理化学研究所は、伝導性の有機分子と絶縁性の有機分子とが自己組織的に集合して結晶を形成するという性質を利用して、絶縁被覆した太さ1nmの結晶性ナノワイヤーの開発に成功した。同成果は、中央研究所加藤分子物性研究室の加藤礼三主任研究員、山本浩史専任研究員らの研究グループによるもの。
ナノワイヤーとしてはカーボンナノチューブなどが登場しているが、材料を絶縁被覆する技術が確立していないため、集積回路で短絡を起こしやすく、1本1本が独立しているため規則的に配列できないなどの課題があった。同研究グループは、伝導性有機分子であるテトラチアフルバレン誘導体と絶縁性の含ヨウ素中性分子とを結晶中で自己組織的に組み立てることで規則的に配列させた被覆ナノワイヤーの研究開発を進め、同手法によって今回、芯線の数を増やし、絶縁被覆の厚みを増やすことに成功した。
同研究グループは、伝導性有機分子のPT(ビス(プロピレンジチオ)テトラチアフルバレン)、絶縁性中性分子DFBIB(1,4-ジフルオロ-2,5-ビス(ヨードエチニル)ベンゼン)および塩化テトラフェニルホスホニウムを、クロロベンゼンとメタノールの混合溶媒に溶解させ、これに1μAの電流を1週間ほど通電させ、黒色の直径0.1mm程度の結晶を得た。X線回折の測定によって結晶の内部構造を決定したところ、2本の芯線(PT)を絶縁体(DFBIB)と塩化物イオンが取り巻き、108本程度が整然と並んだ状態のナノワイヤー構造が結晶中に完成しているのを確認したという(図1)。
また、同様の方法で、TSF(テトラセレナフルバレン)、HFTIEB(1,1’-3,3’-5,5’-ヘキサフルオロ-2,2’,4,4’-テトラキス(ヨードエチニル)-ビフェニル)および塩化テトラフェニルホスホニウムを用いて結晶を作製したところ、絶縁性を向上させた構造を持つ結晶が得られたという(図2)。HFTIEBは、同研究グループが独自開発した分子で、フッ素分子量を多くするなどして絶縁性能を高めている。芯線(TSF)間の絶縁被覆(HFTIEBと塩化物イオン)は1nmの厚さに達しており、被覆の絶縁抵抗を測定したところ、1013Ωcmという高い抵抗率を実現したことを確認したという。
今回開発した2つのナノワイヤーはそれぞれ別の成果であるが、今後は図3のように、これらのワイヤーを結晶中で交互に直行させて、その交点に分子メモリーを組み込んでいくという物質開発が期待されるという。こうした3次元結晶構造を実現できれば分子メモリーへの超高密度配線が達成でき、1cm3あたり100ペタバイトの情報を記録することも可能になるとしている。
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理研が絶縁被覆した規則配列ナノワイヤーを開発、
高密度の分子メモリー実現に期待
[issued: 2008.01.08]
図1 2芯ナノワイヤーの結晶構造
図2 絶縁被覆ナノワイヤーの結晶構造
図3 3次元ナノワイヤー配線の概念図
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