磁気抵抗型ランダムアクセスメモリー(MRAM:Magnetoresistive Random Access Memory)は、情報の格納と処理に、電荷ではなく磁気スピン特性を使用することで、メモリー技術のパラダイムをシフトさせる技術となる。MRAMは、SRAMの高速性とフラッシュメモリーの安定性を併せ持つことから、次世代汎用メモリーの有力な候補と見られている。1)~5)さらに、信頼性についても良い特性を持つ。4)6)~10)ここで、MRAMと他のメモリー技術の比較を示す(表)。
MRAMはまだ市販製品に広く使われているわけではないが、調査によれば、MRAMのような安定したメモリー技術による固体データストレージは、軍事産業や航空宇宙産業でいくつか応用されている。消費電力と耐放射線が重視される宇宙探査機用の半導体ストレージではMRAMが特に魅力的だ。4)宇宙探査機への応用では長期的なデータ記憶が鍵であり、航空宇宙向けではその期間は10年以上に及ぶことが多い。10)また、現時点では開発は軍用や宇宙用が中心だが、商用のMRAMの成長にも大きな期待がかかる。潜在的な産業用アプリケーションには、アセンブリー装置やロボット、テスター、画像検査、光学的な特徴認識、プロセス制御、マシーンビジョン、監視、エネルギー生産、エレクトロニクス製造がある。
MRAMの商品化の前に横たわる問題の1つは、DRAMやNAND型フラッシュメモリーと比較したときの記録密度の低さがある。同じノードでは、MRAMセルの大きさはNAND型フラッシュメモリーやDRAMセルよりも大きく(表)、11)最小加工寸法ではDRAMやフラッシュメモリーよりも2~3世代遅れている。現時点での商用MRAMチップでは米Freescale Semiconductor社の4Mビットが最高の記録密度で、約18×10×1.2mmのTSOP(Thin Small Outline Package)パッケージとなっている。12)第2の問題点は、MRAMの動作が、近辺にあるディスクや電源の発生する外部磁界によって中断される可能性がある点だ。チップをこのような磁場からシールドすることが重要となる。
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積層型MRAMパッケージ向け
磁気シールド技術
[2007年02月号]
磁気抵抗型ランダムアクセスメモリー(MRAM: Magnetoresistive Random Access Memory)は、安定性、高速性、従来のCMOSプロセスとの互換性、そして潜在的な耐放射性といった理由から次世代の汎用メモリーとして有望な候補となっている。そしてMRAMをパッケージングする際には、PoP(Package-on-Package)積層技術が、パッケージの記録密度を向上し、磁気シールドの問題を効果的に解決する手法として考えられる。
表 90nmノードにおけるMRAMとその他のメモリー技術の比較
高密度のPoP技術
図1 8層のMRAM PoPスタックのプロトタイプ(左図)と、64層のプロトタイプ(次ページの図)
磁気シールド
MRAMの一般的動作環境での磁場は1Oeを簡単に越えてしまう。例えば、コンピュータ内部(モーターのような明らかに問題な発生源を除く)の磁場は、通常、ほとんどの場所で数Oe(静的)の範囲である。であるから、実際の動作状況のもとでは、MRAMのシールド仕様としてはDCシールド係数25が良いだろう。このシールドによれば25Oeの外部磁場を1Oeに有効に減衰できる。
磁気シールドは電磁波で影響を受ける領域を高透磁性材料で囲むことで実現する。磁場はシールド材によって押しのけられる。磁荷が磁場源にならないようにするため、シールド材が大きな磁荷を保持しないようにすることが重要だ。
シールド材が飽和しないと仮定すれば、シールドの有効性はシールドの透磁率と配置の2つで決まる。シールド材として最も適した候補を選ぶために広範な調査を行なった。候補として次の5種類の材料を選びシミュレーションした。Mo-Permalloy(Mo-Fe-Ni合金)、13)Supermalloy(Mo-Fe-Ni合金)、14)Alloy 42(Fe-Ni合金)、14)Metglas 2705M(アモルファス合金)、15)Mushield16)である。このなかで、多層シールド材にはMetglas 2705Mが最も適しているという結果を得た。
多層シールドは、スタックに先立って個々のCSPの上部および/または底部に金属箔シールドを付設することで実現できる。Metglas 2705Mでは16μm厚の箔があり、これがシールドに最も適している。
モデリングはQuickfield 2-D Magnetic Modeling Programを使用して実行した。モデルでは、1ガウスより大きい磁束密度がMRAMチップの動作信頼性(誤り率)に悪影響を及ぼすと仮定した。チップの透磁率は1とした。モデルではリード電流の影響と外部磁場の両方を考慮した。
シールドによる外部磁場の減衰
図2 8層の積層型パッケージの各層に16μm厚の箔でシールドした場合の磁気モデリング(左図)。外部磁場の強さは50Oeである。スタック型パッケージ内部の磁場(右図)は、積層構造の最上層と最下層を除いて1Oe未満(黄色の領域)である
多層シールドのモデリングをMetglasによるシールド材のみで行なったのは、他の4種類の材料は25μm未満の厚さの金属箔を現状では入手できないからである。
図3 8層の積層型パッケージに50μm厚のMushield材で缶状シールドを施した場合の磁気モデリング結果。外部磁場の強さは20Oeである。シールドの“缶”は9.2×2mmである。黄色で示した部分は磁場の強さが1Oe未満である
パッケージ内の電流によって生じる磁場
図4 リードによる500mAの電流で引き起こされるパッケージ内の面内磁界の外乱は1Oeにまったく満たない。白の矩形はチップの領域である。赤い矢印はパッケージのリードの位置を指している
外部磁場がない場合には、リード電流が単一層のMRAM CSPの磁場に与える影響は少ない。500mAの電流パルス1回によって引き起こされる磁場は1Oe未満で、距離に応じて急速に減衰する(図4)。チップの有効領域の端はパッケージのリードから少なくとも1mm離れており、500mAの電流パルスによる影響は無視できる。MRAMの動作電流はシミュレーションで使用した500mAよりもかなり小さい。どんな時でも積層内の1チップだけが活性化されるので、単一層での結果を積層型パッケージにも適用できる。
モデリング結果の実験検証
図5 中ほどのスタックが、上側および下側の積層よりも効果的にシールドされている。シールドは25Oe未満の外部磁場で有効である(1Oe未満)
