Industry Perspective

敵を知り、己を知れば・・・

[2007年07月号]

By 服部 毅
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 昨年度、発明協会が特許庁から業務受託した「半導体洗浄技術特許出願動向調査」にアドバイザーとして参加した。その調査結果が今年3月末にまとまり、概要が4月19日に経済産業省から発表された。調査結果は後日、特許庁のホームページ(http://www.jpo.go.jp)に掲載されることになっているが、本稿執筆時点では、まだ公表に至っていない。本テーマに興味のある方は、近日公開予定の資料1)をご覧頂くことにして、ここでは、著者自身が個人的に最も注目した調査結果をひとつだけ紹介したい。


表 半導体洗浄技術に関する企業別特許出願件数上位ランキング(1996年~2005年の10年間の総計)1)

 下は、1996年から2005年までの10年間に、日本・米国・欧州(EU)・韓国・台湾のいずれかに出願された半導体洗浄技術に関する特許の出願企業別トップ10ランキングである。ここで、注目すべきは、世界半導体洗浄装置市場で圧倒的なシェアを誇る日本勢を引き離して、装置メーカーではない韓国のSamsung Electronics社が、第1位だということだ。

 世界にその名を轟かせている日本の半導体装置大手2社は2位と4位にくいこんでおり、その顧客である日本半導体デバイスメーカーも5、6および9位を占めている。日本企業は、トップ10社中に6社、20社中には12社、そして30社中には17社という具合に常にランキングの過半を占めている。にもかかわらず、トップは、Samsungなのだ。特許登録件数企業別ランキングでは、2位を大きく引き離してトップはやはりSamsungだ。

 特許の内容を詳細に分析してみると、さらに驚くべき事実が浮かび上がってくる。

 日本の大手装置メーカーの特許は、ウェット洗浄装置・部材の改善や制御方法の改良に関する特許がきわめて多い。装置を開発・製造する立場だから、当然といえば当然だ。日本のデバイスメーカーの特許もウェット洗浄におけるウェーハ清浄度向上やデバイス品質向上に関するものが圧倒的多数を占めている。これに対して、Samsungでは、ウェット洗浄にとどまらず、ドライ洗浄(ガスや蒸気、プラズマ、紫外線、レーザー、極低温エアロゾルなどを利用した洗浄)やその他の洗浄に関する特許が非常に多く、全体のほぼ半数を占めている。Hynix やTSMCなど、特許ランキング上位に位置する外国デバイスメーカーでは、ドライやその他の洗浄の特許のほうがウェット洗浄よりはるかに多い。

 日本勢が旧来方式の改良にとどまっている間に、外国勢は、多種多様な洗浄方式に挑戦しているように見える。日本のデバイスメーカーがもたもたしている間に、外国メーカーは次世代デバイス・プロセスに取り組み、その微細化に伴う問題点に直面し、広範な検討を行い、解決策を先取りしているようだ。

 いまだに、霞ヶ関周辺では、技術流出をいかに食い止めるかばかりが声高に叫ばれているが、そのために日本に高い塀ができて、海外、とりわけ韓国の技術動向を見落しがちだ。Samsungが世界特許戦略を強化すべく着実に手を打って来ていることは前々回の本欄ですでに紹介した2)。今のままでは、近い将来、日本の半導体産業が韓国の先取り特許でがんじがらめになる可能性がある。IEDMやISSCCなど世界超一流の半導体国際会議でも、Samsungからの発表件数はすでに日本の各社の発表件数をはるかに上回っている。3)4)

 こうした事実をしっかりと認識したうえで、日本からの技術流出を云々するよりは、むしろSamsungで何が起きているかをもっと知るべきだろう。

参考文献
1.「平成18年度特許出願技術動向調査報告書—半導洗浄技術」、特許庁(2007年)非売品

2.服部 毅 「10年後を見据えたSamsungの人材経営」、 Semiconductor International Japan 2007年5月号、p.68.

3.服部 毅 「IEDMレポート」 Semiconductor International Japan 2007年2月号、pp.14-17.

4.服部 毅 「ISSCCに見る日本の凋落」、 Semiconductor International Japan 2007年4月号、p.56.

訂正
本欄6月号の表1中の「参考文献1」による」は「参考文献2」による」の誤りにつき、訂正します。

表 半導体洗浄技術に関する企業別特許出願件数上位ランキング(1996年~2005年の10年間の総計)1)
表海はpdf参照



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