Movers&Shakers

Michael Fancher氏
米University at Albany, State University of New York
(ニューヨーク州立大学アルバニー校)

[2007年02月号]

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 Michael Fancher氏は、ニューヨーク州立大学アルバニー校(The University of Albany, State University of New York:SUNY)ナノスケール科学工学カレッジ(College of Nanoscale Science and Engineering)の経済アウトリーチ活動ディレクター兼ナノエコノミクス助教授である。9年以上に渡って、産学官協同の戦略的アウトリーチ活動やビジネス開発イニシアチブを、コンソーシアムやチーム、提携関係、プログラム、プロジェクトといったさまざまな形で確立し、育成、維持してきた。ナノエコノミクス助教授としては、ナノテクノロジーが後押しするビジネスの本質の変化を科学、工学のリーダーたちに理解させることに重点を置いた新たな経済学カリキュラムの開発に尽力し、産学官の協同を代表する法的かつ専門的取り組みで知られている。同氏はSUNYアルバニー校から国際経済学の修士号を、Syracuse大学から経営学の学士号を取得し、ニューヨーク州の公認会計士でもある。


Semiconductor International(以下SI):“ナノエコノミクス”(Nanoeconomics)とは?

Fancher:半導体業界のようなナノテクノロジー主導の業界で出現しつつある新たな経済力を引き出す技術的、経済的、ビジネス駆動要因や、変化するビジネスモデル、動的なリスク緩和戦略を研究することだ。

SI:このようなナノエコノミクスの力は半導体業界を牽引してきた従来の力とどう異なるか?

Fancher:ナノテクノロジーの可能性、例えば、同一のナノ現象にさまざまな応用があることや、ナノテクノロジーの商品化に際した急激なコスト上昇を考えると、今までとは異なる技術的協調関係のモデルが必要性になることが分かる。いくつかのOEMメーカーを含む我々の提携企業の多くは、顧客に自由度を与えようとして、たくさんの設計パラメータと直面している。また、R&Dや試作を行なうターンアラウンドタイム(TAT)を早めていく必要がある。ここでいう試作とは、単にデバイスの試作品を製造するだけでなく、速く、しかも価格競争に太刀打ち可能な製造プロセスフローを開発することである。リスクを最小限に抑え、知的所有権を保護し、ビジネス機会を最大化する新しい技術モデルが、ナノテクノロジーの成功には必須である。もう一つの側面は、150以上の企業やさまざまなコンソーシアム、垂直型チーム、ナノテクノロジーを製造プロセスに取り入れ始めているバイオテクノロジーやエネルギー、セキュリティなどの他の業界との共同研究を通して得つつある知識の応用である。

SI:それによって半導体業界がパイオニアになるということか。

Fancher:その通りだ。半導体業界は高歩留まり、低コストのプロセス開発にナノテクノロジーを取り入れる最初の業界になることは間違いない。

SI:最近のナノテクファンドをどう見るか?

Fancher:ナノテクへの投資の加速には主に2つの要因がある。1つは連邦政府の“National Nanotechnology Initiative”による投資に関連する。これはボトムアップの技術推進アプローチに分類される。これまでの発見は大学や政府の研究機関から出てきて、たまに小さなナノテク企業を生むことはあった。しかし発見の多くは市場アプリケーションの模索から取り残されてきた。大切なのは、重要な開発と、商品化に向けた試験的なスケールアップ段階をサポートするための非常に低レベルの投資である。高歩留まり、高スループットのナノテク製造に不可欠な半導体業界のインフラへの投資の結果として得られるナノテクノロジーへのトップダウンのアプローチが開発されれば、半導体に留まらない広範囲なナノテク・アプリケーションへの期待を体現する唯一かつ最大のチャンスが訪れるだろう。

SI:半導体業界のナノテクノロジーへのアプローチをどう考えるか?

