今、SEMATECHの重要なテーマの一つが、競争力を付けるための低コスト製造技術なのだ(http://www.reedjp-form.com/blog/参照)。
 ただし、新しい組織でもベルギーの研究開発会社であるIMECの方がもっとコスト競争力は高い。IMECはもともとベルギーの一地方であるフランダース自治体が出資した組織ではあるが、はじめから成長するために自分で稼ぐという意識が強かった。このため世界各地に赴き、企業からの参加を呼びかけた。国家という政治色がなかったため、各企業は純粋に役に立つと思うような研究開発テーマを選んで参加した。
前にも書いたが、シンガポールの国営研究機関であるIME(Institute of Microelectronics)でさえも、政府予算を減らし民間からの出資でやっていける仕組みを推進している。翻って日本の独立行政法人はどうか。独立とは名ばかりで、給料や退職金などは国家(税金)から出ているし、自分で稼ぐという考え方にはなっていない。やはりいまだに社会主義である。
 日本では、国家の税金を当てにせず企業間の競争力を高めようという考えはいつになったら表舞台に出てくるのだろうか。国家ファウンドリ構想に私が反対する理由はまさに社会主義的発想だからである。
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