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アジャイルファブを実現する
ファクトリ・キード・イクイップメント

[2007年09月号]

半導体工場の全ての製造装置は、効率的なデータ管理とプロセス制御を実現するために、データの可用性、アクセス性、一貫性が求められている。


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 半導体メーカーにとって、サイクルタイムの短縮と運営コストの低減は、永遠の努力目標だ。新旧の各世代の半導体製品を製造する工場では、現在の需要に応えながら次世代製品の製造に対応するために、俊敏性と柔軟性を備えた製造施設を実現する新しい自動化手法が重要になる。

 オートメーションは生産性向上の推進力となるが、今後は達成した効率改善が「アジャイルファブ」あるいは「300mm Prime」につながる可能性もある。最前線の製造現場では、製造装置の応答の高速化が生産性の向上において最も重視されてきた。

 今日の半導体工場では概ね、3層モデルの自動化の構成が主流になっている。製造装置の階層は最下層に位置し、プロセス装置、計測機器、AMHS(Automated Material Handling System)などで構成されている。2層目には製造装置とファブの橋渡しをするステーションコントローラがあり、最上層のファブアプリケーション層には、製造のスケジューリング、供給、データ分析を行う製造実行管理システム(MES:Manufacturing Execution System)が活用されている(図1)。

図1 今日のほとんどの半導体工場で、3層のファブ・オートメーション・モデルが採用されている
図1 今日のほとんどの半導体工場で、3層のファブ・オートメーション・モデルが採用されている


 このモデルは半導体業界で広く活用されてきたが、今後も通用する最適なモデルだとは言い難い。歩留まりと単位時間あたりの生産性を維持するためには、プロセスのばらつきを低減する必要があり、従来の手法は今後要求されるタイトな制御レベルに対応していない。今後は、ファクトリ・キード・イクイップメント(Factory-keyed Equipment)の概念に基づく新しい手法が必要になる。

 ファクトリ・キード・イクイップメントは、半導体工場の全ての製造装置が効率的なデータ管理とプロセス制御を実現するために、データの可用性、アクセス性、一貫性が必要だという考え方に基づいている。半導体業界におけるデータは、複雑なシステムの動作を表現するある時点の測定値とパラメータだったが、新しい考え方ではデータの評価方法を変える必要がある。半導体工場を構成するシステムをリソースモデルとして理解することにより、データは意思決定プロセスに欠かせない中枢的な役割を担うことになる(図2)。


図2 図1の3層モデルとは異なり、ファクトリ・キード・イクイップメントは2層で全ての製造装置が効率的なデータ管理とプロセス制御を実現するために、データの可用性、アクセス性、一貫性が必要になる


 これまでの経験では、ファブ全体のオートメーションではステーション・コントローラが重要な役割を果たしている。ステーション・コントローラは、ファブのアプリケーション層から大量の処理情報を受け取り、デバイスの製造を指示できるように製造装置が理解できる命令に変換する。また、この役割を果たしながら、ステーション・コントローラは稼働中の製造装置からプロセス情報を収集し、ファブアプリケーション層で状況を分析できるように伝達している。コンセプトは単純だが、実装には困難を伴うことが多く、運用に至る段階まで固有の問題の解法に取り組む必要がある。

 ファブ・オートメーションのプロジェクトにおけるステーション・コントローラの実装に関心を向けると、製造装置が納入されてから実装に着手することが少なくない。ステーション・コントローラの実装計画が最重要事項だと考えられるケースはむしろ稀で、ほとんどの場合はファブの設備更新計画が優先される。ステーション・コントローラの必要性は分かっていても、ほとんどの人はその前に製造装置を量産運用できる状態に準備することの方が重要だと考える。

 実のところ、ステーション・コントローラの実装は、その企業の情報技術(IT)スタッフの責任であったり、サードパーティのシステムインテグレータにアウトソースされている。かれらはコンピュータと自動化のコンセプトは理解しているが、製造装置によるプロセスの内容がデバイスの製造要件にどう関係しているのかを深く理解しているわけではない。限られた経験しかないと、基本的な機能を実現するだけでも、相当な努力を強いられることになる。

 問題はさらに深い。ステーション・コントローラを構築して運用を担う人々は、プロセスのばらつきのような重要な問題に対処するファブ管理を補佐する上で、製造装置から収集したデータとその果たすべき役割の重要性に気づいていない。このような専門知識は、製造装置、プロセスエンジニアおよび装置メーカーが経験を通じて培ってきただけに、ウェーハが大型化し微細化が進む中で、ファブの効率改善に成功するためには、装置の導入に先立ちかれらが最重要視していることをステーション・コントローラで実現できるようにする必要がある。

