Movers&Shakers

Stan Williams氏
米Hewlett-Packard社

[2007年01月号]

この記事を :  印刷する プリントする ブックマーク  はてなブックマークに登録 この記事をクリップ! Buzzurlにブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 メールで送る メールで送る

 Stan Williams氏は、米Hewlett-Packard社のシニアフェローで、米Quantum Science Research(QSR)グループ創始者およびディレクター。同センターは、ナノメータレベルに向かい進歩するエレクトロニクス技術の課題を克服すべく、1995年に設立された。

 同氏の第一の研究領域は、固体素子の化学、物理、そしてナノ構造、化学材料などで、特に熱力学の研究を行っている。最近では、分子コンピューティングの研究も始めている。

 Williams氏は、2000年のJulius Springer Award for Applied Physics、2000年にFeynman Prize in Nanotechnology、Dreyfus Teacher-Scholar Award、Sloan Foundation Fellowship他、さまざまな賞を獲得している。また、同氏は、U.S. National Nanotechnology Initiative設立のきっかけとなったNanotechnology in the 21st Centuryのコーディネータであり、エディターであった。UCLAで化学およびノースカロライナ大学 Chapel Hill校ではコンピュータサイエンスの非常勤講師もつとめている。米Rice大学を卒業し、UC Berkeley校で物理化学のマスターと博士号を取得した。

 HP研究所のQSRグループは、ナノ構造の製作、測定、および組成の理解に焦点を合わせて研究を進めている。分子エレクトロニクスの研究では、パワー効率の限界とされるSiICの能力を超え10億以上の要素を実現できるとしている。QSR研究者は、コンピュータアーキテクチャ、理論固体物理学、電気工学、材料科学、および物理的な化学などの広範囲な分野を研究する。


Semiconductor International(以下SI):QSRラボはナノテク開発を牽引している。現在の進行中のプロジェクトは?

Williams:私たちは、ここ数年間にわたって急速に成長し、新分野に拡大している。エレクトロニクス分野から始まって、以来、情報通信向けのフォトンや原子をナノスケールで集合、格納、制御するプロセスの開発を行っている。分子レベルで超精密測定を実行できるナノスケールも開発した。

SI:多くのプロジェクトに取り組んでいる。

Williams:30前後のプロジェクトに関わっている。その中の一つにナノインプリント・リソグラフィ技術があり、この技術の限界を押し進めている状況だ。私たちはラボでは15nmハーフピッチのパターンの作製に成功し、そして現在ではITRS
(International Technology Roadmap for Semiconductors)で2020年頃に実現するであろうパターンの形成を行おうとしている。

SI:そのスケールでは、量子効果が興味深い。

Williams:本当だ!今のゲームの法則がもう適用されない領域。異なった自然界の法則が働いている。そこに到着すると、オームの法則のようなものがもう適用できない。

SI:どこまでの微細化を実現しているのか?

Williams:現在、私たちは、15nmを達成し、引き続き微細化を続け絶対限界について調査したいと思う。例えば4nmレベルの物は作成できると考えている。

SI:未知との遭遇だ。

Williams:その通りだ。これはHPが10数年前にナノテク技術を牽引すると決めた戦略に沿っている。

SI:驚くべき発見は?

Williams:毎日だ(笑い)。ナノスケールでメモリーの作製に成功したが、まだ、なぜ成功したかの理由は分かっていない。

SI:欠陥を見つけるのすら簡単ではない。

Williams:簡単ではない。半導体業界に警告したことがある。それは、「許容できる欠陥」という言葉についてだ。早くから、これらのサイズで問題を生じさせるのは、量子効果だけではなく、熱力学第二法則エントロピーが大変な問題になるのが分かっていた。全体の幅が原子20個分もない配線を造るとき、いくつかの原子が欠けるだけで組成は大きく変わってしまう。

