Industry Watch

グローバルなコラボレーションで
着実に成果を上げるIMEC

[2007年05月号]

By Ryoichi Tetsui
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補助金を頼らずに自らの収入で規模を拡大
 IMECは、非営利組織(NPO)としてベルギー・フランダース政府によって1984年に設立された。設立当初の投資額は6200万ユーロで、70名程度のスタッフでスタートした。以降、研究成果の対価などとして得られる収入は右肩上がりで拡大を続け、2007年の総収入額は2億4000万ユーロを見込んでいる。政府からの補助金はそのうちの3900万ユーロで、総収入に対する補助金の割合は16%程度となっている(図1)。この図を見ると、政府からの補助金のみに依存することなく、IMEC自ら収入を得ることで成長し続けてきたことがわかる。今では1500人以上のスタッフを抱え、独立系の研究開発組織としては世界最大規模を誇っている。


図1 総収入の推移とフランダース政府からの補助金との比較
(出展:IMEC)

 2006年の総収入を地域別でみると、地元フランダース地域での売り上げが2割、欧州地域が1割となっており、海外からの収入が7割近くを占めている。

 IMECのミッションについて、社長兼CEOのGilbert Declerck氏は、「マイクロエレクトロニクスおよびナノテクノロジーの分野において、産業界の技術よりも3~10年ほど先を見据えたR&Dを行うこと」と述べる。ワールドワードな研究開発拠点を目指す一方で、人材育成やスピンオフによるベンチャー企業の立ち上げなど地域の産業発展にも貢献、産官学での連携がうまく機能している。


高額な研究開発費用を複数企業でシェア
 近年、半導体産業を取り巻く経済の状況が変化してきており、最先端の技術開発を継続するためには、デバイスメーカーはこれまで以上に高額な研究開発費用を投資する必要がでてきている。その理由についてDeclerck氏は、「製品サイクルの寿命が短くなり、製品開発に求められる期間はより短くなってきている。消費者はより小型で長寿命(バッテリ)、かつ低価格の製品を求める傾向にある。技術革新を続けるためには、メーカーはこれまで以上に数多くの技術について研究開発を行い、さまざまな材料について調査を行う必要がある。しかし、それを実現するためには最先端の装置や複雑な製造技術が必要となるため、次世代技術の研究開発費用が拡大してきている」と説明する。


社長兼CEOの
Gilbert Declerck氏


 こうした状況下において、企業が単独で次世代技術の開発を続けていくには莫大な資金を調達する必要があり、失敗したときのリスクも大きくなる問題がある。産業界で生き残るためには、次世代技術に対する研究開発の必要性はこれまで以上に重要度が増してきている。ところが、Declerck氏は「研究開発費用が急激に拡大する一方、最近ではつぎ込んだ研究開発費用に見合うだけの売り上げが得られなくなってきている。そのため、企業が単独で研究開発を続けることが非常に困難になってきている」と分析する。そして、コンソーシアムに参加して複数の企業がコラボレーションすることのメリットについて、「研究開発に必要なコストを抑えつつ、効率よく研究開発の成果をあげることが可能になる。ひとつだけでなく、複数のコンソーシアムを利用することで、その効果はさらに大きいものとなり、限られた研究開発費の効果を増大させることもできる。先端かつ最新の情報を共有できるうえ、製品化までの時間短縮にも繋がる」と説明する。

国境のないインターナショナルな
コラボレーションを実現
 ベルギー・フランダース地域の産業発展をひとつの目的としているIMECであるが、研究開発メンバーの企業は国際色豊かである。米Intel社、韓国Samsung Electronics、松下電器産業、独Infineon Technologies社、台湾TSMC社など、世界のトップクラスの企業がコアパートナーに名を連ねる。IMECは研究テーマに合わせてパートナー企業とそれぞれ契約を結び、研究プログラムに参加した企業は研究成果によって得られるライセンスを自由に使用することができるIPモデルを構築している。IMECが保有していたバックグラウンドの知的財産についても、パートナー企業は制限なく利用することが可能になる。国内の企業のみでメンバーを構成し、研究の成果によって得られる利益を国内企業のみで享受しようとする日本のコンソーシアムとは全く考え方が異なる。

 日本のコンソーシアムが国内の企業に限定している点についてDeclerck氏は、「残念なことである。日本の企業に対してIMECへの参加を呼びかける機会があるが、彼らは不景気や予算不足を理由に参加を断るケースがある」と語る。IMECでは、コストシェアすることによるレバレッジ効果で5~10%のコスト削減が可能になるとしており、「我々としては、より多くの日本企業がIMECに参加することに対して協力を惜しまない」と述べる。

 IMECは例年、東京にて多くの関係者を招いて最新の研究結果を報告するワークショップを開催している。広く情報を公開して、国外に対しても積極的にコンタクトを取ろうとする姿勢は、日本のコンソーシアムも見習うべきことがあるのではないだろうか。

CMOSと神経細胞を融合した人工シナプス
 ナノエレクトロニクス分野においてIMECは、さらなる微細化を実現するための技術開発「More Moore」、複数の異なる技術をコンバージョンすることなどで機能拡張を図る「More than Moore」などの課題に対して、さまざまな研究テーマで取り組んでいる。More than Mooreへは技術およびアプリケーションの両面からアプローチを進めている。

 CMOSは、機械的、熱、音、化学、光学などさまざまな機能を組み合わせることで、CMOSイメージセンサー、圧力センサー、マイクロミラーアレイ、磁気メモリー、バイオロジカルメモリーといったデバイスへと機能を拡張することが可能である。IMECでは、More than Mooreの取り組みとしてCMOSプラットフォームをベースに異なるデバイスの機能を組み合わせる研究開発を行っている。

 マイクロシステムズ・コンポーネンツ・パッケージング事業部 ストラテジック・ビジネス・マネージャのLou Hermans氏は、研究開発中の技術としてナノテクとバイオを融合した「人工シナプス」の研究について紹介した。バイオロジカルの神経細胞とICとを融合させることで、双方の間での通信が可能なインターフェース機能を有している。電気的もしくは化学的な刺激が加わることでCMOSあるいは細胞が刺激を受けて反応し、その反応が再び信号となって細胞もしくはCMOSへと信号伝わっていくことで、生体である細胞とがICとで通信が可能になる(図2)。


図2 人工シナプスのプラットフォーム
(出展:IMEC)

 ただ、ここで困難となるのが、CMOSデバイスと神経細胞という全く異なる材料同士をいかにして結合させるかということである。また、結合させた後に、生体である細胞をいかにして成長させ、あるいはいかにして生き残るようにして機能させるかがこの研究でのトピックになっていると同氏は述べる。

 人工シナプスの将来的なアプリケーションとしては、人の体内あるいは体外で利用するかで異なり、神経と電気のハイブリッド回路として使用するならば神経学向けのツールや環境制御のためのバイオセンサー、体内に取り入れて使用するならばパーキンソン病や視覚再生のためのインプラントへの応用といったことが期待できるという。




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