Advanced Research

新しい施設がバイオテクノロジーとナノテクを融合させる

[2007年06月号]

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 半導体製造には、ボトムアップ・ナノテクノロジーとトップダウン加工技術を融合したものが利用される。例えば、ウェーハ製造は、微小な種結晶が溶融Siの入ったるつぼに浸漬されて始まる。種の周りでは無数のSi原子が種結晶構造と完全に配列し、自己組織化したSi単結晶インゴットを作り出す。もちろんこれはトップダウン・プロセスであるリソグラフィパターニング、絶縁膜や導電膜の成膜などと組み合わされ、半導体チップが出来上がる。

 しかし、これまでのような微細化が限界を迎えようとしている昨今、研究者は次世代技術革新の中心になるのはどんな技術か注目している。Jim Meindl氏は、はっきりとは分からないが、また別のトップダウンとボトムアップの技術が融合されたものに関係するだろうとみている。生物を支配する基礎的メカニズムが関係している何かではないのか、と。同氏は、米ジョージア工科大学ナノテクノロジー研究センターの所長として、総工費8000万ドルをかけた施設の開発を指揮している。同施設は、ナノメートル規模で生物科学と物理科学を融合させたものをベースとした新技術の構想を支えることになる。

 「植物、動物、そして人間は、誰にでも分かる最も驚くべき自己組織化の例だ」とMeindl氏は述べる。「Siから何か次にくるものへ我々が移行するために必要なブレークスルーを得るため、ボトムアップとトップダウンのナノテクノロジーの、より洗練された、巧みで見事な融合が行われるだろう」。

 新しいタイプのナノデバイスを作成するためには、半導体と圧電特性を組み合わせるナノワイヤーが関係してくるかもしれない(囲み「ナノピエゾトロニクス: ZnOナノワイヤーによって新ナノエレクトロニクスが誕生」を参照)。例えば、ナノピエゾトロニクスセンサーは、ナノ構造内を流れる電流を計測することで体内の血圧を測定できるかもしれない。


図1 ジョージア工科大ナノテクノロジー研究センターの所長のJim Meindl教授。総工費8000万ドルのマーカスナノテクノロジービルの建設地にて
(出典:Gary Meek)

図2 Bernie Marcus氏(左)、ジョージア工科大学長Wayne Clough氏(中央)、大学システムチャンセラーErroll Davis氏は、マーカスナノテクノロジービルの詳細を話し合う
(出典:Rob Felt)

 このような研究を行うにはこれまでとは違ったクリーンルームが必要だ。従来のマイクロエレクトロニクス用クリーンルームは、粉塵の侵入を防ぎ湿度を制限するため陽圧下で稼動する。生命科学のクリーンルームは微生物を外に出さないよう負圧下で稼動する。「始めから分野を統合して研究するために設計された施設は世界でも例がないだろう」とMeindl氏は付け加えた。ジョージア工科大キャンパスの北側に建設中のマーカスナノテクノロジービル(図1図2)には、生物学をベースとするナノテクノロジー研究専用のクリーンルーム(1万ft2)の隣に、従来のナノテクノロジー研究専用のクリーンルーム(2万ft2)が備えられることになっている。オープンは2008年中頃の予定である。

 米エモリー大学やその他一流機関との共同研究で、ジョージア工科大のナノテクとナノサイエンスのプログラムは、すでにそれら研究分野の統合の可能性を示した。例えば、合計4000万ドル以上に及ぶ3つの主要な研究イニシアチブが、がん撲滅やDNAの破損を修復する新たな方法を開発するため、ナノテク研究に資金を供給している。

 「ナノ医学では最高の工学部と最高の医学部を組み合わせ、そして今や我々は大変効果的にナノ医学の分野に移行できる特異な立場にある」とジョージア工科大の研究大学院副学長を務めるCharles Liotta氏はいう。「ナノテクノロジーとナノサイエンスはその他多くの科学技術分野に影響を与えるプラットフォーム技術。これらの研究分野の境界線で起きることを利用するのが狙いだ」。

 ナノテクノロジープログラムを基礎とした同大学のこのナノ医学の取り組みは、米国における高額研究費の上位25位内にすでにランクされている。また、同大学は最近の研究により、専門誌で「よく取り上げられる」ナノテク研究者数で国内3位となり、そのような出版物で発表した第一著者数のトップ10に入った。