 製造装置の認定は、この技術の統合を推進すべき領域であり、稼働中の装置のデータにリアルタイムでアクセスできるようにすれば、装置を製造現場に納入するまでの時間を短縮することが可能になる。従来の取り組み方では、ステーション・コントローラを認定作業で利用できるようには設計していなかった。自動化を推進することは、半導体メーカーに欠如していた設備更新の過程で利用可能なデータの問題を解決する上でも役立つ(図3)。


図3 装置レベルのデータを活用した自動化の推進は、設備の更新時のデータの欠如問題の解決にも役立つ


 ファクトリ・キード・イクイップメントのコンセプトでは、制御と例外処理を考慮することも重要となる。伝統的なステーション・コントローラは全体的なジョブと通常の操業シナリオの扱いに力を発揮したが、装置レベルの例外処理となると決して堅牢なシステムではなかった。この問題の原因は、ステーション・コントローラの製造装置に対する経験不足であり、そして製造装置とプロセスエンジニアからこれらの例外情報を抽出する適切な手法を確立していなかったことにある。

 ファクトリ・キード・イクイップメントのコンセプトでは、データ収集と装置制御の実装責任を装置メーカーに任せることにより、上述した特定の問題に対処することができる。装置メーカーはまず、製造装置から入手できるデータを理解し、それらのデータで製造装置全体の効率(OEE:Overall Equipment Effectiveness)の最適化や製造プロセスの管理をどう実現するのかを理解する。装置メーカーは次いで、自分たちの専門知識と経験を活かし、顧客と協業してファブの生産を支援する最善の操業シナリオを開発することができる。コンセプトが明確であり、必要なデータを活用できる環境に至る方策を計画し、成功への道を適切に探ることができる。

 ファブレベルのアプリケーションにおける意思決定に役立つデータを製造装置から直接利用するためには、従来的手法とSEMIが推奨するe-マニュファクチャリング標準の手法の両方をサポートすることが重要になる。データはこれらのアプリケーションが必要な時にオンデマンドで利用でき、生産目標を達成するためにデータを分析して製造装置レベルで成すべきことを決定できるようにする必要がある。データ収集の役割をステーション・コントローラから分離し、製造装置レベルで行えるようにすれば、目標は達成しやすくなるだろう。

 ただ、運用されているファブレベルのアプリケーションにより、数多くの異なるデータ収集要件があり、容易に達成できないという意見がでるかもしれない。さらに、異なるタイプのファブレベル・アプリケーションを同時にサポートするには、多大な労力が必要になるという論議もある。もっともらしい議論だが、現実にデータを抽出して異なるアプリケーションに分配することは難しい問題ではない。今日のソフトウェア技術と方法およびSEMIのe-マニュファクチャリング標準規格を採用することにより、これらの問題は設定プロセスで解決でき、装置メーカーが異なる顧客の要件に容易に適用することができる。

 では、誰が導入に際し責任者となるのか。製造装置から収集できる特定のデータ編成は、半導体メーカーにおける製造プロセスと装置のエンジニアリング・スタッフにより定義される。かれらは、アクセスしたいデータを直接選択して、収集したデータで何をすべきか判断できる。この手法では、半導体メーカーの知識領域を活用でき、製造を支援するために必要なデータを揃える時間を短縮できる。半導体メーカーが製造装置からデータを直接収集して管理する能力を備えれば、観察した状況に基づいて必要な変更を柔軟に行うことも可能になる。

 次いで、操業シナリオを実装する問題を考える必要がある。操業シナリオはこれまで、ステーション・コントローラにカスタムロジックで実装されていた。これらのシナリオの多くは、半導体メーカー特有の方法で製造装置をインテグレーションする段階で、必要なプログラムが記述され実現されていた。このようなステーション・コントローラは、特定の環境だけのために開発された一枚岩的な管理化におかれ、要件や状況の変化に迅速に対応できないので、「シッククライアント(thick clients)」と呼ばれてきた。ファクトリ・キード・イクイップメントの手法では「シンクライアント(thin client)」を利用し、共通の仕事に対して実装された処理エージェントが、半導体メーカーの特定の要件に対応して操業シナリオを設定することができる。

 シンクライアントでは操業シナリオを製造装置側に配備するため、装置メーカーは初めての対応を迫られ当初は反発する可能性がある。装置メーカー側にかかる開発負荷としては、コントローラにホストインタフェースを提供するためのアプリケーションの実装に時間をかける必要がある。しかし、この開発負荷は今日まで半導体メーカーが担ってきたことであり、半導体メーカーがそれぞれの製造装置に応じたシナリオと処理エージェントを実装すれば、半導体メーカーはそれらを迅速に実装して量産稼働に入ることが可能になる。


