Industry Perspective

NXP Semiconductorsの新たな経験

[2007年08月号]

By 服部 毅
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 去る5月に、米国ネバダ州ラスベガス市の郊外で、 半導体製造の現状を分析し、その未来像を議論するコンファブ(ConFab)と呼ばれる国際会議が開催された。この会議が、毎年、ラスベガスで開催されるのは、半導体製造自体がいまや巨大なギャンブルになってしまったからだろうか。

 ところで、昨年の会議では、巨大化する研究費、450mm大口径化、次世代リソグラフィなど技術的な議論が中心だったが、今年のメインテーマは「半導体産業における新しい経済への挑戦」。

 このテーマに最もふさわしい企業として選ばれたのは、米Intel社でも韓国Samsung Electronics社でもなく蘭NXP Semiconductors社。同社はもともとオランダに本社を置く世界規模の総合電機メーカー、Royal Philips Electronicsの100%出資の子会社だった。長期的な安定経営を望んでいた親会社にとって、半導体事業は需要変動が激しく、設備投資額も巨大で、扱いにくい事業になっていた。このため、昨年、親会社は半導体子会社の株式の8割を投資ファンドグループに売却した。一方、いままでは経営判断を親会社に委ねていた子会社にとっては、迅速な経営判断が可能となった。同時に、生き残れる事業領域にビジネスを絞り込み、収益を上げる責任が生じた。因みに、NXPと言う名称はNext Experience(今後の新たな経験)に由来する。

新しい環境へのすばやい適合
 会議冒頭の基調講演で、同社上席副社長のA.Manocha氏が、同社の新しい経営方針について次のように述べた。

 「もはや一社単独で半導体製造を行える状況にはない。このため、90nm以降の半導体製造のための設備投資を取りやめ、ファウンドリに製造委託した。45~32nmの先端プロセスの自主開発も止め、台湾TSMC社の開発プラットフォームを活用する。既に、TSMCとは製造だけでなく研究開発でも連携強化の契約を結んだ。フランスで行っていた45~32nmプロセス開発協業からも脱退した。新規の設備投資をやめた既存の自社ラインでは、当面、90nmよりも旧世代の汎用製品を製造する」。

 「半導体製品は、広範な顧客ニーズの広がりや製品寿命の短期化で品種は増える一方で、現在300位に分類されるが、その全てでトップを確保するのは不可能だ。業界1~2位の半導体製品を持っている事業, つまり、ホーム(家電)、モバイル(携帯電話)、自動車、個人認証、収益率の高い汎用品の5分野にリソースを集中する」。

 最後に、Manocha氏は、環境に合わせて皮膚の色を変えるカメレオンの写真を示して、“We need to adapt”(「変化の激しい新しい環境に適合する必要がある」)と言って話を結んだ。

新たなビジネスモデルの構築
 NXPの方針転換発表後、米国でTexas Instru-ments社が同様の“fab-lite・process-lite”戦略をとることを発表し、さらに、日本でもソニーが同様の発表を行った。ソニーは、東芝・NECとのCMOSプロセス開発協業からも離脱したが、NXPがSTMicroelectronicsらとのプロセス研究協業から脱退したのとそっくりだ。

 このように、雪崩を打って、台湾ファウンドリへの開発・生産委託が始まりつつあることは以前にも紹介したが1)、Fab-lite・Process-lite戦略は、新しいビジネスモデルの一例にすぎない。米IBM社やIntelはプロセスで勝つ戦略だろう。今後、半導体産業は、巨額の設備投資・研究開発投資の問題を解決するとともに、デジタル家電用の少量多品種に対応するためにさらに新たなモデル構築、パラダイム転換が迫られている。残りをかけた競争がすでに始まっている。動きの遅い日本の半導体メーカーの今後の動向が注目されよう。

参考文献

1.服部 毅:Semiconductor International Japan 2007年6月号、p.60



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