物質・材料研究機構(NIMS)は、双性イオン型の界面活性分子を用いたシャボン膜を形成・乾燥させることで、基板に配列した細孔内部に無機物質の自立膜を製造するプロセスを開発したと発表した。
今回開発した方法では、規則的に配列したミクロンオーダーの穴の内部に双性イオン型の界面活性分子を用いてシャボン膜を形成し、これを乾燥して極薄の有機自立膜を形成させる。形成した膜上に、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、熱蒸着法により様々な無機物質を蒸着させたところ、アモルファス性のカーボンやSiでは、1~100nm程度の均質な自立膜が得られることを実証したという。金属(Pt、Fe、In)や半金属(Te)、化合物半導体(CdSe)などの自立膜を製造することも可能で、複数の無機物質を積層化できることも実証している。界面活性分子の自立膜は、無機物質の蒸着に対して安定であり、蒸着後は水で容易に洗浄除去することができるという。
無機の自立膜は、センサーや触媒、分離膜などの多くの機能材料において、重要な役割を担っている。これまで、ミクロンからサブミクロンオーダーの自立膜は、一般に、フォトリソグラフィ法によって作製されてきた。フォトリソグラフィ法は、複雑かつ微細な構造を有する自立膜の作製には確実かつ最良の方法であるが、同方法では、Siウェーハのパターニング、無機膜のデポジション、基板の選択的エッチングなどの操作を繰り返す必要がある。煩雑さに加えて、製造コストや環境負荷の問題が、自立膜の応用範囲を狭めていたともいえる。
今回の研究では、基板に配列した穴の内部に無機物質の自立膜を形成するために、超高真空下でも壊れないシャボン膜を利用。シャボン膜は、界面活性分子の膜の間に薄い水の層を有しており乾燥すると壊れてしまう。NIMSでは、特定の界面活性分子を用いてミクロンオーダーの穴の内部にシャボン膜を形成すると乾燥しても壊れないシャボン膜(乾燥泡膜)が得られることを見出した。乾燥泡膜は、界面活性分子の二分子の厚み(約3nm)の極薄の膜。今回の研究では、双性イオン型の界面活性分子(ドデシルホスホコリン)を用いて乾燥泡膜を形成、その上にスパッタ法、電子ビーム蒸着法、熱蒸着法により様々な無機物質を蒸着させた。その結果、乾燥泡膜が上記の蒸着法に対して非常に安定であることが明らかになったという。アモルファス性のカーボンやSiでは、1~100nm程度の均質な自立膜が得られる。また、半金属のTeでは100nm程度の自立膜を形成できたものの、金属(Pt、Fe、In)では20nm、化合物半導体(CdSe)では50nm以上の蒸着を行うことが困難であったとしている。しかし、乾燥泡膜に予めカーボンを蒸着しておくと、その後の蒸着に対する安定性が向上、それにより金属や半導体を含んだ様々な多層膜を容易に形成することが可能となったという。
なお、今回の研究は、NIMSのナノ有機センター機能膜グループの一ノ瀬泉グループリーダー、Jin Jian主任研究員、Peng Xinsheng ICYSフェロー、および半導体材料センター半導体デバイス材料開発グループの若山裕主席研究員の共同開発によって実現した。同技術は、無機自立膜の極めて簡便な製造プロセスとしてフォトリソグラフィの代替方法としても期待され、NIMSでは今後、同技術のナノ分離膜への応用のための被覆率向上などを目指すという。
News Center
物質・材料研究機構、シャボン膜を利用した自立膜の製造プロセスを開発
[issued: 2007.08.15]
図 ミクロンオーダーの穴の内部への乾燥泡膜の形成(a) ならびに無機シートの 形成(b)
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