SI:そして熱力学第二法則は、散逸を認めている。

Williams:その通りだ。このスケールでは絶対に原子論的に完全にすることができない。量子とエントロピー効果の両方がある。完全な配線と完全なデバイスを作るのは不可能だろう。「みすぼらしい」部品から完全なマシンを作製する方法を理解しなければならない。半導体は人が今までに作ったことがある完全性に最も近いものである。そして、かなりの間非常によく働いてくれたため、人々は不完全なコンポーネントから完全なマシンを組立てなければならないという問題を忘れていた。極端なナノメータレベルでこれを再現し、コンポーネントが不完全でも完全に作動する回路(または、マシン) を造ることができるような、さまざまな方法を発明しなければならない。

SI:主流の65/45nmデバイスが巨大に見える。

Williams:その通り!我々の最も大きい問題の1つは、ただデバイスを見るだけでも難しいことだ。特別な走査型プローブ顕微鏡を使用し、個々の原子を観察している状況だ。

SI:長年、CMOSの限界が指摘されている。あなたはナノテクの限界についてどう考えているか?

Williams:確実に物理法則には限界がある。例えば、光の速さによって設定され、情報はそれより少しも速く移動できない。また、ハイゼンベルグ不確定性問題。これはどれくらい速く情報を処理できるかを考えた時に避けられない制限である。

SI:状況は荒涼として聞こえる。

Williams:とんでもない!私たちは物理学の終わりからは非常に遠い。第一の仕事は物理学が許容する限界に近づく方法を理解することだ。

SI:確かに、回路の性能は改良され続けた。

Williams:今日のSi回路の有効な熱力学的な効率は、低いものだ。残りは余熱として消散する。もし、自動車がそんなに効率が悪かったら、蒸発してしまうだろう。人間の脳が今日のSi チップよりもおよそ100万倍効率的であると考えなければいけない。

SI:どれくらいの間、ムーアの法則を続けることができると思うか?

Williams:少なくとも、もう50年。明らかに、すべてが可能であるというわけではないが、基本的な限界を心配するには早過ぎる。

SI:業界がナノテクノロジーを通してCMOSを延命するためにどのくらいの努力をはらっているのか?

Williams:突然の革命的な出来事は起こらないであろう。どんな実行可能なソリューションも経済的に実現可能になるようにCMOSプロセスに順応しなければならない。私たちが扱っている案件の多くは、CMOSの寿命を伸ばし、それを改良するのが目的とされる。

SI:コード化理論を使用することでナノエレクトロニクスを新しい方法で設計できると発表している。

Williams:これは欠陥の許容範囲に関係する。コード化理論が回路を働かせるように数学的に正しい量の冗長を提供することを発見した。このように考えて欲しい。私は、製造プロセスは安価であって欲しいと思う。しかしながら、安価になり過ぎると、私が作るデバイスは信頼性をなくす。私たちはできるだけ安価に製造コストを保ち、コード化理論を使用することで少量の冗長を加え、多くの頼り無い部分から非常に信頼性の高いデバイスを完成する方法を見つけている。

SI:次のおよそ3年間でQSRから何を期待できるか?

Williams:私たちがかかわっているさまざまな領域で使用できる、新しいセンサーとディテクターについて調査している。ケミカルセンサーは多くのアプリケーションでますます重要になっている。また、ナノインプリント・リソグラフィ技術など、これらのスケールでパターン形成が可能な製造プロセスを定義する。さらにメモリー技術は一つの曲がり角に差し掛かっている。5年ぐらいで、既存メモリーの性能をしのぐ新しいメモリー技術が登場するだろう。

 初め、それらはプレミアムなコンポーネントでしかないであろう。その後、CMOSロジックとのハイブリッド回路ができ、ナノスイッチやリレーが搭載される。10年後にはこのようなハイブリッドシステムが製造されているだろう。その後、CMOSが脇役となるが、ムーアの法則の結果がもう半世紀に続くことができないなんてことはないだろう。
(聞き手:Alexander Braun)

この記事を :  印刷する プリントする ブックマーク  はてなブックマークに登録 この記事をクリップ! Buzzurlにブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 メールで送る メールで送る

SI Japan RESOURCE CENTER

アドバンスドエナジージャパン株式会社
金属材料のマグネトロンスパッタリングにおけるアーク抑制
JPN-ArcSputmetal-270-01.pdf
資料一覧を見る
この資料をダウンロード

EVENTS