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2006年11月号
パッケージングに欠かせない
インクジェット技術
Alec J.Babiarz
米Asymtek社
www.asymtek.com
 電子回路や半導体のパッケージングに用いる接着剤を射出することによって、スループットの高いアンダーフィリング、小型のフィレット、および少量の材料を用いるその他のアプリケーションを実現できるようになった。
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 エレクトロニクス・アセンブリに用いる様々な流体の用途は、年を追って急速に増加している。ダイのパッケージングは、リードフレーム、ダイボンディング、ワイヤーボンディング、およびプラスチック樹脂封止のプロセスにより1970年代に完成した。プリント回路基板(PCB:Printed Circuit Board)アセンブリにはウェーブ式めっき装置やIC挿入機が用いられ、当時のディスペンス用途はダイアタッチとはんだマスクのみであった。その後ハイブリッド・アセンブリと表面実装技術(SMT:Surface Mount Technology)が増加するにつれて、はんだペースト、表面実装用接着剤、ダイ接着剤、グロブトップ封止剤、はんだマスク、およびダイコーティングにまでディスペンスの用途が拡大した。1980年代の終わり頃になると、速度と性能の改善に対する要求が高まり、半導体のパッケージングはエリアアレイ・パッケージの方向へと進み、これによってダムアンドフィル、カプセル封入、フリップチップ・アンダーフィルに用いる量産アプリケーションが進化した。市場からは、小型・軽量化、低消費電力、環境に優しい材料、高機能性、および高速性がますます要求されているため、様々な種類の流体、接着剤、コーティング剤、封止剤、ペーストおよびフラックスが用いられるようになってきた。
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 以前は、アセンブリ工程で流体を扱うことが困難であったため、流体の塗布は廃止すべき工程と見なされていた。しかしながら今日では、液晶ディスプレイ(LCD)、チップを利用したバイオテクノロジー医薬品工場、レンズ、およびMEMS装置からも明らかなように、流体は電子回路をパッケージングするのに無くてはならない要素になりつつある。ワイヤーハーネスからPCB、SMT、SiPモジュールへと変遷した結果、さらに新しい流体や用途が生まれている。また同様に、流体を塗布する技術についても、ニードルを用いた接触方式から、射出による非接触方式へと進化している。こうした変遷は、コンピュータ用のプリンタが接触式のピン印刷方式からインクジェット印刷方式に変化したのと同じくらい、半導体産業にとっては重要なことである。変化というのは避けられないものである。そして、アセンブリ工程における流体射出など、消費者の要求が新たな技術革新の原動力となっている。

射出方法の種類

 今日利用できる最も一般的な射出方法は、サーマル方式のインクジェットである。この装置は、半導体と薄膜技術を用いて、非常に低コストで大量生産することが可能なため、コンシューマ向けのアプリケーションに適している。この技術は、粘度の低い微小のインクを射出するもので、特に印刷業界で採用されている。
 サーマル方式インクジェットの歴史は、薄膜抵抗を利用して特殊な感熱紙に熱印刷した時代にまで遡る。ある時、高温の抵抗器でインクを沸騰させて液滴を作り出すことができるのではないかという考えが生まれた。サーマル方式では、小さな抵抗器を急速に加熱し、沸騰によって気泡を発生させた後、抵抗器の電源を切ってインクを冷まし気泡を消す。気泡を発生させて消す動作によって、気泡の真上にある流体に推進力が伝わる。抵抗器の上または近傍に穴を開けておけば、流体が通過しやすくなり、結果的にインクの液滴が開口部から射出されるようになる。
 
Asymtek社の「DispenseJet DJ-9000」が、フリップチップ・イン・パッケージをアンダーフィルしている様子。射出方式が、狭いスペースに接着剤を塗布したり電子回路を封入したりする新しい方法になる様子を示している

