ボトムアップ技術は、Siプロセスと違い、ナノメートルスケール以下で生物を作り出す化学・生物学的自己組織化プロセスのように、自然界でもよく使われる(図1)。たとえば、ウイルスは約0.1μm以下で、DNAは直径2~3nmである。チップのデザイン形状が45nmに近づく中、「タンパク質やウイルス、DNAといった生物学的成分要素と基本的に同じ大きさの構造を作ることは可能である」と、電気・コンピュータ工学、生医学工学の教授で同センターLIBNA(Laboratory of Integrated Biomedical Micro/Nanotechnology and Applications)のディレクタRashid Bashir氏は述べる。一つの成果としては、今日入手可能な、どの検知器よりも、はるかに感度の高い検知器を得たことだ。さらに、これらの検知器は単一分子でも探査・検知することができる。
また、確立されたSiプロセスをこれらの検知センサーに応用する利点は、大量生産とコスト削減が望めることである。大腸菌その他の細菌は上水道や野菜畑に入り込んでおり、人用のポイントオブケア(POC)検査アプリケーションだけでなく、環境と食品テスト用にユースポイントの使い捨てセンサーが緊急に必要とされている。
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Siプロセスを利用したバイオセンサ
米Purdue 大学 Birck Nanotechnology Center
[2007年09月号]
図1 Siチップ産業の進歩により、タンパク質やウイルス、DNAといった生物学的成分要素と同じスケールの検知器を製作できるようになってきた
細菌の検知
マイクロスケールろ過の一つの方法は細菌と抗体の基本的特徴に基づいており、誘電泳動効果を用いて細菌を捕捉する。細菌は、関連する誘電率を持つ電気的・誘電的特性を備えている。抗体はタンパク質で、細菌の表面を基に特定の細菌を検知・捕捉する。細菌の表面に抗体を付着させることで、特定の細菌を検知・捕集することができる。
誘電泳動とは、粒子の誘電率が媒体のそれと違う場合、交流電界において、たとえば対象となる細菌のような微粒子に力が作用する現象である。この現象を起こすには、サンプル中に不均一な双極子を作るため電界は空間的に不均一でなければならない。その後、正味の力(誘電泳動力)が形成され、その力を用いてチップのマイクロチャネルを通る流体中の細菌を濃縮あるいは捕捉することができる。抗体はマイクロチャネルの内部表面に付けられ、対象となる細菌を検知・捕捉する。
シャーレ・オン・チップ
図2 シャーレ・オン・チップは細菌培養に使用される。細菌の成長に必要な栄養分は流体的・電気的接続により与えられる
細菌は成長中にブドウ糖や糖質など特定の栄養分を使用し、自然界にイオンを含んだ酸性の副生成物を排出する。これらイオンを含む副生成物によって、培地の電気抵抗、伝導性あるいはインピーダンスが変化する可能性がある。この考えに基づき、LIBNAのチームはシャーレ・オン・チップを開発した(図2)。これは、ナノリットル量のチャネルを使い細菌を濃縮した後、電極とマイクロ流体チャネルを用いて、チップ上での細菌の成長を電気的にモニタリングするものだ。電流の変化を時間の関数として監視し、1回または2回の倍加サイクルの後テストは終了するので、数日かかる細菌の成長時間を20~60分に減らすことができる。
シャーレ・オン・チップは最大1×1インチのマイクロ流体チップから成るカートリッジで、電気的インターフェースと流体接続を備えたPCB上に搭載される。同カートリッジは、電気的ろ過カートリッジの場合同様、大量の流体を濃縮するため装置に接続される。
DNAシーケンス法
ナノポアチャネルは、電子ビームリソグラフィ、電子ビームによる酸化膜の融解、収束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)を組み合わせた方法で、Si酸化膜中に形成される。最小直径が5~20nmほどの一つのチャネルがSiチップ上の膜に置かれる。膜は流体の2つの成分を分離し、その2つの成分間の唯一の経路は前述のナノチャネルを通る。DNA分子がリン酸緩衝生理食塩水のような流体に入れられると、正味電荷は負となる。よって、負電荷を持つ流体全体に電界を印加するとDNAは正電極へ移動する。これはDNAの電気泳動として知られる現象である(図3)。
図3 DNA分子は2層間に位置する20nmナノポアチャネルを通り、そこで検知される(TEM)(概略図)
研究者らは、この技術に選択性を持たせるため、相補鎖の存在というDNAの重要な特性を利用した。つまり、特定の配列がその相補体によって認識される可能性があるという。ベースAはTと結合し、GはCと結合する。よって、もし不明の配列がプローブ配列と呼ばれる相補的な配列と結合すれば、それが特定されうるのだ。
DNA短配列はナノチャネルの内壁側に付けられた。そこは円筒形で、内側はSi酸化膜で覆われ、プローブ分子が固定されている。不明のDNAが膜の片側に置かれ、膜全体に5~300mVの電圧が印加される。単一DNAがチャネルを通るのだが、このチャネルは1度に1分子しか通れないほど小さい。
ターゲットDNAがチャネルを通らないと、KCl(媒体)のイオンがチャネルを流れ、およそ数十から数百ピコアンペアの電流が測定される可能性がある。しかし、DNAがチャネルを通れば、バックグラウンドイオン電流は物理的に阻止される。それに続く電流降下はダウンパルスにより検知される。要するに、電流中の摂動が分子輸送を表していると言える。Bashir氏のグループは、これら機能化されたナノチャネルで、ターゲットDNAのらせん構造が転位のパルス幅により特定されうることを発見した。パルス幅が短いとき、ターゲット分子はナノチャネル内壁に付けられた分子によって認識される。
この方法は直径10μmまでの細胞を数える方法と似ている。しかし、この技術の強みはナノポアチャネルの選択性が付け加えられたことだ。この研究は、選択性を持ち選択性と配列に関する情報を提供するナノチャネルを用いて、単一分子の固体SiベースDNAセンサーを初めて考察した報告である。
Siプロセスをバイオ診断装置の開発に応用しようという試みには終わりがないようだ。LIBNAからは、DNAやタンパク質を検出するオンチップSOI(Silicon on Insulator)トランジスタや、ターゲットウイルスを捕集する抗体付きSiカンチレバーのような新しい研究が発表され続けている。すべての技術が、高速・簡単操作の使い捨て検知器に関心が高まっている分野で、大いに期待されている。
参考文献
2. S. Iqbal, D. Akin and R. Bashir, “Solid State Nanopores With DNA Selectivity,” Nature Nanotechnology, April 2007, No. 2, p. 243.
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