Editorial

半導体産業に関わる幸せを経験しよう

[2007年01月号]

By 日本版 編集顧問 津田建二
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 SEMICON Japanが開催30周年を迎え、盛大なディナーパーティが東京の帝国ホテルで催された。締めの言葉を東京エレクトロンの東哲郎会長が述べられたが、深く感銘を受けた。同氏は、この半導体製造の道に入りほぼ30年たったという。入社した頃上司からある一冊の半導体技術の雑誌を紹介され、「これからは半導体の時代が来る。われわれはそれを作る仕事を担う。この本を読んで勉強してくれ」、と言われたそうだ。その後、半導体技術は信じられないほどの発展を遂げた。その成長産業で仕事ができて本当に幸せだったと振り返った。全く同感である。

 半導体産業はこの30年、様変わりした。私も1970年代前半に大学を卒業、半導体メーカーに入りSiウェーハの2~3インチ化が始まった頃に半導体技術を勉強した。かつて米Intel 社CEOを務めたAndrew Grove 博士が書かれた名著Physics and Technology of Semiconductor Devicesを必死に読んだ。半導体デバイスの作り方が一からわかるとても良い教科書だった。もう一つ、米Bell 研究所のS.M. Sze博士の書かれたPhysics of Semiconductor Devicesにも夢中になった。この二つが半導体を理解するのにとても良い教科書だった。

 Grove 社長はその後、「パラノイヤだけが生き残る」という半導体経営の名著も著している。実は、この名著こそ、今の日本の半導体経営者に役に立つ本だと思う。Intel は今でこそ、世界一の半導体メーカーではあるが、かつて苦悩の時期があった。1971年に発明したDRAM を日本が量産し、もはやコモディティ製品となった時にIntel はDRAMを捨て、パソコン用のマイクロプロセッサだけに絞った。まだパソコンがこんなにも普及するとは誰も思っていなかった時代にこのような決断を下した。1980年代半ばである。

 今、利益の上がらない半導体メーカーは、自分らの得意な製品分野だけに特化して他を捨てることはできるだろうか。国内半導体メーカーを取材してみると、数を減らさず利益を上げたいという。しかし、どうやって?これまでの世界の半導体メーカーで、何かを捨てずに業績を回復したところなど1社もない。なぜ、日本の経営者は自分がそれをできるというのだろうか。Intelや米Texas Instruments社でさえできないことを日本の半導体メーカーができるとどうして言い切れるのだろうか。回復の道筋は全く見えない。

 半導体経営者にはGrove 氏の名著を、技術者には東会長が読んでいた雑誌を薦めたい。その雑誌こそ、実はSemiconductor International 誌である。  

 手前みそではないが、なぜ雑誌かを説明しよう。半導体技術の変化はとても大きい。Grove博士やSze博士の教科書は半導体の基礎を勉強するのには抜群の教科書だが、技術の変化に追従するには雑誌が一番良く技術をフォローしているからだ。不純物拡散や熱酸化の原理、MOS トランジスタの動作原理などは教科書に書かれているが、歪みSiではなぜ電子移動度が上がるのかとか、なぜFinFETが有望視されるのかといった情報は雑誌でしか得られないからだ。もちろん、歪みSiを理解する上で、結晶格子振動を理解しておく必要があるが、そのような基礎知識こそ教科書で勉強しておく。すると例えば、歪みSiは低温で威力を増すことが簡単にわかる。つまり、教科書と雑誌とを相補的に利用するのが新しい技術を生み出す上で有効だと思う。

 半導体産業の成長はこの先少なくとも20年以上は続く。若い技術者が成長産業と共に生きる幸せを経験できる産業であるからこそ、しっかり勉強してくれることを願う。

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