Fancher:何が本当のナノエレクトロニクス・メーカーかを自覚しており、意識的、発展的なアプローチと見る。例えば、CMOSがほぼ15年で根本的限界に突き当たることは一般的な合意事項だろう。このことが半導体業界を刺激し、米国半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)の会員企業のコンソーシアムであるナノエレクトロニクス・リサーチ・イニシアチブ(NRI :Nanoelectronics Research Initiative)が設立され、結果として大学ベースのプログラム開発および運営のための米Nanoelectronics Research社になった。その主要要素の1つが、この大学で私が率いているINDEX(Institute for Nanoelectronics Discovery and Exploration)と呼ばれる4億5400万ドルのプログラムで、ここに拠点を置いている。INDEXは、米国の主要大学と世界有数の半導体研究・開発・製造企業の連携を通じて21世紀のBell研究所を設立するためのSIAと米SRC(Semiconductor Research Corporation)の共同の取り組みである。

SI:ナノテクノロジーは、開発と、プラットフォームへの統合が必要だが。

Fancher:もちろんだ。そしてそのプラットフォームは300mmウェーハである。これはOEMメーカーには従来のツール上で次世代のナノファブリケーション技術を開発する余裕はないからである。メモリー、ロジック業界の要求によって決定づけられた次のフォーマットに移行しなければならない。であるから、ナノテクノロジーへの期待は数多くの新しいアプリケーションに向けた開発が行なわれることであり、これは、光学やバイオ、RF、エネルギーといった他のエレメントをその上に統合できる業界規格に準拠したプラットフォーム上でなされなければならない。我々は現在、純資産額30億ドル、45万ft2の最先端の設備と、6万ft2の300mmウェーハ用クリーンルームを使ってこの一端を担っている。1300人の科学者、教職員、研究者、エンジニア、技術者、学生がおり、彼らの多くは米IBM社や米AMD社、ソニー、東芝、米Sematech社などの有数のコンピューター・チップメーカーや、米Applied Materials社(AMAT)、東京エレクトロン、蘭ASML社、荏原製作所、独Vistec Semiconductor Systems社、その他のOEMメーカーとの共同研究を行なっている。

SI:Albanyのナノテクノロジーへの取り組みを援助する企業や組織を考えたとき、それらに何か別の要望はあるか?

Fancher:参加企業は、この技術を1点に集めるためにはそれぞれの企業が持つ知的財産の一つ一つを製造可能なソリューションに統合して行くことのできる新たなコラボレーション・モデルが必要だと分かっている。装置メーカーはロジックやメモリー等の彼らの従来の顧客や市場機会をサポートしようとしている。例えばAMATは、同社の技術や知識ベースを元に新興の光電池市場分野に参入しようとしている。他の分野では、MEMSの分野がブレークしそうだが、MEMSに注力する装置メーカーの市場を見てみると、それはメモリーやロジックの市場と比べるとそう大きくないようだ。これらの企業にとって、このような現在発展中の有限な細分化された市場への巨額投資を正当化することは非常に難しい。

SI:市場では躍進している。

Fancher:確かに。MEMSの場合の問題は、100mm、150mm、あるいは200mmウェーハ上でMEMSを製造している時点でそれらのメーカーが300mmウェーハ用のプロセス技術に投資する余裕がないことにある。確かに300mmウェーハ用のすべての装置を揃える必要はなく、いくつかの装置があれば十分かもしれない。しかし、原子層成長法(ALD:Atomic Layer Deposition)のような新規の300mmのナノプロセス技術を各社の個々のプロセスフローに取り入れる方法を模索できれば、主流産業のサプライチェーンがサポートする形勢をすっかり変えるようなソリューションを導入できるだろう。

SI:これからの3~5年でナノテクノロジーから期待できるものは何か?

Fancher:300mmウェーハの製造インフラを考慮に入れると、マイクロシステムや無線技術とともに、エレクトロニクス、フォトニクス、バイオエレクトロニクスとナノテクノロジーとを1点に集めることができるだろう。しかし共通点は何だろうか。私は、300mmウェーハでの3次元ウェーハスケール・パッケージングの開発がこれを実現する鍵となるプラットフォームと考える。この収束によって、テザーフリーコンピューティング(Tether-free Computing:制限のない演算)の開発を可能にすることにより広範な業界での急激な成長が見込めるだろう。こうなれば、コンピューター向けだけでなく、例えば装用型健康管理モニター等の医療分野にもチップ市場を広げることができるだろう。巨大市場が急速に発展するだろうから、OEMメーカーであれば大量の新しい装置が期待できるし、デバイスメーカーであればさまざまな機能を持つ大量のチップが期待できるだろう。
(聞き手:Alexander E. Braun)

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