シールド機能をテストするために、AWG(American Wire Gauge)#22磁気ケーブル約400巻きによる内径51mmの、巻線長100mmの特注巻線ソレノイドが発生する均一の磁場内に積層型パッケージが挿入された。ソレノイドに電流を供給し、磁気センサーに9Vの一定電圧を供給するために米Agilent Technologies社の2出力電源E3646を使用した。ソレノイド内の磁場と電流の関係の測定には米Sypris Solutions社のガウスメーターModel 6010と標準の1X軸プローブを使用した。センサー出力電圧を磁界の強さに修正するためにNVE AA-002-02GMRセンサーを使用した。これは磁気エミュレータ用のパッケージ内部に使ったセンサーと同一のものである。ガウスメーターのプローブとGMRセンサーはどちらもソレノイドの中ほどに固定された。Agilentのディジタルマルチメーター34401AでGMRセンサーの出力を測定した。
図5は、PoPパッケージ内部のX-Y座標が同一でZ座標の異なる3通りの位置に設置された3つのセンサーによって測定された磁場を示している。X-Y平面でのセンサーの位置はMRAMチップ内部の有効メモリー領域の端部に相当する。外部磁場が25Oe未満では、3つのすべてのセンサーの磁場の値が1Oe未満に抑えられた。外部磁場がそれ以上になると、上側および下側のシールドが飽和し始める。中央部では、シールドは外部磁界50Oeまで有効である。シミュレーション結果と実験データはよく相関がとれている。
まとめ
謝辞
Kenneth Honerは、TesseraのパッケージR&Dのシニアマネージャで、プログラムおよび製品管理で6年の経験がある。2004年に同社に入社するまでは、米Lightconnect社で民生用および軍事用のMEMSベースの光部品の開発責任者だった。Stanford大学から電気工学を副専攻とした機械工学の博士号と、機械工学の修士号を、米California大学Berkeley校から機械工学の学士号を取得している。
参考文献
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2. S. Tehrani et al., “Magnetoresistive Random Access Memory Using Magnetic Tunnel Junctions,”Proc. of the IEEE, May 2003, Vol. 91, No. 5.
3. S. Kaka, “Past, Present, and Future of MRAM,” Tape Head Interface Committee Meeting, July 2003.
4. L. Adams et al., “Challenges in Implementing Commercial Non-Volatile Memory in Spacecraft Solid State Recorders,” Proc. Non-Volatile Memory Tech. Symp., November 2000.
5. B. Kaufman and K. Kiamanesh, “A Non-Volatile Solid State Recorder for 100,000 g Environments,” Sensors, June 2002.
6. L. Cohn, “Non-Volatile Memory Technology Programs at the Defense Threat Reduction Agency, Radiation Hardened Microelectronics Project,” Proc. Non-Volatile Memory Tech. Symp., November 2003, p. 2-1.
7. W.J. Gallagher and S.S.P. Parkin, “High-Speed 128Kbit MRAM Core in a 0.18 μm CMOS Technology Utilizing PtMn-based Magnetic Tunnel Junctions,” Proc. Non-Volatile Memory Tech. Symp., November 2003, p. 10-1.
8. R. Desikan et al., “On-chip MRAM as a High-Bandwidth, Low-Latency Replacement for DRAM Physical Memories,” The University of Texas at Austin, Tech Report TR-02-47, Sept. 27, 2002.
9. A.K. Sharma et al., “Evaluation of Data Retention and Imprint Characteristics of FRAMs Under Environmental Stresses for NASA Applications,” Extreme Environment Electronics, August 2002, Vol. 8, No. 2.
10. S. Kayali, “Reliability Challenges for the Utilization of Non-Volatile Memories in Space Systems,” Proc. Non-Volatile Memory Tech. Symp., November 2000.
11. R. Gordon. “Market Focus: MRAM as a Universal Semiconductor Memory Technology,” Gartner Inc., 2005.
12. Freescale Semiconductors Data Sheet for MR2A16A. Available at:
http://www.freescale.com/files/microcontrollers
/doc/data_sheet/MR2A16A.pdf
13. B.D. Cullity, Introduction to Magnetic Materials, Addison Wesley, N.Y., 1972, p. 531.
14. Special Purpose Nickel Alloys, Figure 3, p. 4. Available at:
http://www.asminternational.org/Template.cfm?Section=SneakPreview
&template=Ecommerce/FileDisplay.cfm&file=ACF7F5.pdf
15. Technical Bulletin for 2705m alloy. Available at:
http://www.metglas.com/downloads/2705m.pdf
16. Design Guide, p. 9. Available at:
http://www.mushield.com/documentation
/catalog_and_design_guide.pdf
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