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2006年11月号
Inspection, Measurement and Test
収差補正STEMが新たな可能性を切り開く
Alexander E. Braun
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 1930年代に電子顕微鏡が登場して以来、電子レンズ収差がもたらす解像度の限界によって電子顕微鏡の進化は複雑なものであった。可視光レンズと比較すると、電子レンズは50倍程度劣っている。そのため、通常の顕微鏡が約1世紀前に(可視光の波長に近いところで)解像度の限界に達したのに対して、電子顕微鏡ではそのようなことは起こらなかった。
 当然、収差補正は電子顕微鏡の究極の目標となった。なぜなら、使用された波長は光のそれより桁違いに小さいものの、使用された電子の波長(〜0.03=j)には近づけなかったからだ。これは平均的な原子の直径0.1〜0.5nmよりかなり小さい。電子ビームの解像度は約50波長までと限界があるため、原子レベルの解像度はここ数十年で達成されたにすぎない。今日では、複雑な一連の電子光学が主要な収差を補正し、限界はさらなる収差レベルへと持ち越された。短期間の間に解像度は2倍になり、材料の原子構造は観察しやすくなった。そして以前よりコントラストが鮮明になったことで、より細かい部分の観察が可能となった。
 米オークリッジ国立研究所(ORNL) Materials Science and Technology部門の電子顕微鏡グループは、Stephen Pennycook氏の指揮の下、収差補正による予期せぬ結果を調査した。それは一般のカメラに起きることと似ていた。開口度が上がると焦点深度(DoF)は下がる。STEMの場合、サンプルウェーハ内で1つの特定深度に焦点を合わせることができるので、単に焦点を変えることでサンプルウェーハの膜厚全体を通過することが可能になる。この試みは方位分解能を2倍にする目的で行われた。そして、深度分解能は開口度の2乗で向上するので、深度分解能は4倍まで向上する結果となった。
図 HfO2/SiO2/Si界面構造の3D図。 設定された三次元データに強度しきい値を設定することで作成された。シリコン基板は金、HfO2膜は黄色で示された。界面層のHf原子は個別に緑、黒、赤、青に分けられた。SiO2層との界面でHfO2膜の表面ラフネスがいくらか観察された
(出典:ORNL)
 「以前は、サンプルを光にかざして投影図を見ているようなものだった。今や典型的なサンプル膜厚より小さい焦点深度で、異なる深度に焦点を当て三次元画像を作成することができる」とPennycook氏は言う。この利点は明らかだ。ORNLではこの性能を利用してゲート絶縁膜(シリコン上のHfO2)を研究し、Siの格子を解像して、幅1nmのSiO2領域を可視化できるようにした。研究者Klaus van Benthem氏とPennycook氏はHfO2絶縁膜を研究し、厚さナノメートルサイズのSiO2内で、シリコン基板においてHf原子を撮像することを可能にした。これらの原子はX-Y精度1Å 以上、深度(Z)精度5Å (=0.5nm)以上で発見できる。これにより長い部分に渡ってスキャンし、散在するHf原子を測定し、それらの位置をマッピングすることが可能となる。興味深いことにSi/SiO2界面にはHf原子が全く存在しなかった。ORNLのグループは数多くの理論的モデリングを行った後、これはSiO2がSi格子に付着したときのSiO2中の歪みが原因だと結論付けた。酸化膜構造は圧縮され、酸化膜構造にあるすべてのケージ(シリコン−酸素/シリコン−酸素のリング)が小さくなる。そして、Hfが大きいので、Siから少なくとも2.5Å はしっかりと離される。Hf原子密度が確定されることによって、リーク電流や移動度のようなバルク転送の特性とデータを関連付けることが可能となる。
 この種の収差補正顕微鏡は入手可能でるが、ORNLのグループが作成したプロトタイプ装置は未だに2つの世界記録を持っている。それは、サブオングストロームレベルの解像度による結晶格子の直接撮像とバルク材料内における単一原子の分光器による識別に関するものである。
 同グループは孤立原子の周りの電子構造の調査を進めている。画像の入手に加え、分光法を用いることができる。仮に特定の原子に三次元で焦点を合わせ、透過電子を分光器に通すなら、特有の吸収限界からその原子を特定し、周囲のバンド構造を推論することができる。これによって電子構造を三次元で調べ、その周囲への影響を測ることが可能となる。例えば、デバイスを短絡させるかもしれない何らかの状態があるかどうかを割り出すことが可能になる。ただ、現在、これには多量の電子が必要であり、結合を切ることでサンプルにダメージを与えるかもしれない。