 Liotta氏は、将来の更なる共同研究や、ジョージア州に拠点を置く企業も含めた業界各社へもたらされる恩恵を予想している。「1つの大学だけですべてのことはできない」と同氏はいう。「今日の研究のニーズを満たす知的資本や施設をすべて持っているところなどない」。同氏は、米オークリッジ国立研究所、国家ナノテクノロジー基盤ネットワーク(NNIN: National Nanotechnology Infrastructure Network)、英インペリアル・カレッジをジョージア工科大の共同研究の例として挙げた。

 今日、ジョージア工科大はDARPA(Defense Advanced Research Programs Agency)と米国半導体工業会の支援を受けたFCRP(Focus Center Research Program)の一拠点となっている。FCRPには、スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)、カリフォルニア大学バークレー校、テキサス大学なども参加している。

 Meindl氏は、16万ft2もの広さをもつ新しい施設に、ジョージア工科大の構想を分かち合いたいと待っている企業が惹きつけられるだろうと予想する。すでに20社以上の企業がそのクリーンルーム施設を使用している。同施設には5~10nmの形状が作成可能な電子ビームリソグラフィ装置を含む最新設備が備わっている。


図3 博士課程の学生であるRam Krithivasan氏は極低温テストステーション内でSiGeチップを調査する。同チップは極低温、500GHzで動作する(室温では350GHz)
(出典:Gary Meek)

 ジョージア工科大はその半導体研究ですでに知られた存在であり、配線、冷却、電源、パッケージングなど主要な課題に取り組んでいる、とMeindl氏は述べる。これまでの実績としては、米IBM社と共同研究した500GHz以上の周波数で動作可能な初のSiGeトランジスタの実証などがある。「当大学とIBMは、大口径ウェーハとSi互換性のある低コストの製造技術を活用した商用Siベースの技術によって、1秒当たり5000億サイクルの速度を実現することに初めて成功した」と同大学の電気・コンピュータ工学部のバイヤーズ教授であり、同大学の付属機関Georgia Electronic Design Center (GEDC)の研究員であるJohn D. Cressler氏は述べる。「この研究はSiGeナノテク技術を用いて実現できる可能性の上限を再定義するものだ」。

 IBMとジョージア工科大のチームが製作したSiGeヘテロ接合バイポーラトランジスタは、4.5K(華氏-451度)において周波数500GHz以上で動作する。この超低温は液体He冷却を用いて実現された。室温では、これらの機器は350GHz以下で動作した。性能は特別な高周波テストシステム(図3)で測定された。究極的にこの技術は、室温でもかなり高い(テラヘルツ近くの)動作周波数まで対応できることがシミュレーションで示された、とCressler氏は述べる。

 歴史的に見て、ジョージア工科大学は、他の世界一流の大学の中で、マイクロエレクトロニクス研究ではあまり知られてこなかった。同大学は、何年も前に、現在世界経済にとって極めて重要になった技術の多くで遅れをとってからは、巻き返しを図らなければならなかった。

 新しいビルの起工式で、ジョージア工科大学長のWayne Clough氏は、同施設により同大学のナノテクノロジー研究を急激に成長させて、同大学がナノテクにおける国家的リーダーとなることを誓った。「我々はマイクロエレクトロニクス革命に追いつくために大変な苦労をした。今度はもうチャンスを逃すことはしない」と同氏は参加者に述べた。

ナノピエゾトロニクス:
ZnOナノワイヤによって新ナノエレクトロニクスが誕生
John Toon
米ジョージア工科大学
gtresearchnews.gatech.edu

 新しい応用の幅を大きく広げる基礎となるかもしれない、新しいエレクトロニクス部品/機器の分野を創造するため、ZnOナノワイヤーの半導体と圧電特性の珍しい組み合わせが利用された。

 研究者はこれまで、ZnOナノワイヤーとナノベルトを曲げることで動作する電界効果トランジスタ、ダイオード、センサー、電流を発生させるナノジェネレータを実証してきた。これら新しい構成要素は、圧電性のナノ材料のメカ的な挙動とエレクトロニクス的な挙動の関係を利用する。研究者はこのメカニズムをナノピエゾトロニクスと呼ぶ。

 「ナノピエゾトロニクスでは、今までにないエレクトロニクス部品を作り出すため、圧電特性と半導体特性を組み合わせて利用する」と、ジョージア工科大学、材料科学工学部の指導教授Zhong Lin Wang氏は述べる。「これらの機器は、新たなエレクトロニクス分野を創造する基礎的要素を提供するかもしれない」。