 サーマル方式の長所は、液滴のサイズが小さい、動作速度が速い、空気の侵入による影響を受けにくい、ヘッド製造コストが安い、ノズルを数多く接近してパッケージできることである。しかしながらサーマル方式のインクジェット技術は、インク以外の分野に応用することが難しい。この技術が最も適しているのは、粘度が30cps以下の低粘度流体であり、流体を沸騰するまで加熱する際に、流体と抵抗器で不必要な化学反応が生じる可能性も高い。
 ピエゾ方式の射出技術や非接触射出技術も、エレクトロニクス・アセンブリに応用されようとしている。ピエゾ方式は、サーマル方式に競合する技術として、印刷分野でも利用されている。これらの射出方式では、圧電板と、流体の入った空洞を収縮させて容積を変えるビームまたはチューブが用いられる。このような構造の場合、ピエゾ方式は最高20kHzの速度で動作することができる。力はかなり強いが、偏位量は小さい。OEM用にいくつかの射出装置が市販されている。この技術の主なメリットは、射出アレイの製造が容易であり、液滴を素早く射出できることである。射出アレイは、ノズルを125本、256本、最高300本まで増やすことができる。有機EL(OLED)は、この技術をエレクトロニクス業界に応用した成功例でもある。LEDセルの中に有機材料を射出して、赤色、緑色、青色および白色のダイオードを作るため、Dimatrix社(旧Spectra社)とセイコーエプソンのヘッドが用いられている。エレクトロニクス・アセンブリにおいて実現性の高い装置である。
 この射出方式は、一般的に粘度が30cps以下の低粘度流体に限られる。また偏位量が少ないため、空洞に侵入した空気が圧電素子によって押し出されると、応答が鈍り、材料がノズルから射出されにくくなる。ピエゾ方式は、サーマル方式に比べて化学的に不活性であり、筆者は、インク以外の用途の場合は、サーマル方式のインクジェットに勝る利点があると考える。
 射出を行う別の方法として、射出孔を急速に開閉する方法がある。この方法では、流体に比較的高い圧力(流体の粘度が30cps程度の場合は›0.2mPaで、さらに粘度の高い場合は圧力が著しく高くなる)を加えた状態で射出孔を開放する。射出孔から流体が流れ始めたらすぐに閉じる。急激に閉じることによって流れを止め、流れの勢いで流体をノズルから射出する。レバーシステムに圧電アクチュエータを取り付けると、バルブを素早く作動させることができる。射出孔から射出する物質の量を正確に制御するためには、素早い動作を繰り返す必要がある。また液滴を作り出すためには、細いノズルに高い圧力を加えた状態で素早く作動させなければならない。この方式は、流体の粘度によって大きく左右され、エアオーバーバルブの動作とよく似ている。この射出技術は、UV硬化接着剤を塗布して電子回路を封入する用途で成功を収めている。この種の射出装置は、Picodostec社、Delo社およびVermes社から入手できる。

 最近では、Mydata社が別の新たな射出技術を紹介している。同技術では、圧電ロッドを半閉鎖空洞の内部で励振素子として用いる。この空洞は、回転容積移送式ポンプ(RPDP:Rotary Positive Displacement Pump)からはんだペーストを供給するラインに対して開いている。原料がこの空洞に押し込まれると同時に、圧電定在波のポンプ動作によって、サイズの揃った原料の液滴が、ノズルから最高500ドット/秒で押し出される。この種の圧電射出方式は、業界にとって目新しいものであるが、試作ラインや多品種生産ラインで行うステンシル印刷に代わってはんだペーストを塗布する新しい方法として有望だと思われる。この技術には、RPDPが付随しているため容積移送機能があるというメリットがある。
図1 機構式射出法は、流体に圧力が加わっただけでノズルから流出するのを軽減し、ノズルのサイズ、ボールのサイズ、およびシートの形状に基づいて小滴が射出されるよう工夫されている
 機構式射出法(図1)は、もう一つのユニークな方法である。この場合は、液体が比較的に低い圧力で空洞に供給される。一般に、アンダーフィル接着剤は‹ 0.1mPaで加圧され、液晶のような粘度の低い材料になると0.01mPaで加圧される。機構式射出法は、流体に圧力が加わっただけでノズルから流出するのを軽減し、ノズルのサイズ、ボールのサイズ、およびシートの形状に基づいて液滴が射出されるよう工夫されている。この技術の長所は、ノズルの部分に局所的な非常に高い圧力が加わるため、非常に粘度の高い流体でも射出できることである。ピエゾ方式やサーマル方式に比べて、液滴サイズがはるかに大きくなるという欠点もあるが、機構式射出法には、アンダーフィル、エポキシ樹脂、フラックス、表面実装用接着剤、および液晶のような、エレクトロニクス・アセンブリで一般的に見られる接着剤や流体を射出する用途が数多くある。エレクトロニクス・アセンブリに用いられている流体は、ほぼすべてがこの方法で射出されている。

