Editorial

イノベーションは民間主導で生まれる

[2007年02月号]

By 日本版 編集顧問  津田建二
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 イノベーション、技術革新が求められている。日本だけではなく米国や欧州でも同様だ。More than Mooreにしろ、No More Mooreにしろ、これまでの微細化とは違う新しい技術が熱望されている。これまで、微細化は低コストにつながったが、これから先必ずしも低コストにできないのなら、別の軸を導入せざるをえない。この軸となるものが新しいイノベーションである。

 昨年の暮れにつくば市で半導体MIRAIプロジェクトの報告会が開かれた。その中で、半導体MIRAIプロジェクトのプロジェクトリーダーの渡辺久恒氏は、競争力の強化にどう貢献するかという問題に対して、生産・設計投資体力が強く、研究開発で先行し、知的財産戦略が強固で、事業覇権を構築すること、と述べた。しかし、国家プロジェクトでは競争力云々は考えない方がよい。競争力はどのように言い訳しても競合相手に勝つための能力でしかないからだ。

 国家プロジェクトや研究機関は、民間企業がなしえない、新しい技術開発にひたすら取り組むべきだ。EUVの研究は大いに進めるべきである。EUVが32nmリソグラフィの主流になるかどうか、全くわからないからだ。

 かつての日本は、半導体レーザーでも、CCDイメージセンサーでも、実用化できるかどうかわからない時に外国勢がやめてもしつこく探求した。その結果、赤色レーザーを発明し、青色レーザーにつなげ、CCDカメラを生み出した。米国Bell研究所は光ファイバ用長波長レーザーの開発を終えると半導体レーザーの開発から手を引いた。CCDがメモリーとして使えないとわかると米国の企業はCCDの開発をやめた。レーザーの発明が、CD-ROMやDVDでの日本の独占につながり、半導体イメージセンサーの発明がデジカメやケータイのカメラモジュールでの現在の地位を築いた。

 世界のどのメーカーもやっていない研究テーマはやめない方がよい。ただし、研究に資金がかかりすぎるのなら、民間企業ではなく国家が援助するか民間企業同士で分担しあうべきだろう。

 ただし、研究者個人の興味や役人からの押しつけテーマで始めてはならない。民間企業からの要求に耳を傾け、応えなければ世の中に役に立つ成果は生まれない。これまでのプロジェクトがことごとく失敗ともいえる状況に終わったのはまさにこの点を取り違えた。

 米国のSEMATECHも当初は失敗だといえよう。参加メンバー企業はSEMATECHとは関係なく自らの努力で復活にこぎ着けたからだ。しかし、SEMATECHは国家予算を当てにせず、自助努力で研究開発する方向へ舵を取り直し、InternationalSEMATECHへと変身させ、今日に至っている。民間企業が求める低コスト技術にこのコンソーシアムが着手しているのは、その表れと言えよう。

 国家プロジェクトに対して、民間企業がROI(投資回収率)すなわち見返りを要求するのであれば、国家主導ではなく、民間がテーマを決める民間主導の国家プロジェクトに変更すべきだろう。たとえプロジェクトの最初の目標を達成できなくても、その研究から生まれたいろいろな技術のアイデアは沸いてくるはずだ。これをROIとして評価すればよい。

 EUVによる32nmリソグラフィの実現に向けて、研究している中で他にも使える技術やヒントが出てくるに違いない。その技術やヒントはすぐには詳細を公開できないものか
もしれないが、概略を伝えれば立派な見返りとなろう。

 いずれにせよ、研究開発は続けていれば何らかの成果は残るが、やめてしまっては何も残らない。

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