 例えば、ナノピエゾトロニクスのトランジスタでは、1次元ZnOのナノ構造を曲げることで電荷分配を変え、トランジスタを通過する電流を制御することができる。電流の変化を測定することで、ナノピエゾトロニクスセンサーはナノニュートン(nN)あるいはピコニュートン(pN)の単位で力を検知することができる。他にも、ナノピエゾトロニクスセンサーでは、ナノ構造を通る電流を測定することで体内の血圧が測定できる。そして、曲げたZnOナノ構造の一方だけに電気的接続をすれば、電流の流れを一方に制限するピエゾトロニクスダイオードができる。


図1 ピエゾトロニクス電界効果トランジスタでは、ソース/ドレイン電極間でナノ構造を曲げることでそのコンダクタンスを変化させ、電流を制御する
(出典:Zhong Lin Wang)

 ナノピエゾトロニクス機構は圧電材料から作られたナノワイヤーやナノベルトの基本特性を利用する。構造を曲げることで電荷分離が起き、一方がプラスでもう一方がマイナスとなる。また、ずらりと並んだZnOナノワイヤーが曲げられ、そして開放されるときに測定可能な電流を発生するナノジェネレータを作成するのにも、曲げと電荷発生の関係が使われてきた。

 「将来のナノテク研究では、個々の部品を統合してナノシステムを構築する試みが行われる」とWang氏は述べる。「ZnOナノワイヤーやナノベルトを基礎としたピエゾトロニクス部品には、そのような統合されたナノシステムを可能にするかもしれないいくつかの重要な利点がある。」以下がその主な利点である。

・ZnOナノ構造は、損傷を被ることなく大幅に変形可能なので、折りたたみ式電源など柔軟性のある電子機器にも使用可能である。
・大きく変形させることによって、相当量の定格出力(体積出力密度)を可能にするかもしれない。
・ZnO材料は生体適合性があり、毒作用を引き起こさずに体内で使用できる。
・ナノジェネレータに使用される柔軟性のあるポリマー基板によって、埋め込みデバイスが体内構造に適合できるようになる。

 従来のエレクトロニクス部品と比べて、ナノピエゾトロニクスの機器は大きく異なる。例えば、従来の電界効果トランジスタでは、ゲート電圧と呼ばれる電位は、デバイスのソース/ドレイン(S/D)間を流れる電流を制御する電界をつくるために適用される。Wang氏とその研究チームが開発したピエゾトロニクストランジスタでは、S/D電極間でナノ構造を曲げることでそのコンダクタンスを変化させ、電流を制御する(図1)。曲げることでナノワイヤーにゲート電位を発生させ、その結果生じたコンダクタンスは適用された曲げ角度に直接関連している。


図2 2つのプローブを使って1つのZnOナノワイヤーを曲げる。電流(右)は曲げ角度の一次関数である
(出典:Zhong Lin Wang)

 「電流チャネル幅を減少させる効果があり、曲げの前後では導電性に10倍の違いがでるかもしれない」とWang氏は解説する。

 一方向へ電流の流れを制限するダイオードも、ナノピエゾトロニクスに基づいて作られた。メカ的に曲げることでナノワイヤーの電極と伸張性のある(伸びた)側の界面にできる電位壁を利用するためである。圧電効果によって作られた電位壁は、電流を一方向に制限する。

 ナノジェネレータはそれらの周りの環境からエネルギーを取り込む。体の動き、筋肉の伸縮、液体の流れやその他の源からの機械的エネルギーを電気に変えるのだ。ZnOナノワイヤーを曲げて開放し電流を発生させることで(図2)、これらのデバイスには、ナノメートル規模のシステムに電力を供給する電池やその他かさばる電源が不要になるかもしれない。ピエゾトロニクスのナノセンサーは、加圧下で構造物の形を調べることでnNの力を測定する。原則に基づいた埋め込みセンサーは、継続的に体内で血圧を測り、腕時計に似た外部装置へ無線で情報を伝達するかもしれない、とWang氏はいう。同デバイスは血流からエネルギーを得るナノジェネレータによって電力供給される可能性もある。

 その他のナノセンサーは、対象分子がナノ構造表面に吸収されるときの電流の変化を測定することで、超低レベルの特定化合物を検知することができる。「このような機器の活用は、表面積と体積の比率がとても高いので、単一分子を検知する可能性を秘めているかもしれない」とWang氏は述べた。



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