Advanced Research

Siプロセスを利用したバイオセンサ

米Purdue 大学 Birck Nanotechnology Center

[2007年09月号]

By Ruth DeJule
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 米Purdue大学のBirck Nanotechnology Center(BNC)に課せられた1つのミッションは、生物学と医学の分野の重要な問題に対し新たなソリューションを生み出すため、マイクロテクノロジーとナノテクノロジーを統合することである。敷地面積18万7000ft2の同センターは2005年に完成した。Scifresナノファブリケーション研究所や2万5000ft2のクリーンルーム(クラス1、10、100)、電子・生体材料の特徴を研究する施設などがある。ここでは、電気、生物工学、生物科学、食物学、農学の各分野の研究者が学際的チームを作り、装置を共有して新たな構想を練っている。特に興味深いのは、マイクロエレクトロニクスとSiプロセスをチップベース診断デバイスの開発に応用する分野である。


図1 Siチップ産業の進歩により、タンパク質やウイルス、DNAといった生物学的成分要素と同じスケールの検知器を製作できるようになってきた

 ボトムアップ技術は、Siプロセスと違い、ナノメートルスケール以下で生物を作り出す化学・生物学的自己組織化プロセスのように、自然界でもよく使われる(図1)。たとえば、ウイルスは約0.1μm以下で、DNAは直径2~3nmである。チップのデザイン形状が45nmに近づく中、「タンパク質やウイルス、DNAといった生物学的成分要素と基本的に同じ大きさの構造を作ることは可能である」と、電気・コンピュータ工学、生医学工学の教授で同センターLIBNA(Laboratory of Integrated Biomedical Micro/Nanotechnology and Applications)のディレクタRashid Bashir氏は述べる。一つの成果としては、今日入手可能な、どの検知器よりも、はるかに感度の高い検知器を得たことだ。さらに、これらの検知器は単一分子でも探査・検知することができる。

 また、確立されたSiプロセスをこれらの検知センサーに応用する利点は、大量生産とコスト削減が望めることである。大腸菌その他の細菌は上水道や野菜畑に入り込んでおり、人用のポイントオブケア(POC)検査アプリケーションだけでなく、環境と食品テスト用にユースポイントの使い捨てセンサーが緊急に必要とされている。


細菌の検知
 ある細菌の存在を検知することに関して、このプロジェクトが他のラボオンチップ(Lab-on-a-Chip)プロジェクトと大きく違うのは、機能性や汎用性を大きく高める真に分野横断的なアプローチをとっていることである、とBashir氏は述べた。通常、マイクロ流体デバイスには直径数μmから数十μmと大変小さい断面チャネルがあり、そこをサンプルが通る。同チャネルは、数十分で数十~数百μLしか処理できない。現実社会で飲料水テストなどに使われるサンプルに関して、現行仕様は100mL以上の使用を要求している。このように大量のサンプルがマイクロ流体チップを通るのには何日もかかるだろう。LIBNAはBiomedical Engineering and Agricultureの研究者と共同開発した新しいろ過装置を使って、大量の流体を処理して少量にするオフチップ濃縮法を使う。その後、少量の流体はチップに注入され、電気的・機械的フィルタを使いさらに濃縮される。

 マイクロスケールろ過の一つの方法は細菌と抗体の基本的特徴に基づいており、誘電泳動効果を用いて細菌を捕捉する。細菌は、関連する誘電率を持つ電気的・誘電的特性を備えている。抗体はタンパク質で、細菌の表面を基に特定の細菌を検知・捕捉する。細菌の表面に抗体を付着させることで、特定の細菌を検知・捕集することができる。

 誘電泳動とは、粒子の誘電率が媒体のそれと違う場合、交流電界において、たとえば対象となる細菌のような微粒子に力が作用する現象である。この現象を起こすには、サンプル中に不均一な双極子を作るため電界は空間的に不均一でなければならない。その後、正味の力(誘電泳動力)が形成され、その力を用いてチップのマイクロチャネルを通る流体中の細菌を濃縮あるいは捕捉することができる。抗体はマイクロチャネルの内部表面に付けられ、対象となる細菌を検知・捕捉する。

シャーレ・オン・チップ

図2 シャーレ・オン・チップは細菌培養に使用される。細菌の成長に必要な栄養分は流体的・電気的接続により与えられる

 生きた細菌を素早く検知することは大きな課題である。今日、生きた細菌の検知はシャーレの中の寒天培地を使って行われているのが一般的だ。通常、細菌は20~40分ごとに2倍に増殖し、数日かかって検出に必要なコロニーサイズに到達する。LIBNAは細菌の検出しきい値をおよそ数個にまで大幅に減らす方法を発見した。