図4 ファクトリ・キード・イクイップメントの構成要素には、FDIMとシンクライアント・ステーション・コントローラという2つのアプリケーションが追加されている


 ファクトリ・キード・イクイップメントのコンセプトの初歩的な実装例に、当社のソータ「Spartan」のオプションがある。図4で示したファクトリ・キード・イクイップメントの構成では、ファクトリ・データ・インテグレーション・マネジャー(FDIM:Factory Data Integration Manager)とシンクライアント・ステーション・コントローラという2つのアプリケーションが追加されている。FDIMは、ファブレベルのアプリケーションにデータをオンデマンドで供給し、SECS/GEMを介したレガシー通信およびInterface Aの名で知られるSEMI e-マニュファクチャリング標準をサポートしている。シンクライアント・ステーション・コントローラは、ジョブ・ステップ・ライブラリを提供し、SEMI標準のプロセス・ジョブ/コントロール・ジョブのコンセプトに基づいて、通常プロセスと例外処理に対応できる操業シナリオを設定作業により実装することができる。

 FDIMには、データ収集を可能にする2つのモードがある。プロセスエンジニアや装置の担当者は、オフライン・ユーティリティを使いデータ収集計画を設定でき、ファブレベルのアプリケーションでもデータ収集計画を定義してFDIMの要求に従ってデータを送信できる。いずれの場合でも、通信プロトコルを意識する必要はなく、半導体メーカーが設定に苦労することはない。FDIMは今日利用可能なほとんどのプロトコルをサポートし、設定ユーティリティにより必要に応じてカスタムインタフェースを開発することもできる。

 シンクライアント・ステーション・コントローラを追加することにより、一般的なジョブステップの豊富なライブラリを利用でき、個々のジョブステップはMESのロット移動指示や製造装置のメニュー選択などを行う。ジョブステップのライブラリは、典型的な製造の流れに基づいて編成され、装置に応じたロット導入、セットアップ、加工、完了を指示し、通常シナリオと例外シナリオに対応することができる。

 ファクトリ・キード・イクイップメントは、導入先でユーティリティを設定することにより操業シナリオを実装することも、アプリケーションの専門家と協業してシナリオを事前に構築して製造装置が届き次第利用できるようにすることもできる。いずれのケースでも、従来のステーション・コントローラの利用法と比べ、6週間から8週間ほど早く現場で装置を稼働できる状態にして生産体制を整えることが可能になる。

 ファクトリ・キード・イクイップメントが半導体メーカーと装置メーカーに便益をもたらすにもかかわらず、なぜ半導体業界に広く採用されなかったのだろうか。半導体市場からの圧力が他の技術の採用を促し続け、半導体製造に新手法を持ち込むことに対する高い障壁になっていた。しかし、半導体メーカーが変化に俊敏に対応する必要性に迫られる中で、ファクトリ・キード・イクイップメントで可能になる便益を求める企業が増えれば、業界のために開発されるソリューションも増加する。半導体メーカーがそれを求めなければ、新しいソリューションを構築するインセンティブも生まれない。

 ファクトリ・キード・イクイップメントは、SEMIやSematechなどでしかるべき団体が立ち上がり時間をかけて学ぶ機会が提供されたことにより、新しい自動化手法に移行する動きに弾みがつくだろう。ただ、半導体業界における全ての自動化技術が進化する中で、ファクトリ・キード・イクイップメントについては半導体メーカーと装置メーカーが合意を形成するために議論を活発に行う必要がある。半導体工場に多くの装置を混在させる傾向が続いているが、問われていることは、ファクトリ・キード・イクイップメントは将来デファクトスタンダードになるのかではなく、いつ移行するのかということである。ファクトリ・キード・イクイップメント・アーキテクチャに率先して移行し、業界全体への普及促進に力を入れる企業は、新しい手法の便益を最初に享受することになるだろう。



Mark Pendleton 米Asyst Technologies社
Mark Pendletonは、20年以上にわたり半導体およびエレクトロニクスの業界で、先端的な製造システム自動化ソリューションの実装を経験してきた。米Asyst Technologies社では主席ソフトウェア・アーキテクトとして、次世代の製造装置間接続ソリューションの製品計画を担当している。かれはAsystを代表して、SEMIの情報制御委員会の委員とIEEタスクフォースの共同議長をつとめている。同氏は、カリフォルニア大学サンディエゴ校でコンピュータ・サイエンスの学位を取得。
www.asyst.com

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