Editorial

経営トップが率先してお手本を示す

[2007年03月号]

By 日本版 編集顧問  津田建二
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 経営者がエコノミークラスに乗ってムダを抑えるという話を2006年12月号のこのコラムで書いた。これについて、「エコノミーで浮いた分をエンジニアに還元する」、という意味でとらえた読者がいた。2007年2月号で高橋編集長がその部分を引用していたわけだが、これは、経営者がムダはしないという覚悟を従業員に見せることを示しているのであり、エンジニアに還元しているわけではない。赤字なのに経営者が社費の高級車で送迎、ファーストクラスで出張、役員はゴルフ三昧という、ムダをしていることに新社長は驚いたのである。

 会社が赤字なのに、経営者だから黒塗りのクルマで送り迎え、従業員は満員電車で通勤、という構造を問題にしている。この分を抑えたからといって赤字が解消するわけではもちろんない。しかし、経営者ががんばっているのなら従業員の俺たちもがんばらなきゃ、というメンタルな効果を狙っている。

 エルピーダは、ムダなお金は抑えるが、必要な投資には2000億円でも3000億円でも使うという考えだ。これをどうしてセコイと言えるだろうか。経営者がエコノミーに乗るのはエルピーダに限らない。ネットワークシステムの王者、米Cisco Systems社のCEOもエコノミークラスで日本へ出張するという。その考えはエンジニアに還元するというセコさではなく、ムダなものには決してお金をかけない、しかし必要なことには十分な投資をする、という哲学に基づく。

 ちなみにエルピーダの社長自らが、NECや日立製作所という親会社に頼らず、海外をエコノミークラスで飛び回って1800億円もの資金を調達してきた。この姿勢を従業員が見ていて、セコイ経営者だというだろうか。むしろ、従業員は今度の社長は本気だ、俺たちもがんばらなきゃ、という意識に変わったと聞いている。ちなみに、エルピーダの社員の方が、元の両企業の社員よりもモチベーションは高いと、元の企業のある社員は語っている。この意識改革が企業の業績を上げる上で極めて重要な要素になる。

 1年前に半導体産業を復活させるためのブレーンストーミングを開いたときに次のように述べた元エンジニアがいた。「日本の半導体大手の経営者には、役員の地位に着いたとき、俺もとうとうここまで来たか、という想いに浸るだけであり、そのあとの企業をどのような方向に持っていこうという考えがない」。つまり、ここには黒塗りの社用車に乗り、ファーストクラスの海外出張に出かけるだけで会社の方向を示さず、ただ会社に通うだけという経営者の姿勢を批判していた。

 ここまで書いてきて、エルピーダメモリの第3四半期の業績が発表された。またもや営業利益率が10%を超えたため、従業員に特別ボーナスを与えることになる。お金だけが全てではないが、みんなで必死に頑張って業績を上げたという努力が報われることになる。今では、エルピーダに行けばよかったとため息をついている、元の親会社の社員がいると聞く。

 エンジニアのモチベーションがお金だけだと言っているつもりはない。また、待遇改善がお金だけとは決して言ってはいない。自己実現ができるかどうかを採り上げたのである。だからこそ、秋田エルピーダという半導体チップ組み立て工場にくすぶっていた、優秀なDRAM設計者を設計業務に活用するため秋田にデザインセンターを設立したことをその一例として採り上げた。決してせこくエコノミーに乗った分をエンジニアに還元しているわけではない。誤解しないで読んで頂ければ幸いである。他の読者からの声も聞かせて頂きたい。

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