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2006年12月号
エンジニアの待遇を改善する経営者たち
日本版 編集顧問
津田建二
* * * *
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企業は人なり。よく言われる言葉である。企業経営で最も大切な要素の一つが人材で、優秀な人材がいなければ企業は成り立たない。実際にエンジニアが優遇されているだろうか。最近、立て続けに企業トップにインタビューする機会に恵まれ、優秀なエンジニアの確保や処遇などについて話を聞いた。高精度なアナログICでエンジニアに定評のある米Linear Technology社の創業者であり現会長でもあるRobert Swanson氏は、デザインセンターはアナログ回路設計エンジニアのいるところに設立するという。シリコンバレーのミルピタスに本拠を構える同社にももちろんアナログ技術者はいるが、「シリコンバレーに来たくなければ設計者が住みたい場所をデザインセンターとする。ボストンやシンガポールにデザインセンターを置くのはそこの地域に優秀な設計者が多いため」とSwanson会長は言う。
これまでは顧客のいるところや賃金の安いインドなどにデザインセンターを置いていたが、もはや技術者のいるところにデザインセンターを置くというわけだ。同じような話をエルピーダメモリでも聞いた。
エルピーダは最近秋田にデザインセンターを設立した。なぜ、秋田か。日立製作所のグループ会社の一つであった秋田電子、アキタセミコンダクタを半導体の後工程の工場として使うため、日立製作所から譲り受け後工程専門の秋田エルピーダメモリとしてこの8月に設立した。同社の代表取締役社長兼CEOの坂本幸雄氏は、そこに以前までメモリー設計に携わっていた優秀な設計技術者が十数人もいることに気がついた。これらの設計技術者を生かさない手はない。「特に開発部門は人で決まる」(坂本社長)。この10月に秋田エルピーダメモリの敷地内に東北デザインセンターを設立した。
坂本社長の言う「企業は人なり」はこれだけではない。プロフィットシェアリングを従業員に唱っている。四半期ごとに営業利益率が10%以上達成できれば従業員に、一定の月数の特別ボーナスを支払う。さらに多くの利益を生み出せたときは役員にも支払う。
従業員を第1にするという坂本哲学は、ストックオプションは役員やマネジャーのみという米国流を改善し、従業員にもストックオプションを与えている。株式上場したときと比べ株価は2倍に上がっているため従業員に還元できたと同氏は喜んでいる。
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米Texas Instruments(TI)社取締役会長Thomas Engibous氏は、TIがかつてDRAMや防衛産業を切り捨てるとき、売却先を同業社に選んだ。DRAMは米Micron Technology社へ、防衛部門は米Raytheon社へ売却した。このため、DRAMエンジニアはDRAM開発を続けることができ、防衛機器エンジニアは防衛機器の開発を続けることができた。事業を切り捨てるとしてもエンジニアが不幸にならないことを考えたという。エンジニアを大事にするという経営者が出てきたことは喜ばしい。翻って日本大手の経営はどうか。坂本氏がエルピーダの社長に就任したとき、「赤字の会社なのに社長に社用車が付き、飛行機はファーストクラス、ゴルフで接待はおかしい」と感じた。6時間以内の飛行機は社長でもエコノミークラスで、社用車は撤廃した。役員は待遇が良くエンジニアの待遇が悪いシステムを彼は変えた。
かつてNECの役員から英国ベンチャーのImagination Technologies社日本法人社長に転身した松江繁樹氏は、かつてと違い今はエコノミークラスでロンドンまで出張するという。昔と違い女性秘書のいない毎日だが、無駄遣いしていないという気持ちが強く働き、胸を張って仕事ができるとしている。