動作原理

 供給圧力を加えて、流体をボール/シートエリアに補給する。ボールをシートから離すと、流体がシートエリアに流入する。シャフトが上に向かって移動すると、下側の空洞が広がるため、結果的に流体が供給側から空洞内部に流入する。ノズルから空気が引き込まれるのを防止するため、射出ノズルは細く、供給圧力を高めてある。ボールは既知の速度で急速に下降し、シートに衝突する。シャフトが下降すると流体が移動する。シャフトに接触している流体は、シャフトと共に移動するが、シャフトと空洞壁の間にある流体は、供給側に戻る。この過程はボールがシートに到達するまで続く。ボールがシートに接触する寸前になると、一定量の流体がシート内部に閉じ込められ、流体はノズルの射出孔を通って流出せざるを得なくなる。すると流体の圧力が極端に高くなり、流体は射出孔から連続的に出て行こうとする。しかしながら流体の補給源が既に断たれているため、ボールがシートに衝突し終えると、流体の流れが断ち切られる。
図2 100μmのジェットノズルの長さは0.5mmで、ダイの表面から2mm上に配置することができる。これと等価なニードルであれば、ダイのエッジよりも下に位置することになり、上の平面図に示すように、ダイのクリッピングやチッピングが起きる可能性が高くなる

射出とニードルの比較

 各種の射出技術は、いずれもニードル固有の弱点が克服されており、ニードル方式よりも優れている。材料をニードルで吐出する場合は、ニードル、基板、および流体が、互いにすべて同時に接触しなければならない。ニードルからの流れが止まり、ニードルが表面から引き上げられた後にディスペンスが完了する。ニードルが上方へ移動するため、ブレイクオフや、表面とニードルに残っている材料の量を制御することはできなくなる。これに対してジェットによる射出の場合、流体が射出ノズルから放出されて表面に衝突する。そのため、制御不可能な変数が1つなくなる。その結果、信頼性、再現性、およびプロセスウィンドウが改善される。
 もう一つの長所は、射出孔の形状が小さいため、流れが細く、流速も比較的速く(1.5m/秒)できることである。ただ、ノズルチューブとニードルの物理的な流れは同じである(次式を参照のこと)。


 しかしながら、100μmの射出ノズルの長さは0.5mmであり、表面から2mm離すことができる。これと同等なニードルは、太さ32ゲージ、長さ2.5mm以上なければならない。流体の圧力が同じだとすれば、射出は5倍の流体を供給できる。射出流は何かに拘束されることがないが、ニードルの場合は、流体が供給点に到達するまでずっと閉じ込められた状態になる。その結果、流体の位置はニードルの位置によって決まるのだが、ニードルは、曲がったり、位置決めロボットの閉ループ位置から逸れたりする可能性がある。さらに、ニードルでは基板を確実に濡らすことができず、流体がニードルのどちらか一方に偏って吐出位置に誤差が生じる可能性もある。ここで、ニードルが何故曲がるのかということについて考えなければならないが、それはニードルが何かに当たることを暗に示している。つまり、ニードル方式で「ダイチッピング」が起きるのはこのためであり、フリップチップの縁が、曲がったニードルによって損傷するのである。射出方式であれば、ダイが欠けることは絶対にない(図2)。
図3 射出した小滴を2枚の基板の間で圧迫して結合させ、シールを形成する様子
(特許係属中)

 液滴を射出して封止用のラインを描いてみると、初めは分からなかった長所が確認された。一連の液滴を正しい間隔で射出して2枚のパーツで圧迫すると、ほぼ完全にまっすぐな、縁に波のない線を描くことができるのである。液滴を圧迫すると、初めのうちは流体が均一に流動して大きな円になる。しかしながら、小滴が線の軸に沿って互いに接触すると、接触したポイントで流動の均等化が対称に起きる(図3)。液滴をさらに押しつぶすと、流体は障害物のない縁に向かって流れる。初めは縁が波形になっているが、小滴をさらに圧迫すると流体は最短距離を取ろうとし、波形の最もくびれた部分に向かって流れる。
 その結果、流れが表面に沿って均一になり、直線が形成される。これはOLED、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal On Silicon)、フラットパネル・ディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)アセンブリの、シールをマスキングする際に有利である。等間隔の点で形成された長方形または連続形状の始点と終点が分からなくなり、分注した線の視点または終点に塊がなくなる。このような条件は、ニードル吐出ではほとんど実現不可能である。