 細菌は成長中にブドウ糖や糖質など特定の栄養分を使用し、自然界にイオンを含んだ酸性の副生成物を排出する。これらイオンを含む副生成物によって、培地の電気抵抗、伝導性あるいはインピーダンスが変化する可能性がある。この考えに基づき、LIBNAのチームはシャーレ・オン・チップを開発した(図2)。これは、ナノリットル量のチャネルを使い細菌を濃縮した後、電極とマイクロ流体チャネルを用いて、チップ上での細菌の成長を電気的にモニタリングするものだ。電流の変化を時間の関数として監視し、1回または2回の倍加サイクルの後テストは終了するので、数日かかる細菌の成長時間を20~60分に減らすことができる。

 シャーレ・オン・チップは最大1×1インチのマイクロ流体チップから成るカートリッジで、電気的インターフェースと流体接続を備えたPCB上に搭載される。同カートリッジは、電気的ろ過カートリッジの場合同様、大量の流体を濃縮するため装置に接続される。

DNAシーケンス法
 ほとんどすべての医学的問題や病気の根底にDNA配列の異常がある。DNAはA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)、という四つの塩基で構成され、それらは異なる配列を繰り返している。すべての人間の細胞の配列は時が経っても変化しない。関係するDNA情報はタンパク質に伝えられ、代わりにタンパク質が様々に機能する。配列に突然変異が起きると、たとえばガンなどの病気につながる可能性があるので、DNA配列の知識は不可欠だ。Bashir氏のグループは、DNA分子の短鎖構造の配列を調査するため、Si関連ナノテクノロジーを再び応用した。

 ナノポアチャネルは、電子ビームリソグラフィ、電子ビームによる酸化膜の融解、収束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)を組み合わせた方法で、Si酸化膜中に形成される。最小直径が5~20nmほどの一つのチャネルがSiチップ上の膜に置かれる。膜は流体の2つの成分を分離し、その2つの成分間の唯一の経路は前述のナノチャネルを通る。DNA分子がリン酸緩衝生理食塩水のような流体に入れられると、正味電荷は負となる。よって、負電荷を持つ流体全体に電界を印加するとDNAは正電極へ移動する。これはDNAの電気泳動として知られる現象である(図3)。


図3 DNA分子は2層間に位置する20nmナノポアチャネルを通り、そこで検知される(TEM)(概略図)

 研究者らは、この技術に選択性を持たせるため、相補鎖の存在というDNAの重要な特性を利用した。つまり、特定の配列がその相補体によって認識される可能性があるという。ベースAはTと結合し、GはCと結合する。よって、もし不明の配列がプローブ配列と呼ばれる相補的な配列と結合すれば、それが特定されうるのだ。

 DNA短配列はナノチャネルの内壁側に付けられた。そこは円筒形で、内側はSi酸化膜で覆われ、プローブ分子が固定されている。不明のDNAが膜の片側に置かれ、膜全体に5~300mVの電圧が印加される。単一DNAがチャネルを通るのだが、このチャネルは1度に1分子しか通れないほど小さい。

 ターゲットDNAがチャネルを通らないと、KCl(媒体)のイオンがチャネルを流れ、およそ数十から数百ピコアンペアの電流が測定される可能性がある。しかし、DNAがチャネルを通れば、バックグラウンドイオン電流は物理的に阻止される。それに続く電流降下はダウンパルスにより検知される。要するに、電流中の摂動が分子輸送を表していると言える。Bashir氏のグループは、これら機能化されたナノチャネルで、ターゲットDNAのらせん構造が転位のパルス幅により特定されうることを発見した。パルス幅が短いとき、ターゲット分子はナノチャネル内壁に付けられた分子によって認識される。

 この方法は直径10μmまでの細胞を数える方法と似ている。しかし、この技術の強みはナノポアチャネルの選択性が付け加えられたことだ。この研究は、選択性を持ち選択性と配列に関する情報を提供するナノチャネルを用いて、単一分子の固体SiベースDNAセンサーを初めて考察した報告である。

 Siプロセスをバイオ診断装置の開発に応用しようという試みには終わりがないようだ。LIBNAからは、DNAやタンパク質を検出するオンチップSOI(Silicon on Insulator)トランジスタや、ターゲットウイルスを捕集する抗体付きSiカンチレバーのような新しい研究が発表され続けている。すべての技術が、高速・簡単操作の使い捨て検知器に関心が高まっている分野で、大いに期待されている。


参考文献
1. R. Gomez, D. Morisette and R. Bashir, “Microfluidic BioElectronic Processors for Rapid Detection of Live Bacterial Cells,” IEEE/ASME J. Microelectromechanical Systems, August 2005, Vol. 14, No. 4, p. 829.

2. S. Iqbal, D. Akin and R. Bashir, “Solid State Nanopores With DNA Selectivity,” Nature Nanotechnology, April 2007, No. 2, p. 243.



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