実現技術

 あらゆる射出技術を応用して、新しいパッケージング技術が可能になっている。より狭い空間に流体を配置できるようにすれば、狭い空間で接着剤を使用したり電子回路を封入したりする新しい道が開ける。フリップチップ・オン・フレックス(FCOF:Flip-chip on flex)は、様々な携帯機器、カメラ、およびHDDアセンブリに用いられている。またフレキシブル回路基板は、これまでの数年間において硬質プリント回路基板よりも急激に増加しており、パッケージングでの用途がさらに増え続けると思われる。
 小型のフリップチップダイの場合は、アンダーフィルを素早く行えるようにすれば、最終製品の導入が可能になる。コスト目標を達成するためには、製造業者は生産ラインの1時間当たりの生産数を高めなければならない。1mmのダイ1個につきアンダーフィルが4ドット必要だとすれば、射出なら1秒間に200ドット塗布することができるため、50ppsに相当する。ニードルプロセスでは、14ドット/秒という高速を用いたとしても、スループットは3.5ppsになる。プロセスの他の部分を考慮すると、射出はスループットにおいて3倍以上有利である。このため設備稼働率が少なくとも3倍になる。
 FPDアセンブリ市場には、非接触ディスペンス方式に固有の利点を生かしたユニークな用途がある。FPDは大型のガラス基板の上に作られる。最も新しい世代は、第7世代と呼ばれている2×3mの基板である。これまでは、より小さなパネルでさえも、ニードル方式を用いてディスプレイの周りにビードを吐出してきた。ニードルで上手に吐出するには、ニードルと基板との距離を正確に保たなければならない。そのためには、複雑な装置やサーボ制御が必要である。ところが射出方式の場合は、幸いなことに高さを正確にコントロールする必要がない。射出方式では、1mm変化する基板の上に流体を塗布することができるため、安価な装置で素早く分注でき、ディスプレイの製造コストを下げることができる。
 チップスケールパッケージ(CSP:Chip Scale Package)をアンダーフィルする用途の場合は、ワイヤレスのアプリケーションが普及しつつあるため、新たな難問が浮上している。通常、新型の高性能な携帯情報端末や携帯電話には、電磁波妨害シールドが必要である。二次アンダーフィルが必要なコンポーネントの上にシールドを配置しなければならない場合は、アンダーフィル操作が完了するまでシールドを塗布することができない。このため、基板上にシールドのはんだリフローを追加する必要があるが、これは非常に好ましくないことであり、コストがかさむうえに、ほぼ完成した製品に不適切なストレスが加わることにもなる。しかしながら幸いなことに、シールドに小さな穴を開けておき、アンダーフィルが必要なコンポーネントのコーナー上にその穴が来るようにすれば問題を解決できる。射出方式は、100μmのストリームを20mg/秒程度の高い流速で供給できるため、アンダーフィル材料をこの穴の中に注入すれば、実現可能な生産プロセスになる。アンダーフィルは、部品の縁やコーナーに沿った1箇所に施すことでも十分に行うことができる。
図4 フラットパネル・ディスプレイに液晶を充填する方式は、時間のかかる真空注入方式から射出方式に代わりつつある
(出典:信越化学工業)
 もう一つの実用化技術は、液晶滴下注入方式(ODF:One Drop Filling)と呼ばれるプロセスである。複数の滴下を行うので、「One Drop」と呼ぶにはいささか語弊がある。通常、FPDのガラスの間に液晶を充填する際は、ディスプレイの一方の端を真空引きして、供給トレイから液晶を吸い上げる。ところが画面が大きくなると、この工程に1日を要することもある。新しい方法では、液晶をアレイ状に射出して、ディスプレイを真空中で重ね合わせる。この方法であれば、大型ディスプレイの加工時間が24時間から3時間に短縮される(図4)。

結び

 インクジェットは、エレクトロニクス・アセンブリ、半導体パッケージング、およびFPDアセンブリに使用されている様々な流体を塗布する標準的な方法になりつつある。射出方式には固有の長所があるため、今後は、ニードルディスペンス方式が衰退することが容易に想像される。サイズを小さくすること、公差を厳しくすること、射出速度を速めることによって、製造業者はより高性能なコンポーネントを経済的に生産できるため、新たな小型製品が実現可能になる。

謝辞

 この記事は、2006年1月に開催されたSMTA環太平洋会議で発表された論文を基にしたものである。
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Alec J.Babiarzは、Asymtek社の上席副社長であり、同社の共同創立者でもある。彼は、ディスペンサに関する31件の国際特許を共同開発した1人であり、流体ディスペンスや射出に関する論文を15以上書いている。彼は、Arizona State Universityで工学理学士号を取得しており、Stanford Universityで機械工学と電気工学の修士号を取得している。
E-mail:ajbabiarz@asymtek.com